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探蝶逍遥記

ヤマトシジミの飼育メモ

 本年実施した飼育シリーズの第3弾。今回はヤマトシジミ。ヤマトのような「ド普通種」の飼育はつい後回しになってしまうものです。幸か不幸か、コロナ禍で遠出を控えた今年ならでしょうか、じっくりと観察してみました。なお、紹介画像に用いた個体は齢毎に異なります。

 先ずは孵化直後の初齢幼虫。

+++画像はクリックで拡大されます(モニター環境に依存)+++

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EM12-Z60(4コマ深度合成+トリミング)ISO=250,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:827

 体長0.8mm。体毛が非常に長いですね。近くに孵化した卵殻が見えています。卵殻は殆ど食べずに残っています。幼虫の真下に食痕が見えています。初齢ではカタバミ葉裏を「舐め食い」していきます。初齢2日後、眠状態に入った幼虫の姿もご紹介しましょう。

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EM12-Z60(上段のみ4コマ深度合成+トリミング)ISO=400,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:829

 体長は1.5mm。初齢幼虫は本当に小さく、ルーペを用いても居場所を見失いがちで苦労します。胴体部が成長して、体毛長さも相対的に短くなりました。初齢時の食痕もアップしておきます。

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EM12-Z60(8コマ深度合成+トリミング)ISO=320,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:829

 ヤマトシジミの幼生期は基本的に葉裏生活者(矢印が幼虫)。カタバミの葉裏を舐め食いし、半透明になっています。その食痕部上、黒い点列が初齢幼虫の糞。糞の水分はかなり多めで複数の糞が列状になって、まるで「天の橋立」のような独特な様相です。

個体によりますが孵化3-4日後に2齢になりました。

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EM12-Z60(上段9コマ/下段4コマ深度合成+トリミング)ISO=320,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:913

 体長3.4mm。初齢では胴体に透明感が残っていましたが、2齢後半で不透明状態に。2齢時の食痕も示します。

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EM12-Z60(7コマ深度合成+トリミング)ISO=320,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:911

 基本的に初齢と同じ。糞の直径は大きくなりますが、未だ水分が多く、点列状に残りやすい状態。2齢段階は3-4日。次に3齢幼虫です。

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EM12-Z60(上段6コマ/下段4コマ深度合成+トリミング)ISO=320,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:93

 体長4.5mm。体形が扁平状のいわゆる「わらじ虫」スタイルになりました。また背線に沿って各腹節に「八の字」模様が出現しました。シジミチョウ幼虫に特有の斑紋パターンですね。八の字は頭部側から腹端部にかけて末広がりに拡がるパターンなので、幼虫の頭部がどちらにあるか、このパターンから直ぐに判断できます。それと第7腹節にある蜜腺(矢印)など好蟻性器官も明瞭になりました。3齢期は3-5日。次に4齢(終齢)です。

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EM12-Z60(上段のみ10コマ深度合成+トリミング)ISO=320,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:918

 体長9mm。カタバミの葉によく紛れた保護色になっています。なお3齢より糞の水分量が減少し、個々の糞が分離するようになり、点列状にはなりません。糞の性状からも、2齢と3齢の区別が可能です。4齢時の食痕も示します。

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EM12-Z60(7コマ深度合成+トリミング)ISO=250,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:97

 3齢段階から「舐め食い」を卒業し、普通に葉全体を食べるようになります。終齢到達4-5日後に前蛹に。

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EM12-Z60(上段10コマ/下段11コマ深度合成+トリミング)ISO=250,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:910

 体長8mm。カタバミ茎分岐部付近を好んで前蛹態勢になるようです。次いで蛹。

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EM12-Z60(上段6コマ/下段10コマ深度合成+トリミング)ISO=320,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:912

 体長8.5mm。黒小斑は非常に少ない感じ。ここで今回飼育した3個体、および2013年に飼育した1個体、合計4個体の蛹側面像を比較してみました。

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 御覧のように、黒小斑の分布には相当個体変異があるようです。個体#3と個体#2013-1ではまるで別種蛹のように感じられます。但し、矢印で示した2個の黒点は4個体に共通しているので、これはヤマト蛹に固有の形質なのかもしれません。個体#3916日に翅部分が白化。18日朝には翅部分が透けて翅模様がくっきりとしました。

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EM12-Z60(上段6コマ/下段5コマ深度合成+トリミング)ISO=320,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:918

♂もしくは綺麗な青であることが分かります。1109分頃、が羽化しました。


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EM12-Z60(トリミング)ISO=400,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日・時刻:918日・1110

 羽化直後は翅展開に適した場所を探してウロチョロ結構早いスピードで動き回るので、意外と撮影に苦労します。やっと落ち着いて翅を伸ばす連続画像です。

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EM12-Z60(トリミング)ISO=400,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日・時刻:918日・1111分~16

 蛹から脱出して僅か5分ほどで翅がほぼ展開し終わりました。午後2時過ぎ、生憎の雨模様でしたが、屋外で飛ばして飛翔画像も撮りました。

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EM12-Z60(トリミング)ISO=2500,F3.2-1/2500、撮影月日・時刻:918

 前後翅外縁の黒い縁取りは、シルビアシジミを彷彿とさせますね。もちろんシルビアのブルーとは色合いが全く異なりますが・・・。綺麗な青が羽化したので、残りの飼育個体はが出たらいいなぁ~と期待したものの、残りの2個体は漆黒の(^^; ♂が羽化したので、次は青♀を期待したのですが、残りの2個体は漆黒の♀。なかなか思い通りにはいきません。飼育での「産み分け」は難しいものです(^^)


<11月30日追記>

 読者の方からのご指摘で、羽化個体は♀ではなく、♂でした(^^;; 該当部分を修正しておきました。また、飼育時に♂♀個体の前脚附節付近の拡大像を撮影しておりましたので、下記にアップしておきます。左の♂は羽化直画像で示した個体#3、右は個体#6の♀。♂♀附節の分節構造差を確認できます。


ヤマトシジミの飼育メモ_f0090680_16193505.jpg

# by fanseab | 2021-11-28 20:42 | | Comments(0)

ほぼ皆既月食(11月19日)

 久しぶりマスコミを賑わす天文現象がありました。部分月食なのですが、今回は特別に「ほぼ皆既月食」のニックネームが付きました。月が地球の影に隠される割合を食分と称するのですが、今回の部分月食において最大食分は0.978と限りなく1.00(皆既月食)に近かったからです。困ったことに今回の最大食分は夕方の東空、それも結構低い位置だったので、予想通り、薄雲に邪魔されました。なので、最大食分(18時03分頃)を過ぎた頃からの撮影。

+++画像はクリックで拡大されます(モニター環境に依存)+++

ほぼ皆既月食(11月19日)_f0090680_16203085.jpg
EM12-P200(トリミング)ISO=10002000,F2.8-1/801/500、撮影時刻:1828分~1901


 1830分前後は雲の出入りが激しく、肉眼でも欠けた月が見え隠れする困難な状況。皮肉なことに月食が終了する頃、雲が完全に消失し、満月が煌々と夜空を照らしておりました。

 国立天文台の資料によると、最大食分0.978以上の「ほぼ皆既月食」は前回が1932(昭和7)年915日。次回が20861121日だそうです。もちろん管理人は次回を見ることができません(^^; と言うか、普通の人は、一生に1回しか見ることのできない珍現象だった訳ですね。今年は526日にも皆既月食があったのですが、その時は雲が厚く全く観察できませんでした。今回は珍しい天文現象が何とか見えて、ヤレヤレでした。


# by fanseab | 2021-11-21 20:56 | 天体 | Comments(2)

キマダラセセリの飼育メモ(2齢~5齢まで)

 本年実施した飼育シリーズ第2弾はキマダラセセリ。8月下旬から9月上旬にかけてメダケ群落で産卵する母蝶の姿を観察した場所で、メダケと睨めっこ。ようやくそれらしき巣を確認。開封すると2齢幼虫と思われる個体がいたので、持ち帰り飼育に供しました。最初はその巣の状態。


+++画像はクリックで拡大されます(モニター環境に依存)+++

キマダラセセリの飼育メモ(2齢~5齢まで)_f0090680_21260887.jpg
EM12-Z60(7コマ深度合成+トリミング)ISO=320,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:95


 メダケ葉の先端を丸めています。葉縁に生まれた産附卵の卵殻と食痕を矢印で示しています。卵殻全体の90%は食べるようです。2齢幼虫の姿です。

キマダラセセリの飼育メモ(2齢~5齢まで)_f0090680_21254960.jpg
EM12-Z60(上段3コマ/下段5コマ深度合成+トリミング)ISO=250,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:98

 体長7.8mm。幼虫発見当時、初齢と2齢の可能性がありましたが、体長(7.8mm)から2齢としました。頭殻は無紋黒色。前胸背部横黒線があるのはオオチャバネと同じ。矢印は第10腹節背面の「肛上板」と呼ばれる部位で、2齢時点では体色とほぼ同じ淡緑色です。この時点では、オオチャバネとキマダラの区別はつきませんね。↑画像は眠状態の姿。巣を開封すると、齢を問わず結構動き回り、眠以外では深度合成画像を撮るのが不可能でした(^^; 99日に3齢へ。

キマダラセセリの飼育メモ(2齢~5齢まで)_f0090680_21263001.jpg
EM12-Z60(6コマ深度合成+トリミング)ISO=320,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:911

 体長10.8mm。頭殻、胴体共に2齢とほぼ同じですが、胴体背線が目立つようになったのと、第10腹節背面の肛上板(矢印)が黒褐色になりました。オオチャバネの3齢では肛上板は淡緑色なので、3齢時点で、両種幼虫の区別はつけられます。12日に眠。翌13日に4齢。

キマダラセセリの飼育メモ(2齢~5齢まで)_f0090680_21271782.jpg
EM12-Z60(トリミング)ISO=500,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:915

 体長15.5mm。黒褐色肛上板の面積が拡大した以外は、3齢と特徴に変化はありません。16日に眠。この状態で再度4齢幼虫を撮影。

キマダラセセリの飼育メモ(2齢~5齢まで)_f0090680_21273382.jpg
EM12-Z60(トリミング)ISO=400,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:916

 眠状態でも結構微妙に動き、深度合成撮影は不可(^^; 前胸背部横黒線の真下に5齢幼虫の頭殻形成が明瞭に確認できます。4齢での巣の一例もご紹介しておきます。

キマダラセセリの飼育メモ(2齢~5齢まで)_f0090680_21303709.jpg

EM12-Z60(トリミング)、ISO=400,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:9月15日


 翌17日に5齢(終齢)。5齢到達6日後、糞量が少なくなったので、前蛹準備に入ったと判断し、開封してみると、無残にも寄生蜂の繭が幼虫周辺に散らばっており、ガックリきました(^^; その姿。

キマダラセセリの飼育メモ(2齢~5齢まで)_f0090680_21281551.jpg
EM12-Z60(下段のみ11コマ深度合成+トリミング)ISO=320,F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:924

 体長18.5mm4齢から殆ど成長しておりませんでした。せめて3日前頃に巣開封・撮影すればよかったのですが、全ては後の祭り(^^; 終齢幼虫最大の特徴は黒褐色頭殻に「ハの字」型の淡色紋が出現したこと。ここで各齢頭殻の比較をしておきましょう。

キマダラセセリの飼育メモ(2齢~5齢まで)_f0090680_21283099.jpg

終齢幼虫頭殻の斑紋は独特でオオチャバネとは全く異なります。しかしホソバセセリ終齢幼虫の頭殻斑紋と酷似しているので、キマダラとホソバが混棲しているポイントでの終齢幼虫識別には注意が必要です。一般的にはホソバ終齢幼虫の肛上板は淡緑色で、黒化することはないとされています。ところが困ったことにキマダラ終齢幼虫の一部には肛上板が淡緑色となる例外個体も存在しているようで、そうなると、識別はお手上げになります。関東平野南部に限定すると現在、幸か不幸かホソバは準絶滅状態なので、終齢幼虫黒色頭殻部に「ハの字」型淡色紋があれば、「キマダラ」と断定してほぼ間違いないでしょう。

 今回の飼育で野外での採幼個体の寄生率の高さを思い知らせました。フルステージ飼育には先ず採卵が必要ですが、以前の記事(クリックでジャンプ)で書いたように、母蝶産卵現場を押さえるのは至難の業です。従ってキマダラの場合は母蝶を採集・ホストを入れたネット内で強制産卵させ、採卵するしか方法はなさそうです。


# by fanseab | 2021-11-18 21:40 | | Comments(0)