探蝶逍遥記

<   2014年 10月 ( 7 )   > この月の画像一覧

ツシマウラボシシジミの卵(10月上旬)

 ツシマウラボシシジミ(Pithecops fulgens tsushimanus)はご存じの通り、国内では対馬にのみ生息していた可憐なシジミチョウですが、現在はほぼ絶滅状態にあり、国内産チョウ類で最も存亡の危機に直面している種と言えます。今回、知人のN氏の特別のご厚意により国内某所で飼育管理されている本種卵の拡大撮影をする機会を得ましたので、その画像をご紹介することにします。
 母蝶はマメ科のヌスビトハギ類に産卵します。今回撮影したのもヌスビトハギ鞘上の卵です。

+++画像はクリックで拡大されます+++
f0090680_215207.jpg
GX7-P1442@42mm-P14R(トリミング+上:6コマ/下:4コマ深度合成)、ISO=200、F16-1/250、内蔵ストロボ(トリガー信号のみ)+スレーブ2灯

 直径は0.60mm、高さ0.36mm。ヒメシジミ族の卵はほぼ扁平な饅頭型が殆どですが、本種の卵は丁度コマのように底部がすり鉢型をしているのが特徴。扁平型の方が産卵対象物表面との接触面積が大で卵接着強度に有利に働くはずなのに、敢えて点接触に近い卵構造を有しているのは何故なのか? 解明してみたいテーマでもあります。また表面は網目模様の彫刻があるのですけど、まるでベニシジミのように粗い構造が目立ちます。ここで、管理人がこれまで撮影してきたヒメシジミ族の他種;ヤクシマルリシジミ、クロツバメシジミ、ヒメシジミの3種と卵拡大像の比較をしてみました(スケールが同一になるよう各画像の拡大率を調整)。
f0090680_2152438.jpg


 成虫のサイズを考慮すると、ツシマウラボシの卵直径は結構大きく、網目構造が比較対象の3種とは大きく異なることが理解できます。未撮影ですが、恐らく同属のリュウキュウウラボシシジミ(P. corvus)の卵もツシマウラボシと同様な構造特徴を呈するのだと思います。東南アジア遠征で撮影機会があればトライしてみたいと思っております。
by fanseab | 2014-10-27 21:55 | | Comments(14)

ヒメクロホウジャクの終齢幼虫(10月中旬)

 キタキチョウの交尾ペアを撮影する直前、草本類の茎上に大きな芋虫を発見しました。

+++画像はクリックで拡大されます+++
f0090680_20275020.jpg
GX7-Z60、ISO=200、F5.6-1/400(上);1/800(下)、-0.7EV、撮影時刻:10時50分

 一瞥してスズメガ科の幼虫と判断しましたが、その場では同定できず、帰宅後イモムシハンドブック(※)を参照し、ヒメクロホウジャク(Macroglossum bombylans)の終齢幼虫と確信いたしました。根拠は次の3点。
①側線が白く鋸状に突き出ている。
②尾角が直線的に伸び、地色は濃いブルー。先端は黄色に変化。
③頭部はブルーの地色に黄色条が走る。
 特に③が同定の決め手になるようです。なお、幼虫が付いていた草本はアカネ科のアカネ(Rubia akane )。ホウジャク類はアカネ科食いの種が多いのですけど、同科のヘクソカズラ(Paederia scandens)が完璧普通種で、どこにでも繁茂しているのに対し、アカネの分布は意外と局所的だと思います。この幼虫が付いていたアカネも人為的に移植されたと思われる場所にありました。このイモムシ、何と言ってもトカゲの背中を連想させる鋸状に突き出た側線が恰好エエですね!

※安田守(2014) イモムシハンドブック3、文一総合出版、東京.
by fanseab | 2014-10-23 22:27 | | Comments(2)

キタキチョウの交尾(10月中旬)

 この週末、関東地方はやっと本当の秋晴れに恵まれました。本当は9月初・中旬にかけて、このような好天を期待しておりましたが、今年の気まぐれな天気には泣かされました。さて、土曜日は日本鱗翅学会関東支部主催の「秋のつどい」に出席。ブログ仲間の講演や、小学4年生の蝶採集・展翅実習授業の感想文発表など、バラエティに富んだ内容で楽しむことができました。とりわけ注目されたのが、東大・矢後氏らによる、「皇居の蝶相とその変化」。過去1996年から5年おきに実施されてきたモニタリング調査の第3弾。その結果、2009-2013年にかけて51種が記録されたとのこと。その中で驚いたのが、なんと「アカセセリ」の初記録! 皆、「えーっ何それー!」とビックリ仰天。矢後氏は食草スゲ類が皇居内に移植された際に一時的に導入された「移入種」とバッサリ結論されておりましたが、管理人は「江戸時代以来、皇居内の草地で細々と命脈を保ってきた子孫が発見された」とロマンチックな仮説を立てたい所。でもこの仮説、やはり無理があるかなぁ~!
 恒例の懇親会も盛況で、蝶・蛾談義で楽しい一時を過ごすことができました。

 翌日は前夜の疲れも残っていたので、近場の公園でお気楽なお散歩観察。早速ハギの植え込み上でキタキチョウの交尾ペアを発見。
f0090680_20543322.jpg
TG2@5.5mm、ISO=100、F6.3-1/200、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:10時59分

 ♂が羽化前の♀蛹にぶら下がって待機し、羽化と同時に交尾を迫って「大願成就」したいつものパターンなのでしょう。本種の交尾シーンは久しぶりでした。ちょっぴり期待したムラサキツバメの姿もなかったのですけど、肩の力を抜いたお散歩観察で秋の一日を楽しみました。
by fanseab | 2014-10-20 20:54 | | Comments(6)

メスグロ・ミドリヒョウモンの産卵行動(10月上・中旬)

 今年も9月過ぎから夏眠明けヒョウモン類の産卵シーズンに入り、各種産卵シーン撮影を画策しておりましたが、天候不良で悪戦苦闘しました。概ね正午前後の産卵コアタイムに陽射しが弱い天気が続き、産卵日和にならないのです。「正午が曇っていたから、夕方陽が差した時にでも産卵しようかしら・・・」と、人間ならスケジュール調整を考えるのでしょうけど、母蝶は悲しいかな本能に従い、産卵時間帯を安易にズラすことはできません。そのためなるべく長期間生存して少しでも産卵に好適な時をひたすら待つのでしょう。

 先ずはメスグロヒョウモン。本種は昨年産卵シーン撮影に成功(外部リンクしておりますが、今回は新規ポイントでの観察。昨年の経験を活かして、比較的陽射しの良い、尾根道で待機していると、運よく正午過ぎにフワフワと母蝶が飛来し、コナラの樹皮に産卵を開始しました。

+++横位置画像はクリックで拡大されます+++
f0090680_21434372.jpg
D71K-34、ISO=200、F11-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時01分(10月上旬)

 秋の穏やかな陽射しを逆光で表現できて満足できるショットになりました。この後、別のコナラに移動し、例の如く、木登りしながら、徐々に高い場所に産み付けていきます。
f0090680_21442996.jpg
D71K-34(トリミング)、ISO=200、F11-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時05分(10月上旬)

 この画像で概ね8m程度の高さです。再度低い場所に舞い戻り、産卵を再開。
f0090680_21444865.jpg
D71K-34、ISO=400、F11-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時07分(10月上旬)

 この間、目線の届く高さに限定すると、合計8回「産卵ポーズ」を取りましたが、実際にはいずれも産卵しておらず、疑似産卵行動(空打ち)でした。これは昨年の観察結果と同様で、正規の産卵は、大略、10回(もしくはそれ以上)に1回程度しか行われないものと思われます。
 さて、お次はミドリヒョウモン。こちらは母蝶を見かけるチャンスがメスグロよりも少なく大苦戦。しかも産卵場所の選好性が不明なので手探りで観察を継続しました。幸いな事に、上記メスグロの産卵ポイントをミドリも好む事が判明。そこで待機して数回産卵シーンを目撃できました。先ずは産卵前に日光浴する母蝶の姿。
f0090680_214622.jpg
D71K-34、ISO=500、F11-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時24分(10月中旬)

 かなり汚損した個体ですね。残念ながら樹幹に産むシーンは撮影に失敗。立入禁止施設のフェンスの針金に産卵を試みるシーンのみ撮影できました。
f0090680_2146221.jpg
D71K-34、ISO=500、F11-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時36分(10月中旬)

 フェンスの針金には3箇所、産卵を試みておりますが、いずれも「空打ち」で実際には産卵しておりません。また、樹肌に産卵した2箇所も必死に探索したものの卵を発見できず、この2箇所も「空打ち」でした。どうやら、ミドリについても観察頻度は少ないものの、メスグロ同様、相当な「空打ち」が多いように思えます。メスグロもミドリも生涯に数100卵は産み付けるとされています。そうだとすると、概ね数千回は「空打ち」作業をするのでしょう。腹端を対象物に擦り付けた際の微妙な触感を頼りに最適な産卵場所を探す過程で、このような空打ちをするのか?あるいは腹内の在庫卵数が減少してくると、産みたくても卵が放出されないのか?どちらなのでしょうね? 管理人が観察した経験で言えば、ツマグロヒョウモンはこのような「空打ち」が殆どなく、産卵姿勢を取った後を観察すると、ほぼ確実に産み付けています。種類毎に産卵挙動は色々と異なるものだと思います。来シーズンこそはミドリが「本当に産卵した」場面の撮影をしたいものです。なお、産卵を終えたと思われる時間帯に珍しく水田脇の畔で吸水するミドリ♀を観察できました。
f0090680_21485697.jpg
D71K-34、ISO=500、F11-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:13時38分(10月中旬)

 アザミ等から糖分を補給するだけでなく、ミネラルやアンモニウムイオンを吸収しているのかもしれません。
 ♀にばかりスポットライトを当てましたが、ミドリ♂も頑張っておりました。
f0090680_21491746.jpg
D71K-34、ISO=500、F11-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:13時05分(10月中旬)

 もはや原型を留めない姿で、健気に吸蜜する姿に感動いたしました。
by fanseab | 2014-10-14 21:53 | | Comments(4)

ヒカゲチョウの卵(10月上旬)

 先日、ヒカゲチョウの産卵シーンを撮影した際、卵拡大像を撮り忘れておりました。
既に一昨年、前玉外し系で拡大像を撮影済ですが、今回、ミラーレス拡大システムで再撮影を行いました。この時期、アズマネザサの群落で葉捲りをすれば、卵はいくらでも見つかりますので、青緑色の残る比較的産卵間もない卵を選んで撮影。

+++横位置画像はクリックで拡大されます+++
f0090680_21481892.jpg
GX7-P1442-P14R(トリミング+5コマ深度合成)、ISO=200、F16-1/250、内蔵ストロボ(トリガー信号のみ)+外部ストロボスレーブ2灯、撮影時刻:12時17分

 直径は1.05mm。ほぼ真円形状です。表面の模様は先日ご紹介したヒメジャノメに比較して遥かに細かい網目模様で覆われ、マスクメロンを彷彿とさせる姿です。試みに一昨年撮影した前玉外し系と解像度の比較をしてみました。
f0090680_21483142.jpg
左画像撮影条件は前出。右画像:D7K-1855改@55mm(トリミング)、ISO=400、F29-1/160、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影時刻:16時35分

 もちろん卵は同一ではなく、拡大系も異なりますので、卵直径がほぼ同一になるようにトリミングを変えております。前玉外しでもある程度の網目構造は確認できますが、やはり超拡大システムで真面目に撮れば、それなりの細かい情報が得られます。アゲハチョウ卵のようにほぼツルツル構造だと、両者システムでそれほど有意差がないのですけど、ヒカゲチョウレベルで細かい表面構造を有する場合は、超拡大システムのメリットが享受できます。
by fanseab | 2014-10-07 21:48 | | Comments(4)

多摩川縁のアサマイチモンジ(9月下旬)

 ヒメジャノメ産卵シーン撮影目的で拙宅近くの多摩川縁を歩いていると、突然1頭のLimenitis属が止まりました。このポイント付近ではイチモンジチョウは大珍品で、確か10年ほど前に1頭見たきりで、本当に久しぶりだなぁ~と思いながらレンズを向けました。しかし、しかしですぅ! 何とアサマイチモンジでした!!

+++画像はクリックで拡大されます+++
f0090680_1019282.jpg
D71K-85VR、ISO=200、F11-1/500、-0.7EV、撮影時刻:14時15分

 どうやら♂のようです。時期的に第3化終盤戦の個体でしょう。続いて開翅。
f0090680_10191669.jpg
D71K-85VR、ISO=200、F11-1/640、-0.7EV、撮影時刻:14時17分

 この日は風が強く、なかなか開翅に移行してくれずヤキモキしましたが、翅表を確認してアサマと確信できました。♀ならば、もう少し粘るつもりでしたが、♂なので、それ以上追跡するのは止めました。この近辺にはもちろんホストのスイカズラは生えているものの、Limenitis属は滅多に観察できません。多摩川河川敷のような明るい環境は、本来アサマにとって好適地のはずで、当地で約30年観察を続けていますが、今回初めての出会いになりました。恐らく風来坊のようにやって来た♀から育った世代が細々と残っていたのでしょう。多摩川中流域は河川敷の砂防工事が進みつつあるので、ギンイチモンジセセリやミヤマチャバネセセリの生息環境は徐々に狭まってきています。元来珍品扱いの多摩川産アサマもこれから増々観察機会が減っていくかもしれません。運よく♀に出会えたら産卵シーンも撮影したいのですが、その目的のためだけならやはり、多産地の富士山麓に行くべきでしょうね。
by fanseab | 2014-10-05 10:23 | | Comments(4)

ヒメジャノメの産卵行動を探る(9月下旬)

 先にご紹介したヒカゲチョウと同時期に発生するヒメジャノメ第2化品の産卵行動も追跡してみました。同種の産卵シーンは2年前、撮影に成功(外部リンクしており、その時の画像を再掲載します。

+++横位置画像はクリックで拡大されます+++
f0090680_23185830.jpg
D7K-85VR(トリミング)、ISO=400、F11-1/80、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:15時08分(2012年9月30日)

 腹端も写っておらず酷い葉被り。再撮影の必要性を強く意識しました。当時、ヒカゲチョウ産卵シーン撮影のついでに撮影できたので、今回も楽勝かと翅算用しておりましたが、実際はムチャ苦戦しまして、結局、再撮影は失敗に終わりました。
 当初、↑でご紹介した画像の撮影時刻が15時08分でしたので、14時から17時頃にかけて♀の挙動を追跡しました。その結果、産卵挙動を計4回目撃し、その時間は、下記の通りでした。
①14時10分頃
②15時頃
③15時30分
④15時58分
 このうち、①②はホスト探索行動の後、結局産卵未遂。③はイネ科以外への葉裏への誤産卵。④はホストであるイネ科草本(エノコログサもしくはオヒシバ)への正常産卵でした。これを見ると14時~16時頃に♀を見張っておればすぐに産卵シーンが観察可能なようにも思えますが、実態はそうではなく、殆どの時間帯は葉上で休止しております。
f0090680_2324857.jpg
D71K-85VR、ISO=500、F11-1/250、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:16時25分

 曇天時はこの時間帯でも全く活動は無く、晴天時においても葉陰で間欠開翅日光浴状態を取り、産卵シーンへの移行は相当長時間を要しています。待機に我慢できず、暫く別個体を追跡した後、先ほどの静止場所に戻ってみると飛び去っていることもありますので、なかなか産卵行動を観察するチャンスがないのです。しかも一旦、産卵モードに入っても地上スレスレの草間をせわしなく飛行するものの、食草性状の選好性は相当神経質で、なかなか産んでくれません。この間、活発に活動しているヒカゲチョウ♂に追跡される邪魔が入ることも多くイライラさせられます。同じ時間帯に産卵するヒカゲチョウが、比較的サッササッサと産んでいくのとは対照的です。また午前中、および16時を過ぎると再度完全休息モードに入ると思われます。
 それでも上記④の事例では産卵シーン撮影には失敗したものの、運よく卵を発見・撮影することができました。
f0090680_23233517.jpg
D71K-85VR、ISO=400、F11-1/250、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:16時53分

 地上スレスレにあるホストの葉裏に産み付けられておりました。卵の超拡大撮影は2年前にも実施しておりますが、その際は前玉外し系でお手軽に撮影しておりましたので、今回真面目にミラーレスシステムで再撮影してみました。
f0090680_23242774.jpg
GX7-P1442-P14R(トリミング+4コマ深度合成)、ISO=200、F16-1/250、内蔵ストロボ(トリガー信号のみ)+外部ストロボスレーブ2灯、撮影時刻:10時02分

 球体を上下から軽く押しつぶしたような形状で、直径1mm、高さ0.83mm。表面は多角形の網目模様で覆われています。急冷してヒビを意図的に入れたガラス茶碗のような風情がありますね。表面全体の網目模様をもう少し上手に表現する照明法の工夫が必要だったと反省しております。なお、今回撮影した卵はお持ち帰りし、飼育に供しております。無事幼虫越冬できると良いのですが。
 さて、♀を追跡する過程で裏面白帯が軽く乱れた斑紋異常個体に遭遇しました。
f0090680_23244451.jpg
D71K-85VR(トリミング)、ISO=500、F11-1/250、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:16時22分

 漣が立つように白帯が乱れております。無理に和名を付ければ「サザナミシロオビヒメジャノメ」でしょうか? 意外にも苦戦した本種産卵シーン再撮影、来シーズンへどうやら持越しになりそうです。
by fanseab | 2014-10-02 23:28 | | Comments(4)