探蝶逍遥記

コンクリート塀で暮すツマグロヒョウモン幼虫

3/19付け拙ブログでもご紹介した兵庫県の自宅近くの首題幼虫。春から継続観察をしていたところ、今月の初めから塀下にあるスミレで目につくようになりました。5月から8月一杯は何故か、このポイントに母蝶は産卵しないようです。真西に面しているため、夏季は幼虫にとって暑すぎる環境が邪魔しているのでは?と推察しています。
 試みに9/16に計数したところ、蛹2頭、幼虫25頭が確認されました。道路沿い20mにスミレの株が10株ほどあり、一株に群がる幼虫は迫力満点です。
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D70S-10.5-X1.4TC, ISO=200, F8-1/40、内蔵ストロボ、撮影時刻:10時21分(9/16)

 この写真で、手前の株に5頭、向こう側に2頭、そして塀の上に1頭が静止しています。摂食以外の時間帯に静止する位置は食草上、コンクリートの地面、それに塀の上になりますが、このポイントでは圧倒的に塀の上で休んでいる個体が多いのが特徴。
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D70S-10.5-X1.4TC, ISO=200, F10-1/40、+0.3EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:10時20分(9/16)

 昼間はもちろん、夜間もご覧の通りです(1頭は食草上にいます)。
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D70S-10.5-X1.4TC, ISO=500, F10-1/320、内蔵ストロボ、撮影時刻:21時48分(9/11)

 毛虫嫌いの人が見たら卒倒してしまうかもしれません。雨降りの日はさすがに地面の静止では水没するのを嫌って?全個体が塀の上に避難しているようです。そして蛹も↓の写真の通り、塀の上ですが、この塀の庇(ひさし)の下も好まれるようです。蛹の色は阪神大震災でも倒壊しなかったくすんだ塀の色と同化して見事な保護色になっています。
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D70S-10.5-X1.4TC, ISO=200, F8-1/80、内蔵ストロボ、撮影時刻10時22分(9/16)

 9/16以降の幼虫・蛹の個体数の推移を下記します。

   9/16 幼虫25頭、        蛹2頭
   9/18 幼虫17頭(内前蛹1頭)、蛹2頭
   9/22 幼虫3頭、         蛹8頭

 9/16を起点にした蛹化歩留りは25%です。スミレの株数(10株)はすべての幼虫を育成するには不足しているので、妥当な線でしょうか?食草からあぶれた幼虫は食草を求めて徘徊し、車に轢かれたり、小鳥に食われたり等で数を減じたのでしょう。恐らく蛹は来週前半から来月上旬にかけて一斉に羽化するものと思います。最終的な羽化率(寄生率)がどの位か?調べてみようと思います。

【お知らせ】
 本体HP:韓国の蝶のギャラリーを科別表示方式に変更し、新規に3科13種を追加しました(9/18)。掲載種の75%は日本国内と共通種ですが、「ヒメキイロミスジ(Neptis themis)」等のユーラシア大陸固有種も含みます。お時間のある時にお立ち寄りください。
# by fanseab | 2006-09-22 22:43 | | Comments(9)

モンキチョウの求愛飛翔

 今日は台風の接近に伴い、目まぐるしく変化するお天気。当初、出撃を見合わせるか?逡巡するほどでしたが、小雨→曇り→晴れと急速にお天気回復。播磨地方をウロウロ探索しておりました。
 結局、めぼしい絵が撮れず、川べりで出会ったモンキチョウペアが唯一の成果。小生、未だ本種の求愛飛翔シーンをまともに撮っていなかったので、根性入れました。結局このペアは3分以上にわたって、ほぼホバリング状態で飛んでくれたお陰で、飛翔画像歩留まり80%以上の成果でした。その中のベストショットを3枚お見せしましょう。ファインダーを見ながらマニュアルフォーカスで合焦できるのは有難いです。
 データはすべて共通:D70(トリミング),ISO=640、F9-1/1250、-0.7EV、撮影時刻:11時37-38分

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 ♂が先導し、♀が続くこのパターン、3分以上の間、お互いの距離を約30cmに正確に保つ飛行を見せてくれました。時々♀が♂を追い越したり、♂が下方に誘導したり、駆け引きをしているのが興味深かったです。

 その他、初秋らしい画像を2つ。チャバネセセリの産卵シーンと葛の花弁に潜むウラギン幼虫です。ウラギンは終齢以外にもう1頭、若齢幼虫がいるのですが、どこにいるかお分かりになりますでしょうか?(少しこちらはピンボケですが)

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D70(トリミング), ISO=500, F11-1/400、撮影時刻:11時42分

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D70, ISO=500, F5.6-1/1250
# by fanseab | 2006-09-17 22:52 | | Comments(14)

キタテハの盛衰

 キタテハについてちょっと書いてみたいと思います(添付写真はいずれも9/2-3撮影)。
 キタテハと言えば、どこにでも飛んでいる普通種のイメージですね。ところが、都市近郊では確実に減少傾向にあると感じています。小さい頃、東京都郊外で遊んでいた小生にとって、キタテハはタテハの代表で、良い遊び友達って感じでした。秋型が飛ぶ頃になると、裏面のC文字をしげしげ眺めて、「シータテハとは違うかなあ?」と何度も図鑑と照合し、「やっぱりキタテハかあ~」と落胆する・・・そんな毎日を送ってました。想いが高じて、キタテハ秋型の翅に鋏を入れてギザギザにして「偽シータテハ」を造ってボール紙とセロファンで自作した標本箱にしまったり、今から思えば涙ぐましい努力をしたものです(^^;;

 さて、先日(9/2-3)、多摩川でギンイチを探索した際、夥しい個体数のキタテハに遭遇し、ビックリしました。いつからこんなに増えたのか?それが疑問でした。多摩川畔での定点観測はかれこれ15年ほど続けていますが、7-8年前にはキタテハは殆ど見ることができず、個人的に本地域の絶滅危惧種にカウントしておりました。それが急に増えたのです。理由を考えてみました。

 一番の理由は当然ながら、食草カナムグラの復権だと思います。カナムグラは線路脇とか荒地(ちょっとした広場)に生えるツル性植物で、30年位前は、東京郊外の住宅地近辺にはどこでもはびこっていたものです。それが、いつのまにか、減ってきました。最近の公園は管理が行き届き、カナムグラのようなツル性植物はすぐに刈り取られてしまうように思えます。要は都会から「ちょっとした広場」なんて無駄な物が無くなったんですね。それと、「ちょっとした広場(原っぱ)」の主役がカナムグラやクズからセイタカアワダチソウやブタクサ等の外来植物に遷移してきたことも見逃せません。

 多摩川に話を戻すと、実は7-8年前にマイ観察ポイント付近の植生を変化させる一大イベントがありました。従来、東京都側と神奈川県側に分流していた多摩川の流れを行政が強制的に東京都側に一本化したのです。これは劇的な植生変化をもたらしました。この工事から2年間程度は川の流れ跡が沼として残っていたのですが、やがて完全に乾燥し、それまで周辺に生えていたススキは全滅、代わってそこにはセイタカアワダチソウ、ブタクサ、オオマツヨイグサ、アレチウリ等の大群落が形成されたのです。
 ススキが無くなれば、これに依存するギンイチモンジセセリ、ミヤマチャバネセセリにとって致命的です。もともと個体数が多くなかったミヤマチャバネは個体数の減少がそれほど顕著ではありませんが、ギンイチは確実に減少の一途を辿りました。

 皮肉なことに、多摩川の乾燥化で恩恵を蒙ったのがキタテハだと睨んでいます。川縁の土手とセイタカアワダチソウ等の群落の隙間に生えるカナムグラが数年前に比べ明らかに増えました。
 そして、先日のキタテハ大乱舞に出会ったのです。とにかく、モンシロやイチモンジセセリを押しのけて、咲いている花はすべて吸蜜占有しているのではないか?と思わせるほどの個体数。やっと、小学生の頃、当たり前だった光景に出会ったのでした。しかし、キタテハ増加の裏にはギンイチを大幅に減少させた乾燥化があるのです。行政が「多摩川の氾濫から住民を守る」等の名目で実施した河川工事。本音は河川管理のコストダウン(手抜き)を図りたかったのでしょう。その代償は我々蝶屋にとって、あまりにも大きかったと思います。いや、蝶屋だけではありません。それまで釣り糸を垂れていた神奈川県側住民のささやかな楽しみまで奪ってしまったのです。
 でもキタテハには何も責任はありませんね。数が多いので求愛(拒否)場面や飛翔撮影のチャンスには事欠きませんでした。各々代表的な写真を2枚貼っておきます。多摩川の植生変遷と蝶相変化の件は、いずれ某紙にでも投稿し、記録として残そうと思っています。

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D70S-10.5-X1.4TC, ISO=500, F10-1/200、撮影時刻:17時06分

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D70S-10.5-X1.4TC(トリミング), ISO=500, F8-1/500、内蔵ストロボ(調光補正-0.3EV)、撮影時刻:8時20分
# by fanseab | 2006-09-15 21:19 | | Comments(8)