探蝶逍遥記

香港遠征(10/6-9):その2

 2日目(10/8)の朝、起床すると前日の登山の疲れが残って体がだるい(^^;; ただ私的新種が今日も撮影できるかと思うと、ワクワクして元気が出てきます。ホテル前、8時半にピックアップしてもらい、本日の観察ポイント、新界地区・鳳園に向かいます。鳳園は昔ながらの香港の田園風景を残す場所で、現在はこのポイントに生息する蝶と周辺環境を香港特別行政区の協力でNGOが保全・管理しています。不足する管理運営費は小学生の生態・環境教育として見学をプロモーションし、その見学費を充当する等、予算不足を補う工夫をしているとか。

 最初にその管理事務棟にお邪魔しました。
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壁のペインティングが可愛らしくて好感が持てます。ここで管理責任者のYさん他スタッフと懇談。そうこうするうちに賑やかなグループが到着。香港鱗翅学会と交流されている台湾の蝶屋さん一行でした。半数以上が女性メンバーなのに、ビックリ。皆さん、最新のデジ一眼をぶら提げ、管理棟内に掲示された生態写真を見ながら一気に盛り上がっています。

 その後、早速フィールドへ。ワーッと歓声が上ったポイントに出向くと、ウラフチベニシジミ(Heliophorous epicles)の吸蜜シーンにカメラマンが鈴なり状態。このシジミは前回撮影済みなので、こちらは皆さんが撮影を終えるのを待って、ゆっくりと撮影。このシジミ、尾が長いので、折れてもいないのに垂れ下がっています。
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R1@5.6mm, ISO=200, F5.9-1/330、-0.3EV

 センダングサが咲く同じポイントでまたしても大きな歓声が。今度は小生初体験のシロスソビキアゲハ(Lamproptera curius)。今回遠征のメインターゲットの一つなので、台湾勢に気後れしてはならじと、割り込みも辞さず必死にレンズを向けましたが、やはり、他のカメラが干渉して出来上がりはイマイチ。合同撮影会?の難しさを実感しました。
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D70, ISO=500, F5-1/1250、撮影時刻:10時04分

 スラウェシや北タイで観察した仲間のアオスソビキアゲハ(L. meges)に比べると大変地味な印象ですが、飛翔中、トンボと見間違う姿はアオスソビキと一緒です。落ち着いて周囲を見渡してみると、いるわいるわ、かなりの個体数が飛び回っています。沢沿いにはこのアゲハの食草が繁茂しているから・・・と会長さんのコメント。

 この後、台湾勢と少し距離を置いて撮影していると、会長さんが手招きしています。急いで行ってみると、シロスソビキアゲハが2頭吸水中。しかも1頭は勢い良くポンピング(腹端から吸水した水を噴出す行動)しているではないですか!!絶好のチャンスを逃してならじと、シャッターを連射モードに切り替えバシバシ50コマ程度、写しまくったところ、2コマほど、腹から出た水滴が写ってくれました。ただ、後から冷静に考えると、横方向から水滴を狙うべきと反省しきり。連続した水滴がご覧頂けますでしょうか?
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D70, ISO=640, F7.1-1/1000、+0.3EV

 ふと、花壇を見やるとスジグロカバマダラやコレ(ガランピ)ルリマダラ(Euploea core)がフワフワ舞っております。こうした光景は本当に癒されます。のんびり見ていると突如、上空にどてかいアゲハが!! おぉ!見紛うことなく、ヘレナキシタアゲハ(Troides helena)の♂です。香港での最終化が9月頃までと聞いていたため、これは何と言う幸運でしょう。400mmズームを360mmにセットして置きピンではなく、難易度の高い、姿を見ながらのMF合焦で飛翔を狙います。海外遠征で、キシタ♂との出会いもこれで5回目なので、少し余裕が出てきて、数10コマで5コマほど見られるショットがありました。ベストショット(と言っても相当なトリミングをしております)をお見せしましょう。
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D70S-VR84@360mm(トリミング), ISO=640, F5.6-1/1250、-0.3EV、撮影時刻:10時33分

 こうして見ると、ストローを緩めて吸蜜準備態勢を取っていることがわかります。ただ期待を裏切って吸蜜シーンは見ることができませんでした。会長さんによれば、吸蜜は早朝か、午後3時頃が狙い目とか。キシタ系♂の吸蜜シーン撮影はまたまた今後の宿題事項になりました。ここはアゲハ類が吸蜜を好むランタナが沢山植えてあって、ベニモンアゲハ(Pachliopta aristrochiae)も来ておりました。ベニモン、ヘレナキシタ共にウマノスズクサ食いで、当然この食草もこのポイントに豊富にあることの証明です。小生、ベニモン撮影はこれが初体験ですが、ちょっぴりスレ品が残念。そこで逆光で美しさを補う作戦で作画してみました(^^;; 
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D70S-VR84@300mm, ISO=500, F5.3-1/1250、+0.3EV

 ランタナポイントから森を抜け、更に西に移動してオープンランドで探索。小川を挟んだ対岸の繁みに黒いヒカゲチョウの影が。400mmズームで確認すると、ルリモンジャノメ(Elymnias hypermnestra)。ただちょっと遠過ぎてガッカリ。そうこうするうちに、また台湾勢が賑やかに集まってレンズを向けていました。
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どれどれ、何がいたのかなあ?と確認すると、何と、目の前にはロヒタキマダラルリツバメ(Spindasis lohita)!!
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D70, ISO=200, F3.8-1/500、撮影時刻:11時27分

 こいつも香港遠征のターゲットだったので、急に心臓ドキドキモード。でも逃げる気配がなさそうなので、じっくりと狙うことができました。小生、恥ずかしながら日本国内でキマルリ(S.takanosis)は撮影未体験。国産キマルリに比べると、裏面の黒班は濃い小豆色を帯び、中の銀細線もくっきりとして螺鈿細工のような艶やかさです。冷静に見ればスレ品で残念ですが、一応4本の尾状突起は完全です。風でそよぐ突起の2本が後方に揃った瞬間にシャッターを押すのは結構骨が折れました。4本も尾状突起があるシジミを綺麗に写すのは本当に苦労します。

 そうこうするうちに時計は12時を過ぎておりました。台湾勢は午後、小生らと別れて行動するため、全員揃って記念写真です。「は~い、チーズ!」
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日本(小生1名のみ)、台湾、香港の3ヶ国の蝶屋さんが互いに握手、次回の再開を誓って別れました。将来台湾遠征を計画中の小生にとって、貴重な人脈が出来た楽しい一時を過ごすことができ、皆さんに感謝です。次回は夕方6時まで粘った当日午後の撮影行についてご報告いたしましょう。
# by fanseab | 2006-10-18 23:03 | | Comments(14)

香港遠征(10/6-9):その1

 10/6の年休取得、10/9の休日利用で、3泊4日の香港遠征が実現できました。小生にとって、香港は2度目の遠征。2年前はタムロン90mmの絞込み動作不良でデジ一眼画像の大半が没になる憂き目にあったため、今回は撮り直し+αが目的です。前回同様、今回も香港鱗翅学会会長さんにお世話頂き、一定の成果を出すことができました。そこで3~4回に分けて香港の蝶をご紹介したいと思います。

 初日(10/7)は新界地区東南部にある馬鞍山(マーオンシャン:標高702m)の尾根筋にヒルトッピングして来る蝶狙い。山名の由来通り、馬の鞍に似た急峻な山です。
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小生が「今日は初日だし、とても山頂まで登る自信ないんですが・・・」と不安混じりに切り出すと、会長氏(↑の写真の人物)曰く「大丈夫、大丈夫、中腹までだから・・・」と安心させてくれました。しかし、この言葉を素直に信じた小生が反省することに。。。

 登山口を登りはじめると、早速ルリモンアゲハ(Papilio paris)が林道を横切っていきます。整備された林道が途切れると、突然、直登に近い急峻な登り。途中数箇所、鎖場ならぬロープを頼って必死によじ登ること1時間半、ヘトヘトになって目的のポイントに到着。麓から吹き上げる風が心地よく、ツマベニチョウやアオスジアゲハが尾根筋を駆け抜けていきます。まずは上昇気流に乗るツマベニ飛翔のロングショット。紺碧の空に浮かぶオレンジチップはいつ見ても鮮やかです。
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D70(トリミング), ISO=640, F13-1/1250、-0.7EV

 さて、ヒルトッピングしてくる蝶の主役はシロミスジの仲間(Athyma属)です。日本のイチモンジチョウに比較してはるかに俊敏で、テリ張りゾーンに侵入してくるライバルを追い散らすシーンは迫力があります。その代表はメスグロミスジ(Atyhma nefte)♂。前翅先端のオレンジ班が印象的です。相手を威嚇するかのように触覚を前方に突き出した占有ポーズはタテハならではの凛々しさ。東南アジアに広く分布する普通種ですが、小生初撮影で大喜び。山登りの苦労も報われた感じです。
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D70S-VR84@400mm, ISO=400, F11-1/320、撮影時刻:12時14分

 これと混飛していたのが、ランガシロミスジ(A.ranga)♂。閉翅での裏面は日本のゴマダラチョウそっくり。
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D70S-VR84@400mm, ISO=500, F9-1/400、+0.3EV
 メスグロ、ランガの迎撃相手は、同じ仲間以外にモンキアゲハ、アオスジアゲハ、メスアカムラサキ♂、ツマグロヒョウモン♂、ヤクシマルリシジミ、ツマベニチョウと賑やかなものでした。

 シロミスジ同様、強くテリを主張していたのが、チビフタオチョウ(Polyura athamas)。薄黄色の帯状紋が飛翔中はピカピカ光ります。テリ位置はAthyma属より高い枝先を好むようです。
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D70S-VR84@400mm, ISO=500, F9-1/800、-0.3EV

 テリを張るのはタテハばかりではありません。文字通りイチジク類を食樹とするイチジクシジミ(Iraota timoleon)もそうです。前回の遠征では超ボロ品の撮影しかできませんでしたが、今回はやや良好な個体をゲット。幸運にもメスグロミスジとのツーショットが撮れました。テリを張る者同士がこれほどまでに至近距離でカメラに収まるのも珍しいことだと思います。
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D70S-VR84@400mm, ISO=500, F11-1/320、-0.3EV

 相手を迎撃しながら、何回かテリ位置を変えたイチジクシジミ。突然開翅するではありませんか?「ヤッター!」慌ててカメラを向けての撮影。相手を見上げる角度のため、表翅全体を写しこめませんでしたが、後翅の瑠璃色ははっきりと撮影できてヤレヤレです。もう少し接近したいものの、撮影ポイントは痩せ尾根の上。転落したら命がないので、400mmズームの威力が発揮されるシーンではありました。
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D70S-VR84@400mm, ISO=500, F9-1/800、+0.3EV

 ひとしきり撮影を終えるとあっという間に正午を過ぎていました。菓子パンを1個齧り、水で流し込む昼食で一息つくと、急に尾根筋登攀の疲れがドッと出てきました。時間的に新規に飛来してくる蝶も少なそうなので、下山です。しかし、どんな山でもそうですが、登りに比較して下りは厳しい!足元が滑りやすい踏み跡に注意しながら必死の思いでの下山です。標高差合計1000m超の登山は最近していなかったので、最後は膝が笑ってしまいました。下山した後で会長氏曰く、「実は香港の蝶観察ポイントの中でもアプローチの難易度は1,2を争う・・・」早くそれを先に言ってほしかった~(涙)。

 下山して麓の売店で冷えたクリームソーダを飲み干すと、不思議なものでまた撮影意欲が涌いてきました。「チネンシスカニアシシジミ(Miletus chinensis)の観察ポイントに行くか?」との提案にすぐに乗り、車で数分のポイントに。香港では珍品の部類で「個体数も少ないから期待しないように・・・」と釘を刺されましたが、着いてみると、早速ススキと思われる繁みから1頭の暗赤灰色のシジミが飛び立ちます。暗い環境が好きなシジミなので、自然光で撮影できる場所に止まるのを待つまで時間がかかりました。
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D70, ISO=500, F6.3-1/500、+0.3EV、撮影時刻:15時21分

 通常、アシナガシジミグループの裏面は複雑な線状紋を持ちますが、本種はボンヤリとした斑紋で目立たない印象です。一方で緑色に光る複眼が神秘的。この後、会長氏はしきりにススキ周辺をガサゴソ探索。「面白いものが見つかったから来い!」と会長さん。指差す先にはカニアシシジミの亜終令幼虫が。幼虫の周辺には彼らの餌となる、アブラムシの幼虫がびっしり。そのまた周囲にはアブラムシの成虫とこれから蜜をもらう蟻の姿も。日本のゴイシシジミ同様、肉食シジミの生活史はよく似ています。
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D70(トリミング), ISO=500, F9-1/30、内蔵ストロボ

 夕方5時過ぎ撤収。ホテルに帰ってシャワーを浴びたらバタンキュー状態でした。次回は、台湾からの蝶屋さんとの合同撮影会の様子等をご紹介したいと思います。
# by fanseab | 2006-10-12 21:44 | | Comments(18)

秋のウラギン(9/30)

 早いもので明日はもう10月。今日は買い物ついでに神奈川・多摩川べりを散歩。コスモスにはヒメアカタテハが群れていて、さすがに秋本番の風情。あたり一面に拡がるクズの群落を通り過ぎると、でかいシジミが飛び立ちます。ウラギンシジミの♀でした。すぐに繁みの下に潜り込みます。
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R1@5.6mm, ISO=200, F5.9-1/310、+0.3EV

 新鮮な秋型でした。ちょっと驚かすと、すぐに飛び立って今度は葉上に。薄日が幸いしたのか、ちょっとの辛抱で待望のご開帳。開いてわかりましたが、ド完品でニッコリ。♀の開翅は意外と狙っては撮れない対象なので、満足です。
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R1@5.6mm, ISO=200, F5.9-1/440、-0.7EV

 こうやって画像を仔細に見ると、縁毛の色が前翅と後翅で異なり、前翅は赤く、後翅は白いことがわかります。頭部の赤いアクセント、表翅の銀白色紋とあいまって、大変お洒落な蝶であることを再認識しました。次に飛び立って止まったのは、食草であるクズの葉上。このシジミにしては全開に近いポーズを取ってくれました。縦位置広角でご覧ください。
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R1@5.6mm, ISO=200, F5.9-1/440、-0.7EV

 クズ畑の脇にあるカナムグラを検すると、破れ傘のような粗末な造りのキタテハの幼虫巣がいくつも見つかります。裏返してみると、丸々と太った終齢幼虫が。
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R1@5.6mm, ISO=200, F5.9-1/290

 キタテハ成虫は夏型に混じって秋型が登場していました。アップした写真の幼虫が成虫になる頃、すべて秋型に切り替わっていることでしょう。
# by fanseab | 2006-09-30 20:22 | | Comments(16)