探蝶逍遥記

中国四川省成都近郊遠征記:その9

 今回はクロオオムラサキ以外のコムラサキ亜科のご紹介。実はこのポイントにはオオムラサキ(Sasakia charonda coreana)も棲んでいるとされています。しかし、発生時期はクロオオムラサキより早く、5月中旬頃から♂が登場するらしいのです。ですから管理人が訪れた7月中旬に、ひょっとして生き残りの♀がいてくれたら・・・と、儚い思いを抱いておりました。しかし、残念ながら坊主。「オオムラサキ♀がエノキに来て産卵するシーン」を絵コンテに描きながら、エノキの株で待機していると、やって来たのはゴマダラチョウ(Hestina persimilis viridis)の♀でした。

+++画像はクリックで拡大されます(モニター環境に依存)+++
f0090680_9532340.jpg
D71K-34VR(トリミング), ISO=400、F9-1/500、-0.3EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年7月12日、13時21分

 運良く産卵シーンに出会えてラッキーでした。エノキの葉先端に産み付けられた卵も入り、産卵シーンとしてのA級ショット。会心の出来に満足です。日本では幹に産卵するシーンしか撮影経験が無く、葉上への産卵シーンは初体験。二重に嬉しい絵になりました。中国産ゴマダラは日本産(ssp. japonica)とは別亜種になります。中国産亜種viridisの特徴は①前後翅裏面基部が橙色を帯びること。②白班が翅脈に沿って放射状に拡散する傾向にあること、の二点。↑の画像からもこの特徴が良く理解できます。産卵された卵は手元に引き寄せる距離になかったので、拡大撮影は300mmで無理やりトリミングするしかありませんでした。
f0090680_9533895.jpg
D71K-34VR(トリミング), ISO=400、F8-1/500、-0.3EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年7月12日、13時26分

 何とか縦条は分解できましたが、やはりきちんと手元に引き寄せて拡大撮影したかったです。
 2種目は関東地方でもお馴染みになったアカボシゴマダラ(H. assimilis assimilis)♂。
f0090680_9535248.jpg
D71K-34VR, ISO=400、F7.1-1/500、-0.7EV、撮影年月日・時刻:2015年7月11日、16時41分

 輸入元?とされる本家本元のアカボシです。16時頃はクロオオムラサキのテリ張り時間帯と重なりますが、不思議な事にアカボシとクロオオムラサキのバトルは確認できませんでした。最後はケバナミスジコムラサキ(Mimathyma chevana leechii)♂。
f0090680_954949.jpg
D71K-34VR, ISO=320、F8-1/500、-0.3EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年7月12日、15時31分

 玉塁山で目撃したのはこの日のみ。テリ張り位置がクロオオムラサキとは微妙に異なるため、観察があまりできなかったことも事実。裏面がご覧のように銀白色で覆われることがMimathyma属の特徴。実は同属のシロモンコムラサキ(Mimathyma schrenckii laeta)もこのポイントで観察できるはずでしたが、何故か坊主。
 ケバナミスジコムラサキの複眼付近をトリミングして拡大。
f0090680_9542526.jpg
D71K-34VR(トリミング), ISO=320、F8-1/500、-0.3EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年7月12日、15時31分

 こうして見ると、複眼は黄緑色、ストローは黄色で、コムラサキ亜科のDNAを有することが一目瞭然。その後、テリ張り位置を屋根瓦に変えました。
f0090680_9544296.jpg
D71K-34VR(トリミング), ISO=200、F10-1/400、-0.3EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年7月12日、15時36分

 開翅した姿はAthymalimenitis属そっくりで、「ミスジ」の和名由来にも納得です。夜間ライトアップするための灯光器が背景に来たのはご愛嬌でした。世界遺産に登録されると、こんな余計な気配り?も必要になるのでしょう。開翅位置を斜め正面から撮ったのが次のショット。
f0090680_9545729.jpg
D71K-34VR(トリミング), ISO=400、F6.3-1/400、-0.3EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年7月12日、15時40分

 あら不思議!ミスジ模様に青紫色の幻光が出現しました。そう、この子は紛れも無く「コムラサキ」の兄弟なのです。標本画像ではこの青紫色は絶対に出現しないので、管理人も図鑑を眺めながら「chevanaには幻光が出ない」との先入観がありました。ですので、この絵を見た時、凄く興奮しました。やはり標本画像と屋外でみる生きた蝶とは別物の世界ですね。
 更に胴体に着目すると、胸部背面側のフサフサとした毛にも一部青紫色の幻光が確認できます。実に芸の細かい種だと感心いたしました。

 コムラサキ亜科の目撃・撮影種を下記にまとめます。全4種でした。
(1)ゴマダラチョウ(Hestina persimilis viridis
(2)アカボシゴマダラ(H. assimilis assimilis
(3)クロオオムラサキ(Sasakia funebris funebris
(4)ケバナミスジコムラサキ(Mimathyma chevana leechii
<次回へ続く>
# by fanseab | 2018-02-25 09:57 | | Comments(0)

中国四川省成都近郊遠征記:その8

 タテハチョウ科の最後は、コムラサキ亜科。お待たせしました。ようやく真打ち、クロオオムラサキ(Sasakia funebris funebris)に登場してもらいましょう。玉塁山に登った初日、13時頃山頂に着いてヒルトッピングして来る個体を待ちますが、全く姿がありません。こりゃ~坊主か?と一瞬覚悟して一旦山頂から下り、再度山頂付近に戻った15時過ぎ、黒い影が視界をよぎりました。イチョウの葉上に止まった個体をパチリ。これが初ショットになりました。

+++画像はクリックで拡大されます(モニター環境に依存)+++
f0090680_2155581.jpg
D71K-34VR, ISO=200、F11-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年7月11日、15時17分

 良く見ると、前翅はボロボロ(^^; おまけに周囲にエノキ等の広葉樹があるのにイチョウの葉上。イチョウは明らかに人工的な植栽。恐らく遊歩道整備の過程で、樹木を伐採し、その後植えたものでしょう。こうした状況で、中国では土地古来の植物相を復元することなく、安易にポプラやイチョウ等を植えてしまうようです。クロオオムラサキのテリ張り場所はできればエノキやクヌギ類の上であって欲しい・・・、こちらの目論見は見事に外れてしまいました。その後、時間の経過と共に個体数が増加してきましたが、テリ張り位置が変化し、殆どの個体は、人工物の上で睥睨する状況に。こちらは屋根瓦の上に止まった個体。
f0090680_2162140.jpg
D71K-34VR, ISO=400、F8-1/500、-0.3EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年7月11日、15時26分

 この建物、何か歴史的に由緒あるものかと思いきや、どうやら気象観測所のようです。温湿度以外にSOxやNOxなど大気汚染物質のモニターも実施しています。
 次に広角で。
f0090680_2164469.jpg
GX7-Z12, ISO=200、F10-1/50、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年7月11日、16時16分

 この日は土曜日とあって、ゾロゾロ観光客が遊歩道を歩いていきます。そのすぐ傍でこのように悠々とテリ張りを続けています。前翅の翅脈に沿って流れるような白条が墨を流したようで、とても印象的。接近戦でも撮影。
f0090680_2165654.jpg
D71K-34VR, ISO=400、F9-1/320、-0.3EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年7月11日、16時17分

 前後翅基部の真紅の紋、そして複眼も赤!良く見ると複眼の赤色はやや濁っていて、それが余計に迫力を感じさせます。玉塁山での観察後、青城山でもクロオオムラサキを撮影しておりますが、↑でご紹介した♂個体は現地滞在中唯一の完品でした。♂同士のバトルは激しく、直ぐに翅が痛むのは卍バトルするゼフ♂と同じ。鮮度の良い♂を探すのは極めて難しいことを実感しました。翌日、同一個体と思しき♂を対角魚眼で。
f0090680_2172637.jpg
GX7-P8, ISO=200、F14-1/250、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年7月12日、14時47分

 背景に玉塁閣を入れ、いかにも「中国で撮影した」雰囲気が出せて、お気に入りの画像になりました。
 尾根筋の遊歩道沿いには複数の♂がテリ張りをしており、時折、20-30m間隔で城壁を模した壁沿いに並ぶ光景も確認できます。
f0090680_2174092.jpg
D71K-34VR, ISO=640、F13-1/320、-0.3EV、撮影年月日・時刻:2015年7月12日、16時06分

 中央の♂個体の後方、すぐ上に別の♂個体(ボケ画像で失礼!)が確認できます。中央は左側を監視、一方後ろの個体は右側の谷沿いを監視している状況です。当然、この2個体同士でバトルが発生します。しかし、飛翔はとんでもなく敏速で、300mmでジャスピン画像を撮るのは至難の業。ピンボケですが何とか2頭、画面に入った画像をご紹介します。
f0090680_2175825.jpg
D71K-34VR(トリミング), ISO=640、F6.3-4000、-0.3EV、撮影年月日・時刻:2015年7月12日、16時09分

 クロオオムラサキの静止画像を撮影中、面白い事に気が付きました。下の画像をご覧下さい。
f0090680_2181324.jpg
D71K-34VR(トリミング), ISO=200、F6.3-250、-0.3EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年7月12日、14時14分

 ストローの色にご注目あれ。コムラサキ亜科のストローは基本、黄色か橙色。しかしクロオオムラサキは漆黒!更に面白いことにストロー先端はルール通り黄色なのです。造物主たる神様はクロオオムラサキの全身をほぼ漆黒にしたのですが、ストロー先端だけ色を塗り忘れたのだろうか?などと、つまらぬ事を考えてしまったのです。

 飛翔についても何とかジャスピン画像を撮ろうと頑張ってみました。300mmでの飛翔は厳しいので諦め、広角飛翔にトライ。先ずは対角魚眼で。
f0090680_218491.jpg
GX7-P8(トリミング), ISO=400、F3.5-1/4000、撮影年月日・時刻:2015年7月12日、14時30分

 管理人に接近する直前でヒラリと身をかわして逃げるので、射程になかなか入ってくれません。そこで少しでも対象を大きく写し込めることができるように焦点距離が長めの12mmで再チャレンジ。
f0090680_2185960.jpg
GX7-Z12(3コマ合成+トリミング), ISO=400、F5-1/3200、撮影年月日・時刻:2015年7月11日、16時10分

 3コマを合成したので、何とか迫力を出すことができました。このように飛翔中は前翅の白条が良く目立ちます。カラスアゲハやミヤマカラス前翅の白条とよく似ており、実際、初めてクロオオムラサキを目撃した時は、「変な飛び方をする黒系アゲハだな~」と誤認した位です。また、クロオオムラサキ自身も占有空間に入り込んた黒系アゲハを激しく追尾する姿が印象的でした。↑の画像中央下に写りこんでいる中国人は管理人の飛翔撮影風景を面白がって見物しておりました。お蔭様で、背景に人物が入り込んで、広角飛翔画像としては理想的な仕上がりになり感謝です(多謝旅客!)。
<次回へ続く>
# by fanseab | 2018-02-22 21:12 | | Comments(0)

ウラギンシジミの越冬(2月中旬)

 四川省遠征記は一休みして、拙宅ご近所での越冬ウラギンの進捗です。実は2月初旬にギックリ腰をやってしまいました。当初、2-3日で回復すると想定していたものの、何と2週間経過した現在でも、未だ軽い痛みが残っている状況。歳は取りたくないですね(^^; 無理はできませんが、ウラギンなら何とかなるかな・・・と思って撮影。最初はクチナシで越冬している個体。

+++画像はクリックで拡大されます(モニター環境に依存)+++
f0090680_21514366.jpg
EM12-Z60, ISO=200、F8-1/320、撮影時刻:14時17分

 無事越冬中です。住宅街の真ん中であることを意図して、背景に敢えて電信柱を配しました。快晴の青空が綺麗です。オリンパスは空の発色に優れています。「オリンパスブルー」なる誉め言葉もあるようで・・・。青空の発色について、RAW現像でも一切レタッチが要らないのが美点の一つ。次はサザンカでの越冬個体。こちらは真紅のサザンカが見事な花弁を付け始めましたが、ウラギンとのツーショットが難しい状況。
f0090680_21523392.jpg
EM12-Z60(自動深度合成+トリミング), ISO=200、F10-1/100、撮影時刻:14時47分

 ウラギン(矢印)の近くに花弁が付いておらず、ガックリ(^^; 仕方なく、ウラギンの背後に咲く真紅の花を無理やり入れての作画。
f0090680_21524970.jpg
EM12-Z60, ISO=200、F11-1/250、撮影時刻:14時45分

 これから気温が15℃を越える日が来ると、そろそろ越冬場所を離れるかもしれません。その頃までには、こちらも腰痛を完治したいものです。
# by fanseab | 2018-02-19 21:53 | | Comments(4)