探蝶逍遥記

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多摩川のセセリ幼虫探索:その2

 11月に探索したミヤマチャバネ以外の幼虫関係です。ミヤマチャバネ幼虫の個体識別No.2の巣の脇にミヤマ(矢印#1)とは異なる特徴(巣の全長が長い:矢印#2)の巣を発見。

++横位置画像はクリックで拡大されます++
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D7K-85VR、ISO=200、F11-1/160、-0.7EV、撮影月日:11月1日

 巣を開けて出した幼虫です。
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D7K-85VR、ISO=400、F11-1/1000、-0.7EV、撮影月日:11月1日

 頭部の模様からキマダラセセリと同定。体長は21mm。3齢あたりでしょう。因みにキマダラは幼虫越冬です。お次はミヤマチャバネ幼虫の個体識別No.5の脇で発見された別の巣と食痕。
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D7K-85VR、ISO=400、F13-1/320、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影月日:11月1日

 巣を開くと出てきたのはイチモンジセセリの幼虫でした。
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D7K-85VR、ISO=400、F13-1/320、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影月日:11月1日

 体長は18mm。本種幼虫の特徴は尾端が黒色半球状に彩られること。もちろん頭部の特徴からもわかります。若干、ミヤマチャバネに類似していますが、アニメキャラに当てはめるのが難しい複雑な斑紋ですね。最後はミヤマチャバネ幼虫の個体識別No.11からおよそ20m西方のオギ(食草)から発見された巣。
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D7K-85VR、ISO=400、F10-1/125、-0.7EV、撮影月日:11月10日

 まるで定規で図ったかのように一定間隔で吐糸され、かなり長大に閉じられていて、この特徴から巣を開けずともギンイチモンジセセリと判明しました。巣の下方に幼虫の姿が少し垣間見えています。巣を開けると間違いなくギンイチでした。
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D7K-85VR、ISO=400、F13-1/320、-0.7EV、撮影月日:11月10日

 体長は33mm。成虫の胴体を彷彿とさせる、とても細長い体型です。実はギンイチ幼虫に出会うのは5年ぶり。忘れもしません、2007年の2月、拙宅から程近い多摩川のギンイチ観察ポイントに重機が突然入り、オギの群落を根こそぎ消滅させてしまう事件が起きました。その様子は拙ブログの記事でもご紹介しました。この年の春は当然のことながら、その後、本年春・夏に至るまでギンイチの姿は無く、このポイントから完全に絶滅してしまったと思っておりました。従って、今回の幼虫発見は単に幼虫を見出しただけでなく、ポイントの復活を予感させる大きな喜びでもありました。実際にはオギ群落はポイントが破壊される前とは比べものにならないほどまだ貧弱なものでして、完全復活するにはまだ時間がかかりそうです。この春以降、しっかりと復活状況を見守りたいと思っております。なお、ギンイチも越冬は亜終齢で行われ、もうそろそろ摂食を中止し、体色が淡緑色から淡褐色に変化するはずです。

 以上、ご紹介したキマダラ、イチモンジ、ギンイチの頭部をミヤマチャバネと比較した一覧画像としてまとめてみました。なお、画像処理の関係で、各幼虫の拡大率は異なります。またそれぞれ齢数が異なっています。念のため。
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 今後、読者の方の幼虫探索の参考にして頂ければと思います。
セセリ幼虫の頭部画像コレクションは今後も暇を見てやっていきたいと思います。
by fanseab | 2011-11-27 22:36 | | Comments(8)

ミヤマチャバネセセリの越冬蛹探索

 10月30日付の記事でご紹介した首題セセリ幼生期観察のその後です。10/30に多摩川縁の2X3mの範囲内で全7個体を、更に後日、異なる2箇所で4個体を発見し、合計11個体を早朝観察中心に追跡調査しておりました。11/1より巣を離れて蛹化準備に入る個体が続出し、結局、懸命の捜索も空しく、3個体を除き全て行方不明となりました。では、何とか追跡できた3個体についてご紹介しましょう。

 最初は識別番号#3の個体。11/5-7の間に巣を離れ、11/8にクズの枯葉上に静止している前蛹を発見しました。2007年の秋口に同様の探索を実施して失敗に終わっていただけに、この前蛹の姿を見た時は飛び上がる位嬉しかったです(^^)                                                                    ++画像はクリックで拡大されます++
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D7K-85VR、ISO=400、F11-1/320、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影月日:11月8日

 前蛹体長は29mm(1円玉直径は20mm)。クズの葉は食草のオギの茎から20cmとさほど離れておらず、地上高は10cm。クズや食草のオギの茎に絡まって空間に浮いている枯葉を利用しています。発見時は丁度屋根のようにもう1枚の枯葉が乗っていましたので、撮影時にその葉は除去しておりますが、上向きの状態です。巣を綴った形跡はなく、ただ尾端の尾鉤を引っかける目的と思われる細い帯状の吐糸物が枯葉に形成されています。また前蛹の周辺には白色の蝋状粉末が散乱しています。雨滴を撥水させるためでしょうか?それまでの探索では、完璧に地上に降りるものと思い込んで、根際の地表を探しておりましたが、地上の枯葉を利用しているとは想定外で、これが盲点で発見が遅れました。屋根状のクズの枯葉を被せて現状復元し、更に継続観察し、11/14に無事蛹化したことを確認しました。
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D7K-85VR、ISO=800、F6.3-1/400、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日:11月14日

 幼虫の脱皮殻も残っています。また脱皮の際、相当激しく動いたのでしょう。帯蛹に利用された糸をすり抜けて、枯葉の上をコロコロ転がる状態になっておりました。尾鉤は全く機能していない状態です。実はこの8月、2化品終齢幼虫を採幼し、室内飼育を試みたのですけど、この時の前蛹期間が2日でした。秋口でかつ室外であることを考慮してもせいぜい4日前後で蛹化するものと予想していたので、前蛹期間7~9日は想定外の長さでした。しかし、文献を精査してみると、越冬前終齢幼虫の前蛹期間が長期間に及ぶことが既に指摘されておりました。独立行政法人・森林総合研究所の井上氏が実施した、茨城県つくば市での室外放置実験結果(※)を引用します。終齢幼虫を室外飼育して前蛹期間をまとめたもの。

10/20以前:平均前蛹期間4.5日(個体数6)
10/21-31:      同4.7日(同155)
11/1-10:       同6.3日(同145)
11/11-15:      同9.4日(同52)
11/16-20:      同19.8日(同12)
※ 井上大成、2009. Effects of temperature on the development of overwintering pupae of Pelopidas jansonis(Butler)(Lepidoptera,Hesperiidae).Trans. lepid. Soc. Japan 60(3):196-202.

 つくば市と管理人が観察している川崎市の標高・温度環境も異なりますが、11月上旬頃なら前蛹期間8日前後は妥当な結果でしょう。

 次は識別番号#2の個体。#3から僅か1.8m西方に位置しています。#2は11/2-4の間に巣を脱出したと見られます。#3前蛹がクズの葉に付いていた知見を頼りにクズの葉を徹底的に捲って調べると、いました!前蛹ではなく既に蛹化しておりました(11/9発見)。
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D7K-85VR、ISO=400、F11-1/320、-0.7EV、撮影月日:11月9日

 体長は30mm。こちらは地上高8cmにあるクズの枯葉の葉裏に蛹化しており、葉を裏返して撮影しています。ただ、探査時にクズの葉を捲る際、誤って蛹の体を少し圧したようで、右翅部分が少し凹んでしまっています。いやな予感がしましたが、果たして11/14の観察では蛹全体が黄変して、頭部が黒ずんで来ました。
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D7K-85VR、ISO=200、F10-1/400、-0.7EV、撮影月日:11月14日

 ちょっと越冬→羽化は厳しいかもしれません。この個体には申し訳ないことをしました。

 3番目の個体は識別番号#11。 #2,#3個体のポイントから西方に約300m離れた地点です。11/1に発見、11/5-7の間に巣を離れたと推定され、11/8に前蛹を発見しました。
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D7K-85VR、ISO=500、F11-1/200、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影月日:11月8日

 体長は28mm。ご覧のように食草のオギの枯葉と他のイネ科の葉を綴って台座を作っています。発見時は下向きに付いており、裏返しての撮影となりました。クズ同様、前蛹の周辺には白い蝋状粉末が散乱しております。ここの生息環境は#2,3とは異なり、クズは全く生えていません。クズやアレチウリが繁茂しているポイントではどうやらクズ等の枯葉を利用し、そうでない場合はその他の枯葉を利用、更にクズのように面積が広くない葉の場合は複数を吐糸して束ね、台座部分を確保する性質がありそうです。この前蛹は11/14に無事蛹化しました。
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D7K-85VR、ISO=200、F13-1/200、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影月日:11月14日

 体長は前蛹と同じ28mm。前蛹の画像と比較すると頭部の向きが逆で、前蛹画像撮影時はまだ前蛹の準備期間中だったことがわかります。また前蛹期間は8もしくは9日と推定され、ほぼ#3個体と同程度でした。#11個体も発見時の状態に現状復元させておきました。今後越冬中も随時状態確認をし、来春の羽化まで継続観察をしようと思っております。また今回の一連の観察結果は報文として投稿予定です。
by fanseab | 2011-11-20 22:19 | | Comments(12)

ムラサキツバメ集団越冬の観察:その1(11月13日)

 13日は昨年独自に見出した神奈川県のムラツ集団越冬ポイントに出向きました。昨年は11/21の時点で既に7~8頭集団が形成されていました。果たして今年はどんな按配でしょうか? 昨年は集団が形成されているアオキの葉をマンションの棟に見立て、各々1号棟、2号棟・・・と名付け、結局4号棟まで確認しました。現地8時30分着で先ずは3,4号棟を見て回ります。ところが全くの空室状態。そこで1号棟へ出向いてみると、1頭が独占状態で鎮座しておりました。                                                      ++画像はクリックで拡大されます++
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D7K-34、ISO=800、F6.3-1/400、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:8時38分

 その住人のアップ画像です。
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D7K-34、ISO=400、F11-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:8時57分

 恐らく♂でしょう。翅が立っており、触覚もある程度立っているので、活動間近なようです。この日の朝の気温はそれほど冷え込んだ状況でもなく、当然かもしれません。次いで2号棟の様子をチェックします。こちらも1頭のみでした(画面中央右)。
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D90-1855VR@55mm、ISO=500、F7-1/200、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:9時08分

 アップ画像です。
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D7K-34、ISO=400、F9-1/250、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:9時00分

 こちらも活動寸前の状態にあるようです。1時間半ほどして再度この個体を確認すると、日差しがアオキの葉に差してきたためか、ほぼ太陽に正対する位置に移動しておりました。
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D7K-34、ISO=200、F10-1/160、-1.0EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時43分

 こちらの個体はどうやら♀のようです。1号棟、2号棟共に昨年と全く同じアオキの株に形成されておりました。もちろん、アオキも成長しておりますから、昨年と同一の葉にムラツが静止している訳ではなく、1号棟、2号棟いずれも昨年より数10cm高い位置の葉が選択されておりました。また、2号棟の約10m西方に位置するアオキの葉上に怪しき影を発見(下図矢印)。
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D90-1855VR@55mm、ISO=800、F8-1/100、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時21分

 「よっしゃ―! 5号棟発見や~!」と喜んで葉を詳細に検すると、何と「ムラツに上手く擬態した枯葉(爆)」でした。
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D7K-34、ISO=800、F10-1/320、-1.0EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時21分

 枯葉上部の突起が尾状突起に見えるほど、よく似ています。ムラツの集団越冬探索ではよくこんな感じで騙されますね。

 これから徐々に朝晩の冷え込みが厳しくなり、集団の数が増加傾向になると推測され、その様子を今後見守ることにしたいと思います。昨年は11月下旬の観察から1月まで途中観察をサボったため、集団の盛衰を追跡調査することができませんでした。今年はその反省を踏まえて、小刻みに観察をしていきたいと思っております。また、この分野の観察では先達となる、 clossianaさんが既に千葉の公園での観察をスタートさせています。今年で4シーズン目となる継続観察の結果がどうなるか? そちらも興味津々です。

 さて、このポイントの近くにはソテツの植栽もあるので、念のためクマソを確認しましたが、坊主。その代り猛スピードで飛び回っていたのはウラナミシジミでした。多摩川縁では既に殆どがスレ品状態になっているのですけど、このポイントでは未だ結構新鮮でかつ、個体サイズがデカいので見応えがあります。植栽のデイゴ(マメ科)の回りで占有行動を取っている♂を見つけて追跡し、お決まりの縁毛ブルー幻光画像を撮影。
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D7K-34、ISO=400、F8-1/800、-1.0EV、撮影時刻:9時39分

 裏面の波模様が透かし彫り状態になって、エエ眺めでした。♂に追い立てられている♀を発見。こちらは♂の眼を盗みながら(笑)、デイゴの新芽に産卵しておりました。
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D7K-34、ISO=400、F8-1/250、-1.0EV、撮影時刻:9時34分

 ウラナミ♀が木本のマメ科に産卵するシーンを撮影するのは管理人として初体験。新鮮な個体なので更にこの♀の追っかけをしてみました。お次は産卵中♀の縁毛幻光を無理やり狙ったショット。
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D7K-34、ISO=400、F10-1000、-1.0EV、外部ストロボ、撮影時刻:9時57分

 縁毛もそれなりにブルーに光りましたが、それより驚いたのが、後翅内縁部に密生している長毛がブルーに光っていること。何となく妖しい雰囲気を醸し出しておりました。新芽には孵化済も含め合計7卵ほどが確認できます。母蝶が好む若芽は本当に限定されているのですね。
by fanseab | 2011-11-17 21:05 | | Comments(6)

晩秋の陽光を楽しむ(11月12日)

 土曜日は朝から陽差しが注いで気持ちの良い一日でした。近場の多摩川縁を散歩しながら、セセリの幼虫探索・普通種の撮影等で楽しみました。今回はモンシロチョウ、ヒメアカタテハのご紹介です。11月ともなると、キバナコスモスの花も随所に萎れた花弁が目立ってきましたが、蝶達は変わらず、吸蜜に忙しく飛び回っておりました。モンシロチョウは概ねこの時期にならないと真面目に取り組まない対象ですね。今回は飛翔で遊んでみました。                                                                 ++画像はクリックで拡大されます++
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D7K-24(トリミング)、ISO=500、F9-1/5000、-1.0EV、撮影時刻:12時44分
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D7K-24(ノートリ)、ISO=500、F8-1/5000、-1.0EV、撮影時刻:12時45分

 モンシロは飛翔撮影でも諧調が飛びやすい難しさがあります。晩秋の柔らかい陽射しのお蔭で何とかモンシロ地色のグラデーションを写し込めたように思います。

 キバナコスモス畑で一番元気だったのがヒメアカタテハです。先ずは吸蜜の3連発。
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D7K-85VR、ISO=100、F11-1/320、-1.0EV、撮影時刻:12時55分
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D7K-85VR、ISO=100、F11-1/640、-1.0EV、撮影時刻:12時56分
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D7K-85VR、ISO=100、F3.8-1/3200、-1.0EV、撮影時刻:12時57分

 縁毛が綺麗なヒメアカを追いかけていると本当にストレス解消になります。お次は久しぶりにパスト連射機を持ち出しての飛翔狙い。
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FC-150@6.4mm(トリミング)、ISO=320、F3.6-1/4000、-0.7EV、撮影時刻:12時32分
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FC-150@6.4mm(トリミング)、ISO=400、F3.6-1/4000、-0.7EV、撮影時刻:12時32分
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FC-150@6.4mm(トリミング)、ISO=200、F3.6-1/4000、-0.7EV、撮影時刻:12時33分

 天気が良く光量に恵まれていると、この機種は威力を発揮しますね。特に構図を考えながらアウトプットイメージ通りの絵に仕上げやすい利点があります。3枚目は遠景にマンション群を入れ、コスモスから青空に舞い立つシーンをイメージして、上手く作画ができました。曇り空とか暗い場所だと、どうしても画像がノイジーになるので、そこらあたりを改善した機種が早く登場して欲しいものです。
by fanseab | 2011-11-14 20:42 | | Comments(8)

大雪山の高山植物群落調査に関する報告会聴講(11月6日)

 6日(日曜日)は、新宿中央公園内エコギャラリー新宿にて開催された首題報告会に赴きました。正式な表題名は、下記の通り。

「大雪山の花園は今 ~高山植物開花フェノロジー調査2011年報告会~」
主催者はNPO法人アース・ウィンド(北海道)、
演者は北海道大学大学院地球環境研究院准教授の工藤 岳氏。

++画像はクリックで拡大されます++
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報告会の画像は全てGXRで撮影。

 大雪山はウスバキチョウやアサヒヒョウモンの群れ飛ぶ聖地ですが、彼らがホストとする高山植物群落の開花状況にスポットを当て、長期にわたる定点観測で地球温暖化の影響評価を実施する活動の年度別報告会でした。内容は以下の2テーマ。
(1)高山生態系の成り立ちとその脆弱性
(2)大雪山で起きている生態系変動
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 実際の調査は工藤研究室員のみならず、開花時期(6~9月)に調査担当ボランティアがデータ収集をする市民参加型モニタリングで実施されています。主催者側が「リサーチ登山花ボランティア」と名付けた活動は2003年よりスタートし、3年間の準備・検証期間を経て2006年から本格的に調査を実施しているもの。調査区域(プロットと呼称)はボランティアが参加しやすい場所が考慮されていて、以下の4プロットが選定されています。
(a)黒岳:①雪田プロット(標高1900m)、②風衝地プロット(同1960m)
(b)赤岳:③雪田プロット(同1980m)、 ④風衝地プロット(同1840m)
なお、④は管理人も本年6月に訪れたコマクサ平です。
各プロットの地表にはそれぞれデータロガー(自記温度記録計)が設置されており、温度モニタリングも1時間間隔で通年測定される仕組み。対象植物は10数種類に絞られています。

 当日紹介された2006~2010年の僅か5年間のデータにおいても2010年に発生した異常気象の影響で例年に比較して開花時期がずれ込む等の知見が得られています。
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 実はこの調査活動は2010年度より、環境省が管轄する「環境モニタリングサイト1000」として選定され、この活動は今後100年にわたって継続することが計画されています。また「モニタリングサイト1000」では必須調査活動項目として「蝶のライントランセクト調査」が義務づけられており、本年2011年よりこちらの活動もスタートしたとのこと。
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 地球温暖化の影響評価にはやはり100年レベルの経年データ蓄積が必要でしょう。植物の開花時期と蝶の活動・個体数変動推移が100年単位で併行調査されれば、高山蝶の保全に必要な貴重なデータが得られるでしょうね。ウスバキについて言えば本来丸2年かけて羽化するのだけれど、近年、越冬卵が翌年孵化した後、幼虫越冬せずに当該年内に成虫羽化する個体も増えているとの噂を聞いたことがあります。ホストであるコマクサの開花時期が100年後に大幅に変動し、コマクサの個体数に影響を及ぼすことも十分に考えられます。ウスバキの聖地:コマクサ平についても100年後、現状のままでいられるのか?それとも「昔ここに沢山のコマクサが咲いていたので、コマクサ平と命名されましたが、その後地球温暖化の影響もあって、コマクサは絶滅し、現在ではその面影もありません・・・」なる逸話になり下がるのか?報告会を聴講して後者のような最悪のストーリーだけは避けたいものだ、と心底思ったのでした。いつまでもウスバキが大雪で楽しめることを念じて、6月に撮影したウスバキ画像(イワウメ吸蜜)、および黄色の花弁が印象的なメアカンキンバイ(Potentilla miyabei:バラ科)をアップしておきましょう。

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D90-85VR、ISO=400、F11-1/500、-0.7EV、撮影月日・時刻:6月27日、7時50分
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D90-85VR、ISO=200、F4.5-1/1600、-0.7EV、撮影月日・時刻:6月26日、7時56分

<参考:クリックで当該サイトにジャンプします>
a) 北大・工藤研究室
b) NPO法人アース・ウィンド
c) 環境省モニタリングサイト1000
by fanseab | 2011-11-08 22:33 | | Comments(2)

奄美大島遠征記(8)10月12日後半戦

 ランタナポイントを離れ、ある海岸線沿いをゆっくりと走っていると、前方に黒系アゲハの姿が。尾状突起が確認できたので、慌てて近寄ります。センダングサで吸蜜するオキナワカラスアゲハ♀でした。                                                                                       ++横位置画像はクリックで拡大されます++
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D7K-34、ISO=400、F4-1/1000、-0.7EV、撮影時刻:10時47分

 思いっきりスレ品ですが、正面から撮れてホッとしました。ボロいながら、後翅外縁の紅紋は、矩形状にまで拡大し、本土産♀とは明らかに異なることがわかります。完品で是非撮り直したい対象ですね。この後、初日にウラナミシロが沢山舞っていたポイントに出向きました。この日は天気も良いこともあって、ウラナミシロ・ウスキシロ共に相当な個体数を確認できました。最初はウラナミシロチョウの交尾飛翔です。
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D7K-34(ノートリ)、ISO=500、F4-1/3200、-0.7EV、撮影時刻:11時23分

 ちょっと、ピンボケ(^^; でも「交尾飛翔形式が←♂+♀である」ことの証拠写真には十分でした。お次はウスキシロチョウの求愛飛翔。
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D7K-24(トリミング)、ISO=500、F11-1/8000、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:11時48分

 産卵の合間に、♀(下の個体)にしつこくつきまとう♂ですが、当然、愛が成就する訳もなく、暫くして♂は飛び去りました。車を止めた脇で新鮮なウスキシロ銀紋型♂を発見。かなり接近しても飛び立とうとしません。飛ばしてみてもヨロヨロと2m飛ぶのがやっと。どうやら将に羽化直個体。そこで普段あまりやらない手乗りに挑戦。
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GXR@5.1mm、ISO=100、F4.1-1/1600、-0.7EV、撮影時刻:12時04分

 とても素直で良い子でした(^^) 更に食樹であるナンバンサイカチの実生では、Catopsilia属の、蛹を除く生活史のほぼ全てが観察できました。
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D7K-24(トリミングと画像合成)、ISO=200、外部ストロボ、撮影時刻:11時35~40分

 (1)が卵、(2)は2~3齢幼虫、(3)は亜終齢~終齢幼虫です。管理人はウラナミシロとウスキシロの幼虫同定判別ができませんので、いずれかの可能性があります。(3)は5齢だとすると、ウスキシロ、4齢だとウラナミシロの斑紋に似ておりますが、果たして・・・。どなたかお詳しい方がおりましたらご教示下さい。

 ウスキシロポイントを後にして、ちょっと樹相の豊かな林道に入っていきました。林道脇にはこんな看板が掛っておりました。
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GXR@5.1mm、ISO=100、F3.6-1/200、-0.7EV、撮影時刻:12時15分

 「こんな事。言われなくてもわかってるでぇ~」と思う反面、リアルな絵を前にすると、足元からニョロニョロ~と出てくるのではないかと、流石に緊張いたしました(^^; さてここでの目的はオキナワカラス♂の撮影。♂が蝶道を作りそうな雰囲気の場所に駐車して、暫く待機していると、目論見通り、林縁を♂が通り抜けていきます。しかしかなり高所で不規則な飛び方をするので飛翔画像もままなりません。そのうち、頭上で黒系アゲハがどうやら吸蜜している雰囲気。
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D7K-34、ISO=500、F4-1/2000、-0.7EV、撮影時刻:12時28分

 スレたモンキアゲハでした。吸蜜源はミカン科のハマセンダン。オキナワカラスアゲハの食樹とされています。♂がこのあたりで蝶道を作っていた理由がわかりました。ここで午前中から比較的低いハマセンダンの前で待機しておれば、♂♀の吸蜜画像も狙えそうですが、時間がありません。まぁ、今後の撮影のヒントが得られたことが唯一の収穫でした。ここはやや暗い林道で、喧しい蝉の鳴き声に溢れておりました。その声の主がこちら。
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D7K-34、ISO=500、F11-1/500、-0.7EV、撮影時刻:12時33分

 リュウキュウアブラゼミ(Graptopsaltria bimaculata)の♂です。コミスジが南西諸島ではリュウキュウミスジに代置されるように、本土産アブラゼミ(G.nigrofuscata)の代置種です。声のトーンはアブラとそっくりですが、短時間、繰り返して鳴くため、慌ただしく感じられますね。 そろそろ帰りのフライトの時間が近づいてきたので、このポイントを後にして初日最初に訪問した海岸沿いのハイビスカスポイントで新鮮なツマベニチョウを狙います。しかし期待に反して全く飛んで来ません。と褐色の蝶影が・・・。何とテングチョウでした。まさか、テングがハイビスカスから吸蜜するはずはないが・・・と暫く観察すると、何やら葉上に止まっております。
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D7K-34、ISO=500、F9-1/1250、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:13時04分

 帰宅して画像編集で気が付いたのですが、どうもアブラムシから出る蜜を吸汁している様子です。珍しい生態がゲットできて嬉しい限り。せっかくハイビスカスに来ているのですから、真紅の花弁とのツーショットを撮りたく、飛翔で無理やり入れ込んでみました。
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D7K-34(ノートリ)、ISO=500、F10-1/3200、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:13時07分

 この画像を撮ったあたりでタイムアップ。慌ててレンタカーを返却し、出発ゲートに入りました。奄美空港はノンビリとしたローカル飛行場です。丁度、小型プロペラ機(ボンバルディアQ400)が離陸の準備に入っておりました。
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GXR@15.3mm、ISO=100、F8.9-1/550、-0.7EV、撮影時刻:14時05分

 続いて管理人も14時40分に離陸、奄美遠征を無事終えることができました。

 えー、長々と引っ張って参りました奄美遠征記も今回が最終回です。管理人にとって、初の南西諸島遠征でしたが、第一のターゲットであったアカボシゴマダラも、それなりの成果を挙げることが出来、海外遠征では普段撮影をパスする普通種も丁寧に撮ることができて、収穫の多い遠征になりました。<おしまい>
by fanseab | 2011-11-02 23:13 | | Comments(8)