探蝶逍遥記

<   2014年 01月 ( 8 )   > この月の画像一覧

クロアゲハの飼育メモ

 昨年実施した飼育シリーズ。ナガサキに引き続き今回はクロアゲハです。最初は川崎市内で観察したナツミカン葉上への産卵状況と卵の拡大像です。

+++横位置画像はクリックで拡大されます+++
f0090680_21372879.jpg

f0090680_21373875.jpg
撮影条件は2枚共通:D71K-85VR(トリミング)、ISO=400、F11-1/160、-0.3EV、外部ストロボ、撮影年月日:2013年7月23日:拡大像はD71K-1855改@55mm(トリミング+3コマ深度合成)、ISO=200、F11-1/320、-1.0EV、内蔵ストロボ+2灯スレーブ増灯

 いずれも葉裏、それも縁に産み付けられております。2枚目の3卵には符号を付けました。孵化までの黒化程度から、各々産卵時期が異なると推定され、産卵は時系列で#1→#2→#3の順番で産まれたと推定されます。母蝶が好む環境に置かれた葉には集中して産卵される傾向が見て取れます。卵の直径は1.5mmでナミアゲハよりは大きいが、ナガサキよりは小さいと言えます。次に孵化直後の初齢幼虫。
f0090680_21511360.jpg
D71K-1855改@34mm(トリミング)、ISO=400、F11-1/250、-0.7EV、内蔵ストロボ+スレーブ1灯、撮影年月日:2013年7月24日

 体長は4mm。側面からの画像を撮り損ねました(^^; 赤褐色で、ほぼ漆黒に近いナミアゲハの初齢幼虫とは一見して異なります。続いて2齢幼虫。
f0090680_21512739.jpg
D71K-85VR(トリミング)、ISO=100、F11-1/400、-1.0EV、外部ストロボ、撮影年月日:2013年7月30日

 体長は8.5mm。2齢でも地色は赤味を帯びた濃褐色です。続いて3齢。
f0090680_21382856.jpg
D71K-85VR(トリミング)、ISO=100、F11-1/400、-1.0EV、外部ストロボ、撮影年月日:2013年7月30日

 体長は12.5mm。なお3齢撮影個体は2齢とは別個体です。斑紋全体の特徴は2齢と同様ですが、表面の光沢が顕著になります。引き続き4齢。
f0090680_21384145.jpg
D71K-85VR(トリミング)、ISO=100/200、F11-1/400、-0.7EV、外部ストロボ、撮影年月日:2013年8月4日

 体長25mm。斑紋全体の特徴は3齢を踏襲するものの、白斑部分が顕著になります。また体のバランス上、後胸部および第一腹節が拡張して蛇の頭部のような形状に変化しています。なお腹端背面の白斑ですが、背面には一部褐色部(矢印)が残っています。近縁のオナガアゲハ4齢幼虫の該当部分は褐色が入らず全て白色であり、これが両幼虫の識別点とされています。これは今後オナガを飼育する機会があれば確認してみたい点です。次に5齢(終齢)です。
f0090680_21514672.jpg
D71K-85VR(トリミング)、ISO=400、F11-1/250、-0.7EV、外部ストロボ、撮影年月日:2013年8月8日

 体長は40mm。鳥糞状からお馴染みのイモムシ状に変わりました。地色は鮮やかな緑色で黄色味を帯びたナミアゲハとは明らかに異なり、ナガサキアゲハとも微妙に違います。ナガサキを更に鮮やかにした緑色と言えましょう。腹節の斜帯は濃褐色。これもクロアゲハの特徴で、背面上で斜帯同士が交差・合体することもクロアゲハの特徴とされます。因みにオナガアゲハは両斜帯が交差しないとされています。次は前蛹。
f0090680_22145417.jpg
D71K-85VR(トリミング)、ISO=200、F9-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影年月日:2013年8月12日

 体長は27mm。下痢便を出した後、大慌てでサンショウの枝に止まらせて、そこで蛹化の準備をさせることにしました。続いて蛹。
f0090680_2152144.jpg
D71K-85VR(トリミング:右画像のみ2コマ深度合成)、ISO=400、F11-1/250/125、-0.7EV、外部ストロボ、撮影年月日:2013年8月13日

 体長35mm。褐色型で、翅部分に微妙に緑色が残っています。黒系アゲハの蛹はいずれも頭部に「兎の耳」状の一対の突起を有します。クロアゲハは両突起先端が互いに離れています。ナガサキは両者が離れず突起全体が平行に並ぶ傾向にあり、クロ/ナガサキ両蛹の識別点となります。8月24日、苦労した末の羽化です。
f0090680_21395755.jpg
D71K-85VR、ISO=200、F11-1/400、-0.7EV、外部ストロボ、撮影年月日:2013年8月24日

 赤紋が綺麗に発達した♀でした。いつもの通り、羽化の瞬間には出会えませんでした。何とか無事羽化までフルステージ撮影できましたが、実は今回6卵ほど飼育して、羽化までたどり着いたのは僅かに1頭のみ。1個体は孵化せず、残り4個体の内、3個体は前蛹まで到達したものの蛹化に失敗。残り1個体は蛹化したものの黒化して死亡(寄生ではない)・・・と、惨憺たる結果でした。ナガサキの記事でも書いたように前蛹→蛹化の時点に最大のリスクがあるようで、蛹化がきちんとできるようにするための何らかのノウハウが必要でしょう。恐らく真夏に温湿度管理できない部屋で小さなプラケースで飼育したことが原因かと推定しております。できればやや大きな株を袋掛けして風通しの良い場所で飼育するのがベストだと思うのですけど、なかなかそんな上手いシステムを管理人は準備できませんね。色々と課題の残ったクロアゲハ飼育となりました。
by fanseab | 2014-01-31 21:45 | | Comments(4)

外来甲虫「オオタコゾウムシ」の幼虫

 先日、拙宅近くの多摩川縁でモンキチョウの越冬幼虫探索をしておりました。多摩川縁で本種幼虫が利用する食草はシロツメクサもしくはカラスノエンドウと推測しておりまして、この日はシロツメクサに絞って根気良く群落の根際を探索しました。しかし目的の幼虫が探し出せず諦めかけていたその時、コロコロと小さく丸まった鱗翅類と思われる緑色の幼虫を地表より発見。

+++画像はクリックで拡大されます+++
f0090680_22191986.jpg
D71K-85VR(トリミング)、ISO=200、F11-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時53分
f0090680_22193069.jpg
D71K-85VR(トリミング)、ISO=200、F11-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時55分


 体長はせいぜい6mm程度。背面には赤色に縁取られた鮮やかな白線があります。一見してシロチョウではなくシジミチョウ幼虫の雰囲気。ただこの時期マメ科を食う幼虫越冬のシジミでこれほど鮮やかな緑色を呈す種類はありません。蛾の幼虫かな?と思って帰宅して調べてみると、何と、ゾウムシの1種、オオタコゾウムシ(Donus punctatus もしくはHypera punctata)の幼虫でした。その和名から「太田」氏の発見した「コゾウムシ」なのか・・・と勝手に推測しましたが、そうではなくて、「大きい」「タコゾウムシ」の意味でした。初めて耳にする昆虫の和名解釈は難しいですね。中点や句読点を入れて、「オオ・タコゾウムシ」と表記してあれば、当初管理人が犯した判断ミスはなくなるのでしょうけど。

 さて、更にネットで調べてみると、この昆虫は環境省が調査中の侵略的外来種リスト候補種」(外部リンクにリストアップ(No.320)されている問題種であることも判明。何でも国内では1978年に初めて神奈川県で発見され、現在はどうやら全国的に分布を拡大した様子。原産地は欧州でその後アメリカに分布を拡げ、ここ日本に到達してきた昆虫。欧州原産だけあって寒い冬場も幼虫で越冬し、しっかりクローバーを摂食可能な強者でした。結局この日、目的のモンキチョウ幼虫は発見できなかった一方、オオタコゾウムシ幼虫は複数個体発見できました。モンキチョウと言えば多摩川河川敷でももちろん普通種ですが、食草シロツメクサの競合種である外来甲虫が案外モンキの個体数に影響を与えているかもしれません。アカボシゴマダラがあっという間に関東全域に分布を拡げたように、我々蝶屋の眼につかない場所でオオタコゾウムシのような外来昆虫が徐々に在来昆虫を駆逐していく・・・・。鮮緑色の幼虫を眺めながら、改めて侵略的外来種の怖さを知らされました。
by fanseab | 2014-01-28 22:25 | 甲虫 | Comments(4)

ナガサキアゲハの飼育メモ(前蛹まで)

 昨年実施した飼育メモシリーズ。今回はナガサキアゲハです。最初は横浜市内で観察したカラタチ葉上への産卵状況と卵の拡大像です(再掲載)。

+++横位置画像はクリックで拡大されます+++
f0090680_23533127.jpg
D71K-34(トリミング)、ISO=640、F9-1/640、-1.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時29分(2013年7月中旬):拡大像はD71K-1855改@55mm(トリミング+4コマ深度合成)、ISO=100、F11-1/320、-0.7EV、内蔵ストロボ+2灯スレーブ増灯

 7月17日に孵化。孵化翌日の初齢幼虫です。
f0090680_2353471.jpg
D71K-1855改@26mm(トリミング)、ISO=100、F11-1/320、-1.0EV、外部ストロボ、撮影月日:2013年7月18日

 体長は4mm。当初手近にあるサンショウを与えましたが、食いつきが悪く、すぐにカラタチへ切り替え、その後更にミカン(ナツミカン?)に食餌を切り替えました(以後、終齢までミカンを使用)。孵化4日後の姿もご紹介しましょう。
f0090680_2354381.jpg
D71K-1855改@18mm(トリミング)、ISO=200、F11-1/320、-1.0EV、外部ストロボ、撮影月日:2013年7月21日

 体長は9.5mmにまで成長。7月23日に眠。翌24日に2齢になりました。
f0090680_23542289.jpg
D71K-1855改@18mm(トリミング)、ISO=200、F11-1/320、-1.0EV、外部ストロボ、撮影月日:2013年7月24日

 体長は12.5mm。動き回って画像を撮るのに苦労(^^; 27日頃に3齢になったと推測しますが、どうもこのあたり観察がいい加減になって正確な記録を取っておりません。で、4齢の画像をアップします。
f0090680_23543680.jpg
D71K-85VR(トリミング)、ISO=200、F11-1/400、-1.0EV、外部ストロボ、撮影月日:2013年7月30日

 体長27mm。緑色の鳥糞状でナミアゲハとは明らかに異なる姿になりました。短い眠を経て7月31日に5齢(終齢)に到達。
f0090680_23544625.jpg
D71K-85VR(トリミング)、ISO=400、F11-1/250、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日:2013年8月4日

 体長は56mm。アゲハチョウよりは一回りサイズが大きく、存在感がありますね。腹節の斜帯は白地に緑色の微小斑点が散りばめられております。8月6日に前蛹となりました。
f0090680_2355125.jpg
D71K-85VR(トリミング)、ISO=400、F11-1/400、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日:2013年8月6日

 体長は32mm。しかし、この後、悲劇が待っておりました。前蛹となったその日の晩、蛹化挙動をスタートさせたまでは良かったのですが、途中でストップし、そのまま脱皮ができずに★様になってしまいました。
f0090680_23552645.jpg
D71K-85VR(トリミング)、ISO=400、F11-1/250、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日:2013年8月6日

 前蛹までこぎつけながら、蛹化に失敗すると本当に疲れがドッと出ますが、ナガサキにとっても無念だったことでしょう。蛹化に失敗した原因は不明です。飼育中のウイルス感染によるものと推測しておりますが、よくわかりません。実は別途、記事にする予定のクロアゲハについても、蛹化に失敗する事例が続出して困り果てました。真夏に小さなプラケース内で飼育したことが原因かもしれず、どう対策を打つべきか思案しておるところです。以上の通り、ナガサキのフルステージ飼育は後一歩の所で失敗に終わりました。次回で再トライです。
by fanseab | 2014-01-25 23:58 | | Comments(10)

ミヤマチャバネセセリの飼育メモ(蛹化まで)

 首題セセリの飼育は過去に第2化世代の終齢幼虫を採幼して育てたことがありますが、卵からのフルステージ飼育は今回が初体験です。先ずは食草のオギ(イネ科)に付いた卵の拡大像(再掲載画像)。

+++横位置画像はクリックで拡大されます+++
f0090680_21375378.jpg
D71K-85VR-24R(トリミング+上段3コマ/下段2コマ深度合成)、ISO=100、F29-1/400、-1.3EV、外部ストロボ、撮影時刻:21時56分-22時30分(2013年8月下旬)

 白くて比較的高い位置に産まれているのでフィールドでは良く目立ちます。昨年8月下旬から複数卵を採取して飼育に供しましたが、「黒化すれど孵化せず」のパターンが多く難儀しました。ようやく孵化してくれた1個体を大事に育てることに。なお、全ステージについてオギを食餌として与えました。初齢幼虫の姿です。
f0090680_21383526.jpg
D71K-85VR(トリミング)、ISO=200、F11-1/400、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日: 2013年9月8日

 体長は3mm。図体の割に太い糸を吐いて、巣を造っております。孵化後は卵殻の底を除き、ほぼ食べ尽くしていました。
f0090680_2139237.jpg
D71K-85VR(トリミング)、ISO=200、F11-1/400、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日: 2013年9月8日

 初齢の巣と食痕です。
f0090680_21491676.jpg
D71K-85VR(トリミング)、ISO=400、F11-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日: 2013年9月16日

 屋外ではオギの葉の先端に造巣する場合が多いと思われ、このような端を一部折り曲げたパターンは珍しいと思います。9月13日に眠、翌14日に2齢になりました。
f0090680_21392225.jpg
D71K-85VR(トリミング)、ISO=200、F11-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日: 2013年9月16日

 体長は7mm。尾端に半月形の淡褐色斑が出現しております。20日に眠、21-22日のいずれかで3齢になりました。
f0090680_21394122.jpg
D71K-85VR(トリミング)、ISO=400、F11-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日: 2013年9月25日

 体長は16mm。3齢の巣と食痕もご紹介しておきましょう。
f0090680_21403614.jpg
D71K-85VR(トリミング)、ISO=400、F11-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日: 2013年9月25日

 28日に眠、翌29日に4齢へ。
f0090680_21405177.jpg
D71K-85VR(トリミング+上段4コマ、下段3コマ深度合成)、ISO=200、F11-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日: 2013年9月30日

 体長は16mm。10月9日に眠、翌10日に5齢(終齢)になりました。
f0090680_2141919.jpg
D71K-85VR(トリミング+2コマ深度合成)、ISO=400、F11-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日: 2013年10月15日

 体長は30mm。この時点での巣と食痕です。
f0090680_21412577.jpg
D71K-85VR(トリミング)、ISO=400、F11-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日: 2013年10月15日

 屋外の自然状態では、通常、巣は複数枚の食草の葉を綴って造りますが、今回の飼育では単独の葉を巻いて造巣しております。ここで2・4・5各齢における頭部の模様を比較することにします。なお、各齢頭部の拡大率は同一ではありません。
f0090680_21414718.jpg
D71K-85VR(トリミング+画像合成)、ISO=400、F11-1/320、-0.7EV、外部ストロボ

 今回の飼育で一番確認したかった点は、終齢幼虫の特徴である頭部斑紋がどの齢で形成されるか?でした。この絵を見る限り、4齢でうっすらとした淡い模様が出現するものの、終齢になって初めてミヤマチャバネ特有の模様が形成されることがわかります。なお、初齢・3齢は2齢同様、ほぼ漆黒で斑紋は確認できません。また終齢幼虫頭部の斑紋は結構個体変異がある(外部リンク)ことを確認しております。恐らく4齢の斑紋もある程度の個体変異を伴うものなのでしょうね。

 終齢に入ってからは摂食のペースが遅くなり、11月5日になって、前蛹準備段階となり、7日に前蛹となりました。
f0090680_2144074.jpg
D71K-85VR(トリミング)、ISO=400、F11-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日: 2013年11月7日

 体長は26mm。体の表面全体に白い粉を吹いたような状態になります。翌11月8日(孵化から61日経過)、無事蛹化いたしました。越冬世代幼虫の蛹化は屋外では11月上~中旬にかけてですので、飼育でも屋外と特段大差ない結果となりました。
f0090680_21443612.jpg
D71K-85VR(トリミング+3コマ深度合成)、ISO=200、F11-1/400、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日: 2013年11月10日

 鮮やかな淡緑色が本種越冬蛹の特徴。野外での発見は相当ハードルが高いのですが、枯草の中からこの鮮緑色を見つけると、宝石を発見したような喜びを感じるものです。野外での蛹化事例も参考にご紹介します。
f0090680_21445931.jpg
D71K-85VR(トリミング)、ISO=200、F11-1/400、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日: 2012年11月中旬

 クズの枯葉裏に蛹化した事例で、撮影のため、枯葉を裏返しております。ご覧のように枯葉の表面が真っ白になる位、緻密に吐糸するのが本種越冬蛹の特徴で、前蛹画像でご紹介したように蛹の周辺には微小白粉が散乱しております。実は野外で運よく蛹を発見できる場合、この白粉が目印になることが多いのです。現在、蛹はプラケース内で保管中でして、本年春、恐らくは4月上旬頃、羽化する予定です。
by fanseab | 2014-01-21 21:52 | | Comments(6)

Hestina属2種終齢幼虫の特徴差異

 昨年11月にアカボシゴマダラとゴマダラチョウ蛹の特徴(外部リンク)について記事を書きました。今回は続編として終齢幼虫の特徴・差異について解説します。両種終齢幼虫の正面および側面画像を整理してまとめた絵をご覧ください。

+++画像はクリックで拡大されます+++
f0090680_22473671.jpg



 両種幼虫の識別に必要な4形質(A,B,C,D)について説明します。
<形質A(背面突起の数)>
 アカボシは4対(中胸、第2、4、7腹節)なのに対し、ゴマダラは3対(中胸、第4・7腹節)。
<形質B(尾端の開裂状況)>
 アカボシは一対の尾端がほぼ閉じた状態で二股に開裂しない。一方、ゴマダラは明確に二股状に開裂する。
<形質C(腹節側面:気門線付近の斜条紋)>
 アカボシは白色斜条が明確なのに対し、ゴマダラは斜条が殆ど目立たなない。
<形質D(腹脚側面基線上の斑紋)>
 アカボシはやや不明確な白色で破線状を呈す。ゴマダラは明快な黄色線。

 形質A・Bについては種々のwebsite、参考書等で記載がされている区別点です。一方、側面の斑紋についてはあまり指摘されていない判定ポイントだと思います。特に形質Dは決定的に異なる特徴でして、最近、管理人がHestina属の終齢幼虫に出会った場合は、真っ先に側面を観察することにしております。基線の色合いを見れば百発百中で同定可能だと思っております。実は形質A・Bだけで判定すると、判断に迷う個体が時々存在するからです。アカボシゴマダラ終齢幼虫で、その事例をご紹介しましょう。形質Aについての例外事例です。
f0090680_22475034.jpg


 上が一般的な個体、下が背面突起の発達が悪い個体です。下の個体の背面突起は3対(遠目には1対!)のように見えます。この個体は第2腹節上の突起が完全に消失し、あたかもゴマダラチョウの幼虫のように見えます。この場合でも形質Bを確認すると、両者共に尾端は開裂していないので、両者共にアカボシの終齢幼虫と判断できます。またアカボシの尾端についても微妙に開裂している個体もいて、尾端だけの確認ではアカボシ/ゴマダラの判定に迷う場合があります。突起の発達が弱く、かつ尾端が微妙に開裂していると、ゴマダラ幼虫と誤認する場合もありそうです。結局、上記A~Dの全形質を総合判断して同定すべきなのですが、手っ取り早い方法として、形質Dだけでの判定をお勧めします。形質Dの例外事例を管理人はまだ確認しておりません。もしもゴマダラ幼虫で基線が白色の個体を確認されている方がおりましたらご指摘下さい。

 更にA~D以外の識別ポイントとして体色差があります。アカボシは微妙に青味が勝った緑色なのに対し、ゴマダラは明るい緑色を呈します。この体色差はそのまま蛹の体色差にも反映されております。慣れてくると、終齢幼虫の色味を確認するだけで、両種幼虫を識別可能です。

 ところで上記同定方法はあくまで終齢幼虫に適用すべきもので、若齢幼虫には当てはまりません。若齢幼虫の判定方法については、管理人はまだ勉強不足でして、時期を見てまた記事にしたいと思います。
by fanseab | 2014-01-15 22:52 | | Comments(2)

ヤマキマダラヒカゲ房総半島産亜種の飼育メモ(想定外の羽化!)

 昨年9月に現地で採卵してきた首題ヒカゲ飼育観察の続報です。既に蛹化まではご報告済(外部リンク)です。

 その後、拙宅で一番低温かつ恒温で保管可能なトイレ内に飼育プラケースを放置。プラケース内に入れたティッシュペーパーを時々点検し、ティッシュが乾燥したら水分を補給する手法で保管してきました。ところが昨年末にチェックすると、どうも蛹の体色が全般に黒化! そのうち翅の部分にキマダラ模様がうっすらと確認できるようになりました。腹節も緩み、羽化が迫ったと直感、ケースの蓋を明け、羽化に備えました。
f0090680_1782954.jpg
D71K-85VR(トリミング+4コマ深度合成)、ISO=400、F11-1/250、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻: 9時36分(2013年12月31日)

 そして何と、部屋の整理等で忙しい大晦日の午後2時頃羽化しました! 慌てて近所のフィールドから食草のアズマネザサを調達し、屋外で何とか羽化直の姿を記念撮影できました。
f0090680_1784396.jpg
D71K-85VR、ISO=400、F11-1/250、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻: 14時20分(2013年12月31日)

 やや小ぶりの♂で、裏面斑紋濃淡全般にメリハリがあることから春型の特徴が出ている個体だと思います。
 一昨年飼育したサトキマの場合、トイレで今回と同様な越冬蛹保管方式で無事冬越しに成功し、きちんと春に羽化してくれました。ヤマキマも同じ方式でOKだろうと思っておりましたが、何故か休眠覚醒が起きてしまったようです。トイレ内は正月時点で日中12℃程度。もしかすると蛹化後、10℃を下回る環境に放置しておかないと休眠状態から覚めるのかもしれません。かといってゼフ越冬卵のように冷蔵庫保管したら乾燥過多になるやもしれず、ヤマキマ越冬蛹の保管・管理は案外デリケートなのかも。

 ところで、この子は寒さ厳しき折、屋外に放す訳にもいかないので、時々黒砂糖と酢から作成した合成樹液を与えながらトイレ内で飼っております。もっとも寒いので終日ガラス戸にじっと掴まったままで微動だにしません。この状態でどの程度生存できるのかじっくり観察したいと思います。
by fanseab | 2014-01-11 17:11 | | Comments(8)

タテハ越冬幼虫2題

 新年初撮りは越冬中のタテハチョウ科イモムシ探し。最初はコムラサキ。2シーズン前、偶然拙宅近くの多摩川河川敷ポイントで一株から7頭程度みつかるご神木を発見しました。ここは自転車で15分程度かかるので、もうちょっと気楽に観察できる場所を探してみました。実は昨年、拙宅から徒歩で10分程度のヤナギから1頭見出していたので、同じ柳の下のドジョウ、もとい、柳の幹のコムラサキを狙って探索。5分程度で4頭を発見(^^) 慣れてくるとこの幼虫もすぐに発見できます。先ずは85mmマクロで。

+++横位置画像はクリックで拡大されます+++

f0090680_12103044.jpg
D7K-85VR(トリミング+2コマ深度合成)、ISO=200、F11-1/400、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻: 11時54分(1月初旬)

 しかし、いつ見ても擬態の見事さに感心します。幼虫の体色は濃褐色に灰、赤味がかった黒、わずかな苔色、様々な配色がされて周囲の環境に完璧に溶け込んでいます。魚露目で周辺環境も写し込みました。
f0090680_12105335.jpg
D7K-1855VR@55mm-gy8(トリミング)、ISO=200、F29-1/320、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影時刻: 12時03分(1月初旬)

 幼虫の潜んでいる場所、お分かりでしょうか? さて、次は堤防の土手でヒメアカタテハの幼虫探し。こちらはヨモギに巣を造っているので、巣があれば発見はコムラサキより楽です。しかし、肝心の巣が見当たりません。晩秋の頃、ヨモギの新芽をチェックすると無数の卵が産みつけられておりますが、2ヶ月程経過すると、討死する幼虫が多いのでしょうね、巣の姿が激減してしまいます。ようやく日当たりの良い場所で一つ発見。
f0090680_12113022.jpg
D7K-85VR、ISO=100、F7.1-1/41000、-0.7EV、撮影時刻: 12時18分(1月初旬)

 続いて魚露目で周辺環境をパチリ。
f0090680_12114637.jpg
D7K-1855VR@55mm-gy8(トリミング)、ISO=200、F29-1/80、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影時刻: 12時29分(1月初旬)

 ご覧のように、土手の直ぐ横は幹線道路です。申し訳ないですけど、撮影のため、巣を開封してみました。
f0090680_1212667.jpg
D7K-1855VR@55mm-gy8(トリミング)、ISO=200、F29-1/100、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影時刻: 12時35分(1月初旬)

 体長6mmほどの黒い幼虫が寒そうにじっとしておりました。恐らく2齢後期あたりだと思います。巣の下には糞が数粒。自分の居室内に糞を同居させておくのも面白いですね。確か台湾で観察したバナナセセリも巣内に大量の糞を蓄えていたような・・・。糞塗れ環境にめげず、このまま無事越冬して元気な成虫になってほしいものです。

 さて、昨年の大晦日。コムラサキ幼虫探索の際、ヤナギの高木から突然猛禽類が飛び立ちました。慌てて300mmで撮影。
f0090680_12133378.jpg
D7K-34(トリミング)、ISO=500、F10-1/500、-0.7EV、撮影時刻: 14時44分(12月下旬)

 最初はオオタカかと思いましたが、後にネットで調べるとどうやらノスリのようです。間違っていたらご指摘願います。管理人は国内で撮影した猛禽類はトビだけでしたので、嬉しい初ショットになりました。この後、この子は悠々と旋回飛行をしていたのですが、カラス2羽に追撃されて這う這うの体で逃げていきました。
f0090680_12135334.jpg
D7K-34(トリミング)、ISO=500、F11-1/3200、-0.7EV、撮影時刻: 14時46分(12月下旬)

 食物連鎖ピラミッドで頂点に位置づけられる猛禽類ですが、カラスとの力関係で言えば、カラスの方が明らかに上。カラス達の凄まじい生命力を改めて感じた次第です。
by fanseab | 2014-01-03 12:15 | | Comments(8)

謹賀新年

+++画像はクリックで拡大されます+++
f0090680_05253100.jpg
D7K-34、ISO=200、F10-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2011年11月21日、10時21分、撮影地:台湾台東県知本温泉

 皆様新年明けましておめでとうございます

本年も拙ブログのご愛顧の程、よろしく申し上げます。コメントも頂けると幸いです。
 さて、新春恒例となりました「撮らぬ蝶の翅算用」、今年は迷いありません。つまり昨年度テーマを継続予定でして、「♀産卵シーン撮影」を目標に掲げたいと思います。昨年末のレビュー記事でお話ししたように、身近に観察できる普通種を初めとして、ちょっぴり珍品レベルまで範囲を拡大できればと思っております。昨シーズンは合計39種の産卵シーンを撮影できました。果たして今年は?

 さてさて、どうなりますやら・・・。今年も年末に予定されている「懺悔(できれば自慢も入れたいな~)」記事を乞うご期待下さい(爆)

 アップした画像は台湾で撮影したホリシャルリマダラ(Euploea tulliolus koxinga)。今回は、ちょっぴり怪しげな中国語バージョンで賀状を作成してみました。寒い冬にはルリマダラ類の瑠璃色を眺めてホッコリするのもいいですね。昨年は諸般の事情で海外遠征を封印しておりましたが、本年はできれば異国の蝶を訪問する旅を再開したいと思っております。
改めまして、本年もよろしくお願いします。
by fanseab | 2014-01-01 00:54 | | Comments(50)