探蝶逍遥記

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コジャノメの産卵(5月下旬)

 昨年来の課題で、今回はコジャノメ第1化で挑戦。昨年8月にヒメジャノメ第2化の産卵挙動を観察した経験から午後2時頃にピーク時間帯があるだろうと推測し、探ってみました。場所はこのところマイフィールドにしている東京都下の谷戸ポイント。念のため、正午前後から彼らの様子を確認してみました。正午前後は全く不活発で、こちらが茂みに足を踏み入れるとサッと飛び立ち、すぐに静止するだけです。
 先ず、ここでのホストの見極めをしてみました。一番有力なのはチヂミザサですので、運試しで、2-3枚葉裏を捲ってみたところ、何と3枚目でビンゴ! 1卵が付いていたチヂミザサの環境です。

+++横位置画像はクリックで拡大されます+++
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GX7-Z12、ISO=400、F10-1/30、-1.0EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時45分

 矢印の葉裏に1卵ありました。南向きで、比較的明るい環境。次に葉捲りした状況画像。
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GX7-Z12、ISO=200、F3.5-1/50、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時43分

 いつもは母蝶産卵撮影の後、卵撮影をするのですけど、今回は順番が逆になりました。ほぼ一発ツモで卵が発見できたのに気を良くして、チヂミザサを捲り続けますが、後が続きません。外れ籤ばかり(^^; 少し間を置いてから、ようやく複数産卵の事例も発見。
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D71K-85VR(トリミング)、ISO=400、F11-1/320、-0.3EV、外部ストロボ、撮影時刻:14時09分

 2および3卵塊の事例です。次にこれらの卵塊を発見した現場の状況。
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GX7-Z12、ISO=200、F5-1/30、-1.0EV、外部ストロボ、撮影時刻:14時00分

 #1,#2は各々2卵塊、3卵塊の産卵場所を示します。その後、葉捲りを色々試した結果、比較的草丈の高いチヂミザサの葉裏に産む事例が多いような気がしました。結局この日は葉捲りだけで合計10卵を発見。♀の産卵時期のピークにあることは間違いないようです。
 さて、コジャノメ達の挙動ですが、午後2時過ぎ頃から♂が活発に飛びはじめ、結構明るい環境まで飛び出してきて探♀行動をスタートさせました。更に2時半頃からようやく♀の産卵行動がスタートした模様です。平均的な鮮度の♀個体閉翅画像です。
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D71K-34VR、ISO=400、F11-1/400、-0.3EV、外部ストロボ、撮影時刻:13時40分

 ♀の産卵挙動は昨年観察したヒメジャノメによく似ていて、上記のような静止モードが長く続いた後、急に思い出したように地表近くをウロチョロ飛び始め、連続的に産卵を行い、再度休止モードに入ります。この休止時間は少なくとも20分以上は継続する感じで、辛抱強くない管理人は待てずについ、他の♀個体を追いかけてしまいます。色々失敗しながら、ようやく撮れたのが次のショット。
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D71K-34VR、ISO=500、F11-1/125、外部ストロボ、撮影時刻:14時22分

慌てて上から見込むアングルですので、腹端も見えません。翅の位置も良くないので更にチャレンジ。今度は翅がほぼレンズに平行になりました。
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D71K-34VR、ISO=400、F11-1/125、外部ストロボ、撮影時刻:14時37分36秒

 しかし前翅が枝被り、これまた腹端も見えないB級ショットですので、更に撮り直しが必要ですね。結構暗い環境なので、ストロボ必須ですが、ストロボ光に相当敏感で、産卵途中で中断してしまう事例が相当多く苦労しました。次はその事例画像。
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D71K-34VR、ISO=400、F11-1/125、外部ストロボ、撮影時刻:14時37分14秒

 ここでは複数卵を産んでいた可能性が強かったのですが、シャッターを押した瞬間、フラッシュ光に反応して急に開翅した場面です。母蝶を驚かさずに撮影するためにはストロボ未使用が前提になりますが、そうなるとISO感度を相当上げねばならず、画像荒れが懸念されます。木蔭で産卵するジャノメ類撮影でいつも遭遇する難しさでしょうね。
 また、産卵場所がかなり薄暗い場所を好む♀個体もおりました。この娘は崖地の薄暗い場所を前脚連打で探索しており、チヂミザサの生えている林道沿いにも降りてきますが、チヂミザサには全く興味を示しません。恐らく崖地のスゲ類を物色しているようですが、ホストを特定できませんでした。全く同じポイントで、ホストの嗜好が全く異なる♀個体が存在することに驚かされました。
 さて、母蝶はひとしきり産卵を終えると、開翅モードで休むことが多いようです。
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D71K-34VR(トリミング)、ISO=400、F11-1/500、外部ストロボ、撮影時刻:13時50分

 相当長時間、開翅しておりますが、やはり相当敏感でカメラマンの僅かな動きですぐに閉翅してしまいます。♂も同様で、午後1時過ぎの時間帯には結構開翅休息している個体が多いようです。
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D71K-34VR(トリミング)、ISO=400、F10-1/400、撮影時刻:13時26分

 ♂は前翅表の白い性標(矢印)が目立ちますが、それよりも前翅翅脈の一部が異常に盛り上がり、まるで翅表に脚を載せているようにも見えますね。
 最後に恒例の卵超拡大画像です。
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GX7-P1442@42mm-P14R(トリミング+上段3コマ/下段4コマ深度合成)、ISO=200、F13-1/250、外部ストロボ+LED、撮影時刻:12時55分

 ジャノメ類の卵によく見られるように表面には細かい網目構造があります。直径は1.1mm、高さ1mm。これは葉捲りで発見した卵画像ですので産卵後経過日数は不明です。ただ胚形成などの色変化が無いので、産卵後3-4日以内と推定されます。次に同属のヒメジャノメ卵(昨年撮影)と拡大像比較をしてみました。
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 コジャノメの方が10%大きい程度で、全体の性状は良く似ております。現在2卵を飼育に供しており、全ステージ完了次第、飼育メモとして記事にする予定です。
by fanseab | 2015-05-31 21:23 | | Comments(2)

ウスバシロチョウの飛翔(5月上旬)

 皐月晴れのこの日、東京都下の谷戸で撮影。主目的の2種はどうも成果が上がらず、ガックリ。手ぶらで帰るのも何なので、20分ほどウスバシロチョウを追いかけてみました。この日はバシロ目当てのカメラマンも多く、背景に意図せず、カメラマンの姿も入り込んで、いい感じの仕上がりになりました。

 最初は女性カメラマン背景のショット。

+++横位置画像はクリックで拡大されます+++
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GX7-10.5(トリミング)、ISO=500、F8相当-1/2500、撮影時刻:9時40分

 静止狙いのカメラマンを嘲笑うかのように♂は探♀飛翔真っ最中。次いで逆光ショット。
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GX7-10.5、ISO=640、F8相当-1/2500、撮影時刻:9時45分

 休耕田での野菜栽培風景が背景に入りました。次は縦位置。縦位置で構えた場合は水平が狂うことが多いのですけど、この時はほぼ完ぺきな構図に仕上がりました。
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GX7-10.5、ISO=640、F8相当-1/2500、撮影時刻:9時45分

 丁度ハルジオンが咲く頃、計ったようにウスバシロが出現します。開花時期と蝶の発生時期がこれほど見事にシンクロしている事例は知りません。そこでハルジオン群落を通過する個体を狙いますが、カメラマンに驚くことが多く、なかなか思い通りの絵になりません。やっと仕留めたのが次のショット。
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GX7-10.5、ISO=640、F8相当-1/2500、撮影時刻:9時55分

 お次はこの日のベストショット。ハルジオン群落、カメラマン(意図した作画にあらず)が上手くバランス良く配置されました。
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GX7-10.5、ISO=500、F8相当-1/4000、撮影時刻:9時58分

 最後は整備された畝を背景に飛ぶウスバシロ。ここにも長玉持参のカメラマンが入り込みました。
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GX7-10.5(トリミング)、ISO=500、F8相当-1/4000、撮影時刻:9時59分

 僅か20分ほどの滞在でしたが、40コマ/秒の高速連射のお蔭で、結構歩留り良く撮れたように思います。カメラの技術進歩で、走り疲れせずに飛翔が撮影できるのは有難いことですね。
by fanseab | 2015-05-08 22:19 | | Comments(6)

Pieris属napi群2種第1化の産卵(4月中旬)

 テングやコツバメ産卵シーン撮影に成功したこの日、実は首題2種、つまり、スジグロシロチョウ(P.melete)とヤマトスジグロシロチョウ(P.nesis)の観察がメインターゲットでした。昨年も同時期、同じポイントでヤマト♂第1化らしき個体を観察しておりますが、もう少し第1化個体画像ストックを増やして管理人なりにスジグロ/ヤマトの外観上識別点を探るのが目的。既にyoda-1さんがブログ上で、両者の識別点については精力的に持論を述べられております。yoda-1さんの見解も参考にして、今回記事を書いてみましたが、もちろん採集をしておらず、♂の発香鱗確認をしておりませんので、同定間違いの可能性が残っております。この点はご了解下さい。
 最初はスジグロシロチョウの産卵。

+++横位置画像はクリックで拡大されます+++
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D71K-34VR、ISO=200、F11-1/400、-1.0EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時17分

 ホストはイヌガラシだと思います(若葉の場合、スカシタゴボウとの識別がイマイチ自信なし)。葉の軸を画面に平行に配置した方が、見栄えが良いのですが、そうすると必ず母蝶は体軸をカメラレンズの軸に平行に向けて産卵するので、この絵のように産卵シーンとしては没画像レベルになります。つまりスジグロ産卵を狙う時は葉の軸を予めレンズ軸に平行に置いて構える工夫が要るのでしょう。産卵後、開翅休息する♀です。
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D71K-34VR、ISO=200、F11-1/400、-1.0EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時18分

 スジグロ♀は後述するように前翅中室内の暗化が著しく(黒色鱗粉の発達が著しい)、中室内の2本の黒条線が明確に出る特徴があるように思います。次いで、ヒメオドリコソウで吸蜜する♀。
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D71K-34VR、ISO=200、F11-1/500、-1.0EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時14分

 この絵は後程、裏面の比較画像として再登場してもらいます。次にヤマトの産卵。最初は産卵直前に行う前脚連打行動の絵です。
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D71K-34VR、ISO=200、F11-1/500、-1.0EV、外部ストロボ、撮影時刻:11時59分

 試している葉はこれもイヌガラシと思われます(葉縁の切れ込みがもう少し深ければスカシタゴボウと断定できますけど、管理人の知見レベルではこれ以上の同定は不可)。一旦♀はこの葉から離れた後、舞い戻ってきて産卵をいたしました。
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D71K-34VR(トリミング)、ISO=200、F11-1/500、-1.0EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時00分02秒

 画面右上囲みが拡大像で、矢印が卵。この後、別の株にも産卵しました。
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D71K-34VR(トリミング)、ISO=200、F11-1/500、-1.0EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時00分20秒

 ここでは合計4回ほどの産卵行動を観察しましたが、いずれも葉裏ではなく葉表に産卵しておりました。管理人の乏しい経験では、スジグロの産卵位置はホストによらず全て葉裏。葉表に産むのがヤマト固有の行動パターンなのか?もう少し観察事例を増やしたいところです。実を言うと、この個体がヤマト♀であるか、最初は半信半疑でした。しかし、同定の助けになったのが、産付された卵の形状特徴。以前、ブログ仲間のtef_teffさんがスジグロ/ヤマト両者の卵および初齢幼虫を比較している記事
がありまして、ここで紹介されている微妙な卵形状の差異がヒントになりました。その卵の拡大像比較です。
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TG2@18mm(トリミング:スジグロのみ2枚深度合成)、ISO=1600(スジグロ)/400(ヤマト)、F14(スジグロ)/18(ヤマト)-1/100(スジグロ);1/200(ヤマト)、内蔵ストロボ(内蔵LED)、撮影時刻:10時07分(スジグロ)/12時18分

 先ず、産卵直後の卵の色合いですが、tef_teffさんが指摘されているように、スジグロが青白いのに対し、ヤマトは薄黄色です。形状はシロチョウ科に共通する砲弾ないしは紡錘形状ですが、スジグロは中間で少し太くなり、先端で急に窄まるコーラ瓶形状の様相。一方、ヤマトは底面からほぼ一定の太さを持続し、先端へ向かって緩やかに窄まる特徴があります。全体のバランス上、先端直径はヤマトの場合は少し細めの印象になります。なお、この比較画像で示したスケールはヤマトにのみ有効なので、両者卵の寸法比較はできません。今後、きちんと両者寸法比較をしてみたいと思います。
 以上の卵形状の差異、更には表翅斑紋も考慮に入れて、↑の一連画像をようやく「ヤマトの産卵シーン」と確信できました。
 次に一番識別が難しい♂の探索です。相当数の個体を観察した結果、「かなりの確率でヤマトと推定される」♂を発見。クサイチゴでの吸蜜シーンです。
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D71K-34VR、ISO=100、F11-1/320、-1.0EV、外部ストロボ、撮影時刻:9時29分

 ヤマト/スジグロを裏面側から識別する場合、前翅中室と後翅肩脈双方がきちんと把握できる画像を撮る必要があります。概ね吸蜜時には前翅を高く上げてくれるので、吸蜜シーン撮影が同定には極めて有効と思われます。気温が低い時はすぐに開翅して前翅を後翅内に折りたたんでしまうので、この時は表翅の斑紋から区別するしかないのです。
 次に参考としてスジグロ♂吸蜜シーンもご紹介しておきましょう。残念ながらこちらは当日まともな絵を撮れず、昨年撮影分です。
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D71K-34、ISO=400、F11-1/800、-1.0EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時40分(2014年4月下旬)

 ここで♂♀裏面の比較をしてみたいと思います。最初は♂。
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 識別形質としては2点あり、①肩脈(矢印#1)形状と、②前翅中室内にある細い黒条(矢印#2および#3)の出現状況です。①は学研標準図鑑p.62でコメントされている点で、ヤマトの場合は後翅翅脈に載る黒色鱗粉の巾が太く、肩脈の存在を消すほどに発達しております。一方、スジグロは後翅基部の橙色部の面積がヤマトに比較して広く、細く尖った黒い肩脈が明確に確認できます。もちろん♂にも個体変異があり、スジグロに近似した肩脈形状を示す個体もいるので注意が必要です。②も個体変異があるのですが、一般にヤマトでは黒条#3の発達が悪く、スジグロでは#2,#3の2本共に明確な個体が多いように思います。
 次は♀。
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 識別形質は♂と同じ。スジグロ♀は♂以上に中室の暗化が著しく、2本の黒条:#2、#3がくっきりと確認できる個体が多いですね。ヤマトの肩脈形状は♂よりは明確に出現しますが、スジグロ♀に比較して太い傾向にあるようです。
 今回は裏面にのみ着目しましたが、両者の同定はもちろん表翅の特徴も把握した上で総合勘案して実施せねばなりません。また、今回観察したポイントに飛んでいるシロチョウ類を観察した結果、面白いことに気が付きました。つまり、
「ヤマトはスジグロよりもサイズが小さい」
事実です。これは♂♀問わず、傾向があったように思います。この日、確認できたシロチョウ類をサイズ順に並べると次のようになります。
スジグロシロチョウ>ヤマトスジグロシロチョウ=モンキチョウ♀>ツマキチョウ
慣れてくると遠目からサイズを確認して「ヤマトだ!」と判断できました。本来、ヤマトとスジグロの混棲ポイントでは、時間的棲み分けがなされていて、ヤマトがより早く出現し、遅れてスジグロが発生するとされています。しかし、4月中旬は微妙な時期で、明らかに両者が混飛しているので、napi群の同定は益々難易度が増すように思います。
 とにかく、今回思いもかけず、ヤマトスジグロの産卵シーンを初めて撮影でき、本当に嬉しかったのでした。残念ながら、ヤマトの飼育をする時間的余裕がありませんでしたので、近い将来、できればスジグロとの幼生期比較もしてみたいと思っております。
by fanseab | 2015-05-05 22:37 | | Comments(2)