探蝶逍遥記

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フタスジチョウの飼育メモ:その2

 8月22日付記事(クリックでジャンプの続きです。
前回は、山梨県で採卵した4卵のうち、個体#Aを中心に各ステージの経過を述べました。今回は#B,#C,#Dについて、その後の経過です。
 先ず#C、こちらは、8月27日に無事♂が羽化。

+++画像はクリックで拡大されます(モニター環境に依存)+++
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EM12-Z60、ISO=200、F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:8月27日

 前翅長19mm。やはりサイズは小ぶりでした。さて、残りの個体#B,Dですが、こちらは越冬態勢のモードでゆっくりとした成長モードに入っておりました。8月上旬より両個体共に夜間は冷蔵庫保管、日中は室温保管としました。これは以前、Neptis属研究の権威、F氏よりご教授頂いた「ヒートショック管理法」に従った手法。この手法が効果があったようで、7月下旬~8月下旬にかけての糞量は両個体共に、数個/dayのレベルでした。ところが9月上旬に所用で、6日間ほど夜間冷蔵庫保管を怠ったためか、個体#Bは覚醒、一気に糞量が増加、9月9日には3齢に。その後糞量は20個/dayで推移し、9月21日に終齢到達。10月4日に蛹化、12日に無事♀が羽化しました。
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EM12-Z60、ISO=200、F7.1-1/160、外部ストロボ、撮影月日:10月12日

 前翅長25mm。8月13日に羽化した♀よりも僅かにサイズが大きい個体でした。
 一方、個体#Dは8月30日に糞1個を確認したのを最後に糞を出しておりませんでした。9月19日に巣を開封して確認すると、既に干からびており、残念ながら★様になっていました。やはり室温飼育では日中、空調の効いた20度近辺に温度管理しないと越冬モードを保持するのが難しいのかもしれません。ここで、今回飼育で羽化した♂1♀2個体と山梨県で野外観察した♀個体の開翅比較画像をアップしておきます。
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野外個体は7月7日撮影分

 今回飼育した3個体を検する限り、野外個体と比較して特別な斑紋変化はないように思われます。
 前回記事では比較できなかった、フタスジチョウ♂♀の蛹の形状比較についても述べておきます。♂1♀2、合計3個体の比較画像は以下の通り。「♀その2」とメモされた個体のみ羽化直前の撮影であることはご了解下さい。最初は側面画像
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 あくまで今回検した3個体の比較からですが、下記の♂♀形質差があると思います。
(1)前翅外縁と後縁のなす角度:α
 ♀はほぼ直角であるのに対し、♂は明らかに鈍角。
(2)「前翅長FWS」対「蛹の全長PL」比:FWS/PL
 ♂:0.43
 ♀1:0.54
 ♀2:0.53
 ♀は♂より20%ほど相対前翅長が長い。

 続いて背面画像。
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(3)L部分の形状
 側方への迫り出しは♀は台形状、♂はなだらかな一山形状。迫り出し巾が異なるため、
♂は♀に比較して腹部の長さが長く、細く感じられる。

 上記(2)については、成虫の(前翅長/胴体長さ)比に対応していると思います。既にアップした♂♀開翅画像と比較すると、♂♀の翅形差も確認できて興味深いものがあります。なお、♂♀交尾器形状を反映して、尾端構造も有意差があるのですけど、これについては、別の機会に記事にしたいと思います。
by fanseab | 2017-10-27 21:49 | | Comments(2)

セスジスズメの雨宿り(10月下旬)

 今日は衆議院議員選挙の投票日。生憎、関東地方は超大型台風21号の接近で、朝から雨模様。午後になったら風が強まると思い、午前中に投票所へ。途中、マンション植栽のクスノキに褐色の物体がぶら下がっているのに気が付きました。スズメガが雨風を避けていたのです。投票を済ませ、昼食後風雨が強まる中、カメラを持って再度現場へ。相変わらず雨宿り状態でした。

+++画像はクリックで拡大されます(モニター環境に依存)+++
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EM12-Z60、ISO=640、F7.1-1/30、外部ストロボ、撮影時刻:13時14分

 どうやらこの子は、セスジスズメ(Theretra oldenlandiae)。何とか葉上の雨滴まで表現できました(^^) 次は接近戦画像。
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EM12-Z60、ISO=400、F7.1-1/30、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影時刻:13時11分

 こうして見ると、蜘蛛の巣を左片脚と右前翅に引っ掛けて上手にバランスを取っています。接近戦でストロボを焚くと背景が暗く、不自然になりがちです。ここでは対策としてメインストロボ以外に、スレーブストロボを背景の葉に接近させて焚いています。雨量も激しくなっていたので、右手でカメラを構え、左手に雨傘&スレーブストロボを保持しながらの苦しまぎれのショットになりました。カメラ・レンズ・ストロボは防塵防滴仕様ですが、スレーブストロボはそうではありません。傘をさしながら必死に撮影するのも本当に久しぶり。以前、台風接近中の滋賀県下、同様な状況でクロシジミを撮影した経験(クリックでジャンプを思い出しました。

 台風一過まで、この子が無事雨宿りできますように。。。。
by fanseab | 2017-10-22 15:26 | | Comments(2)

ミヤマチャバネセセリ幼虫の生息数調査(10月中旬)

 多摩川中流域ではミヤチャは基本年3化。現在は第3化世代から育った幼虫が中齢~終齢状態になっています。11月上旬にはほぼ全ての老熟幼虫は地表に降りて蛹化・越冬態勢に入る予定。そこでこの時期、同種幼虫の生息数を簡易トランセクト法で調査しました。昨年も同様な調査をしております。過去6年間の結果は以下の通り(頭数には寄生個体も含む)。

2011年 13頭
2012年 29頭
2013年 21頭
2014年 データなし(記憶が曖昧だが10頭は確認?)
2015年  4頭
2016年  1頭
 
 昨年は僅か1頭で、今年が坊主だとヤバイなぁ~と思いつつ、いつもの調査領域:30mX800mを歩いてみました。その結果、

2017年 11頭

でした。ヤレヤレ何とか二桁達成です。この結果をどう見るか? 二通りの見解があるでしょう。

(1)ミヤチャは本来長周期の発生の波があり、個体数の少ない時期を脱して、これから増加傾向に向かう。
(2)長期的に減少傾向にあり、今年は偶発的に個体数が増加しただけである。

 もちろん、仮説(1)を信じたいところです。来年以降も同様な調査を継続し、事実確認をしていきたいと思います。ところで成虫は、春先の第1化以降、2・3化個体を目撃できておりません。本年夏場は真面目に多摩川沿いで観察していないので、成虫の撮影ができなかったのは残念でした。今回の調査で撮影した幼虫の画像を貼っておきましょう。先ずは寄生個体。

+++画像はクリックで拡大されます(モニター環境に依存)+++
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EM12-Z60(自動深度合成+トリミング)、ISO=64、F7.1-1/200、撮影時刻:11時16分
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EM12-Z60(トリミング)、ISO=64、F6.3-1/200、外部ストロボ、撮影時刻:12時10分

 頭殻模様から判断して、一枚目は終齢、二枚目は3齢でしょう。次に正常個体。
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EM12-Z60(トリミング)、ISO=200、F7.1-1/160、撮影時刻:12時13分

 こちらは恐らく4齢。蛹化まで無事辿りつけることを期待しましょう。
さて、調査ルートを歩いていると、足元から体長2-3cmの小さなバッタが沢山飛び立ちます。結構敏感で、そっと接近して覗き込むと、腹部の鮮やかなサーモンピンクが目に飛び込んできました。思わずパチリ。。。。
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EM12-Z60、ISO=64、F5.6-1/320、撮影時刻:11時05分

 ヒナバッタ(Chorthippus biguttulus)の♂だと思います。間違っていたらご指摘願います。♀は腹部が赤くないようですが、どうやら♂でも赤色を帯びない個体がいるようです。とにかく個体数が多く、同所で観察できるトノサマバッタの個体数を1とすると、概ね100個体は生息している感覚。夏場から発生しているバッタですけど、これまで気に掛けなかったこともあって、これほど数が多いとは! 秋口(第2化?)に猛烈に個体数を増やしている可能性があります。このバッタをもうちょっと、観察してみようかと意気込んだら、急に寒気が入り込んで関東地方は連日雨模様。止む無く観察は中断しています。早く晴れてくれないかなぁ~!!
by fanseab | 2017-10-16 21:44 | | Comments(8)

コクサギ食いのアゲハ

 拙宅庭にはPapilio属の食うホストを3種類植えてあります。以前からあったサンショウ、本年新規に追加したカラスザンショウとコクサギです。カラスザンショウは将来ミヤマカラスやモンキ飼育目的のため、今年春先に種蒔きから育てた3株。コクサギは昨年秋、園芸ショップ経由でネット購入した5株です。コクサギは今年オナガ・カラスの飼育に活用できました。さて、拙宅に訪れるPapilioで最も多いのはもちろんアゲハ(P.xuthus)。これまではサンショウに産卵するのを観察してきました。今年はカラスザンショウとコクサギが加わったので、この両者に産卵するのか?注意深く観察しておりました。結果はカラスザンショウには産んだのですが、コクサギは皆無。本田計一博士の著書(※)にはアゲハの食草選好性に関して記載があります。

 これによれば調査対象のミカン科8種の中で、「カラスザンショウには産卵するが、コクサギには産まない」。さらに幼虫が摂食するかも同時に調査されており、ここでも「カラスザンショウは食うが、コクサギは食わない」とまとめられています。産卵選好性については拙宅の観察結果とよく一致します。
 さて、拙宅のサンショウ株は大小2株。小さな株に隣接してコクサギの鉢が置いてあります。この夏、偶然コクサギ葉上にPapilioの初齢幼虫がいるのを発見。アゲハにしては少し赤味を帯びた個体でした。

+++画像はクリックで拡大されます(モニター環境に依存)+++
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EM12-Z60(自動深度合成+トリミング)、ISO=64、F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:8月13日

 ひょっとしてクロアゲハの初齢幼虫かなと思いつつ、そのまま経過観察すると、幼虫は順調に終齢まで育ち、この時点でアゲハの5齢幼虫と判明。
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EM12-Z60(自動深度合成+トリミング)、ISO=200、F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:9月10日

 因みにこの個体、背面腹節境界に白色条線(矢印)がある変わった幼虫。参考までに後日撮影した正常斑紋個体と比較してみました。
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下段は10月13日撮影。

 コクサギ上で育ったこの子は無事蛹化、♀が羽化しました。
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EM12-Z60(自動深度合成+トリミング)、ISO=320、F6.3-1/100、撮影月日:9月24日

 拙宅庭内で蛹化したアゲハは9割がた寄生されているので、成虫が無事羽化した時は嬉しかったですね。先にご紹介した本田博士の実験結果とは異なり、コクサギでも摂食、羽化まで至ることが証明されました。ただこの子の出自を辿ると、母蝶がコクサギに産卵していたかは不明です。実はサンショウは、8月中旬時点で前の世代のアゲハ幼虫が葉を食い尽くしていた状態でした。一方、このサンショウとコクサギ株は隣接していて、枝伝いに幼虫が行き来できる状態でしたので、もしかすると、サンショウ葉上で孵化した幼虫が餌不足で偶々コクサギに移動し、コクサギを食い始めたのかもしれません。

 一方、カラスザンショウの結果です。 サンショウに比較すると頻度は少ないものの、拙宅に飛来したアゲハは産卵してくれました。カラスザンショウ葉上の初齢幼虫です。
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EM12-Z60、ISO=320、F5.6-1/125、外部ストロボ、撮影月日:8月13日

 また、こんな実験もしてみました。サンショウ葉上で餌不足で餓死しそうな若齢~終齢幼虫を途中から強制的にカラスザンショウに移動させ、摂食挙動を確認しました。結果、移植した幼虫の約7割の個体は問題なく食いましたが、残りの個体は全く食いません。一方、サンショウからコクサギに移動させた実験では、100%食ってくれませんでした。
 結局、本田博士の実験結果は概ね妥当であるけれど、例外的にコクサギを食うアゲハ個体がいることが判明しました。

※<参考文献>
本田計一・村上忠幸,2005.ワンダフルバタフライ(不思議にみちたその世界).化学同人,京都.
by fanseab | 2017-10-13 21:52 | | Comments(4)