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探蝶逍遥記

ツシマウラボシシジミの卵(10月上旬)

 ツシマウラボシシジミ(Pithecops fulgens tsushimanus)はご存じの通り、国内では対馬にのみ生息していた可憐なシジミチョウですが、現在はほぼ絶滅状態にあり、国内産チョウ類で最も存亡の危機に直面している種と言えます。今回、知人のN氏の特別のご厚意により国内某所で飼育管理されている本種卵の拡大撮影をする機会を得ましたので、その画像をご紹介することにします。
 母蝶はマメ科のヌスビトハギ類に産卵します。今回撮影したのもヌスビトハギ鞘上の卵です。

+++画像はクリックで拡大されます+++
ツシマウラボシシジミの卵(10月上旬)_f0090680_215207.jpg
GX7-P1442@42mm-P14R(トリミング+上:6コマ/下:4コマ深度合成)、ISO=200、F16-1/250、内蔵ストロボ(トリガー信号のみ)+スレーブ2灯

 直径は0.60mm、高さ0.36mm。ヒメシジミ族の卵はほぼ扁平な饅頭型が殆どですが、本種の卵は丁度コマのように底部がすり鉢型をしているのが特徴。扁平型の方が産卵対象物表面との接触面積が大で卵接着強度に有利に働くはずなのに、敢えて点接触に近い卵構造を有しているのは何故なのか? 解明してみたいテーマでもあります。また表面は網目模様の彫刻があるのですけど、まるでベニシジミのように粗い構造が目立ちます。ここで、管理人がこれまで撮影してきたヒメシジミ族の他種;ヤクシマルリシジミ、クロツバメシジミ、ヒメシジミの3種と卵拡大像の比較をしてみました(スケールが同一になるよう各画像の拡大率を調整)。
ツシマウラボシシジミの卵(10月上旬)_f0090680_2152438.jpg


 成虫のサイズを考慮すると、ツシマウラボシの卵直径は結構大きく、網目構造が比較対象の3種とは大きく異なることが理解できます。未撮影ですが、恐らく同属のリュウキュウウラボシシジミ(P. corvus)の卵もツシマウラボシと同様な構造特徴を呈するのだと思います。東南アジア遠征で撮影機会があればトライしてみたいと思っております。
by fanseab | 2014-10-27 21:55 | | Comments(14)
Commented by 6422j-nozomu2 at 2014-10-28 13:24
これは、流石にコメントしたくなりました。ツシマウラボシシジミは、日本産蝶の中で、最も絶滅の危機に直面している種類です。
数年前には観察出来たそうですが、今では、1日中歩いても観察出来ないと思います。既に絶滅している可能性もあるようです。
そうですか、N氏と顔見知りなんですか。某所で秘密裡に飼育されているとは知りませんでした。
N氏他の皆さんの努力により、一杯増えてほしいです。
Commented by dragonbutter at 2014-10-28 19:59
ツシマウラボシの卵、撮れてよかったですね。
突起が目立つユニークな卵ですね。
早くフィールドで出会える日が来るといいのですが。
以前クロツの卵を見た時、やけに小さいなあ、と感じたのですが、上の写真を見るとその印象が間違っていなかったと感じます。
Commented by himeoo27 at 2014-10-28 20:22
ツシマウラボシの卵は、他のシジミチョウとは
かなり違う形状なんですね!
来年に西表島でリュウキュウウラボシの卵探し
を行ってみたくなりました。
Commented by fanseab at 2014-10-28 21:25 x
ノゾピーさん、いつか対馬に行こうと思っているうちに撮影対象のツシマウラボシは危機的状況になってしまいました。思い立った時に撮影しないと駄目ですね。他の国内貴重種もツシマウラボシの二の舞にならないよう十分注意する必要がありますね。
Commented by fanseab at 2014-10-28 21:28 x
dragonbutterさん、色々な種類で拡大撮影をしているので、ファインダーを見た瞬間にツシマウラボシ卵の特徴に驚きました。この蝶の衰亡には鹿の個体数激増が大きく関与しています。鹿個体数抑制の具体的な方策を取らないと根本解決にはならないのが悩ましいです。
Commented by fanseab at 2014-10-28 21:31 x
himeooさん、ご指摘の通り、シジミチョウの中でも相当特徴のある構造をしています。リュウキュウウラボシ是非拡大撮影にチャレンジしてみてください。
それにしてもコメント欄の入力方法が変わってビックリしました。
Commented by banyan10 at 2014-10-29 19:16
ツシマウラボシの卵は独特の形状なのですね。
僕もいつか成虫と共に撮影機会があれば良いのですが難しいかもしれませんね。
何とか数を増やしてもらいたいです。
Commented by fanseab at 2014-10-29 21:24 x
BANYANさん、卵の襞模様も断面構造も極めて独特なので、ビックリしました。やはり屋外フィールドでの成虫・卵撮影をしたいものです。ツシマウラボシ以外の蝶でも急速に個体数が減りそうな種は、いつか撮れるだろうと思っていると、撮影機会を永遠に逃してしまうリスクがありますね。何とか野外繁殖が成功してほしいものです。
Commented by clossiana at 2014-10-30 08:34
絶滅に瀕している(自然状態では絶滅した?)要因がシカの食害であるという点がやりきれないですね。里山の崩壊→シカが増える→ヌスビトハギへの食害→ツシマウラボシの絶滅寸前
この負のスパイラルから、どうやって抜け出すかが課題でしょうが、すぐに名案が浮かぶ筈も無く、そうこうするうちに本当にいなくなってしまうのでしょうね。残念です。
Commented by fanseab at 2014-10-30 22:24 x
clossianaさん、仰る通り、シカの食害はツシマウラボシに対してだけでなく、植物相を含めた最悪の環境破壊の一因になっています。先ずは鳥獣保護法・狩猟法を鹿の駆除に絞って法令を改正し、関連法規制を実施すると共に国が予算化して狩った鹿を買い取る仕組みが必要だと思います。ツシマウラボシは生息地の環境を昔の状態に復帰させるまで、命脈が保つのか?厳しい戦いが続きますね。
Commented by ダンダラ at 2014-10-30 22:45 x
ツシマウラボシ、撮影に行こうと思った年に、数が少なくて難しいということで断念してしまいました。
それでも野外で見るチャンスがあったのに…
いつか復活してもらいたいものです。
卵の形状は独特で面白いですね。
Commented by fanseab at 2014-10-31 22:03 x
ダンダラさん、「いつかは撮れる」と安心して先延ばしにすると、永遠に撮影できないこともありますね。野外での復活期待したいです。対馬以外でも生息環境に適する場所はありそうですが・・・。卵の微構造は独特で驚きました。
Commented by Sippo5655 at 2014-11-01 20:55
なんとか絶滅の危機から救ってあげたいですね。
卵、神々しいくらいの美しさですね。
おかあさん蝶 想いを託して
懸命に産んだのでしょうね。
Commented by fanseab at 2014-11-01 21:41 x
Sippo5655さん、何とか対馬から消滅することだけは避けたいですね。ただ生活史も含めた生態の詳細は意外と調べられておらず、絶滅に瀕した状態に至って初めて明らかになった事実も色々あるようです。母蝶の生態もよく理解していないと人工繁殖も上手く運ばないし、難しいものです。この卵、どうやら無精卵の可能性もあります。懸命に産んでいるのだけれど、孵化できないケースが多いのかもしれません。
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