人気ブログランキング | 話題のタグを見る

探蝶逍遥記

ヤマトシジミの飼育メモ

 本年実施した飼育シリーズの第3弾。今回はヤマトシジミ。ヤマトのような「ド普通種」の飼育はつい後回しになってしまうものです。幸か不幸か、コロナ禍で遠出を控えた今年ならでしょうか、じっくりと観察してみました。なお、紹介画像に用いた個体は齢毎に異なります。

 先ずは孵化直後の初齢幼虫。

+++画像はクリックで拡大されます(モニター環境に依存)+++

ヤマトシジミの飼育メモ_f0090680_20263886.jpg
EM12-Z60(4コマ深度合成+トリミング)ISO=250,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:827

 体長0.8mm。体毛が非常に長いですね。近くに孵化した卵殻が見えています。卵殻は殆ど食べずに残っています。幼虫の真下に食痕が見えています。初齢ではカタバミ葉裏を「舐め食い」していきます。初齢2日後、眠状態に入った幼虫の姿もご紹介しましょう。

ヤマトシジミの飼育メモ_f0090680_20264677.jpg
EM12-Z60(上段のみ4コマ深度合成+トリミング)ISO=400,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:829

 体長は1.5mm。初齢幼虫は本当に小さく、ルーペを用いても居場所を見失いがちで苦労します。胴体部が成長して、体毛長さも相対的に短くなりました。初齢時の食痕もアップしておきます。

ヤマトシジミの飼育メモ_f0090680_20271126.jpg
EM12-Z60(8コマ深度合成+トリミング)ISO=320,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:829

 ヤマトシジミの幼生期は基本的に葉裏生活者(矢印が幼虫)。カタバミの葉裏を舐め食いし、半透明になっています。その食痕部上、黒い点列が初齢幼虫の糞。糞の水分はかなり多めで複数の糞が列状になって、まるで「天の橋立」のような独特な様相です。

個体によりますが孵化3-4日後に2齢になりました。

ヤマトシジミの飼育メモ_f0090680_20274629.jpg
EM12-Z60(上段9コマ/下段4コマ深度合成+トリミング)ISO=320,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:913

 体長3.4mm。初齢では胴体に透明感が残っていましたが、2齢後半で不透明状態に。2齢時の食痕も示します。

ヤマトシジミの飼育メモ_f0090680_20275946.jpg
EM12-Z60(7コマ深度合成+トリミング)ISO=320,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:911

 基本的に初齢と同じ。糞の直径は大きくなりますが、未だ水分が多く、点列状に残りやすい状態。2齢段階は3-4日。次に3齢幼虫です。

ヤマトシジミの飼育メモ_f0090680_20281454.jpg
EM12-Z60(上段6コマ/下段4コマ深度合成+トリミング)ISO=320,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:93

 体長4.5mm。体形が扁平状のいわゆる「わらじ虫」スタイルになりました。また背線に沿って各腹節に「八の字」模様が出現しました。シジミチョウ幼虫に特有の斑紋パターンですね。八の字は頭部側から腹端部にかけて末広がりに拡がるパターンなので、幼虫の頭部がどちらにあるか、このパターンから直ぐに判断できます。それと第7腹節にある蜜腺(矢印)など好蟻性器官も明瞭になりました。3齢期は3-5日。次に4齢(終齢)です。

ヤマトシジミの飼育メモ_f0090680_20282833.jpg
EM12-Z60(上段のみ10コマ深度合成+トリミング)ISO=320,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:918

 体長9mm。カタバミの葉によく紛れた保護色になっています。なお3齢より糞の水分量が減少し、個々の糞が分離するようになり、点列状にはなりません。糞の性状からも、2齢と3齢の区別が可能です。4齢時の食痕も示します。

ヤマトシジミの飼育メモ_f0090680_20290026.jpg
EM12-Z60(7コマ深度合成+トリミング)ISO=250,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:97

 3齢段階から「舐め食い」を卒業し、普通に葉全体を食べるようになります。終齢到達4-5日後に前蛹に。

ヤマトシジミの飼育メモ_f0090680_20292636.jpg
EM12-Z60(上段10コマ/下段11コマ深度合成+トリミング)ISO=250,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:910

 体長8mm。カタバミ茎分岐部付近を好んで前蛹態勢になるようです。次いで蛹。

ヤマトシジミの飼育メモ_f0090680_20294056.jpg
EM12-Z60(上段6コマ/下段10コマ深度合成+トリミング)ISO=320,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:912

 体長8.5mm。黒小斑は非常に少ない感じ。ここで今回飼育した3個体、および2013年に飼育した1個体、合計4個体の蛹側面像を比較してみました。

ヤマトシジミの飼育メモ_f0090680_20295649.jpg

 御覧のように、黒小斑の分布には相当個体変異があるようです。個体#3と個体#2013-1ではまるで別種蛹のように感じられます。但し、矢印で示した2個の黒点は4個体に共通しているので、これはヤマト蛹に固有の形質なのかもしれません。個体#3916日に翅部分が白化。18日朝には翅部分が透けて翅模様がくっきりとしました。

ヤマトシジミの飼育メモ_f0090680_20301743.jpg
EM12-Z60(上段6コマ/下段5コマ深度合成+トリミング)ISO=320,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:918

♂もしくは綺麗な青であることが分かります。1109分頃、が羽化しました。


ヤマトシジミの飼育メモ_f0090680_16215673.jpg
EM12-Z60(トリミング)ISO=400,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日・時刻:918日・1110

 羽化直後は翅展開に適した場所を探してウロチョロ結構早いスピードで動き回るので、意外と撮影に苦労します。やっと落ち着いて翅を伸ばす連続画像です。

ヤマトシジミの飼育メモ_f0090680_16220300.jpg
EM12-Z60(トリミング)ISO=400,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日・時刻:918日・1111分~16

 蛹から脱出して僅か5分ほどで翅がほぼ展開し終わりました。午後2時過ぎ、生憎の雨模様でしたが、屋外で飛ばして飛翔画像も撮りました。

ヤマトシジミの飼育メモ_f0090680_20311048.jpg
EM12-Z60(トリミング)ISO=2500,F3.2-1/2500、撮影月日・時刻:918

 前後翅外縁の黒い縁取りは、シルビアシジミを彷彿とさせますね。もちろんシルビアのブルーとは色合いが全く異なりますが・・・。綺麗な青が羽化したので、残りの飼育個体はが出たらいいなぁ~と期待したものの、残りの2個体は漆黒の(^^; ♂が羽化したので、次は青♀を期待したのですが、残りの2個体は漆黒の♀。なかなか思い通りにはいきません。飼育での「産み分け」は難しいものです(^^)


<11月30日追記>

 読者の方からのご指摘で、羽化個体は♀ではなく、♂でした(^^;; 該当部分を修正しておきました。また、飼育時に♂♀個体の前脚附節付近の拡大像を撮影しておりましたので、下記にアップしておきます。左の♂は羽化直画像で示した個体#3、右は個体#6の♀。♂♀附節の分節構造差を確認できます。


ヤマトシジミの飼育メモ_f0090680_16193505.jpg

by fanseab | 2021-11-28 20:42 | | Comments(0)
名前
URL
削除用パスワード