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探蝶逍遥記

北海道遠征記(2)ウスバキチョウ:その1

 管理人は、本体HP東南アジアの蝶ファン倶楽部を扱う通り、南方系蝶の追っかけをメインにしております。「じゃあ、北方系は興味ないの?」と聞かれそうですが、興味がないのではなくて、「敢えて足を突っ込まないようにしている」だけのことです。蝶の撮影を始めて20年近くになりますが、ウスバキチョウを始めとした高山蝶の撮影は昔からの憧れでした。優先順位の観点で、敢えてこれらの蝶の撮影を封印していたのです。しかし、やはり撮影したいなぁ~と今年に入ってから想いが募り、いよいよ憧れの大雪山に足を踏み入れることにしたのでした。

 ウスバキチョウの撮影地は大雪・十勝連峰各所にありますが、初心者である管理人は比較的アプローチの短いコマクサ平を選択しました。これまでに多くの撮影者がこの「バキの聖地」を訪れていて、これらネット情報は大いに参考にさせて頂きました。実は6/23~25日の3日間はこの時期の北海道としては異例の寒さ(4月頃の陽気)でして、気温が平年並みに上昇した6/26・27日の両日をコマクサ平での撮影に充てました。余裕ある日程にして正解だったと思います。層雲峡からの舗装道路が途切れ、砂利でタイヤが滑りやすい林道を進み、「バキの聖地:コマクサ平」の玄関口、銀泉台に到着です。                                                      ++横位置画像はクリックで拡大されます++
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GXR@5.1mm、ISO=100、F8.9-1/350、-0.7EV、撮影月日・時刻:6月26日、6時19分

 正面の大きな雪渓が第一雪渓。左上部からトラバースして右上方に辿り、一旦夏道に入ってから、再度、左上に覗く第二雪渓を横切り、コマクサ平に辿り着くのです。「第一雪渓で誤って転ぶと下の林道まで滑落して命がない・・・」等の恐ろしい記述がネットにあって、管理人も恐る恐るの参戦でしたが、雪が緩んでいたこともあって、滑落の心配はなくて安心しました。むしろ第一雪渓に取りつくまでの急登が寝起きには大変辛いものでした。さてコマクサ平の撮影ポイントには7時45分着。しかし、前日からの寒気が残っていて北風が吹き抜ける登山道で寒さに震えながらウスバキの登場を待ちました。その間、撮影者を和ませてくれたのが、ギンザンマシコのペアでした。これは雄です。
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D7K-34、ISO=1000、F10-1/1250、-0.7EV、撮影月日・時刻:6月26日、8時48分

 ヒヨドリ位の大きさの野鳥で、かなり派手目の色合いですね。背景の白い部分は雲ではなくて、雪渓です(念のため)。雌はうぐいす色の顔で地味。アップした絵のように雄がハイマツ上で見張り、その間、雌が地面で餌を啄む様子が観察されました。さて、ウスバキは9時30分過ぎ頃からようやく飛び始めました。図鑑等の記述通り、相当に飛翔スピードが速いのに先ずは驚きます。ただちょっと飛んではすぐに地面に静止するか、ハイマツ上で開翅休止(中央右側)をしてしまいます。
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D90-85VR、ISO=400、F10-1/1600、-0.7EV、撮影月日・時刻:6月26日、9時47分

 背景左の山容は、烏帽子岳(標高2072m)。風が吹き出すと全く遮るものがないなかで、ハイマツは彼らにとっての絶好の休息場所のようでした。10時を過ぎて陽射しが安定すると、ウスバキはあちらこちらで飛び交い、撮影者も右往左往する大騒ぎ状態に。
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D90-85VR、ISO=200、F11-1/640、-0.7EV、撮影月日・時刻:6月26日、12時18分

 画面中央に撮影をご一緒したcactussさん、大雪山系で長年ウスバキを追跡しているプロカメラマンの渡辺さんの姿も写っております。渡辺さんはきちんとカメラマンの数を計数していて、「今日は15人。昨日より凄く増えたね!」と悠然と語る姿が印象的でした。

 地面に平行に飛び回る♂は時々吸蜜に来ます。吸蜜時間はかなり長時間ですので吸蜜シーン自体の撮影難易度は低いです。ただ、吸蜜源の殆どが地衣類のような丈の低い植物群ですので、通常の吸蜜アングルとはかなり異なり、おまけにロープで立ち入り規制がかかっているため相当に難儀します。管理人が2日間観察した印象では、吸蜜源として最も好むのがイワウメ(Diapensia lapponica)でした。そのイワウメから吸蜜する♂を正面から。
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D7K-34、ISO=500、F11-1/1250、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日・時刻:6月26日、13時24分

 この植物は苔のような葉の集合体からスッと花茎が立って、白い花を咲かせており、ウスバキはこの花弁に掴まってジックリ蜜を吸っております。花茎は結構頑丈で、ウスバキが止まっても安定していて、蜜量もタップリあるように思います。恐らくこの地の生態環境下でウスバキとイワウメは共存関係にあるのでしょう。そんな両者の相互関係を上手く切り撮れたと勝手に解釈しているので、今回のバキ吸蜜画像としては最もお気に入りのものになりました。お次は♀のイワウメ吸蜜を縦広角で。
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GXR@5.1mm、ISO=100、F9.1-1/400、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影月日・時刻:6月27日、11時01分

 イワウメは登山道のロープ脇にも生えていますが、ここに吸蜜に来る確率が低いので広角画像を撮るチャンスが少なくて苦労します。粘った2日目の撤退寸前にフレンドリーな♀がやって来てカメラに収まってくれたのです。イワウメの次に目立った吸蜜源がクロマメノキ(Vaccinium uliginosum )。ご存じの通り、本州の高山蝶、ミヤマモンキチョウの食樹でもあります。花穂がスズランの花のように垂れ下がっているので、ウスバキが吸蜜する際、頭を茎に突っ込むような態勢になりやすく、なかなか良い絵になり難いものです。そんな中、ようやく撮れたのが次の画像。
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D7K-34、ISO=800、F6.3-1/5000、-0.7EV、撮影月日・時刻:6月26日、10時10分
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D7K-34、ISO=800、F11-1/1600、-0.7EV、撮影月日・時刻:6月26日、11時14分

 一枚目が♂、二枚目が♀の吸蜜シーンで、それぞれ、後翅裏面の赤班を何とか表現することができました。見難いですが、二枚目♀の腹部には白いスフラギス(交尾嚢)も写っております。さて、イワウメ、クロマメノキ以外の吸蜜源となると、キバナシャクナゲ(Rhododendron aureum)でしょうか?これは結構難易度が高くて、管理人は次の証拠写真程度を写すのがやっとでした。
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D7K-34(トリミング)、ISO=800、F5.6-1/5000、-0.7EV、撮影月日・時刻:6月26日、10時13分

 種々の情報通り、ウスバキの活動は陽射しに極めて敏感でした。かなり気温が高く、薄日が差していても、「薄日」ではNGで、気温が低くても「強い日差し」では活発に飛翔します。やや気温が低くなると、すぐに地面に開翅休止するのですが、よくよく観察してみると、地面より水分を吸汁している個体が多いことがわかります。今回遠征プロローグでご紹介した♂画像もその一例。ここでは、雄大な景色を背景にした広角画像をパノラマ写真風に切り取ってご紹介いたしましょう。
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GXR@5.1mm、ISO=100、F9.1-1/250、-0.7EV、撮影月日・時刻:6月27日、10時07分

 背景は東岳(2067m)。こちらも♂です。♀が吸水するか?ははっきりと確認できませんでした。多くのカメラマンが集結した日曜日(6/26)は観察者の数が多いメリットがありまして、あるカメラマンが発見した♀産卵シーンを運よく撮影することができました。
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D5K-34、ISO=500、F5.6-1/4000、-0.7EV、撮影月日・時刻:6月26日、12時39分

 腹部には白く巨大なスフラギス(交尾嚢)が見えています。黒光りする不粋なウスバシロチョウ♀のそれとは異なり、純白の真綿を連想させる、高貴な感じがするのは管理人だけでしょうか?産卵の後はお決まりの開翅日光浴です。
北海道遠征記(2)ウスバキチョウ:その1_f0090680_23242394.jpg
D5K-34、ISO=500、F6.3-1/4000、-0.7EV、撮影月日・時刻:6月26日、12時39分

 後翅の赤班をファインダーで確認した瞬間、長年の憧れが現実の物になって、喜びが沸々と湧いてまいりました。次回は相当苦戦した飛翔写真をご紹介いたしましょう。
by fanseab | 2011-07-01 23:30 | | Comments(14)
Commented by ダンダラ at 2011-07-02 08:46 x
30数年前の撮影行を思い出しながら懐かしく拝見しました。
勤め関係で7月20以降にしか入山できませんでしたが、赤岳からコマクサ平まで縦走しました。
ウスバキはやはりここで見ることができましたが、ほとんどが色あせた個体でした。
新鮮なウスバキチョウを撮影できておめでとうございます。
Commented by fanseab at 2011-07-02 20:50 x
ダンダラさん、貴本体HPに掲載されている当時撮影の貴重な絵を拝見しました。現在と比較して、交通の便とか比べものにならない状況下で苦労されたことでしょう。お蔭様で、♂♀共にほぼ新鮮な個体を撮影できてラッキーでした。
Commented by himeoo27 at 2011-07-03 10:09
ウスバキチョウ撮影おめでとうございます。

白い「交尾嚢」とはロマンチックな感じがしました。
厳しい自然環境の中これからも生き続けて欲しいです。
Commented by maeda at 2011-07-03 16:45 x
15人か!
すごい数ですね。私も一度行ったことがあるのですが、人が多いのでそれっきりになっています。余り賑やかなのは合わないようです。
それでも成果があって良かったです。
Commented by fanseab at 2011-07-03 20:54 x
himeooさん、コメント有難うございます。
規制ロープや監視人システム等、人間系を遮断する環境で保護されている面もありますね。交尾嚢はボンヤリと輪郭がないような不思議な物体でした。
Commented by fanseab at 2011-07-03 20:56 x
maedaさん、先日はお世話になりました。
確かに撮影者が多すぎますね。それを嫌って、疲れている体に鞭打って、2日目も登山しました。広角系のショットは人が多いと狙えませんね。
Commented by ヘムレン at 2011-07-03 21:31 x
ウスバキチョウ!!う~ん・・いいですね。
素晴らしいです。
人が多くても、これが撮れれば最高の気分になれますね(^^)
おめでとうございます。
ギンザンマシコも見てみたいです~。。お見事!
Commented by fanseab at 2011-07-03 22:42 x
ヘムレンさん、お蔭様で念願が叶いました。大した時間ではないけれど、登山してやっと撮れる蝶だけに感激も一入ですね。
ギンザンマシコは相当にフレンドリーで、デジスコ持参なら羽毛の詳細まで写し込める距離だっとと思います。毎朝決まった時間帯に決まった場所に出現するので撮影は簡単だと思います。
Commented by thecla at 2011-07-03 22:59 x
ウスバキチョウ、広角、産卵とも素晴らしいですね。
2006年に土日の弾丸ツアーで急襲したことを思い出しました。その時も人が多かったですが、それでも15人はいなかったですね(笑)
Commented by fanseab at 2011-07-04 23:02 x
theclaさん、土日の弾丸ツアーでは相当リスクがありますね。今回も長期間の日程でしたが、撮影可能は日は僅かに2日でした。本来安定している時期のはずですが、予定外に梅雨前線が北上してきて、やはり小生は「雨男かぁ~」とガッカリしました。人数が多いのは想定内でしたが、想定の倍の人数でした(笑)
Commented at 2013-12-09 18:37 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by fanseab at 2013-12-11 21:40 x
鍵コメさん、コメント有難うございます。
YESかNOかと問われれば、YESです。ただ天候運が必要です。標高が高く天候が変わりやすい場所なので、保険の意味で2泊3日コースをお勧めします。後は発生の時期が年ごとに異なるので、蝶関連ブログをこまめに検索して、適期を外さないようにすることでしょうね。その意味でフライトチケットをあまり早めにフィックスしない方が良いかもしれません。お答えになっているか不明ですが、ご武運を祈念します。
Commented at 2015-07-09 18:15 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by fanseab at 2015-08-14 21:36
鍵コメさん、コメントされているのをうっかり見逃して亀レスになって、
本当に申し訳ありませんでした。成果が出て何よりでした。お写真も拝見しました。
日頃の行いの良い方は、違いますね。反省しきりです(笑)
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