ヤマトシジミの飼育メモ
本年実施した飼育シリーズの第3弾。今回はヤマトシジミ。ヤマトのような「ド普通種」の飼育はつい後回しになってしまうものです。幸か不幸か、コロナ禍で遠出を控えた今年ならでしょうか、じっくりと観察してみました。なお、紹介画像に用いた個体は齢毎に異なります。
先ずは孵化直後の初齢幼虫。
+++画像はクリックで拡大されます(モニター環境に依存)+++
体長0.8mm。体毛が非常に長いですね。近くに孵化した卵殻が見えています。卵殻は殆ど食べずに残っています。幼虫の真下に食痕が見えています。初齢ではカタバミ葉裏を「舐め食い」していきます。初齢2日後、眠状態に入った幼虫の姿もご紹介しましょう。
体長は1.5mm。初齢幼虫は本当に小さく、ルーペを用いても居場所を見失いがちで苦労します。胴体部が成長して、体毛長さも相対的に短くなりました。初齢時の食痕もアップしておきます。
ヤマトシジミの幼生期は基本的に葉裏生活者(矢印が幼虫)。カタバミの葉裏を舐め食いし、半透明になっています。その食痕部上、黒い点列が初齢幼虫の糞。糞の水分はかなり多めで複数の糞が列状になって、まるで「天の橋立」のような独特な様相です。
個体によりますが孵化3-4日後に2齢になりました。
体長3.4mm。初齢では胴体に透明感が残っていましたが、2齢後半で不透明状態に。2齢時の食痕も示します。
基本的に初齢と同じ。糞の直径は大きくなりますが、未だ水分が多く、点列状に残りやすい状態。2齢段階は3-4日。次に3齢幼虫です。
体長4.5mm。体形が扁平状のいわゆる「わらじ虫」スタイルになりました。また背線に沿って各腹節に「八の字」模様が出現しました。シジミチョウ幼虫に特有の斑紋パターンですね。八の字は頭部側から腹端部にかけて末広がりに拡がるパターンなので、幼虫の頭部がどちらにあるか、このパターンから直ぐに判断できます。それと第7腹節にある蜜腺(矢印)など好蟻性器官も明瞭になりました。3齢期は3-5日。次に4齢(終齢)です。
体長9mm。カタバミの葉によく紛れた保護色になっています。なお3齢より糞の水分量が減少し、個々の糞が分離するようになり、点列状にはなりません。糞の性状からも、2齢と3齢の区別が可能です。4齢時の食痕も示します。
3齢段階から「舐め食い」を卒業し、普通に葉全体を食べるようになります。終齢到達4-5日後に前蛹に。
体長8mm。カタバミ茎分岐部付近を好んで前蛹態勢になるようです。次いで蛹。
体長8.5mm。黒小斑は非常に少ない感じ。ここで今回飼育した3個体、および2013年に飼育した1個体、合計4個体の蛹側面像を比較してみました。
御覧のように、黒小斑の分布には相当個体変異があるようです。個体#3と個体#2013-1ではまるで別種蛹のように感じられます。但し、矢印で示した2個の黒点は4個体に共通しているので、これはヤマト蛹に固有の形質なのかもしれません。個体#3は9月16日に翅部分が白化。18日朝には翅部分が透けて翅模様がくっきりとしました。
♂もしくは綺麗な青♀であることが分かります。11時09分頃、♂が羽化しました。
羽化直後は翅展開に適した場所を探してウロチョロ結構早いスピードで動き回るので、意外と撮影に苦労します。やっと落ち着いて翅を伸ばす連続画像です。
蛹から脱出して僅か5分ほどで翅がほぼ展開し終わりました。午後2時過ぎ、生憎の雨模様でしたが、屋外で飛ばして飛翔画像も撮りました。
前後翅外縁の黒い縁取りは、シルビアシジミ♂を彷彿とさせますね。もちろんシルビア♂のブルーとは色合いが全く異なりますが・・・。綺麗な青♀が羽化したので、残りの飼育個体は♂が出たらいいなぁ~と期待したものの、残りの2個体は漆黒の♀(^^; ♂が羽化したので、次は青♀を期待したのですが、残りの2個体は漆黒の♀。なかなか思い通りにはいきません。飼育での「産み分け」は難しいものです(^^)
<11月30日追記>
読者の方からのご指摘で、羽化個体は♀ではなく、♂でした(^^;; 該当部分を修正しておきました。また、飼育時に♂♀個体の前脚附節付近の拡大像を撮影しておりましたので、下記にアップしておきます。左の♂は羽化直画像で示した個体#3、右は個体#6の♀。♂♀附節の分節構造差を確認できます。