探蝶逍遥記

中国四川省成都近郊遠征記:その14

 首題遠征記は昨年3月14日の記事(クリックでジャンプ)で、ひとまず区切りとしたのですが、未掲載種が多々ありました。オフシーズンなので、その続きを掲載することにします。いずれも青城山での観察結果です。今回はタテハチョウ科ジャノメチョウ亜科をご紹介します。最初はバウキスクロヒカゲ(Lethe baucis baucis)♂。

+++画像はクリックで拡大されます(モニター環境に依存)+++
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D71K-34VR(トリミング),ISO=640,F8-1/400、-1.0EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年7月15日、11時52分

 前山の8合目付近(標高約1100m)の参詣道で吸水している個体。正午前後の暑さに対応するため、彼らもしきりに吸水をしておりました。次は同じ参詣道の脇で静止する個体。
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D71K-34VR,ISO=250,F10-1/800、-0.7EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年7月16日、10時14分

 中国に生息するヒカゲチョウ(Lehte)属は101種知られています。アジアでも中国はLethe属の宝庫と言えます。複眼の模様がなんとも「とぼけた」表情をしているのと、ハンミョウみたいに撮影者にお供するような行動に魅せられます。色合いは地味ですが、斑紋の多様性もあり、管理人お気に入りの蝶です。中国遠征では1種でも多く、この仲間を撮影したいと思っているのです。本種baucissatyrina群に属し、近縁種hyrania(台湾産をinsanaとする図鑑もあり)と酷似しております。baucishyraniaの識別点を複数の図鑑を検し、次のようにまとめました。
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(1)前翅裏面外縁の眼状紋列(上図中A)
共に3-6室に4個(上図中#3-#6)。但しhyraniaは6室(#6)が通常消失。baucisは3-5室に比較して小さいが確実に出現。3-5室眼状紋内の黒色部分はbaucisでより鮮明。
(2)前翅裏面淡白色帯:前縁と淡白色帯のなす角度(同B)
hyraniaはほぼ直角。baucisはやや基部側に屈曲する。
(3)後翅裏面暗色条:外縁側暗色条が後翅前縁となす角度(同C)
暗色条は共に2本ある。外縁側暗色条は第6室の眼状紋の周囲を経て前縁に達する。この時、前縁への侵入角度に注目する。baucisではほぼ直角だが、hyraniaは強く外縁側に屈曲する傾向が強い。

 以上の識別点を総合的に勘案し、ここではbaucisとしております。前翅中室裏面の2本ある暗色条にも有意差がありそうですが、ここでは触れません。上記吸水個体と閉翅個体は別個体で、両画像を見ると、当該裏面暗色条の発現状況はかなり個体差があることが理解できます。
 因みにbaucishyraniaも♀は前翅にシロオビヒカゲ(L.europa:台湾名玉帯蔭蝶)同様、明確な白色帯があり、そのため、hyraniaの台湾産亜種の台湾名は、「深山玉帯蔭蝶(無理やり意訳すると、ミヤマシロオビヒカゲ)」です。

 お次は日本でもお馴染みのクロヒカゲモドキ(L.marginalis)。
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D71K-34VR,ISO=400,F8-1/400、-0.7EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年7月16日、9時48分

 恥ずかしながら、このところ日本で本種を撮影していないので、本当に久しぶりの出会いでした。一応日本産と同じ名義タイプ亜種です。やや擦れた個体でした。広角で生息環境も写してみました。
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GX7-Z12,ISO=400,F11-1/60、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年7月16日、9時53分

 やはり敏感なので、このようなショットを撮る時は神経を使います。もうちょっと寄って一枚と思った瞬間、飛び上がりました。
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GX7-Z12(トリミング),ISO=400,F11-1/40、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年7月16日、9時53分

 お陰でちょっぴり翅表を覗かせてくれました。次回はジャノメチョウ亜科の続きをレポートします。
# by fanseab | 2019-01-29 22:05 | | Comments(0)

夜のウラギン越冬個体(1月下旬)

 拙宅近くで見出した首題個体を敢えて夜間に撮影してみました。人通りが少ないとは言え、人家が立ち並ぶ街路での撮影は神経を使います。時折通行人が訝しげな視線を管理人に浴びせながら、通り過ぎていきます。寒さが募る夜、冷や汗をかきながらの撮影になりました(^^;

+++画像はクリックで拡大されます(モニター環境に依存)+++
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EM12-P8,ISO=1250,F3.5-1/15、LED、撮影時刻:21時37分

 いくらボディ内手振れ補正機能が付いているとは言え、1/15sec.では微妙にブレてピンが甘いです(^^;; 昼間の撮影では気づきませんが、彼らはダウンジャケットを身に纏っている訳でもなく、もちろん暖房の効いた室内で越冬しているのでもありません。文字通り裸一貫で、冬を過ごしているのを実感させられます。南国がルーツのウラギンシジミ(Curetis)属は、元来越冬に適した姿形ではありません。ひょっとして数万年後、彼らの子孫はその姿を徐々に変へていくかも・・・。そんなことを想像しながら撮影を終えました。


<2月3日追記>
気温が一気に14℃まで上昇したこの日、上記個体は姿を消しました。
一旦飛び出して、またどこかに塒を変えたのでしょう。
もう少し、春先まで継続観察したかっただけに残念でした。
# by fanseab | 2019-01-26 20:38 | | Comments(2)

越冬ウラギンシジミ(1月下旬)

 前の記事で、「ウラギンシジミの越冬個体を発見できない」と書いた途端、拙宅近くの植え込みでウラギンを発見。まるで、『ここにいるから早く見つけなさい』と呼ばれたような感覚でした。

+++画像はクリックで拡大されます(モニター環境に依存)+++
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EM12-Z12,ISO=200,F8-1/100、外部ストロボ、撮影時刻:14時03分

 ここは南向きですが、日中は全く陽が差し込まない環境。温度変化が少なく、かつ北西季節風を完全にシャットダウンできる理想的な塒かもしれません。実は昨年拙宅のすぐ近くの類似した植え込みで、3個体ほどウラギンの塒があったのですが、いずれも昨年秋に過度な刈込みがなされた結果、この冬は、全く見つからなかったのです。春先まで暫く経過観察する楽しみが増えました。
# by fanseab | 2019-01-20 19:56 | | Comments(0)