探蝶逍遥記

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ムラサキツバメの越冬集団探索:その2(11月28日)

 先週に引き続き越冬集団の様子を見に行きました。この日は快晴ですけど、午前中は物凄い風が吹き荒れていてちょっと心配。現地8:00着。最初は第一集団。数は前回と同じ8頭。                                  ++画像はクリックで拡大されます++
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D90-34、ISO=640、F10-1/200、外部ストロボ、撮影時刻:8時26分

 多少数が増えていることを期待したのですけど、彼らのマンション(仮に1号棟とでも呼びましょう)の定員は8名様と決まっているのでしょうか?続いて2号棟(笑)。こちらも前回同様7頭でした。
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D90-34、ISO=640、F10-1/200、外部ストロボ、撮影時刻:8時29分

 ただ、どちらの集団も前回とは集団の配置が異なっています。天気の良い日に活動して、舞い戻った時に占有するポジションも当然異なるのでしょう。1号棟の様子を広角でも撮影。
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D90-1855VR@18mm、ISO=200、F10-1/60、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:9時08分

 周囲の灌木類もかなり黄色く色づいてきました。お次は今回主目的の魚露目画像です。1号棟の様子をぐっと住人達に接近して撮影してみました。
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D90-1855VR@55mm-gy8(トリミング)、ISO=400、F25-1/60、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:8時52分

 魚露目での撮影としては、もう少し頭数が多いと「ひしめき合う」点が強調できるのですが、8頭程度だと少し迫力が欠ける感じがします。さて、1号棟を魚露目で撮影した後、2号棟を撮ろうと、魚露目を接近させた瞬間、パーッとムラツが散ってしまいました。後で振り返ってみると、7頭はほぼ全個体とも立っていて、活発な状態でした。何故かと言えば、地形的に2号棟は朝日が良く当たる位置にあり、全個体の活性が上がっていたのです。対照的に1号棟は午後2時過ぎでないと陽光が当たらない環境。人間が住むマンションですと、2号棟の方が高価かもしれませんが、ムラツの越冬にはむしろ、1号棟の方が御誂え向きのように思います。

 魚露目画像も撮れたので、この日も「3号棟他」を探索してみました。前回より捜索範囲を拡げてみたものの、成果はなく、戻る途中でヤツデの葉に違和感を覚えました。近寄ってみると、♂が全開翅しておりました。折角のチャンスなので、前方から撮影。
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D90-85VR、ISO=200、F10-1/250、-0.7EV、撮影時刻:10時11分

 この渋い藍緑色の輝きは独特なものがありますね。その後、2号棟付近に戻ってみると、先ほど散らばった個体の一部が日光浴しておりました。ちょっとスレた♂の開翅。
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D90-85VR、ISO=200、F10-1/160、-1.0EV、撮影時刻:10時38分
 
 ムラツ♂のブルーが一番光るのは、この絵のように、右前翅が立った状態で、少し後方から覗き込むアングルではないかと思います。また、緑系ゼフと異なり、前方から撮影しても、必ずしもブルーが鮮やかに輝く訳でなく、このシジミの場合は、ことさら鮮やかなブルーの描写に拘るよりは、ムラツ♂独特の鈍い輝きを楽しむべきと思います。

 さて、結構沢山いた♂に比較して、♀はボロが多く、やっと撮影できた個体も、翅面が綺麗でも尾状突起が欠けていました。
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D90-34、ISO=400、F5.6-1/1000、-1.0EV、撮影時刻:11時00分

 朝方吹き荒れていた強風も昼前には収まり、陽だまりでムラツと戯れながら、楽しい一時を過ごすことができました。
by fanseab | 2010-11-29 23:09 | | Comments(12)

ムラサキツバメの越冬集団探索(11月21日)

 毎年、この時期になると首題集団の探索に出かけています。例年ですと、有名な千葉の公園か、湘南地域の一角に繰り出すのですが、今シーズンは新規ポイントの開拓を目指して、神奈川県南部を彷徨ってみました。

 現地7時40分着。期待とは裏腹にどうも天気が芳しくなく、北風が結構肌寒い位。これまで見聞きした千葉での集団が形成される地形や樹相の特徴を応用しながら、常緑樹を見て回ります。ここは彼らが越冬によく利用するアオキやヤツデが豊富にあるので、候補樹には事欠きません。1時間ほど丹念に探していると、車道脇にあるアオキの葉に違和感を覚えました。近寄ってみると・・・、「ヤッター!」探し求めていたムラツ集団でした。                                                           ++横位置画像はクリックで拡大されます++
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D90-24、ISO=200、F9-1/40、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:8時54分

 実は管理人、自力単独で彼らの集団を発見したのはこれが初めて。こんなに嬉しいことはありません。横倒しになっている個体もいて見難いけれど、全8個体の集団でした。このポイントの全体像を示したのがこちら。
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D90-24、ISO=400、F9-1/60、-0.7EV、撮影時刻:9時12分

 黄色い円で囲った中心に集団があります。ほぼ南向きで、画面の上方が傾斜地になっていて、冷たい北風は完全に遮断されています。また東西からの風もシャットダウンされる地形に位置します。地上高は約160cm。地面にほぼ平行に迫り出した葉に固まっていて、その葉の上には雨除けの庇ならぬ葉がちゃんとあります。ここら辺の選び方はどの地域でもほぼ法則性があると思います。「雨除けの庇」がある関係上、接近戦で撮影する時、いつもストロボのデュフュージングに苦労します。デュフューザーが「庇」に触れて揺れてしまったり、庇にストロボ照射光が遮られて影ができたり、悩ましい限りです。ここは仕方がないので、脚立に乗り、300mmでストロボ光を葉面に平行照射することで、庇の影が出ない工夫をしてみました。
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D90-34、ISO=500、F10-1/200、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:9時12分

 集団は寝そべっている個体と立っている個体が混在していて、ピントを全ての個体に合わせるのにまた一苦労(^^; 次回は魚露目でその辺の問題点を解消した絵を撮る予定です。

 さて、先ずは集団を発見できたので、欲張って次の鉱脈?狙いで暫くウロチョロ歩き回りました。南向きの風衝地帯に該当する地形は意外と少ないもので、ムラツの影はありません。ようやくアオキに潜む単独個体を発見。たぶん♂でしょう。
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D90-24、ISO=400、F9-1/100、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:9時57分

 前翅は後翅に折りたたまれているけど、触覚は立っていて、それなりに活発なサインを示しています。案の定、もう少し個体に接近した絵を撮ろうとしたら、飛ばれてしまいました。少しガッカリしながら、更に探索を続けます。結局、第二集団を見つけることが叶わず、第一集団の付近に戻ってきました。仕方なくその周辺を探索すると、なんと第一集団の僅か10mほど西側のアオキ葉上に7頭からなる第二集団を発見することができました。
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D90-24、ISO=500、F10-1/200、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:10時47分

 こちらは第一集団よりやや奥まった位置にあり、しかも傾斜地なので、脚立が安定せず、撮影には一苦労。300mmで狙うも、どうもいいアングルが取れません。
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D90-34、ISO=640、F10-1/160、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時17分

 まだ赤く色づいていないアオキの実を背景に縦広角でも撮影。
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D90-24、ISO=500、F6.3-1/125、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:10時51分

 このアングルも極めて苦しい撮影ポジションなので、久しぶりにライブビュー機能を用いて撮影アングルを確保できました。

 半日ウロチョロ回って調べてみると、やはりムラツが集団を形成するポイントは「なるほど」と思わせる地形でした。できれば未だ観察したことのないヤツデ葉上集団を撮りたいので、もうちょっとこの地域を調べてみるつもりです。
by fanseab | 2010-11-23 21:01 | | Comments(16)

アカボシゴマダラの羽化(11月19日)

 自宅庭のエノキには毎年、アカボシが産卵しており、居ながらにして生態期のフルステージを観察することができます。特に秋口は幼虫の数が一番多く見られ、ブログネタが少なくなるこの時期に、絶好のブログネタを提供してくれます(笑)。

 さて、11月に入り、終齢幼虫が続々と蛹化しております。今年はこの時期の蛹化が異例に多く、現在12頭ついています。そして先月23日に蛹化した個体が昨日黒化し、羽化真近の兆候を見せていました。                                         ++横位置画像はクリックで拡大されます++
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D40-24、ISO=400、F9-1/15、-0.7EV、外部ストロボ、調光補正1/32、撮影月日・時刻:11月19日、6時38分

 この個体は当日の午後に羽化した(蛹期24日)のですが、その日は飛び立てず、今朝もまだ蛹の近くにおりました。
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D90-24、ISO=400、F10-1/200、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影月日・時刻:11月20日、8時33分

 後翅第5室の白班が外縁部に連続的に繋がり、全般に裏面がやや白い印象を受ける♂でした。10時過ぎになって、ようやく枝から動き出してエノキの葉上で全開日光浴を始めました。
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D90-24、ISO=200、F9-1/250、-0.7EV、撮影月日・時刻:11月20日、10時22分

 この個体は11時過ぎになって、空に羽ばたき、青空に消えていきました。自宅庭で羽化した最遅記録としては、2008年の11月27日 で、現在12頭いる蛹が、この記録を更新するのか?注目しているところです。
by fanseab | 2010-11-20 23:18 | | Comments(10)

再びアサギマダラ(11月6日)

 前回の静岡遠征で谷あいに集団で暮らすアサギマダラ♀に出会いました。更に先日の鱗翅学会でアサギマダラの報告を聞いたこともあって、懲りずにまた静岡遠征です。今度は低山地のピークや尾根筋を重点に、ヒルトッピングして来る個体を探索しました。

 土曜日もムチャええ天気で、成果が期待されましたが、意外と目論見通りのポイントはありません。無駄に時間が過ぎていくなか、午後1時近くなって、ようやく車道横づけで撮影できる場所に出会いました。ここは一部に植栽としてフジバカマが植えられていて、目敏いアサギマダラ達が吸蜜に訪れていました。先ずは横位置で。                                                        ++横位置画像はクリックで拡大されます++
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D40-10.5-X1.4TC、ISO=200、F10-1/640、-0.7EV、外部ストロボ、調光補正1/32、撮影時刻:12時53分

 晩夏のヒヨドリバナと並び、この時期のフジバカマは絶好のアルカロイド吸汁源なのです。お次は縦位置で。
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D40-10.5-X1.4TC、ISO=200、F11-1/250、-0.7EV、外部ストロボ、調光補正1/32、撮影時刻:13時08分

 2枚いずれも♂ですが、最初の個体は相当にボロでした。フワフワ飛ぶアサギマダラを見れば、当然飛翔に挑戦したくなります。この夏はアサギマダラに縁が無く、秋口に安曇野に集結する渡りの途中の集団も今年は観察できなかったので、ここぞとばかり乱射しました。最初は♀。
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D40-10.5-X1.4TC(トリミング)、ISO=400、F7.1-1/1600、-0.7EV、外部ストロボ、調光補正1/32、撮影時刻:12時50分

 フジバカマに群れていたのは、全て♂だと思っていましたので、意外でした。お次は♂。
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D40-10.5-X1.4TC(ノートリ)、ISO=200、F5-1/2000、-0.7EV、外部ストロボ、調光補正1/32、撮影時刻:12時55分
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D40-10.5-X1.4TC(トリミング)、ISO=400、F10-1/2000、-0.7EV、外部ストロボ、調光補正1/32、撮影時刻:12時57分

 最初の画像は、珍しくノートリで上手く収まりました。ただちょっとピントが甘いです。おしまいに、この日撮影した飛翔のベストショットをやや大き目の画像でご紹介しましょう。
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D40-10.5-X1.4TC(トリミング)、ISO=400、F5.6-1/2000、-0.7EV、外部ストロボ、調光補正1/32、撮影時刻:13時08分

 これ、左上の空間から右下のフジバカマに向かうアサギマダラの動線が表現できて気に入っています。まぁ、しかし、アサギマダラの飛翔は簡単そうに見えて奥が深いです。まだ「これだ!」っていう決定打を撮影できていません。「やったー!ホームランだ!」と思ったらファウル(つまりフレームアウトのこと)だったり・・・(^^; まだまだ挑戦は続きます。

 ところで、今回観察したヒルトッピング集団は渡りの途中なのか、それとも谷あいで暮らす個体が風で尾根筋に運ばれたものなのか?よくわかりませんね。
by fanseab | 2010-11-09 23:15 | | Comments(10)

モンシロチョウ(11月3日)

 文化の日は所謂「気象上の特異日」とされていて、例年好天が期待できます。お約束通り、この日も神奈川県は雲一つない快晴になりました。しかし、悲しいことに所用で遠出ができず、仕方なくご近所の多摩川でお散歩撮影です。

 この日はモンシロチョウにちょっと拘って撮影してみました。管理人はモンシロの撮影はとても難しいと感じています。もちろん、撮るだけなら、コンデジを使えば小学生でも楽に撮れます。ただ、この蝶の持つ優しい雰囲気とか、黒斑紋、前翅前縁部の淡褐色グラデーション、裏面のベージュ色と表翅の純白との対比表現等、拘って写そうとすると途端に難易度が上がる蝶です。まぁ、モンシロを綺麗に撮れれば撮影テクニックは卒業したと言っても過言じゃないでしょう。で、今日はモンシロとちょっぴり、真剣勝負です(笑)

 最初はセイタカアワダチソウに拘っていた♂。クズが繁茂した空間を周回飛行で探♀した後、必ずこの株に戻ってきておりました。                                                 ++横位置画像はクリックで拡大されます++
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D90-85VR、ISO=200、F10-1/1000、-1.0EV、撮影時刻:11時41分

 少しアングルを変えて、セイタカワダチソウの黄色い花房に被さるような構図で一枚。絞り解放気味でアワダチソウの房をボカす工夫をしてみました。
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D90-85VR、ISO=200、F4-1/3200、-1.0EV、撮影時刻:10時46分

 次に場所を変えてセンダングサに集まっていた個体を狙います。
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D90-85VR、ISO=200、F7.1-1/2500、-1.0EV、撮影時刻:11時58分
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D90-85VR、ISO=200、F7.1-1/2500、-1.0EV、撮影時刻:12時02分
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D90-85VR、ISO=200、F7.1-1/2000、-1.0EV、撮影時刻:12時02分

 2枚目は少し大きめの画像でのご紹介。2枚目と3枚目は殆ど同じ角度ですけど、逆光でシロチョウを撮影していると、微妙なアングル差で表情が相当変化することに気が付きます。表翅の影が後翅に落ちたりすると、表情が一変するからですね。特に腹部がシルエットになって後翅に影を落とすと、意外と「優しさ」を表現できるように思いました。この一群の個体は面白いことに直ぐ傍にあるセイタカアワダチソウには全く見向きもしませんでした。よほど、センダングサの蜜が美味しいのでしょうね。

 モンシロを撮影しながら、ちょっとエノキの梢を検すると、お馴染みのアカボシゴマダラの幼虫がおりました。ここは敢えてシルエット画像で。
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D90-85VR、ISO=200、F7.1-1/1000、-1.0EV、撮影時刻:12時04分

 既に短角型に変化して越冬準備が整ったようです。

 短時間でしたが、難題のモンシロに取り組んでみました。季節毎にもう少しモンシロにも時間をかけるべきでしょうが、ハイシーズンは、どうしても珍品に目移りして、撮影が叶いません。やはり、春先か晩秋にならないと撮影対象になりにくいですね。
by fanseab | 2010-11-06 00:07 | | Comments(12)

日本鱗翅学会第57回大会出席(10月31日)

 台風14号が駆け抜けた先週末は期待された台風一過の晴れも実現せず、どんよりとした2日間でした。さて、日曜日に管理人が所属する首題学会に参加してきました。所用の関係で出席できたのは日曜の午前中のみ。土曜&懇親会は残念ながら欠席。この学会に加入してから、かれこれ17年ほど経ちますが、学会本大会に出席するのはこれが初体験。本大会は結構地方で開催されるので、参加するチャンスが意外となかったのです。ところが、今回は30数年ぶりに東京で開催されたもの。会場の東大には9時過ぎに到着。A会場(弥生会館)を聴講しました。午前中の10講演はいずれも骨のある中身で、あっという間に3時間が過ぎた感じです。

 講演内容をざっとレビューしてみましょうね。「上高地の歴史とチョウ類群集の変遷」は信州大グループの発表。この夏、管理人が初めて訪れた上高地の開発の歴史を紐解く解説は大変参考になりました。75年前、徳沢園は牧場だったこと、牧場が廃止されてからの蝶相の変化も興味深いものでした。以下、講演画像は全てカシオFC-150で撮影。                                                                   ++画像はクリックで拡大されます++
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 ただ、後半の地質史との相関は少し駆け足すぎて強引な論調が気になりました。次に面白かったのが、アサギマダラ♂の性フェロモン生合成プロセスを追及している広島大グループの「アサギマダラの配偶行動とアルカロイド」。夏の高原でヒヨドリバナ等からピロリジジンアルカロイド(PA)を吸収して体内で性フェロモンであるダナイドンを合成すること。このダナイドンが先ず後翅の性標で形成され、尾端のヘアペンシルを性標に物理的に擦り付ける「匂い付け」行動でヘアペンシルに蓄積されるというもの。さらに興味深い話は、♂がアルカロイドを触覚のみならず、前脚にも臭いセンサーが存在して、ここで匂いを嗅ぎ分ける能力があること。タテハチョウの前脚がただ退化するだけでなく、特殊なセンサーとして機能分化した点には驚きでした。
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 この講演で紹介された♂の「匂い付け行動」をネットで調べたところ、数枚の生態画像がみつかりました。ただ、画像の質は悪く、我々ブログ仲間の実力なら、もう少し鮮明な絵が撮れると思います。来シーズンの課題の一つにしたらどうでしょうか。ただ、♂は羽化して直ぐにアルカロイドの吸収に走るのではなく、1週間程度、性成熟に時間をかけるようです。真夏のヒヨドリバナ吸蜜を終えた後あたりが撮影チャンスになるのでしょうね。ついでに安曇野で撮影したアルカロイドを吸汁補給するアサギマダラ♂の画像をアップしておきましょう。
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D90-1855VR@55mm-gr8、ISO=400、F22-1/80、-0.7EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2009年9月13日、11時39分

 研究を率いる本田先生の研究材料はどうしても、飼育の楽な国内産マダラチョウに限定されるのは仕方ないですが、先生の話を聞いていると、①Parantica属内で嗜好するアルカロイド化学構造は一定の傾向を示すのか?②生成される性フェロモンの成分比(ダナイドン/ヒドロキシダナイドール)は属内で一定比に収束するのか?③キク科植物の進化(含有アルカロイドの構造変化)とマダラチョウの進化との相関等、研究テーマは沢山転がっているように思います。今後の研究の進展に期待大です。

 東南アジアの蝶フリークにとって、最も聞きたかったのが、九大の矢田先生の「ベニシロチョウAppias neroの分類と多型(シロチョウ科)」。先生は昨年の日本蝶類学会(テングアゲハ)大会で、nerogalba(インド北部から海南島に分布)とnero(ボルネオ等に分布)に細分化する話をされました。今回は更に♀の多型に注目してフィリッピン群島産(A.nero palawanica等)を種昇格させようとの試み。
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 管理人にとって、東南アジアのシロチョウ類でnero種群はお気に入りの仲間ですけど、未だgalbaは南ベトナムで目撃したことはあるものの未撮影。しかもフィリッピン産が仮に種昇格となると、これまた猛烈に写欲をそそります。ただ治安の悪いフィリッピン群島に一人で出かける勇気もなく、当面はgalbaの撮影に専心することになりそうです。北ボルネオ・サバ州で撮影したneroの1亜種chelidonをご紹介しておきましょう。
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D70(トリミング)、ISO=500、F5.6-1/800、-0.7EV、撮影年月日・時刻:2008年5月2日、12時20分

 講演で紹介された外縁が幅広く真っ黒になったフィリッピン産亜種(ssp.domitia)の♀は異様ですね。カザリシロ(Delias属)への擬態を連想させます。それにしても、矢田先生の話はロジカルで明快、パワポの資料も秀逸で役に立ちました。


 午前中の最後はこれまた弁舌爽やかな大阪府立大・石井先生の「チャマダラセセリの温度・日長反応」。幼虫の日長反応の詳細よりも、むしろ冒頭に話された「チャマを温室ドームで飼育してドームの周辺に整備したキジムシロの畑で復元する・・・」といった壮大なコンセプトに感動いたしました。絶滅危惧Ⅰ類の本種の保全は相当に難しそうに思いましたが、講演中で紹介された「粉末状人工飼料で思いのほか、順調に育つ・・・」事実は、保全の将来にとって、何か明るい光が差したように思いました。
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 今回の学会では、パネルディスカッションコーナーも併設されていました。注目されたのは、中高生パネラーによる発表。恐らく事務局が意図的に招待した試みでしょう。おっさん連中が主体の学会にあって、フレッシュな蝶屋(の卵?)は本当に心強く感じました(管理人ももちろん「おっさん」ですので、強くそう感じた次第)。

 初めて参加した本大会。やはりネットでは得られない面白い話が聞けました。興味ある読者の方(もちろん「おっさん」でも結構ですよ)、是非入会されることをお勧めします。入会案内は こちら をご覧ください。
by fanseab | 2010-11-03 23:22 | | Comments(6)