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探蝶逍遥記

台湾遠征記:(11)11月22日午前中その1

 前日の晩、ホテルのコンシェルジュに依頼したタクシーは予約した8時前にきちんと到着しておりました。ドライバーのKさんとご挨拶して二言三言会話しただけで、この方が信頼できる方と確信しました。海外遠征でタクシーをチャーターする場合、ドライバーとの信頼関係は大変重要です。客の意図を汲んで的確に運行してくれるか否か?が撮影の成否も分けますし、何よりストレスを溜めずに旅行できるかの分かれ目になるからです。で、このKさん、お客とのアポ時間の恐らく10分前には到着していたのでしょう。管理人がホテル前のタクシーを探すと車を磨いておりました。こんなちょっとした気配りも嬉しいものです。ホテル発7時55分。途中コンビニに寄って、ドリンク類と携帯食品を調達。この日の目的地である林道入口には8時05分に到着。因みにチャーター料金は250元(約670円)。台東空港からホテルまでの料金(535元)に比較するとかなり割高ですが、流しを拾う訳ではないので仕方ないでしょう。Kさんに帰りのピックアップを14時30分に依頼して別れ、出発です。暫く歩くと道路脇にムチャでかい陸生巻貝が。                      ++横位置画像はクリックで拡大されます++
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GXR@5.1mm、ISO=200、F2.5-1/100、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻: 8時38分

 貝殻部分だけで長さは6cmほどあります。昨日同様の曇り空で蝶の飛び出す気配はありませんが、やや陽射しが出てきたようです。期待に応えて林道脇の草地から小さな灰色のシジミが飛び立ちました。タイワンクロボシセセリ(Megisba malaya sikkima)のようです。
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D90-85VR、ISO=400、F11-1/200、-0.3EV、撮影時刻: 8時24分

 申し訳程度に開翅してくれました(笑)。前翅外縁形状から♀でしょうか? このシジミの開翅シーンを撮るのはこれが初めて。低温期型の特徴で、前翅に白紋が確認できます。更に進むと、ちょうど沢筋を巻くような曲り角に陽だまりができていて、よく見るとナガサキアゲハ(Papilio memnon heronus)♂が全開翅休息しておりました。
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D7K-34、ISO=400、F7.1-1/640、-0.7EV、撮影時刻: 8時27分

 台湾まで来ると、♂の後翅表に青色鱗粉が散りばめられていて、こんなナガサキ♂を見ると、南に来たことを実感させてくれます。ただ台湾産亜種の場合は青鱗粉の密度が濃くて青筋状に光るので、飛翔中は別種に見えたりします。陽だまりをよく観察すると、何と数頭のシジミが静止していることに気が付きました。最初はルリウラナミシジミ(Jamides bocus formosanus)♂。
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D90-85VR、ISO=400、F9-1/400、-0.3EV、撮影時刻: 8時25分

 この子は傾斜日光浴状態です。海外遠征でシジミ類の傾斜日光浴を観察したのはこれが初めて。台湾と言っても、この日の体感気温は15度を切る程度。夜の寒さを凌いで、微かな朝日を体一杯に受けている印象でした。別のルリウラナミ個体は路面で吸水もしておりました。
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D90-85VR、ISO=400、F11-1/250、-0.3EV、撮影時刻: 8時37分

 かなりのボロ個体でございます。さて、ルリウラナミの近くで静止していたのは見かけないシジミ。管理人初体験のクラルシジミ(Rapala varuna formosana)♂でした。
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D90-85VR、ISO=400、F11-1/250、-0.3EV、撮影時刻: 8時30分

 開翅した後翅が鈍くブルーに光っております。クラルはトラフシジミと同属ですので、日本のトラフとよく似た輝きです。因みに前翅は一部のみブルーに光ります。できればゼフ同様前方から覗くと、更に輝きが増すはずですが、残念でした。この子は撮影中にすぐに翅を閉じてしまいました。
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D7K-34、ISO=500、F11-1/320、-0.7EV、撮影時刻: 8時31分


 この子の尾状突起は相当長く、左後翅の突起は一部欠落しております。全般に草臥れた個体で、いつか新鮮な♂にチャレンジしたいものです。因みに「クラル」とは台湾の先住民族であるタイヤル族(高砂族)による恒春半島・社頂付近の地名呼称です。戦前、日本占領下の台湾で発見された蝶の和名には、このようにタイヤル族の地名呼称に因んだ種が沢山おります。

 ここで今回歩いた林道風景をご紹介しておきましょう。
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GXR@6mm、ISO=100、F9.6-1/40、-0.7EV、撮影時刻: 8時42分

 道路は舗装されておりますが、道幅は狭く待避所も少ないため、車での通行は結構厳しそうです。おまけにガードレールも全くないので、路肩にも十分注意せねばなりません。レンタカーで行く場合は少し小さ目の車両が必要でしょう。

 さて、草陰に弱々しく飛ぶクロテンシロチョウ(Leptosia nina niobe)が登場。
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D7K-34、ISO=500、F11-1/200、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻: 8時46分

 これまで本種のまともな吸蜜シーンを撮影していなかったので、ホッと一息つきました。このシロチョウの性別判定は難しい部類ですが、全体の雰囲気から♀でしょうか? 羽音を立てて登場したのは、知本に来てお馴染みになったトビイロセセリ。
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D7K-34、ISO=500、F11-1/200、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻: 8時48分

 まぁ、メタボなセセリですね(^^) お次は台湾遠征で、最もよく見かけたシロチョウ、タイワンキチョウ(Eurema blanda arsakia)です。
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D7K-34、ISO=500、F11-1/200、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻: 8時51分

 後翅肩脈の形状から♂でしょう。「台湾黄蝶」を台湾で撮影する・・・、これが今回の遠征で管理人が注力した点でもあります。「産地の地名が冠された蝶を、その由来地で撮影する」のは意外と難しいですが、タイワンキチョウは楽勝でした。何故かと言えば、出会ったEurema属の95%以上は本種だったからです。<次回に続く>
# by fanseab | 2012-03-30 22:02 | | Comments(2)

台湾遠征記:(10)11月21日夕食

 ようやく21日の記事が終わろうとしております。この分ではシーズンに突入しても終わりが見えそうにありません。少し引っ張り過ぎた感がありますが、シーズン中も台湾遠征記を継続してご紹介していきたいと思っております。

 さて、宿に帰って一風呂浴びてから、夕食です。今宵も到着当日に食した近所の小吃(食堂)に。2晩連続なので、店のおばさんも「やーまたきたかね~」って調子で大歓迎。なにせ昨晩は結構お客さんが一杯だったこの店、今宵の客は管理人が独占状態。歓迎されるのも当然かな? 当日のディナーの全景です。                                                                                   ++画像はクリックで拡大されます++
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撮影は全てGXR@5.1mm

 個別に紹介していきましょう。最初はメインディッシュとしての焼きそば(炒麺),60元(約160円)。
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 結構なボリュームでお味もイケてましたよ。副菜として注文したのが、台湾料理の定番とも言える、干し大根入りのオムレツ(菜埔蛋)、120元(約320円)。
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 こいつは切干大根の下味が塩辛く、ちょっと幻滅。以前台北で食したものとは雲泥の差でした。本来は軽く塩味がついた切干大根の歯触りと、卵のふんわりとした食感のバランス、そして卵の甘味と大根の塩味のハーモニーを楽しむ料理なんですけど、それを楽しむにはちょっと雑な味付けでした。実は焼きそばとオムレツを注文した後、店のおばさんとその娘さん、更にはおばあさんが隣の円卓でテレビを見ながら、何やら果物をつまんでいます。「これなんですか?」と管理人が物欲しそうに尋ねると、「釈迦頭だよ!食べるかい?」と、こちらの下心を見すかすように、一切れプレゼントしてくれました。
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 バンレイシ科の果物でどうやら台東地方の名物のようです。思わぬ無料デザートの差し入れに恐悦至極! スプーンで恐る恐る口に入れてみると、これが旨いのなんの! 溶け始めたシャーベットのようなザラッとした食感に、まったりとした甘味が口中に拡がります。管理人は東南アジア各地の遠征で色々な果物を食べてきましたが、この釈迦頭は旨さ・甘さにおいてベストの味かもしれません。あまりにも旨くて食べ始めてからは無言状態。丁度カニの食べ放題で無言状態で食べ続ける・・・、あんな感じで一気に平らげてしまいました。食べ終わると手や口の周りは糖分でベタベタ。ナプキンで拭いても取れず、トイレを借りて手に付いた糖分をやっと洗い流すほどでした。オムレツの塩味が効き過ぎていたため、強烈な甘味のデザートで丁度いい塩梅になりました。満腹状態で、ホテルに戻り、この日は心地よく眠ることができました。
<次回に続く>
# by fanseab | 2012-03-24 22:35 | グルメ | Comments(6)

北海道遠征記(14)シジミチョウ類

 今回の北海道遠征で秘かに楽しみにしていたのが、ツバメシジミの♀でした。「エッ、なんでまたツバメシジミ?」と仰られる方もいるでしょう。わざわざ高いエアチケットを購入してツバメシジミを撮るなんて・・・との声も聞こえてきそうです。実は今回色々とお世話頂いた maedaさんのブログ を拝読するまで、管理人も注意を払う存在ではありませんでした。
 で、ツマキチョウ♀を撮影した場所から程近い草叢でブルー系のシジミが飛んでいるのを発見。先ずはシロツメクサに止まりました。                                                                          ++横位置画像はクリックで拡大されます++
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D90-85VR、ISO=400、F10-1/1000、-1.0EV、撮影年月日・時刻: 2011年6月24日、11時33分

 ここまでは何の変哲もない吸蜜シーンです。ところが、吸蜜を終えた後、期待した開翅シーンを撮ることができました。
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D90-85VR、ISO=200、F9-1/800、-1.0EV、撮影年月日・時刻: 2011年6月24日、11時33分

 翅全体に散りばめられた青い鱗粉、これが高いエアチケットを購入してまで撮ろうと思った絵だったのです。よく見ると前翅中室部分ではブルーが濃淡2色に塗り分けられている点がムチャお洒落だと思いました。ブルーの程度は様々らしいのですけど、他に飛んでいる個体もなく、これで打ち止めでした。

 さて、同じ日の朝方は雨降りの中、渓谷沿いにジョウザンシジミを探索しておりました。冷たい雨降りでは飛ぶ個体があるはずもなく、それらしき崖地で長竿をヤンワリと使って刺激を与えますが、蝶が飛び出す気配もありません。こりゃ、坊主かな・・・と諦めかけた時、タネツケバナにひっそりと閉翅している本種を発見できました。
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D7K-34、ISO=500、F9-1/1000、-0.7EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻: 2011年6月24日、9時26分

 前翅が一部欠損しておりますが、縁毛もまずまずの個体です。このデザインは何となくオオルリシジミを連想させますね。以前、阿蘇の草原で雨降りの中で草茎に止まって雨宿りをしているオオルリを思い出しました。次に85mmでのロングショット。
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D90-85VR、ISO=200、F8-1/1000、-0.7EV、撮影年月日・時刻: 2011年6月24日、9時36分

 実際の雰囲気はこの絵の通りで、背景に溶け込んで意外と発見しずらかったのでした。お次は広角で。
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GXR@5.1mm、ISO=200、F9.1-1/50、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影年月日・時刻: 2011年6月24日、9時41分

 ジョウザンの真下に見えている植物が食草のエゾキリンソウでしょうかね?この絵、崖地によじ登って撮影したのですけど、岩が雨で濡れて滑りやすく危うく滑落しそうになりました(^^; クロツも含めて崖地に棲む蝶撮影は本当に気を付けねばなりませんね。

 ジョウザンの次はリンゴシジミです。リンゴの食樹はバラ科。道内に自生しているエゾノウワミズザクラ・シウリザクラが本来のホストで、そこから食性転換して栽培用のスモモ等に転じたとされています。遠征の初日、23日は生憎の雨で仕方なくリンゴシジミのポイントを探すことにしました。先ずはエゾノウワミズザクラが生えているとされる河川敷をウロチョロしましたが、坊主。間違えやすいのはこの時期川沿いに咲いているアカシアの白い花でした。遠目にはウワミズザクラとそっくりなのですね。後で調べたら旭川周辺の低地では既に開花時期をとっくに過ぎていたようで、無駄な探索になりました。ウワミズザクラが駄目ならスモモ類を・・・と、廃村狙いで5箇所位を探索しました。ビニール傘を差しながらスモモらしき樹木を探し出し、長竿で叩く・・・。辛気臭い作業を続けていきます。傘を差していてもズボンはビショビショ状態に(^^; 結局この日の収穫はゼロでした。

 翌日24日と25日は別種の撮影・探索を実施、26-27日の両日はコマクサ平でのウスバキ撮影に没頭し、27日の午後、コマクサ平往復の疲れの残る中、再度リンゴの探索を実施しました。クジャクチョウ越冬個体が飛び交うある林道で、シウリザクラと思しき樹木を発見。
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D90-85VR、ISO=400、F13-1/80、-0.7EV、撮影年月日・時刻: 2011年6月27日、15時44分

 既に開花時期は終わっていて、核果が穂状に形成されています。この左手前の樹木の叩き出しを実施したところ、リンゴと思しき蝶影が飛び出し、画像の右手奥に消えていきました。
その後、層雲峡周辺でエザノウワミズザクラを探索し、ようやく発見できました。
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GXR@5.1mm、ISO=200、F5-1/80、-0.7EV、撮影年月日・時刻: 2011年6月27日、17時36分

 標高が高いので未だ咲いていてラッキーでした。念のためこれも叩き出ししましたが、坊主(^^: 更にまたまた今度は標高を下げて再度廃農家のスモモ狙いで探索を続けます。そうしてあるスモモを叩いた時、それらしき蝶影が飛び出しました。そのうちやや活発にまるでゼフのように樹上を舐めるように飛び始めました。単眼鏡で確認すると、ヤッター!リンゴです。何とか頭上近くに止まってくれました。よし!300mmで撮影しよう・・・と思ったら、生憎広角をつけています(^^; 慌てて車に取って引き返してきたのですが、リンゴは消えておりました。トホホでした。間もなく日が暮れてこの日は時間切れ。翌早朝、このポイントに直行し、叩き出しを行いますが、影も形もありません。おかしいな~と思ってフト下草を見ると、何と、リンゴが目の前にいるじゃぁないですか! 
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D90-85VR、ISO=400、F11-1/400、-0.7EV、撮影年月日・時刻: 2011年6月28日、6時48分

 前翅に楕円形性標があり♂でしょう。葉にほぼ平行に体を傾ける傾斜日光浴をしておりました。毛むくじゃらの翅基部、目元の表情は早春に出現するコツバメそっくりですね! 管理人はFixsenia属の観察経験があまりなく、他種でもこのような傾斜日光浴をするのかどうか?興味があるところです。この子の広角を撮影しようと不用意に接近したら逃げられてしまいました。その近辺にも2個体ほど下草で日光浴をしておりまして、知らずに飛ばしてしまい後悔することしきり。その後樹上に上がった個体は時々飛び出してはパトロール飛翔(探♀行動かも)して葉上で日光浴をしておりました。こんな恰好で筋肉痛にならないのでしょうか?
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D7K-34、ISO=800、F11-1/800、-0.7EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻: 2011年6月28日、7時43分
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D7K-34、ISO=800、F11-1/800、-0.7EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻: 2011年6月28日、7時44分

 この後、また別のリンゴポイントを求めて探索。更にもう一カ所のポイントを発見できました。実質一日ちょっとの探索で数ポイントを発見できたので、リンゴもかなり広く浅く生息していることを確信しました。しかしいずれの生息地でも限られた樹木での発生ですので、過度の採集圧がかかれば存続が厳しいのが実情でしょう。優しく見守りたいものです。

 さて、ダラダラ更新してきたこの遠征記も今回が最終回です。北海道で撮影すべき種はまだまだ沢山残っております。いつか再訪して楽しみたいと思っております。今回遠征では特にブログ仲間のmaedaさんには大変お世話になりました。改めて御礼申し上げます。また現地でご指導・アドバイス・激励を頂いた多くの撮影仲間の皆様、有難うございました。この場を借りまして御礼申し上げます。  <おしまい>
# by fanseab | 2012-03-22 23:25 | | Comments(14)