探蝶逍遥記

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ヒカゲチョウの産卵(9月下旬)

 2週間ほど前、サトキマ♀の産卵シーン撮影に注力していた頃、ヒカゲチョウ♂が最盛期のようでした。テリ張り活動の一環として、「外敵」である管理人を追跡して追い払う行動を取っていたのは流石です。一方、♀は秋分の日あたりから発生を始めた様子。♂と異なり、♀はメダケ群落のやや奥まった場所でひっそりと佇んでいることが多いようです。                                                                                                   ++横位置画像はクリックで拡大されます++
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D7K-85VR、ISO=400、F11-1/100、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:13時45分

 サトキマ同様、♀の産卵シーン撮影は未体験だったので、暫く♀を追跡してみました。15時過ぎにメダケを縫うように飛ぶ♀がおりましたので、この個体に注目。何とか現場を押さえることができました。
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D7K-85VR、ISO=400、F11-1/160、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影時刻:15時46分

 産卵姿勢に入ってから、産み終わるまで僅か2秒ほど。フレーミングとフォーカシングをほぼ同時にこなせばならず、相当厳しい状況です。この後も産卵シーンを観察しましたが、暗くてAFが迷っているうちに母蝶が葉から離れてしまうことが多くて、結局この1コマのみの成果でした。卵塊を産み付ける過程で数分以上におよぶサトキマと異なり、殆ど「瞬間芸」の産卵なので、カメラマン泣かせとも言えましょう。しかし、何とか腹端と卵も同時に写し込みたいものだと思い、日を改めてチャレンジいたしました。この日は13時過ぎから現場に張り込んで♀の出現を待ちます。そうして、14時過ぎ、明らかな産卵挙動の♀を発見、一コマゲット。
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D7K-85VR(トリミング)、ISO=400、F11-1/100、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:14時11分

 葉被り必死の状況ですが、何とか目的の「腹端と卵の同時写し込み」に成功いたしました。メダケの葉裏のど真ん中ではなく、葉の縁に近い部分に産む性質があるようなので、卵が隠れずに撮影できました。それにしても本種の産卵撮影はチョー難しい! 今回の乏しい経験からは、午後2時から3時頃が産卵のピーク時間帯で、16時を過ぎると活動を休止するような感じがします。さて、産まれた卵の場所は途中で失念しましたが、何とか再発見。拡大撮影をいたしました。
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D7K-1855改@55mm(トリミング+画像処理)、ISO=400、F29-1/160、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影時刻:16時35分

 一見、ツルツルの真珠状卵ですが、驚いたことにサトキマ同様、ヒカゲチョウの卵にも細かな網目構造が観察されます。しかし、網目の細かさはサトキマ以上に緻密ですね。
この時期、既に幼虫探索は無理だろうと思いながら、メダケの葉につけられた食痕を探索していきました。比較的新しい食痕のある葉を捲ってみると、何と蛹殻を発見。
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D7K-85VR、ISO=400、F11-1/60、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:13時03分

 地上高は20cmほど。葉の中脈に懸垂するタイプのようです。食痕と蛹殻のツーショットも撮りました。
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D7K-85VR、ISO=400、F11-1/60、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:13時03分

 蛹殻発見はこれが二度目。しかし、野外での(中身の入った)蛹発見は容易ではないでしょうね。越冬幼虫を追跡調査するとか、相当努力しないと見つけられないでしょう。  
 9月に入ってから、近所に棲むジャノメチョウ普通種の中で、何とか2種(サトキマ・ナミヒカゲ)の産卵シーンをゲットできました。実はヒメジャノメ♀の産卵シーン撮影にも成功しましたが、これは後日改めてご紹介したいと思います。
by fanseab | 2012-09-30 22:21 | | Comments(10)

台湾遠征記(23)11月23日午前その4

 センダングサのお花畑では当然、黒系アゲハの飛来も期待しましたが、曇り日のせいで、期待外れ。飛んできたのはボロのクロアゲハ♂のみでした。                                                                                                                                             ++横位置画像はクリックで拡大されます++
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D7K-34、ISO=500、F4-1/1600、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時50分

 台湾産は無尾タイプですが、後翅がこれだけ汚損していると、尾が切れたのか、そうでないかも判定できませんね。樹液をチェックしていくと、ヒョウマダラの♀もおりました。
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D7K-34(トリミング)、ISO=400、F11-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:11時17分

 ♂♀判定が難しい部類のタテハです。ただ前翅外縁の形状がやや丸みを帯びるのと、橙色の地色が淡くなる点で♀と判定できます。以前も述べたように、このタテハはコムラサキ亜科の中では例外的に翅の厚みが薄いように思います。それ故、鮮度の割に翅の欠けが目立つ個体が多いような気がします。東南アジアの代表的なタテハ、トラフタテハ(Parthenos sylvia)同様、完品撮影が難しい対象のようです。

 更に樹液をチェックしていくと、暗がりからフラフラっと褐色の蝶が飛び出しました。どうやらNeopeの雰囲気。樹幹に止まったのを確認すると、台湾遠征で狙っていた目的種の一つ、ウラキマダラヒカゲ(Neope muirheadi nagasawae)♂でした。
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D7K-34、ISO=200、F11-1/100、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:11時34分

 樹幹に頭を上にして静止する有様は国内のサトキマとそっくりです。和名に「裏」がついております。これは表翅がヒカゲチョウのように全く無紋でNeope属の特徴である目玉模様も無く、裏面のみキマダラヒカゲの風貌を現すことによります。後翅基部を見てみると、ちゃんと、「くの字」型の3小点がありますね。更に本種斑紋の最大の特徴は裏面前後翅を貫く灰白色の細帯です。台湾には本種含め4種のNeopeを産しますが、この特徴で他種とはすぐに見分けがつきます。因みに4種の中で本種のみ平地にも住んでおりまして、他種はより高標高地に生息しております。人の気配に敏感で、ちょっと飛んではまた茂みや樹に止まる性質はキマダラヒカゲ全般の特徴なのでしょう。ここでは味気ないことに、塩ビ製の排水パイプに止まってしまいました(^^;
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D7K-34(トリミング)、ISO=200、F11-1/100、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:11時54分

 樹液に黒っぽいタテハがやってきました。どんな珍品かなと思ってチェックするとルリタテハ(Kaniska canece drilon)♂でした。
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D7K-34(トリミング)、ISO=400、F11-1/80、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:11時57分

 ルリタテハの直ぐ上でタイワンコムラサキ♂が一緒に樹液を吸っております。ルリタテハ台湾産亜種は前翅中室外側の白班がブルーになることですが、残念ながら開翅の瞬間を捉えることができず、この絵だけからは国内産(例えばssp.nojaponicum)と何ら変わりないように見えてしまいます。前日、吸水にやってきたヒメフタオはこの日は現れず、バナナトラップには唯一クロコノマチョウがやって来ただけでした。
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GXR@5.1mm、ISO=100、F5.7-1/60、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:12時01分

 それにしても地面に止まっても、目立たない蝶ですね。昼頃はヒンヤリとした風も出てきて蝶の動きもパタッと止まりましたので、仕方なくランチにしました。
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GXR@5.1mm、ISO=100、F9.1-1/50、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:12時04分

 手に持っているのは管理人お手製のサンドイッチ。宿泊しているホテルの朝食バイキングで出される中華風饅頭(具の入っていない所謂、マントウ)に蒲鉾の煮つけやハムを入れ、サラダ用のレタスも添えて挟んでおります。これに同じくバイキングメニューのバナナを持参すると、安上がりでカロリーの高いランチの出来上がり。手前味噌ですが、お手製のサンドイッチは結構旨かったのですよ。         <次回に続く>
by fanseab | 2012-09-27 21:39 | | Comments(12)

台湾遠征記(22)11月23日午前その3

 この遠征記では度々ご紹介しているタイワンコムラサキ。♀の開翅シーンはなかなかゲットできません。ここは広角で狙ったものの、開いてはくれませんでした。                                                             ++横位置画像はクリックで拡大されます++
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GXR@5.1mm、ISO=100、F3.6-1/133、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:10時08分

 ドン曇りに近い状態なので、遠くに何か飛翔している蝶はいないか?単眼鏡で捜索していると、大木の幹になにやら赤い枯葉が付いていて、時々動いています。枯葉にしてはおかしいな~と思ってよくよく眺めてみると、タイワンコムラサキの♂でした。
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D7K-34、ISO=500、F4-1/3200、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時33分

 タイワンコムラサキは国内のコムラサキとは♂のテリ張り挙動が変わっていて、梢の先に止まることよりも、このような樹幹に下向きに止まって周囲を睥睨するポーズが多いような気がします。この時も、時折接近した小昆虫(同定はできず)を迎撃して占有空間から追い払っておりました。曇りがちでしたが、時折差す陽射しを期待して前日も訪れたセンダングサが繁茂する尾根筋で粘ってみることにしました。そこに1頭のシジミがやってきました。台湾で初めて出会うヤクシマルリシジミ(Acytolepis puspa myla)♂でした。
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D7K-34、ISO=500、F5-1/500、-0.7EV、撮影時刻:10時17分

 裏面を見る限り、おとなしい斑紋で日本国内産亜種(ssp.ishigakiana)とさしたる変化はありません。
 お次は縦位置で。
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D90-85VR、ISO=400、F7.1-1/640、-0.7EV、撮影時刻:10時23分

 ヤクルリのストローは本当に細く、確実に吸蜜しているように撮影するのに背景処理に結構気を遣います。何とか開翅しないか?と粘っていたら、期待に応えてご開帳してくれました(^^  
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D7K-34、ISO=500、F5-1/320、-0.7EV、撮影時刻:10時18分

 表翅の黒い縁取り巾もそれほど国内産と変化はないようです。しかし台湾に来てブルー系のシジミに初めて出会ったこともあり、表のブルーがとても目に染みました。最後に縦広角でこの子がやってきた環境をご紹介しておきましょう。
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GXR@5.1mm、ISO=100、F9.1-1/34、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:10時20分

 因みにヤクルリが止まっている葉は以前ご紹介したタケアカセセリの食草、イネ科のSetaria palmifolia(台湾名:棕葉狗尾草、英名:Malyasian Palm Grass)です。開けた草地にはどこでも生えているような逞しさを感じます。

 センダングサにやってくるマダラチョウ類はこの日は極めて少なく苦労しました。それでも台湾遠征のミッションの一つ、タイワンアサギマダラがやってきたので必死に撮影。最初は全開翅。
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D7K-34(トリミング)、ISO=500、F4-1/2500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時36分

 フィールド図鑑用としては当然表側が必要だったのですが、陽射しの関係か、管理人に対して常に裏向きでしか開翅をしてくれませんでした。まぁ、後翅性標がないので、♀と明確にわかる画像ではあるんですが・・・。お次は飛翔。
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D7K-34(トリミング)、ISO=500、F4-1/2500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時40分

 「画面端ジャスピンの法則」に従い、上辺に蝶が配置したので、仕方なく縦位置トリミングでのご紹介です。タイワンアサギマダラの最大の特徴である、橙褐色腹部がきちんと写った意味では満足行く画像になりました。陽射しが翳って、マダラチョウ類が飛ばなくなっても活動を弱めなかったのが、タイワンキチョウ。例によって、センダングサで吸蜜している♀に♂がしつこく絡んでおりました。
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D7K-34(トリミング)、ISO=500、F4-1/2500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時41分
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D7K-34(トリミング)、ISO=500、F4-1/2500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時44分
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D7K-34(トリミング)、ISO=500、F4-1/2500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時44分

 この♂、3分近く♀にアタックをかけておりましたが、諦めて飛び去って行きました。いつものフラれパターンでございました(^^  <次回に続く>
by fanseab | 2012-09-23 22:26 | | Comments(8)

房総半島のヤマキマダラヒカゲ(8月下旬)

 去る5月に実施した首題ヒカゲの夏型探索です。
今回はポイントが判明しているので、ちょっとお気楽。現地7時15分着。この時間帯は藪や木陰に潜んでいるので、長竿で刺激したりして周辺をウロチョロ。しかし、1頭のNeopeが藪に消えていくのを見送るだけで成果が上がりません。5月に樹液が出ていたタブノキをチェックするも肝心の樹液が出ておりません。これは困った・・・。で、仕方なく少し捜索範囲を拡げてみることにしました。最初のポイントから南方に500mほど歩くと、クヌギ林があって、下草は殆どネザサやメダケが茂っている状態。ここは理想的な環境なので、ここで粘ることにしました。少し足を踏み入れると期待通り、次々とNeopeが飛び出します。どうやら山(ヤマ?キマ)を掘り当てたようです。最初に見出したヤマキマ♂個体です。                                                                       ++横位置画像はクリックで拡大されます++
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D7K-34、ISO=200、F11-1/60、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:8時14分

 以下に示すヤマキマの特徴が良く出た個体です。
①後翅裏面基部にある3個の黄斑点の並び(形質Aとする)が「くの字」状。
②後翅裏面外縁側の眼状紋の黄褐色環の巾(形質B)が薄め。
 特に第4,5室の眼状紋内の「瞳」部分の黒点が明確な点。
③前翅裏面第5室眼状紋外側の白班(形質C)が明確な点。
↑で図示した個体(#1)を含め、異なる5♂個体につき、形質A,B,Cを比較図にまとめてみました。
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 形質Aの「くの字」状班については、サトキマとの比較で最も良く引き合いに出されるポイントですが、管理人はこの3個の並び方を日本列島のポンチ絵に擬えて、比較することにしています。↑の図は各個体の左後翅での比較になるように、一部左右反転処理をしております。逆に右後翅としてみた場合、3個の円状班を日本列島に見立て、上から概略、北海道、本州、九州とします(四国は簡単のため省略します)。サトキマの場合は、各島がほぼ均等に離れて配置されるのに対し、ヤマキマでは「北海道」と「本州」が結合したようになることが多いのです。個体#4がその典型例です。#4のような斑紋特徴を見れば、他の形質を見ずにヤマキマと判定可能な場合が多いと思います。全5個体の形質A,B,Cを比較する限り、極端な変異はなく、安定して出現する形質だと判断されます。
因みにブログ仲間のyoda-1さんも労作、「識別検討室で形質Aについて解説されていて、『(後翅基部の)第1、3点を結ぶ直線の二等分線を引くと、ヤマの場合中点が大きく第1点にかなり近い』と表現されています。

 探索した時間帯(8時~10時)は基本、下草や樹幹で静止しておりますが、時折、クヌギの幹を螺旋状に巻きながら飛翔する♂個体をみかけました。本件でお世話になっている高橋先生の論文(※1)によれば、この螺旋状探♀飛行は春型で特に顕著に観察されるようですが、夏型でも同様な行動を示すようです。

 さて、♂は複数個体撮影でき、♀を探し始めましたがサトキマ♀はいるものの、ヤマキマ♀らしき個体がなかなか発見できません。ようやく樹幹に止まる♀を撮影できましたが、酷い手振れ(^^; 
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D7K-34、ISO=200、F5,6-1/50、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:9時09分

 やはりこのレンズ系で1/50sec.のシャッター速度はリスクが多すぎました。♀の裏面斑紋も基本、上述した3形質の特徴を維持しておりますが、形質B(眼状紋中の黄色環厚み)はサトキマのように黄色環がやや厚くなります。従って♀個体の場合、形質Bだけでヤマキマ/サトキマを判定するのは危険です。

 さて、このポイントは困ったことにサトキマ/ヤマキマの混棲地であります。念のため出会ったサトキマ♂を図示しましょう。
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D7K-34、ISO=500、F4.5-1/125、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:9時50分

 ご覧の通りのスレ品です。房総半島の混棲地において、夏型の場合、サトキマの発生よりやや遅れてヤマキマが発生します(春型は逆にヤマキマの発生が先行)ので、♂が汚損した個体であるのは想定内でした。次はサトキマの♀。
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D7K-34、ISO=500、F8-1/100、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:8時45分

 こちらは羽化直に近い新鮮な個体です。夏型のサトキマ♀は春型に比較して裏面が淡い色調になって、オオヒカゲを彷彿とさせる堂々とした姿に魅了されます。ここで折角ですので、後翅裏面の形質A,B,Cについて、ヤマ♂♀、サト♂♀相互の比較もまとめてご紹介しておきましょう。
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 この絵で図示したのは、もちろん典型例でして、全ての形質には例外が存在します。そこで「総合的に判断する」必要があります。特に形質Bについては、微妙な個体が多く、高橋先生も論文上で、『房総半島産のものは後翅裏面の眼状紋の特徴もサトキマダヒカゲに近い』と述べられております(※2)。ともかく、房総産亜種は国内ヤマキマの中で最もサトキマ的であるらしく、Neope初心者には困った相手なのです。

 次に今回撮影したポイントの状況をご紹介しておきましょう。
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GXR@5.1mm、ISO=200、F2.5-1/40、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:9時21分

 ご覧の通り、クヌギをメインにする雑木林で、クヌギは暫時伐採されて、シイタケ栽培の榾木として利用されています。下草のメダケの丈も管理されているのか、ほぼ一定の高さに維持されています。環境を一言で表現するならば、「薄暗いけれども風通しは良い」場所でしょう。

 さて、サト/ヤマの判定基準としては裏面のみならず、表翅にも識別点があります。こちらは飛翔でしか撮影できないので、藪を掻き分け、蜘蛛の巣にまみれながら(笑)、格闘して参りました。最初はヤマキマの♂。
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D90-20(トリミング)、ISO=400、F11-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:8時46分

 まるで展翅品のような趣で写ってくれました。♂の表翅と裏面をバランス良く写せたのが次の1枚。
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D90-20(トリミング)、ISO=400、F11-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:9時46分

 表翅および裏面での識別点がほぼ全て確認できる絵になりました。表翅の識別点については別途解説します。お次はヤマキマ♀の順番ですが、残念ながらヤマキマ♀の飛翔は撮影できず。でもって、サトキマの♂です。
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D90-20(トリミング)、ISO=400、F11-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:9時52分

 続いてサトキマの♀。
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D90-20(トリミング)、ISO=400、F11-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:9時47分

 シイタケの榾木に着地寸前の姿でした。ここで表翅のヤマキマ/サトキマ識別点についてまとめておきます。内容は「フィールドガイド・日本のチョウ」、p.256-257に記載されたものと同じです。
<表翅におけるヤマ/サト判定ポイント>
形質D:前翅の翅脈上黄条:太いのがサト、細いのがヤマ。
形質E:前翅頂近くの黄班
[ヤマ]:前翅第5室の黄班は内部(基部側)に伸びず、第6室黄班の中央部までは
    到達しない。
[サト]:上記黄班が伸長して、第6室黄班中央部まで到達する。
形質F:前翅第1b室の黄班:内部に黒点が生じるのがサト、生じないのがヤマ。

 形質Dについて、この特徴を明確に表現しうる画像を管理人は保持しておりません。そこで、形質E・Fについてのみ、下記画像でご紹介いたします。いずれも飛翔画像から大幅なトリミングで画像処理しておりますので、画質の悪さはご容赦下さい。
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 なお、形質Fについては、これまた例外があって、ヤマでも黒点を生じるタイプがありますので、その事例も入れておきました。高橋先生の論文(※2)によると、房総半島産ヤマキマ夏型における黒点出現率は、♂で76.5%、♀で88.9%となっていて、これが房総半島産亜種の特徴だと指摘されております。つまりこの地域のNeope個体群については、もはや形質Fをサト/ヤマ判定には使用できないと言ってもいいでしょう。

 また、サト/ヤマに共通する♂♀の識別点として、前翅第3室・5室の特徴(形質Gとします)が挙げられます。2枚目の比較図中、サトキマ♀に識別点を解説しておきました。もちろん、「魚の尾鰭」の形状は個体変異があって、学研版・日本産蝶類標準図鑑、図版107-9で図示されたサトキマ♀では、第4室黄班まで「尾鰭」が出現し、各室の尾鰭が融合したような斑紋になっています。これは斑紋全体が黄色化した極端な事例でしょう。

 この日は個体数にも恵まれて、予定した画像収集は比較的早く完了したため、10時30分に撤収いたしました。一方、活動が活発になる夕刻の行動、特に求愛・交尾・産卵シーンの撮影は次回以降の課題になりました。9月に入ってから拙ブログでサトキマダラヒカゲを頻繁に扱っておりますが、実は今回のヤマキマ撮影を端緒として、比較対象であるサトキマの生態をこれまで真面目に観察して来なかった反省を踏まえ、サトキマにスポットを当てて、集中的に観察してきたのでした。「似て非なる」故事成語があります。サトキマとヤマキマ、両者斑紋は本当に酷似しておりますが、行動様式は色々と異なるようです。これからもこの地味な蝶を丁寧に観察していきたいと思っております。
 最後になりますが、今回の観察結果の検証については、再度、高橋真弓先生のお手を煩わしました。先生にはこの場もお借りして厚く御礼申し上げます。因みに今回、先生に全10個体、合計11枚の画像をチェックして頂きましたが、管理人の正答率は91%でした。多少、自信はついたものの、まだ完璧ではなく、この蝶の同定難易度を改めて痛感した次第です。

<参考文献>
※1 高橋真弓・青山潤三、1989、房総半島産ヤマキマダラヒカゲについて(Ⅲ)、蝶と蛾 40(2), 117-131.
※2 高橋真弓・青山潤三、1981、房総半島産ヤマキマダラヒカゲについて(Ⅰ)、蝶と蛾 32(1・2), 29-47.

<クイズ>
前回記事同様、ここで読者の皆さんにクイズです。次の飛翔画像は
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(1)サトキマかヤマキマか?
(2)♂か♀か?
さぁ、どちらでしょう!表翅しか写っていないので、本記事で述べた表翅における識別点を考慮してお考え下さい。答えは前回記事の一番下に記載しております。なお、コメントされる方は、前回クイズ同様、本クイズの解答に直接触れる記述はご遠慮下さい。
by fanseab | 2012-09-21 21:32 | | Comments(6)

サトキマダラヒカゲの産卵:その2(9月17日)

 この日も飽きずにサトキマの追っかけをしました。一週間前に比較して♂♀共に個体数が減ってきた印象です。相変わらずヒカゲチョウ♂は腐るほど?飛んでおりました。さて、予想通り16時半過ぎ頃から地上高50cmあたりを緩やかに飛ぶ♀が登場。彼女を追跡すると、ネザサ類に止まりました。                                              ++横位置画像はクリックで拡大されます++
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D7K-85VR、ISO=400、F10-1/125、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影時刻:16時43分

 葉被りはご容赦を(^^; 笹の葉軸に対して体軸をほぼ平行にしております。この姿勢は産卵態勢ではありません。ただ静止しただけかな?と思っていると、急に体を90度回転し、産卵をスタートさせました。
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D7K-85VR、ISO=400、F7.1-1/125、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影時刻:16時45分

 前回撮影の反省を踏まえ、今回はメインストロボを左上から照射して腹端と卵を明確に表現し、右側方からスレーブストロボを焚いて、蝶もそれなりに明るく表現する作戦。何とか狙いに近い作画ができました。手前側に3卵産み付けられ、その向こう側に4卵目を産み付ける瞬間の絵です。産卵の途中、管理人がわずかに撮影体勢を変えたショックで母蝶は飛び立ってしまいました。葉裏を捲ると・・・。
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D7K-85VR(トリミング)、ISO=500、F13-1/125、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影時刻:16時48分

 合計8卵で、Exifデータから推測した1卵あたりの産卵所要時間は19秒でした。因みに葉先の方角は西向き。地上高66cm。この個体は一旦、どこかに雲隠れした後、10分後に再登場。今度はかなり明るい環境の葉に止まり、産卵をスタートさせました。
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GXR@5.1mm、ISO=200、F6.5-1/60、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:16時58分

 ど真ん中にサトキマがいるにも拘らずピンボケ(^^; どうもこのように背景が明るい部分があるとリコーのAFはいつも迷ってしまいます。そろそろAF精度の良いミラーレスでも購入しようか?と思いたくなります。コンデジを接近させてサトキマの産卵シーンを撮るのにはギフチョウ同様相当に神経を使います。折しも夕刻の東の空には夏雲が湧いておりました。この雲を何とか背景に使いたいと思い、必死で作画をしたのがこの一枚。
f0090680_2232899.jpg
GXR@5.1mm、ISO=200、F9.1-1/400、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:17時04分

 サトキマの翅面に影が生じた失敗作です(^^; やはり面倒でもスレーブでもう1灯右から補助光を当てるべきでした。ここでの産卵数は合計19卵。葉先は南向き。地上高46cm。1卵あたりの産卵所要時間は21秒でした。

 さて、9/10にサトキマの産卵を始めて観察してから1週間。既に記事でご紹介した分を含め、このフィールドで合計、9卵群、110個の産卵を観察できました。その中で第2,5,6の3卵群(全43卵)は僅か30cm↑2に局在しており、このスポットは母蝶がとりわけ好む環境だったようです。また、産卵された卵の継続観察をしていく中で、色々と興味深い現象に出会いました。一つは食害です。サトキマが産卵してから孵化までの期間は概ね1週間と推定されますが、孵化を待たず、卵塊が忽然と消滅するものがありました。9/10観察分で二層に産み付けられた第2卵塊がその事例です。「お月見団子」で形容しましたが、本当に団子を食べてしまう外敵がいるようです。食害と思われる別の事例をご紹介しましょう。
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GXR@5.1mm、ISO=200、F4.6-1/15、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:15時50分

 これは第5卵群で全14卵が産まれておりました。しかし、卵殻が4個残されているだけです。通常、孵化した初齢幼虫は卵殻を食べるでしょうから、孵化した直後に襲われたか、孵化前にカメムシのような吸汁昆虫が卵の内容物(絶好のタンパク源と推定される)を吸い取ったとしか思えません。念のため周辺のササの葉を捲って調べてみましたが、初齢幼虫は発見できませんでした。

 一方、無事に残っている卵群の拡大像を撮影してみました。第7卵群の13卵です。
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D7K-1855改@55mm(トリミング+画像合成処理)、ISO=200、F29-1/200、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影時刻:16時18分

 驚いたことに、「お月見団子」の表面には細かい窪みが沢山あったのです!先にご紹介したヒメウラナミジャノメの卵同様、一見ツルツルに見えるジャノメ類の卵表面は意外と複雑な構造を有しているんですね。そして各卵同士は何か接着剤のような物質で、お互いに結合されているように見えます。ゼフが越冬卵を産む際、休眠芽に接着物質を擦り付け、卵を接着させるのと同じ方策なのでしょうか?

 孵化した初齢幼虫も覗いてみました。第3卵群から孵化した全11頭です。
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D7K-1855改@35mm、ISO=200、F29-1/200、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影時刻:16時23分

 この卵群は全15卵ですから、4頭が行方不明です。上述した食害の被害に遭ったのでしょうか? ご覧の通りの群居状態で、透明感のある幼虫の頭部が印象的です。また、画面左側がネザサの葉先の先端ですが、この部分が幼虫の食痕に相当します。続いて落日寸前の夕陽を背景光として利用したショットも撮りました。
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D7K-1855改@35mm(トリミング)、ISO=200、F29-1/320、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影時刻:16時29分

 幼虫の体内が透けてみえます。腹部にある濃緑色の部分は摂食されたササ類でしょうかね。この日は17時過ぎになると、西側低い位置にあった厚い雲に夕陽が隠され、急に暗くなりました。その時点でどうやらサトキマ♀も産卵活動を中止した様子でした。何となくですが、体内時計ではなく、照度に感応して産卵活動のスイッチをON/OFFしている印象を持ちました。
by fanseab | 2012-09-18 22:37 | | Comments(10)

サトキマダラヒカゲの交尾(9月15日)

 先日観察した♀産卵活動がどの程度遅い時間帯まで行われるか?を見極めるため、再度17時過ぎに多摩川縁を訪問してみました。この頃は日没も近いこともあって、ネザサ類に夕陽も殆ど差さない状況です。突然、通路の前方でサトキマの求愛飛翔が始まりました。慌てて接近し、驚かさないように様子を伺っていると、♀が葉裏に静止し、これに♂が並ぶように止まりました。そこを激写!                                                 ++画像はクリックで拡大されます++
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D7K-85VR、ISO=640、F8-1/160、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:17時37分

 手前の個体が♀です。腹端の状況がイマイチ確認できませんが、どうやら交尾の瞬間、もしくは交尾直後の撮影に成功したのだと思います。このコマを撮った刺激で、ペアは飛び立ち、葉上に真っ当な交尾スタイルで止まりました(上が♀)。
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D7K-85VR、ISO=640、F8-1/160、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:17時37分

 最初の撮影で交尾が解けなくてヤレヤレでした。♀の鮮度は羽化直ではないものの、9/10に確認したいずれの♀よりも新鮮でした。♂はご覧の通りのスレ個体です。管理人にとって、サトキマの交尾シーンはこれが初撮影。嬉しい限りでした。残念ながらこのペア、↑の画像撮影後、再度飛び立ち、今度は茂みの奥に入って追跡は諦めました。交尾持続時間を計測する絶好のチャンスだっただけにいささかガッカリいたしました。なお、交尾飛翔形式は学研の「日本産蝶類標準図鑑」にも記載されている(p.276)通り、←♀+♂でした。

 この後、♀の産卵シーンを期待するも♀は飛び立たず。その代わり、通路の途中で活発にテリを張っている♂を発見。
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D7K-85VR、ISO=640、F5-1/200、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:17時41分

 この時期にしてはスレの少ない♂でした。テリ張りの場所にそれほどの拘りはない感じでしたが、高さは110~125cmがお気に入りのようでした。丁度、管理人が構えていたカメラのストロボに乗って、敵を監視する姿も観察できました。ひょっとして汗を吸いに来たのか?と思って眺めて確認するも、ストローは出していなかったので、テリ張りに好都合の場所と判断したのでしょう。保育者の『原色日本蝶類生態図鑑(Ⅳ)』には、「緑葉上よりはむしろ樹幹、電柱、建物の壁面などの垂直面を好み、静止時には常に翅を閉じて頭部を上に向けている」との記載があります(p.154)。不活発な時間帯はそうでしょうが、テリ張り時にはヤマキマ同様、水平に止まって外敵を監視するスタイルに変化するのだと思います。次に出会ったテリ張り♂個体はご覧の通りの老兵でございました。
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D7K-85VR、ISO=400、F7.1-1/200、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:17時49分

 まぁ、最後のお勤めご苦労様といった風情ですね。17時40分を過ぎると、それまで活発にテリ張り飛翔していたヒカゲチョウ♂も徐々に活動を弱め、18時を過ぎると、急にあたりが暗くなりました。流石のサトキマもテリ活動を停止したようで、ねぐらを探す♂がおりました。足元を弱々しく飛んでいたのはヒメジャノメの♀。彼女もこの日のねぐらを探していたのでしょう。すっかり暗くなったのを潮時に、管理人も家路に付きました。
by fanseab | 2012-09-17 22:05 | | Comments(8)

サトキマダラヒカゲの産卵(9月10日)

 前日の夕刻、サトキマ♀が産卵している様子を観察しました。一応撮影したのですが、300mmでのショットで不満足の残るものでした。そこでリベンジを兼ねて翌日も15時以降の時間帯に多摩川縁に出向き、様子を伺いました。最初に前日母蝶が産卵した現場を探索しましたが、正確なポイントを失念しており、苦労した挙句、ようやく発見。産卵場所はアズマネザサと思しき葉裏(矢印)。                                              ++横位置画像はクリックで拡大されます++
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GXR@5.1mm、ISO=100、F4.6-1/15、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:16時03分

 葉先の方角は東南。地上高11cm。裏返すとこんな感じ。
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GXR@5.1mm、ISO=100、F4.1-1/15、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:16時04分

 合計9卵の卵塊です。これを第1卵塊と呼称することにします(以下同様)。卵塊を観察するのは20年振りでしょうか? 16時過ぎ頃から、♂♀問わず、サトキマの活動が活発化してきました。そして待望の産卵シーンを撮影することができました。
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D7K-85VR、ISO=320、F9-1/125、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:16時29分

 丁度、傾いた夕陽の木漏れ日が、卵塊をスポットライトのように照らし、雰囲気ある仕上がりになりました。ご覧のように、相当入り組んだ下草内に潜り込むように産卵するので、葉被り必須の状況です。卵塊で産むギフチョウ同様、1卵産むと暫く溜息をつくように休止し、もう一度力を振り絞るように腹端を付けてもう1卵産み付けていきます。産卵現場の全体像です(矢印が産卵場所)。
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GXR@5.1mm、ISO=100、F4.1-1/15、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:16時04分

 ↑の産卵シーンで分かる通り、現場は完全な木蔭ではなく、木漏れ日が差しこむような環境です。産卵された葉先の方角は東。地上高は40cm。葉裏の第2卵塊です(囲み画像は水平に眺めたショット)。
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GXR@5.1mm、ISO=160、F4.6-1/25、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:16時39分

 合計18卵。一層目に15卵、その上に3卵重ねて産み付けられております。中秋の名月もそろそろ。まるで「お供え団子」の雰囲気ですね。それも蓬入りの草団子かな?

 この個体は連続的に産卵を実施していたようで、もう一回、撮影のチャンスがやってきました。
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D7K-85VR、ISO=400、F11-1/125、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:16時43分

 今度は上手い具合に背景が綺麗に抜けてくれました。それにしても、腹端、卵を同時に表現し、翅面にもピントを合わせるには苦労しました。暫く無理な撮影体勢を取っていたせいか、翌日軽い腰痛を発生させてしまいました。母蝶は一度産卵をスタートさせると割と鈍感になるので、何とかコンデジを接近させて縦広角撮影もできました。
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GXR@5.1mm、ISO=100、F6.5-1/80、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:16時53分

 デジ一、コンデジ共にもう少しストロボを強めに焚いて、卵塊を明るく表現すべきでした。産卵現場の全体像をもう一度確認しておきましょう。
f0090680_2384476.jpg
GXR@5.1mm、ISO=100、F6.5-1/25、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:16時55分

 矢印が第3卵塊の位置。葉先の方角は南。地上高は62cm。卵塊の状況です。
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GXR@5.1mm、ISO=100、F3.2-1/60、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:16時56分

 こちらは15卵でした。ここには掲載しませんが、他に別個体の産卵も確認しました。こちら第4卵塊は3個。撮影のストレスの影響か?途中で慌てて飛び立った印象でした。こちらは葉先の方角は東。地上高15cm。またデジカメのExifデータから各産卵時の所要時間を見積もってみました(第1卵塊は計測できず)。

第2卵塊(18個): 8分27秒  1卵あたり28秒
第3卵塊(15個): 4分53秒   同上19秒
第4卵塊(3個):    33秒   同上11秒

 かなりバラツキがあるようです。直感的な産卵ピッチ(1卵を産む所要時間)はギフより長い感じですね。産まれた各卵塊に関しては今後継続観察し、幼虫の成長、越冬態勢への移行(蛹化)までフォローできればと思っております。
by fanseab | 2012-09-14 23:11 | | Comments(16)

アカボシゴマダラ他(9月9日)

 この日は近場の多摩川沿いで主として飛翔を撮影。エノキやクルミの周囲には探♀行動をするアカボシ♂が目立ちました。明るい空き地から暗い林内の歩道沿いに突進してくる姿は迫力があります。狙ったアウトプットイメージは「微かな木漏れ日を浴びながら暗い林縁を滑空するアカボシ」。                                                ++横位置画像はクリックで拡大されます++
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D90-20(トリミング)、ISO=400、F11-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:14時56分
f0090680_21511090.jpg
D90-20(トリミング)、ISO=400、F11-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:15時00分
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D90-20(トリミング)、ISO=400、F11-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:14時48分

 到達目標とするイメージに対して、自己満足度80%程度の仕上がりでしょうか。1枚目はたまたま赤く色づき始めたエノキの実が画面左端に写って季節感が出ました。3枚目、実は最初、ゴマダラがこちらに突進してくると勘違いしました。撮影後、モニターを見て初めてアカボシと判明。ご覧のように、赤班部分が見事に食いちぎられております。所謂バードビークでしょうね。ケバケバしく目立つ赤班部分は野鳥の食害から身を守る機能もあるのかもしれません。次にこの日、撮りたかった目標がサトキマダラヒカゲ。
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D90-20(トリミング)、ISO=400、F11-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:14時29分
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D90-20(トリミング)、ISO=400、F13-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:16時02分
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D90-20(トリミング)、ISO=400、F13-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:15時19分

 上2枚が♀、3枚目が♂です。予想はしておりましたが、既にこの時期、♂はご覧のようにボロボロ。♀もそろそろ汚損が始まっております。15時頃ですと、サトキマの活動は未だ不活発。一方、ヒカゲチョウ♂はテリ張り活動がスタートしておりました。
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D90-20(トリミング)、ISO=400、F13-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:15時52分

 暗い木蔭に舞っていたのはヒメジャノメ。
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D90-20(トリミング)、ISO=400、F11-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:15時52分

 まるでコジャノメが飛ぶような暗い木立内をウロチョロ飛んでおりました。暑さを避ける工夫なのでしょうか。コジャノメ同様、本来明るい草地を飛ぶはずのヒメウラナミジャノメもこの暗い歩道沿いに探♀飛翔等をしておりました。そのうち♀が産卵。残念ながら産卵シーンはゲットできず、卵のみ撮影。
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D7K-34(トリミング)、ISO=640、F8-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:14時19分

 産卵場所はムラサキツユクサの枯葉。エノキに絡まるクズには既に鮮やかな紫色の花穂が沢山付き始めております。ここにやってきたのはウラギンシジミの♀。久しぶりの産卵シーンをゲット。
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D7K-34(トリミング)、ISO=640、F10-1/125、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:15時26分

 シャッタースピードの設定を間違えてブレブレの画像でした(^^; ↑で撮影したヒメウラナミジャノメ、またクズの花穂に付いたウラギンシジミの卵(母蝶産卵シーンとは別の花穂から採取したもの)は自宅に持ち帰り、翌日拡大撮影をいたしました。最初はウラギン。
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D7K-85VR-24R(トリミング)、ISO=640、F29-1/200、-1.0EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影月日:9月10日

 久しぶりの拡大撮影ですが、今回も深度合成は不調なので、絞り込んだ一枚のみアップしました。ゼフ卵に比較して径が大きく、構造もやや大まかな印象ですね。クズの花穂上の微細な毛が撮影の邪魔になって苦労しました。一方、ヒメウラナミの卵は一見、平滑な真珠状光沢であり、拡大撮影する意味はないかな?と思い、念のため拡大してビックリ!
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D7K-85VR-24R(トリミング+2枚深度合成処理)、ISO=640、F20-1/400、-0.7EV、外部ストロボ+スレーブ1灯、撮影月日:9月10日

 一見平滑に見えたその表面は、多角形状の網目構造をしております。まるでシャボン玉を密に繋ぎあわせたような不思議な構造です。網目構造全体を上手く表現したくて、照明を色々と工夫しましたが、これが限界でした。お持ち帰りしたウラギンとヒメウラナミについては久しぶりに飼育してみたいと思います。
by fanseab | 2012-09-11 21:56 | | Comments(8)

台湾遠征記(21)11月23日午前その2

 バナナトラップにはコジャノメだけでなく、他のMycalesisもやってきました。少し同定に自信ありませんが、恐らくキレバヒトツメジャノメ(M.zonata)の低温期型。                                                  ++横位置画像はクリックで拡大されます++
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D7K-34、ISO=200、F9-1/400、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:8時55分

 キレバに酷似したマルバヒトツメジャノメ(M.mineus)との識別点は通常前翅端の切欠き形状が尖る(→キレバ)、もしくは滑らか(→マルバ)かです。しかし、鋭角的か否かはかなり微妙でして、迷うことが多いのです。管理人は後翅外縁形状にも着目しておりまして、どうもマルバはここが全般に滑らか、キレバは後翅第5脈付近で尖る傾向にあると思います。でもって、この個体はキレバと同定いたしました。詳しい方、間違っていればご指摘願います。なお、キレバの低温期型にはかなり個体変異があって、ここで図示したように前後翅を貫く帯条紋が完全に欠落したタイプと、くっきり発現するタイプ(前回記事参照:樹液で吸汁する個体)があるようです。

 別の樹液にいたクロコノマは前翅の尖りが少なく、どうやら高温期型の♂のようです。
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D7K-34、ISO=200、F9-1/60、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:8時56分

 陽射しが乏しい中、時々差し込む陽だまりにはこの日もマダラチョウが舞ってくれました。最初はウスコモンマダラの♀。
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D7K-34(トリミング)、ISO=400、F9-1/250、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:9時14分

 そして、ヒメアサギマダラの♂。
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D7K-34、ISO=400、F8-1/80、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:9時15分

 お次はリュウキュウアサギマダラの♀。
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D7K-34、ISO=400、F6.3-1/640、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時15分

 いずれも陽射しが弱く前日より遥かに個体数が少なくて苦労しました。遠くを眺めているとなにやらドデカイ野鳥の姿が。300mmでも豆粒にしか写りません。モニターを拡大してみると前日にも出会ったカンムリオオタカでした。やはり猛禽類の眼光は鋭いですね。
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D7K-34(トリミング)、ISO=640、F5.6-1/640、-0.7EV、撮影時刻:9時20分

 10時前になって少し陽射しが回復。開けた草地に周回飛行するセセリが登場。久しぶりに出会う、コウトウシロシタセセリ(Tagiades trebellius martinus)でした。
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D7K-34、ISO=200、F11-1/250、-0.7EV、撮影時刻:9時51分

 このセセリの活動はもう少し早い時間帯のはずですが、気温が低めだったので、多少後ずれしたようです。昔、スラウェシで撮影した名義タイプ亜種の画像はこちら
 このセセリが登場した草地で休憩がてら下草を眺めていると、どうも怪しい食痕が残る草本を発見。
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GXR@5.1mm、ISO=100、F5.1-1/60、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:9時51分

 帰国してからの調査でイネ科のSetaria palmifolia(台湾名:棕葉狗尾草、英名:Malyasian Palm Grass)と判明。インド原産で観葉植物としても使用されているようです。とにかくイネ科の葉とは思えないデカい葉で、葉の先端を閉じた、明らかにセセリの巣と思しき構造物がありました。
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GXR@5.1mm、ISO=100、F9.1-1/30、-0.7EV、撮影時刻:9時54分

 開けてみると、ビンゴ!でした。異なる葉から見出した2頭をまとめて図示します。
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GXR@5.1mm(トリミング+画像合成)、ISO=100、F9.1-1/30~1/60、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:9時54分&56分

 帰国してからの調査で、タケアカセセリ(Telicota ohara formosana)の終齢幼虫と同定しました。本種幼虫の頭部にはかなり色彩の変異があるようで、個体(B)には微かに褐色の紋がありますが、個体(A)は黒一色ですね。ついでに食痕も図示しておきます。
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GXR@5.1mm、ISO=100、F9.1-1/50、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:9時55分

 この葉には別の鱗翅類の幼虫巣もありました。まぁ、葉の面積もデカいので、多くの鱗翅類が利用するのでしょうね。<次回に続く>
by fanseab | 2012-09-06 21:57 | | Comments(12)