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探蝶逍遥記

静岡県のキリシマミドリシジミ探索(7月30日)

 先日の鈴鹿探索はのんびりと蝶影を追うリラックススタイルでしたが、関東近辺で何とか姿を見たいものだと思い、午前4時起床で少し気合を入れての出陣です。

 キリシマの分布東限は神奈川県丹沢山塊とされ、そのすぐ西隣の箱根は採卵で昔から大変有名です。更に西側、つまり静岡県にも広く分布しているとされています。管理人は昨年からボチボチ当該地域での探索を始めておりまして、今回は計5箇所の候補ポイントを訪問しました。例によって、1/25000地図と衛星画像を睨みながら、候補地点を絞り込んでいきます。この作業が一番面白くて時の経つのを忘れます。衛星画像の分解能は驚くべきもので、例えばムモンアカシジミの発生木を画像から確認することもできます(もちろん、個体発見後の後付け確認ですけど)。キリシマの場合は食樹であるアカガシの分布をどうやって探り当てるか?が重要です。幸い、慣れてくると衛星画像から針葉樹と広葉樹の樹相は区別付くようになります。これに比較すると、1/25000の地図情報はかなりファジーでして、先ずは美味しそうな地形を地図で探し、次に衛星画像で広葉樹の分布を確認し、ここにアクセスするための林道の分布を考慮して、候補地点を決めていくのです。上記手法で候補ポイント(A、B~Eポイント)を絞り込み、順番に巡ってみることにしました。

 先ずはAポイント。「美味しそう」と睨んだ渓谷に到着。♂や♀が好みそうなアカガシの高木を探します。そうして1本の候補樹を発見。7時過ぎ、♂が飛び初めました。睨んだ候補樹で♂が飛んでくれた時の喜び、これが新規ポイント探索の醍醐味です。まぁ、しかし、鈴鹿と同様、飛んではいますが、観察地点からは30m以上あります。近場から観察できる場所はないかと30分近くウロチョロしますが、渓谷の崖地を降りる勇気もなくすぐに探索を諦めました。そこで割り切って元の観察地点に戻っての撮影です。最初は300mmでの飛翔。                                                                     ++横位置画像はクリックで拡大されます++
静岡県のキリシマミドリシジミ探索(7月30日)_f0090680_22561417.jpg
D7K-34(トリミング)、ISO=1000、F4-1/3200、-1.0EV、撮影時刻:7時26分
静岡県のキリシマミドリシジミ探索(7月30日)_f0090680_2256329.jpg
D7K-34(トリミング)、ISO=1000、F4-1/3200、-1.0EV、撮影時刻:7時26分
静岡県のキリシマミドリシジミ探索(7月30日)_f0090680_22564441.jpg
D7K-34(トリミング)、ISO=1250、F4-1/4000、-1.0EV、撮影時刻:8時11分

 1枚目は初めて後翅肛角部の橙色班が認識できるファーストショットです。例によって、無茶苦茶トリミングして、画像処理かけまくり画像ですが、何とかキリシマらしく仕上がりました。2枚目は今回のと言うか、これまで管理人が撮影した中では一番キリシマ飛翔の雰囲気が出たベストショットです。3枚目は見た目に近い輝きを見せています。実際は裏面銀白色と交互にフラッシングするイメージですが、静止画像でその雰囲気を出すのは無理ですね。

 飛翔していた♂が忽然と消え、どこに行っちまったのかと探していると、アカガシの中央付近に何か輝く光点が。単眼鏡で確認して見ると、テリ張り開翅をしている個体の姿でした。陽射しが目まぐるしく変わったこの日、彼らも照度に応じて翅を開閉し、都度異なる輝きを楽しむことができました。
静岡県のキリシマミドリシジミ探索(7月30日)_f0090680_22571427.jpg
D7K-34(トリミング)、ISO=500、F9-1/200、-1.0EV、外部ストロボ、撮影時刻:7時56分
静岡県のキリシマミドリシジミ探索(7月30日)_f0090680_22572979.jpg
D7K-34(トリミング)、ISO=500、F6.3-1/500、-1.7EV、撮影時刻:8時02分
静岡県のキリシマミドリシジミ探索(7月30日)_f0090680_22574677.jpg
D7K-34(トリミング)、ISO=500、F4-1/4000、-1.0EV、外部ストロボ、撮影時刻:8時27分

 1枚目は半開翅のポーズ、日差しが強くなるとすぐにこんな開翅角度になります。距離が遠く、豆粒みたいな大きさですが、流石キリシマと言える輝きを見せています。2枚目は全開ポーズ。飛翔中に魅せる輝きの記憶色に最も似た色合いかもしれません。最後は半開~全開の途中に見せる輝き。前翅は全開時とそれほど変化ないですが、後翅がいかにもCrysoらしい金緑色に輝いています。実は鈴鹿で過去に撮影した画像をチェックしてみましたが、このアングルからの絵はなく、遠目ながらもお気に入りの輝きが得られたと思います。しかし、それにしても、相手が遠かったですね。ぶっちゃけ、デジスコで撮るべき距離でした。それにこのアカガシで見られた♂は恐らく撮影した1頭のみだったと思います。大きなアカガシで数頭のバトルになるのが普通なのに、贅沢にもこの♂はこのアカガシ高木を1頭で占有していたことになります。事実上、ライバルがいなかったせいか、一旦開翅日光浴状態になると、これまで鈴鹿で観察してきた個体とは桁違いに長時間開翅状態が続きました。なにせ、敵がいないので、スクランブル発進する必要がありませんからね。

 さて、300mmで撮影した飛翔画像をパソコンでチェックし、不要な没画像をどんどん消去する過程で、PC画面の片隅に紫色がチラッと確認できました。「うん、何か変?」と思ってピクセル等倍レベルに拡大すると、「ムムッ、キリシマの♀!!?」
静岡県のキリシマミドリシジミ探索(7月30日)_f0090680_2258582.jpg
D7K-34(トリミング)、ISO=1000、F4-1/3200、-1.0EV、撮影時刻:7時26分

 カシ類ですから、可能性としてはムラサキツバメ♀もあり得ますが、①前翅藍色班の形状がムラツとは異なる、②後翅縁毛に白色の縁取りらしきものが確認できる。ことから、キリシマの♀ではないかと思っています。そうだとすると、必死に♂が探♀飛翔をしているのを後目に、木陰で悠々と開翅をしていたのでしょう。「♂が占有活動をするアカガシには必ず♀がいる」鉄則があるようで、どうやらそのことが証明されたようです。撮る目的でなく撮影した背景になにげなく写ったキリシマ♀? こんな想定外の出会いがあるのも「撮り屋」のロマンではないかと・・・、心霊写真のような絵ですが、実は今回遠征で一番お気に入りの画像になりました。

 9時過ぎ、急に雨雲が谷筋に降りて来ました。おまけに遠くで雷鳴が轟き始めたので、すぐにAポイントより退散。少し標高を下げたBポイントとCポイントでも美味しそうなアカガシを数本発見。しかし、キリシマの姿はなし。ここから少し離れたD,E両ポイントは想像した以上にアカガシが生えてなくて敗退です。個体数が多いポイントでは、テリ張りに敗れた♂個体が低い位置に降りてきて開翅するチャンスもあります。かつて鈴鹿で経験した経験則です。しかし、今回のAポイントはあまりにも個体数が少なく、そんなチャンスも皆無でした。次なる候補地点としてもう少し、個体数の望める場所を是非とも探し当てたいものです。それはともかくとして、今回、管理人として静岡県産初ラベル?画像を撮ることができて何よりでした。
by fanseab | 2011-07-31 23:03 | | Comments(14)
Commented by yoda-1 at 2011-08-01 12:51
キリシマの数数の画像、素晴らしいです。
他力本願でなくて、自力でそのポイントを探索できる技量に感服です。
最後の画像ですが、ムラサキツバメはもっと奥までブルーエリアが伸びるので、キリシマ雌の方に一票です。
Commented by nomusan at 2011-08-01 20:06 x
素晴らしいです。
まずは、地形図からのポイント探し。流石ですね。
あてたときの感激はいかばかりかと推察致します。
素晴らしいです。
何で、こんな飛翔画像が撮れるんだろう・・・。
ただただ、ええもん見させて頂きました。だけでございます。
当たり前で、失礼を承知ですが、キリシマらしい画像ですねぇ~。
Commented by banyan10 at 2011-08-01 20:57
うーん、僕が5年くらいかかった成果を一日で超された感じです。(^^;
土曜は微妙な予報と遠征疲れで見送りましたが、出かければ良かったのですね。
Commented by himeoo27 at 2011-08-01 21:38
撮影が難しいので有名な「キリシマミドリ」を上手くとらえて綺麗に撮られてますね!2、3番目の飛んでいるところが大好きです。
Commented by 6422j-nozomu2 at 2011-08-01 22:14
かなり苦労されているご様子が目に浮かびます。でも、自ら衛星画像を見ながら、新ポイントを開拓するとは、素晴らしいと思います。ちゃんと雄雌開翅を成功されている。脱帽です。
Commented by naoggio at 2011-08-01 22:35 x
新規開拓の熱意とポイント発見の実行力、素晴らしいです。
私など既知のポイントに出かけて行っても証拠写真程度でした。
それにしてもキリシマの輝きは別格ですね。しかも飛翔を捉えられるとは驚く他ありません。奇麗です !
是非また会いに行きたくなりました。あの蝶は飛んでいるのを見るだけでも素晴らしいですし。
Commented by fanseab at 2011-08-02 22:22 x
yoda-1さん、コメント有難うございます。
キリシマの場合は証拠画像レベルからいかにして蝶に接近した画像を撮るかがポイントです。その意味ではようやく第一段階をクリアした程度です。「心霊写真」に一票頂き感謝しております。もう少し接近戦で♀開翅を狙いたいと思います。
Commented by fanseab at 2011-08-02 22:26 x
nomusan、貴殿のアップした超弩級接近画像に刺激を受けて、少しキリシマに拘ってみました。貴殿の先輩、Fさんを見習って、ポイントを探しておりますが、確かに上手く「ヤマ」を掘り当てると嬉しいもんです。飛翔は例によって、馬鹿打ちをやって、拾い上げております。だんだん、キリシマらしい画像になってくるのが楽しみです。
Commented by fanseab at 2011-08-02 22:28 x
BANYANさん、貴殿が確か昨年撮影されたポイントは約10mレベルまで接近できたようですが、それには全く及ばない遠距離画像です。300mmではやはり10m以内に来てほしいところです。その意味ではまだまだ小生は修行が必要ですよ。ご指摘の通り、最近の天気は全く読めません。天気予報をあまり当てにせずに行くしかありませんね。
Commented by fanseab at 2011-08-02 22:30 x
ノゾピーさん、ハイ、確かに苦労しております。開翅画像はいずれも拙ブログでアップした絵の中でも最大限にトリミングした画像です(^^; 鈴鹿でも結構苦労しているご様子ですが、個体数が多いのはなによりですね。
Commented by fanseab at 2011-08-02 22:34 x
naoggioさん、海外遠征や旅行でもプランニングの段階が一番楽しいですね。その後はただただ計画に従って実行するだけですから。蝶探索の場合は天候、地形が様々ですから「外れ」が多いです。逆に「当たり籤」を引いた時の喜びも大きいです。ご指摘の通り、キリシマはサイズが大きいので、遠距離から観察しても本当に見応えがあって、この時期になると、他のシジミをさておいて、見たくなるのです。一番暑い時期に暑さを忘れる爽快感が味わえるからですl。
Commented by fanseab at 2011-08-02 22:37 x
himeooさん、確かにキリシマは比較的楽に観察できますけど、止まる位置が高くて遠いので、撮影は難儀します。よほど、飛翔撮影の方が楽かもしれません。それと彼らの生息する場所が渓谷沿いで、いつも足場が安定しないので、余計撮影の障害になるのです。
Commented by grassmonblue at 2011-08-03 20:02 x
1/25000地図と衛星画像を睨みながら、候補地点を絞り込んでいかれるとは、まさに驚きです。チョウ探索の醍醐味きわまれりという御心境でしょう。その時に撮影カットのイメージもわいておられるだらうと思うと感服します。
難しいキリシマ撮影の成果も格別のものと拝察します。
もっと若かったら弟子入りしたい気分ですが、機会があればまた御指導ください。
Commented by fanseab at 2011-08-03 21:48 x
grassmonblueさん、昔は衛星画像がネットで公開されている訳でもなく、地形図を書店で購入してアレコレ妄想を巡らしておりました。それに比べれば現在は、地図も衛星画像もネットで検索参照可能なので、かなり探索が効率的になりました。それでももちろん「外れ」が殆どですよ。今回は偶々成果が上がったので記事にしましたが・・・。
<もっと若かったら弟子入りしたい気分・・・
とんでもございません。衛星画像の観察方法とかはどこかでお話できると思いますが。。。
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