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探蝶逍遥記

スジグロシロチョウの飼育メモ

 7月26日の記事(外部リンク)で首題種産卵シーンをご紹介しました。その際、卵を拙宅に持ち帰り、フルステージ飼育を実施しましたので、記録として残します。
 
 7月18日に2卵より孵化を確認。通常ですと、同一個体を追跡調査・撮影するのですが、撮影時に幼虫が静止していない状況も多く、図示した画像は齢数により別個体を使用していることを付記します。なお、餌は産附されたイヌガラシよりも入手が容易な帰化植物、マメグンバイナズナ(Lepidium virginicum )を使用しました。初齢幼虫です。

+++画像は原則クリックで拡大されます+++
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D71K-1855改@45mm(上段5コマ/下段4コマ深度合成+トリミング),ISO=100、F11-1/250、-1.0EV、内蔵ストロボ+スレーブ2灯、撮影月日:7月22日

 体長は2.8mm。体全体に透明感があり、体毛は頭部を除き透明。頭部のみ黒色長毛が生えています。7月23日に2齢へ。
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D71K-1855改@35mm(上段4コマ/下段2コマ深度合成+トリミング),ISO=100、F10-1/250、-1.0EV、内蔵ストロボ+スレーブ2灯、撮影月日:7月25日

 体長は5.9mm。頭部含め透明感がやや消失し、体毛の密度も増加。黒色毛も出現しています。2齢での幼虫摂食状況もアップします。
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D71K-1855改@35mm(3コマ深度合成),ISO=100、F10-1/250、-1.0EV、内蔵ストロボ+スレーブ2灯、撮影月日:7月25日

 画面下部に初齢幼虫時の頭殻が茎の上に付着しております。27日に眠、翌28日3齢へ。
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D71K-1855改@35mm(5コマ深度合成+トリミング),ISO=100、F10-1/250、-1.0EV、内蔵ストロボ+スレーブ2灯、撮影月日:7月25日

 体長10.8mm。なお、撮影個体は初齢・2齢とは別個体で7月24日、3齢到達。体の透明感が完全になくなっています。頭部には白色長毛が生え、胸部・腹節全体に黒色毛穴(実際には突起)が目立つようになります。体毛はよく見ると、長毛と短毛から成っていて、長毛先端には球形の「飾り」が付いています。シロチョウ若齢幼虫でよく見る構造ですが、この「飾り」は一体どんな生態的機能を有しているのでしょうか? 7月30日前後に4齢になった模様。ここでは3齢と同一個体の画像を示します。この子は26日に4齢に到達しております。
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D71K-1855改@24mm(上段7コマ/下段8コマ深度合成+トリミング),ISO=100、F10-1/250、-1.0EV、内蔵ストロボ+スレーブ2灯、撮影月日:7月27日

 体長15.2mm。頭部が黄色から黄緑色に変化。側面から見ると気門周囲に淡い黄色環が出現しました。3齢に比較して、気門下から脚部にかけての長毛が大変目立ちます。8月1日前後に5齢(終齢)に到達。
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D71K-85VR(2コマ深度合成+トリミング),ISO=100、F10-1/250、-1.0EV、外部ストロボ、撮影月日:8月3日

 体長27mm。全体的な特徴は4齢と大差ありません。但し、側面画像で示したように、気門を囲む黄色班(黄色環)は顕著に目立ちます。気門の存在しない中胸・後胸部には黄色環が出現しないのが特徴。
 今回の飼育目的として、同属のモンシロチョウ幼生期との形態的差異を確認することがありました。そこで、同時並行して飼育したモンシロチョウ終齢幼虫と背面・側面の一部を拡大して比較してみました。
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 両種の外観・形質的差異を列挙・比較します。
(1)背線
 幼虫の背部中央を通る線(背線)は、スジグロでは確認できず、モンシロでは淡黄色線が比較的明瞭。モンシロでは各腹節の境界線にも淡黄色線が出現。
(2)体毛
 幼虫胴体の太さに比較した相対的長さはスジグロ>モンシロ。
(3)体毛基部隆起
 幼虫表面の毛が生えている起点は毛穴のように見えますが、実際には突起になっています。体毛基部隆起には黒色(濃緑色にも見える)と白色があり、黒色隆起の散布密度はモンシロ>スジグロ。但し、各隆起の高さ(基部直径)はスジグロ>モンシロ。モンシロの隆起は低い分、濃緑色に見えます。従って、隆起が高いスジグロ終齢幼虫の方が全般に黒ずんで見えます。なお、黒色隆起から生えている体毛は透明もしくは白色で、逆に白色隆起から生えている体毛は黒色です。一見、「黒色隆起数=黒色毛数」と誤解しそうですが、事実は異なります。
(4)気門の色
 スジグロは黒褐色、モンシロはベージュ色。
(5)気門周辺の黄色班
 スジグロでは気門と同心円状に黄色環が囲む。この黄色環は中胸・後胸部ではほぼ消失する。一方、モンシロでは気門周辺に合計2個の黄色班が並ぶ。気門が存在しない中胸・後胸部にも各1個の明瞭な黄色班が出現する。

 以上、(1)~(5)の識別点で、一番簡便な判定法は(5)でしょう。気門周辺の黄色班の配置を見れば両種終齢幼虫を一発判定可能だと思います。なお、スジグロの兄弟種、ヤマトおよびエゾスジグロでは当該黄色班が少し縮退するようですが、その確認は管理人にとって今後の課題です。ブログ仲間のtef_teffさんも調査中(外部リンク)でして、その後の調査結果も気になるところです。

 さて、8月5日に前蛹になりました。
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D71K-85VR(4コマ深度合成+トリミング),ISO=100、F10-1/250、-1.0EV、外部ストロボ、撮影月日:8月5日

 体長18mm。有難いことにマメグンバイナズナの茎で蛹化準備してくれたので、絵になります(^^) 同日夜蛹化を確認。
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D71K-85VR(左5コマ/右4コマ深度合成+トリミング),ISO=100、F10-1/250、-1.0EV、外部ストロボ、撮影月日:8月6日

 体長18mm。褐色型の蛹です。背面(右画像)から見込むととてもスリムな印象です。なお、別個体は8月3日に蛹化済で、こちらは緑化型でした。比較して示します。
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右画像のみ:D71K-85VR(5コマ深度合成+トリミング),ISO=100、F10-1/250、-1.0EV、外部ストロボ、撮影月日:8月3日

 同じマメグンバイナズナの茎に蛹化しており、周囲の環境はほぼ同一ですが、一方は褐色型、他方は緑色型になりました。面白いですね。ついでにモンシロチョウ蛹との比較画像も示しておきましょう。
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右画像のみ:D71K-85VR(4コマ深度合成+トリミング),ISO=100、F10-1/250、-1.0EV、外部ストロボ、撮影月日:8月6日

 体長差は個体差だと思います。背面突起は明らかにスジグロで顕著に突き出しています。背面部から覗いた画像は省略しておりますが、明らかにモンシロの方がメタボ体型をしております。なお、飼育した2個体共、モンシロは飼育容器の壁に蛹化しました。マメグンバイナズナ茎のような細い支持体よりも、平面状支持体を好むのでしょうかね。
 さて、8月12日より、蛹の翅面が少し黄ばみ始め、13日に翅模様がはっきりし、腹節も緩んで羽化直前の様相を呈してきました。
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D71K-85VR(3コマ深度合成+トリミング),ISO=100、F10-1/250、-1.0EV、外部ストロボ、撮影月日・時刻:8月13日、8時29分

 前翅黒色斑紋から明らかに♀であることが確信できました。今度こそ羽化の瞬間を捉えたいと思い、我慢してこの子と睨めっこを・・・・・。すると何とか管理人の想いが通じたのか、無事羽化瞬間に立ち会うことができました。連続画像をアップします。
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D71K-85VR(トリミング),ISO=100、F10-1/50~1/250、-1.0EV、外部ストロボ、撮影月日・時刻:8月13日、9時50分48秒~10時06分12秒

 頭殻部が割れてから、体全体が抜け出すのに要した時間は僅か1分弱。よほど粘るか運が良くないと羽化瞬間に立ち会えないことがよく理解できます。それにしても2コマ目、後翅裏面の鮮やかな黄橙色には痺れます。クモマツマキを彷彿とさせる色合いではないでしょうか。こうしてスジグロのフルステージ飼育は最後の羽化瞬間まで見届けることが出来て無事終了いたしました。
by fanseab | 2016-09-04 18:40 | | Comments(0)
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