探蝶逍遥記

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南ベトナム遠征記 (5)魅力的なタテハチョウ類

 俊敏、かつ豪快に飛ぶタテハは小生一番のお気に入り。国内だろうと海外だろうと拘って撮影するのは常にタテハ類です。今回はこれまで小生未撮影の低地産種群を中心にご紹介しましょう。

 前回アップした、シロチョウの群飛する林道はタテハ類にとっても好ポイントでした。ゲストハウス周辺の林道は舗装されていますが、2kmも離れると、未舗装になります。そして、未舗装の林道に入ると、突然蝶影が濃くなるのです。この変化は劇的でした。ポイント付近の画像です。
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 木陰が微妙に入り込んだポイントを慎重に選定し、林道中央にパイナップル、海老、さらに2種類の秘薬(中身は内緒?)を撒いて様子を伺いました。すると、どうでしょう。それまでシロチョウしか飛んでいなかった林道にタテハやシジミが忽然と出現しました。蝶の嗅覚には本当に驚かされます。更にGraphium達も乱入して、時ならぬ花吹雪状態!クーッ、これは至福の一時です!! チビフタオチョウ(Polyura athamas)とタイワンシロチョウが絡んだ飛翔シーン。
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D70S-10.5-X1.4TC, ISO=500, F8-1/1000、-0.7EV、外部ストロボ、調光補正1/4

 しかし、「花吹雪」の表現は至難ですね(^^;; バシャバシャ、シャッターを切っていると、突然、ヒオドシチョウを連想させる緋色の大型タテハが登場。初体験のソトグロカギバタテハ(Rhinopalpa polynice)。ド完品にニンマリ(^^)
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D70, ISO=500, F9-1/1000

 やはり初物には興奮します。1属1種の孤立したタテハチョウで、独特な翅型でしょ?このタテハ、緋色に引っ張られて露出アンダーになりやすく、露出補正には苦労されられました。

 イチモンジチョウ似の中型タテハもやってきました。当初、チャイロイチモンジ(Moduza procris)の親類と思いきや、イナズマチョウの仲間、レクタリクイナズマ(Bassarona recta)の♂。
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D70S-VR84@400mm, ISO=500, F5.6-1/2500、-0.3EV 

 イナズマは本来、暗めの環境が好きなはずなのに、思いがけず明るいポイントに出現してビックリでした。本種の識別ポイントとなる肛角部の小赤点がお洒落です。力強く豪快に飛ぶ飛翔に見とれてしまいます。

 小生愛用の1脚に付属のベルトに御執心だったのが、橙色系コミスジの仲間、ミアミスジ(Neptis miah)。
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D70, ISO=500, F9-1/80、+0.3EV

 市場を駆けずり回り、苦労して準備したトラップを尻目に人間の汗が最良のトラップとなったようです(蝶屋の汗は格別の味なのかな?)。低く飛ぶミスジチョウに合わせて、カメラ目線を下げて飛翔も撮影。
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D70S-10.5-X1.4TC, ISO=500, F9-1/1000、外部ストロボ、調光補正1/4

 左後方にチャーターした4WD車も写し込まれ、今回遠征で撮影した飛翔写真の中で小生最もお気に入りの作品となりました(^^)

 一方、明るい林道での撮影を切り上げて、暗いジャングル内のトレイルに入るとイナズマチョウの仲間が歓迎してくれます。しかし超敏感な彼らはめったなことでは撮影させてくれません。こんな時、役立つのが400mmズームレンズ。暗めの環境下で役に立つ手ブレ補正機能は有難い! また、北タイで出会った彼らとの間合いの取り方の経験が活きました。個体数の1番多かった、コキトゥスコイナズマ(Chynitia cocytus)の♀。地味な色調ですので、前翅端の白斑がジャングルでやけに目立ちます。
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D70S-VR84@400mm, ISO=640, F6.3-1/200、+1.3EV、内蔵ストロボ

 お次はアオヘリイナズマ(Tanaesia julii)の♂。こいつは後翅表面外縁部のスカイブルーが和名の由来。暗い林道で妖しく光る、本種のスカイブルー。しかし、撮影できたのは正面から覗く地味な裏面だけでした(^^;; 
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D70S-VR84@400mm, ISO=500, F8-1/500、内蔵ストロボ

 暗い林内では多様なヒカゲチョウ(Lethe属)類にも期待をかけていたのですが、残念ながら1頭にも出会えず。かなり落胆しました。そんな状況で唯一撮影できたのが、これも遠征前から期待していたノティスウスバヒカゲ(Coelies nothis)。本種はイナズマ同様に大変敏感で、ようやくパイナップルトラップに誘引された個体の撮影に成功。
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D70S-VR84@400mm, ISO=500, F6.3-1/500、+0.3EV、内蔵ストロボ
 
 スレ個体のお陰で、後翅表面の紫がかったブルーが透けて見えたのは怪我の功名と言うべきでしょうか?とにかく、目論んだ蝶が撮れるとボロでも大満足です(^^) 

 さて、ゲストハウス周辺の草地で最も目立ったのがルリボシタテハモドキ(Junonia hierta)。タテハモドキ類は熱帯アジアのオープンランドでの普通種とされていますが、面白いことに各遠征先で観察できる種は限定されています。この公園内ではルリボシ以外は比較的珍品でした。ここでは♀をご紹介しましょう。
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GX100@5.1mm, ISO=100, F7.2-1/125

 背景はゲストハウス内で2棟しかない高床式の部屋。雨季には快適な宿舎となるでしょう。このタテハ、黄色でかつ、地表スレスレをせわしなく飛ぶのでモンキチョウのように見えました。

 まだまだご紹介すべきタテハ類はいるのですが、今宵はこれまでにいたしとうございます(古ネタで失礼!) 次回は可憐なシジミ?それとも敏捷なセセリ? とにかくご期待ください。
by fanseab | 2007-05-30 22:58 | | Comments(16)

南ベトナム遠征記 (4)高速飛翔するシロチョウ類

 その昔、沖縄を初めて訪れた際、猛スピードで飛ぶウスキシロチョウ(Catopsilia pomona)に度肝を抜かれたことを思い出します。とにかく熱帯のシロチョウって、何故、あんなに高速度で飛ばねばならないんでしょう?けだるい昼下がり位、ノンビリと飛翔してもいいのに・・・といつも遠征して思います。

 さて、その高速で飛ぶシロチョウ達をご紹介しましょう。
前回、ミカドアゲハ達の吸水集団画像をご紹介しました。実は、ミカド集団から2mほど離れた場所でシロチョウ類が同様に吸水集団を形成していたのです。
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D70S-VR84@200mm, ISO=500, F5.6-1/1600

 この時は焦りました。アゲハを先に撮るか?シロチョウを撮るか?一瞬悩んだ末、結局、交互に撮影することに・・・(^^;;

 裏面が濃黄色のメスシロキチョウ(番号①:Ixias pyrene )、黒い翅脈が特徴のタイワンスジグロチョウ(番号②:Cepora nerissa)、さらにはトガリシロチョウの仲間、タイワンシロチョウ(番号③:Appias albina )達が群れており、総数44頭。昔、写真集で見たのは確か200頭ほどが群れていたような・・・。それに比較すれば貧弱だけど、小生を感動させるには十分な集団の迫力でした。

 これら、シロチョウ達の裏面はさほどパッとせず、むしろ表翅に魅力的なものが多いことも事実。ところが、めったなことでは、彼らは表翅を拝ませてくれません。そこで、飛翔狙いで、シロチョウの表翅を拘って撮影することにしました。最初はメスシロキチョウ。本種の和名については個人的に不満を持っておりまして、♂の特徴に注目して、「ツマベニキチョウ」とすべき持論があります。翅を開いた瞬間に覗く前翅端の橙色は本当に鮮やかです。パイナップルトラップ上で2頭が絡んだシーン。
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D70S-VR84@400mm, ISO=500, F8-1/1000

 なお、中央左の茶色系タテハはチャイロフタオチョウ(Caraxes bernardus)、右はコウモリタテハ(Vindula erota)。

 ところで、滞在4日目、4WD車とガイドをチャーターして公園事務所から10kmほど離れた林道に繰り出した際、途中で面白いことに気が付きました。シロチョウが数頭単位で林道を追飛飛行しているのです。10kmの林道に切れ目無く続くこのシロチョウの群飛。ざっと見積もって、総数は数千~数万頭でしょうか?アゲハチョウが林縁で蝶道を形成するのと同じで高速で駆け抜けていきます。そこで、林道上で待ち伏せ、置きピンで飛翔シーンを狙う「省エネ?」撮影法にトライ。

 メスシロキチョウ同様、個体数の多かったタイワンスジグロチョウ。
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D70, ISO=640, F7.1-1/2000、-0.7EV

 斑紋はスジグロ似ですが、スジグロとは段違いのスピードで駆け抜けていきます。お次はタイワンシロチョウを90mmマクロで縦位置狙い。
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D70, ISO=640, F13-1/2000、-1.0EV

 更に超広角でもトライ。
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D70S-10.5-X1.4TC, ISO=500, F8-1/1000、-0.7EV、外部ストロボ、調光補正1/4

 林道を追飛する集団を表現したかったのですが、小生の技術では、3頭しか画面に入らず、これが精一杯の作画ですね(^^;;

 皆さんもお馴染みのツマベニチョウ(Hebomoia glaucippe)も、「俺達が一番速いだろ~」って見せ付けるようなスピードで飛び去っていきます。格下?のタイワンシロチョウ(右)に追跡される珍しいシーンが切り取れました。しかし、ツマベニはいつ見ても風格がありますね。
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D70, ISO=640, F8-1/2000、-0.7EV

 さて、熱帯に来たからには、鮮やかな花で吸蜜するシロチョウを見たいものです。ところが、アゲハにしろ、シロチョウにしろ、意外と吸蜜シーンの撮影にはてこずります。乾季にはそもそも吸蜜が必要ないのか?小生が吸蜜タイムを知らないだけなのか?いつも「なんで吸蜜が撮れへんのかなあ~」と首をかしげています。そんな中、ウスキシロチョウの仲間は、吸蜜専門だったので、助かりました。でもウスキシロ(C. pomona)の♂はあまり好みではないのでパスして、♀を追い掛け回し、逆光に拘っての広角ショット(この個体は無紋型)。
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GX100@5.1mm, ISO=100, F4.6-1/660、+0.3EV

 ウスキシロより、数が少なかったスキラウスキシロチョウ♂(C. scyra)。ウスキシロより大型で、風格があります。何とか「熱帯で撮りました」的写真になって満足です。
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D70, ISO=500, F3.5-1/1250、+1.0EV

 暑い林道に立ち尽くしての撮影は体力を消耗します。そこで、ぎらつく太陽を避けて、鬱蒼とした熱帯雨林内のトレイルに入ると、ホッとします。この国立公園のシンボルとも言うべき巨大な板根(バットレス)は素晴らしかったです。
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D70S-10.5, ISO=400, F9-1/50

 高さ1mの板根に支えられた樹高は40mを優に超えている・・・・。蝶撮影に疲れた時、そんな風景を眺めて元気を取り戻したりします。
 
 暗いトレイルを歩いていると必ずフワフワ飛んでいるシロチョウに出会います。クロテンシロチョウ(Leptosia nina)です。この蝶はさしずめ、熱帯のヒメシロチョウ。飛び方も翅型もヒメシロチョウそのもの。止まりそうで止まらず、イライラさせられる点はツマキチョウ並みで撮影は結構しんどいです。トレイル上にハイカーが落とした飴玉?に執着した個体を広角で環境描写狙い。しかし、結構敏感で10分間辛抱して撮ったショットもイマイチの出来でした。
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GX100@5.1mm, ISO=400, F2.9-1/60、-0.3EV
 
 高速で飛ぶ熱帯シロチョウは見てて爽快ですが、そんななか、全く異次元の緩やかな飛行を見せるクロテンシロチョウ。「癒し系」シロチョウとして、今後も丁寧に写しこみたい対象です。

 このベトナムシリーズもマダラチョウ、アゲハチョウ、シロチョウと続けてきました。さて、お次は何を登場させましょうか? 続編に乞うご期待!!
by fanseab | 2007-05-24 23:59 | | Comments(20)

国内産ミカドアゲハに挑戦

 例年、この時期は西播磨の黒系アゲハ撮影。ところが、起床したら急に気分が変わって三重県東部に突撃です。自らの目でベトナムで撮影したミカドアゲハと比較するのが本日の目的。この日は上空に寒気が残っていたせいか、どんよりとした雲から俄雨が降ったり、心配なお天気。それでも現地に9時前に到着すると、青空が拡がってきました。

 到着後、樹冠を仰ぎ見ると、どうやらもう活動を開始しているようです。相当に高い所で飛び回っていて暫くは手が出ません。しかし、見た印象はベトナム産とは、全く異なります。「ゴマダラチョウを細長くした」と言ったらいいのでしょうか?とにかく白いです。午前10頃になると、ようやく下に降りてきて、小生の目の前を跳ねるように飛び始めました。どうやら、探雌行動の様子。樹冠から下草まで、それこそ舐めるように♀を探す行動パターンはちょうど、キリシマミドリシジミの♂を思い出します。近くに吸蜜する花も咲いていないので、飛翔にトライ。

 高い位置を飛んでいる時はこんな印象です。
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D70, ISO=640, F3.5-1/2000、-0.3EV
 
 お次は接近戦で。
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D70, ISO=640, F5-1/1600

 目の前で見ると、ちょっとブルーっぽいかな?でも感覚的にはベージュ系の残像しか残りません。Graphiumはやはり青空がお似合い。そこでバックに五月晴れを入れたシーン。
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D70, ISO=640, F6.3-1/1600

 葉に止まっているように見えますが、これは殆ど止まりそうな位のスピードで♀を探している光景なのです。

 さて、正午頃になると、ミカドの数が急激に減り、代わりに黒系アゲハが登場しました。クロ、ナガサキ、カラス、モンキと役者が揃い踏み。ミカドが撮れないので、カラス♂の追飛シーンを撮影。
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D70S-VR84@210mm, ISO=640, F5.3-1/2000

 また、関西に来てからまともに撮影していないダイミョウセセリも撮影。
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D70, ISO=500, F7.1-1/800、-0.7EV

 このダイミョウ、関西型にしては、後翅の白帯が弱いものの、前翅から後翅に続く、縁毛の白さが印象的。後翅の縁毛はこのセセリがシロシタセセリ(Tagiades属)に近縁であることを連想させます。

 本日の目的は吸蜜か吸水シーンを90mmマクロで撮ること。ポイントの近くにはミカンの木があって、そこに一瞬吸蜜したのですが、すぐに逃げられました。また、吸水は望めそうにありません。昼食後、そろそろ諦めようとしたその時、張り込んでいたミカンの木に役者が登場したのです! 心臓が高鳴ります。慌てて絞り設定を間違えたり、相変わらずのドジを踏みましたが、何とか撮影に成功(^^) 
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D70, ISO=500, F4-1/6400

 国内本土産吸蜜シーン初ゲットです。続いて欲を出して、逆光狙い。しかし、簡単には撮らせてくれません。半逆光のこのシーンが精一杯。
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D70, ISO=500, F7.1-1/800、-0.7EV

 ミカンの花のメシベで複眼が隠され、おまけに後翅が大破した個体でした。ここで暫く粘る目論見も、吸蜜タイムはほぼ30分で終了。小生が吸蜜タイムを無知なのかもしれませんが、誠に気難しいアゲハです。とにかく、この2週間の内にベトナム、日本と遥かかけ離れた二箇所のミカドを撮影できたのは、本当に嬉しかったです。帰宅後、小生には珍しく、○麟の端麗(生)で祝杯を上げ、魂を解き放ったのでした(高笑)

 なお、本日の撮影行では、現地の蝶愛好家、O氏のご協力、アドバイスを頂きました。首尾よく上記画像がゲットできましたのもO氏のお蔭と言っても過言ではありません。この場を借りまして感謝の意を表します。有難うございました。
by fanseab | 2007-05-20 23:06 | | Comments(22)

南ベトナム遠征記 (3)アゲハチョウ達

 今回はアオスジアゲハの仲間(広義のGraphium属)を中心に魅力的なアゲハ類をご紹介しましょう。小生、これまでの東南アジア遠征は主として乾季に実施しております。その理由はサラリーマンにとって限られた年休を有効に使うべく、現地までのアクセス時間が確実に計算できる点が挙げられます。雨季には河川の氾濫やら4WD車でも林道でスタックする等のリスクが増加するからです。一方、乾季にはアゲハチョウやシロチョウが大集団で吸水することがよく知られています。小生が海外遠征を夢見たのは、実はこの吸水集団を観察したい一念にあったと言っても過言ではありません。「花吹雪のように舞う蝶に包まれたい・・・」これを夢見て遠征したものの、これまで夢のシーンに出会うことはできませんでした。

 ところがです。今回、思わぬ形でそれが実現したのです。ゲストハウスの近くに国立公園で勤務するレンジャー達の宿舎があり、彼らが野菜類を自給自足するための小さな畑が脇にありました。滞在2日目の午前中、何気なくこの畑を覗くと、ミカドアゲハ(Graphium doson)を中心にしたアゲハの吸水集団が形成されていたのです!
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D70, ISO=500, F7.1-1/640

 恐らくアゲハ達を引き寄せる肥料が畑に播かれていたのでしょう。画面上ではミカドアゲハ(番号①)が13頭、アリステウスオナガタイマイ(同②:G.aristeus)6頭、マカレウスタイマイ(同③:G.macareus)3頭、合計22頭が観察できます。これだけの個体数がまとまった集団を観察するのは初体験だったので、どの個体にピントを合わすべきか?迷ってしまいました(^^;; また、北タイで経験したようにカメラを無理に接近させると、すぐに集団がバラけてしまいました。

 それでは、個々のアゲハを詳しく見ていきましょう。先ずは最も数の多いミカドアゲハ。恥ずかしながら小生、国内外含め、本種を撮影するのは、これが初。ブログ仲間のyさんが最近、国内産ミカドをアップされていますが、斑紋がほぼ白色に近い国内本土産亜種(ssp. albidum)に比較して、当地ベトナム産(原名亜種:ssp. doson)はアオスジ同様に鮮やかなブルーで、かなり印象は異なります。
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D70S-VR84@400mm, ISO=500, F9-1/160、+0.3EV

 お次はアリステウスオナガタイマイ。
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D70, ISO=500, F6.3-1/2500、-0.3EV

 尾状突起が異常に長いアオスジアゲハの仲間は、春先中心に出現する小生が憧れていた種群です。背景に散水用の青いホースが入ったのはご愛嬌です(^^;;

 吸水集団から離れて単独で吸水にやってきたのは、オナガタイマイ(G. antipathes)。
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D70S-VR84@400mm, ISO=500, F5.6-1/1600、-0.3EV

 こいつはボルネオ&北タイで撮り逃がしていただけに撮影できて素直に嬉しかった! ご覧のようにベージュを基調に緑と黒褐色の帯状紋を配した大変お洒落なアゲハです。普通種と言えますが、個体数は少ない印象で、発生末期なのか、スレ気味だったのは残念でした。

 尾状突起を欠く仲間の代表例がマカレウスタイマイ。朝方、活動が活発になる前に葉上で開翅休息する個体です。
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D70, ISO=400, F3.5-1/1000

 洞察力のある読者の皆さんは、本種がマダラチョウに擬態していることを見抜かれたかもしれません。擬態のモデルになっているのは恐らく↓に示すヒメアサギマダラ(Parantica aglea)だと思います。
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D70S-VR84@400mm, ISO=500, F9-1/100

 このアゲハ、滑空飛翔が得意でないので、マダラチョウとの見分けは比較的楽で、そう簡単に騙されることはありませんでした。

 一方、抜群の飛翔力を誇るのがコモンタイマイ(G. agamemnon)。このアゲハが海老等の甲殻類トラップを好む事実は2年前、シンガポールの蝶屋さんから教えてもらいました。ゲストハウス近くの林縁に腐敗した海老を置くと果たして、本種がやってきました。食事前の読者の方、画像をご覧にならないよう、ご注意くださいネ(笑)
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D70, ISO=500, F10-1/100、+0.7EV

 蝿がたかってウジムシが沸いている異臭プンプンのトラップに頭部を突っ込んで必死に吸汁するこのアゲハ、裏面はあまりパッとしない斑紋です。ところが、一旦飛び立つと、鮮やかなグリーンの小紋が浮かび上がり、ハットする美しさです。
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D70, ISO=640, F3.2-1/1600、+0.7EV

 この蝶の名誉のために、もう少し綺麗な背景での飛翔シーンをご覧に入れましょう。別のポイントで、林道に置いたトラップ上で2頭が絡んだシーン。躍動感溢れるお気に入りの絵になりました(^^)
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D70S-10.5-X1.4TC, ISO=500, F8-1/1250、外部ストロボ、調光補正1/4

 今回はルリモン等のアキリデスや一番期待したキシタアゲハ(Troides属)は残念ながら1頭も発見できず、正直ガッカリしました。ベニモンアゲハは飛んでいたので、少なくともキシタ類の食草である、ウマノスズクサ類は公園内に生えているはずです。キシタは何故いないのだろう?と首をかしげてしまいました。で、唯一Papilio属で元気に飛んでいたのはタイワンモンキアゲハ(別名シロオビモンキアゲハ:P. nephelus)でした。
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D70S-VR84@400mm, ISO=500, F10-1/500、+0.3EV、内蔵ストロボ

 一見すると、モンキアゲハ。でもよく見ると後翅白斑の数が多く、後翅裏面外縁側弦月班が黄~白色を呈す特徴があります。この吸水シーンは公園内を流れる大河、ドンナイ川の畔で撮影しています。川の畔で吸水集団が形成されることを期待して、日本から持参した「ある秘薬?」を川岸に散布しておいたのですが、やってきたのが、↑のボロ個体のタイワンモンキ1頭のみで、いささか期待外れに終わったのでした。

 次回はシロチョウ類にスポットを当てたいと思います。お楽しみに。
by fanseab | 2007-05-15 22:54 | | Comments(22)

ギンイチモンジセセリの探索(5/12-13)

 「南ベトナム遠征記」はちょっと一休みして、国内の蝶の話題です。拙ブログ、本年2/17の記事で紹介しましたが、小生が10年以上にわたってギンイチやミヤマチャバネセセリの観察ポイントにしていた神奈川県・川崎市の多摩川縁がブルドーザーによる大規模な河川改修工事の真っ最中。そこでギンイチの様子を確かめに2日間調査してみました。

 初日(5/12)、少し遅めの10時にフィールド着。ちょっと踏み込むと、パタパタと飛ぶ懐かしい姿が目に飛び込んできました。ギンイチの♂です。「おぉ!元気に飛んでるやないか!」少し安心しました。しかし、この日は風が強く、この個体を見失って撮影には失敗(^^;; ところが、この後が続きません。結局、午前中2時間、午後1時間、河川敷の100mX500mのエリアをローラー作戦でしらみつぶしに捜索しましたが、影の形もありません。ミヤマチャバネも同様に坊主でした。

 翌日(5/13)、曇り空の下、午前9時~10時30分の間、初日と別のエリアを探索するも、坊主。2日間に渡る捜索も虚しく、結果は初日に目撃した1♂のみでした。このセセリ達の発生ピークである、4/20頃からGWにかけて、所用と海外遠征で観察していないので、簡単に結論づけることは避けますが、想像した通り、個体数は激減したと見て良さそうです。特に比較的飛翔力に優るミヤマチャバネは対岸の東京都側ポイントからの飛来個体があっても不思議ではなく、ミヤマチャバネさえ目撃できなかったのには本当にガッカリしました。

 しかし、犬も歩けば・・・のことわざ通り、ちょっぴり面白いものも発見できました。オギ(ススキに似たイネ科植物:当地でのギンイチ食草)の密集地を通り抜ける際、急に鴨がバタバタ飛び出して肝を潰しました。
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 どうやらカルガモの雌鳥のようです。この後、この雌、急に地面に降りると、一方の羽を伸ばしてグルグル回る仕草を始めました。「なんだろう?」と接近すると、再び3m位飛んで、同様な仕草を。どうやら、母鳥が巣を守るため、傷ついたふりをして敵を巣から引き離す行動だったようです。そこで、鴨が最初に飛び立った地点を捜索すると、ありました!自らの羽毛と枯れ草をかき集めた粗末な巣の中に10卵入っています。
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 一生懸命卵を温めていたんでしょう。それにしても、ギンイチを追いかけて、あやうく、巣を踏みつけるとこでした。無事、雛達が育つといいですね(^^)

 また、大きく伸びたヨモギの一角が白く光っていました。
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 葉を綴った巣を開けてみると、中には丸々と太ったヒメアカタテハの幼虫が入っていました。
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小生、秋口はともかく、この時期のヒメアカ幼虫を見つけたのは初体験です。

 GW中、ベトナム遠征で当地の観察ができなかったのは、今から思えば残念です。初日に出会った♂個体が当地で出会った最後の個体にならないことを念じて、ポイントを後にしました。
by fanseab | 2007-05-13 21:49 | | Comments(22)

南ベトナム遠征記 (2)ルリマダラ類を撮る

 2日目(4/29)の朝7時、HCMCをバスで出発。この日はベトナムも連休祝日のため、国道は大渋滞!!最寄のTan Phu村に着いたのが11時過ぎ。ここから車をチャーターする目論見が外れ、「バイクタクシーしかない」と言われガッカリ。大きな荷物を抱えて2輪の後席にしがみ付く恐怖の体験をしながら、現地到着は結局13時頃でした。
 宿泊は公園内に30棟ほどあるゲストハウス。1泊素泊まりUS$15でホットシャワー、エアコン付きです。
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 さて、早速フィールドに繰り出すと、ゲストハウスの周辺には黒いマダラチョウが群れをなしていました。ルリマダラ(Euploea属)の仲間です。小生、これほどまでの大群はこれまでの遠征では出会ったことがなく、今回は少し拘って撮影してみることに。種類同定が極めて難しいこの仲間、帰国してからやっと、同定できました(自信はないので、間違いあればご指摘ください)。まずは、少し小ぶりのホリシャルリマダラ(E.tulliolus)♂の吸水シーン。小生が撮影中に落とした汗を目敏く発見した♂が舞い降りて、珍しく開翅もしてくれました。
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GX100@5.1mm、ISO=100、F5.1-1/400、-0.3EV
 
 前翅表面に散りばめられた、やや大きめの白斑が特徴です。本種と勢力を二分していたのが、シロオビルリマダラ(E.camaralzeman)。↓の画像はホリシャと仲良く吸汁するシロオビです。驚いたことに吸汁源は草の枯れ茎。恐らくカリウム等のミネラルが富化しているのでしょう。オープンランドで彼らが群れているところに必ず、枯茎がありました。
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D70、ISO=500、F8-1/200、+1.0EV、内蔵ストロボ、調光補正-0.7EV
 
 ↑の絵で、少し大きめで、後翅裏面外縁側の2重白斑列が明確な個体がシロオビ、小ぶりのがホリシャです。

 フワフワと舞い飛ぶルリマダラを見ていると無性に撮りたくなるのが飛翔シーン。今回はノンストロボ、ストロボ併用の両刀使いで結構拘って撮影してみました。まずはノンストロボ、90mmマクロでのシロオビルリマダラの飛翔シーン。

シロオビルリマダラ飛翔①
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D70、ISO=640、F4-1/2000、+0.7EV

シロオビルリマダラ飛翔②
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D70、ISO=640、F4-1/2000、+0.3EV
 
 ①のポジションだと、前翅の瑠璃色幻光は完璧に封印されていますが、ひとたび、②の角度になると眩いばかりの幻光を発します。強烈な太陽光を浴びて発するルリマダラの幻光は忘れることのできないものです。

 お次は、超広角レンズ系でストロボを併用したもの。

ホリシャルリマダラ飛翔①
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D70S-10.5-X1.4TC、ISO=500、F7.1-1/1000、外部ストロボ、マニュアル発光、調光補正1/4

ホリシャルリマダラ飛翔②
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D70S-10.5-X1.4TC、ISO=500、F7.1-1/1000、外部ストロボ、マニュアル発光、調光補正1/4
 
 ①の背景は傷ついて保護された野鳥達のリハビリ用のケージのようです。この林縁一帯はルリマダラのみならず、極めて蝶相の豊かな好ポイントでした。②は上述した枯茎の周辺を集団で舞い飛ぶ個体。右端の個体はシロオビルリマダラ、他2頭はホリシャです。面白いことに3頭の羽ばたきがシンクロし、開翅飛翔の揃い踏みとなりました。

 黒系ルリマダラは同定が大変困難。一方、小生のような素人でも簡単に同定できるのが、シロモンルリマダラ(E.radamanthus)。ボルネオで撮り逃がしていただけに、今回きちんと撮影できてヤレヤレでした。

シロモンルリマダラ吸水
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D70S-VR84@400mm、ISO=500、F9-1/500、内蔵ストロボ

シロモンルリマダラ飛翔
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D70、ISO=640、F5.6-1/2000
 
 ご覧のように、本種は鮮やかな白斑が目印。メスアカムラサキ♂等、擬態をする多くのタテハ類のモデルになっています。瑠璃色幻光は表翅・裏面共に外縁部のみに限定されています。写真では結構綺麗な瑠璃色を呈していますが、肉眼では幻光よりも白斑が強くイメージされます。
 およそ無数とも思われる膨大な個体数を誇るルリマダラ。道路上でもノンビリと吸水しているためか? ↓のような光景を幾度も目撃しました(モデスタルリマダラ?:E.modesta)。
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GX100@5.1mm、ISO=100、F2.5-1/217、+0.3EV、内蔵ストロボ
 
 公園内には絶滅危惧種のジャワサイやワニ等の動物が生息しており、これら観察ツアーのため、4輪駆動車が結構なスピードで林道を走り回り、彼らが犠牲になってしまうのです。まあ、この公園での象徴的なシーンでもありました。
 次回はアゲハチョウ類を取り上げたいと思います。ご期待ください。

<追記(5/8):飛翔撮影とストロボ条件について>
 下記コメント欄でkenkenさんが、本件に関するご質問をされていますので、追記します。もとより小生も正確に解説する資格はありませんので、海野和男氏の名著「フィールドフォトテクニック-3 昆虫写真マニュアル」のp.76-79を参照してください。ここに詳しい解説が掲載されています。

 マニュアル発光では閃光量を常に一定に保持することと、閃光量を調節することが可能になります。閃光量を絞ると閃光時間が低減し、実効シャッター速度を1/2000~1/4000に稼ぐことができ、飛翔シーン撮影に適しているからです。一方、最速同調速度はkenkenさんもご指摘のように各社一眼のボディ性能で制限されてしまいます。これは内蔵であろうと、外付けストロボであろうと同じです。D70(D70S)は電子シャッターをフォーカルプレーンシャッターと併用しているため、並みいるデジ一の中でもずば抜けた同調速度:1/500を誇ります。ただ巷の噂ではメーカー保証値:1/500ではなく、1/2000?までも同調可能とされており、今回1/1000でトライしたところ、上手くシンクロしてくれたように思います。

 これ以上シャッタースピードを上げることも、もちろん可能ですが、そうすると、(自然光+ストロボ補助光)の総光量が不足して、背景が暗く落ちすぎ、「闇夜に浮かぶ蝶」状態になるので、あまり極端にはシャッタースピードを上げられません。ともかく、小生もまだ試行錯誤中なので、また新たな知見が得られたらブログに記事をアップしたいと思います。
by fanseab | 2007-05-06 21:00 | | Comments(24)

南ベトナム遠征記 (1)初日:トラップ材料探索

 GWを利用してベトナム南部に遠征してきましたので、数回に分けて彼の地の蝶達をご紹介したいと思います。今回の遠征地はベトナム南部の大都市、ホーチミンシティー(HCMCと略、旧称サイゴン)市の北東150kmに位置するカットティエン国立公園です。なお初日の画像はすべて今回遠征から初投入したコンデジ、GX100によるものです。

 海外遠征の初日は大変忙しく、中でも現地に着いてから慌しく実施するトラップ材料の調達がその遠征の命運を分けると言っても過言ではありません。今回予約したホテルも市場に近い場所を確保し、万全を期しました。ベトナムは聞きしに優るバイクの洪水。道路を渡ろうにも横断歩道というものがなく、途切れを知らないバイクの流れの中を思い切って横断しないと道路の脇に呆然と立ち尽くすことになるのです(^^;;
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 さて、目的の市場(タイビン市場)はホテルから数分の距離。まずは果物類を物色。パイナップルが見つからず、保険として、ランサッによく似た竜眼を購入。
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ここのおばさんは機嫌が良く、値切り交渉も楽しいものでした。
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 引き続き、パイナップルを売っている店を発見。小ぶりのものを手に入れました。
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 果物類はこれでOK。お次は海老探し。そもそもこの市場、鮮魚関係が大変少なく苦労しました。ようやく見つけた魚屋さんで海老(↓画面中央右下の皿)を購入。肝っ玉母さん然としたこのおばさん、ニコニコしていますが、なかなかの交渉上手。
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 後はトラップの醗酵を促進させ、独特の臭気を加えるためのアルコール探し。この時期の南ベトナムは乾季が終了し、雨季の入りかけで、午後には必ず一雨来ます。雨とバイクを避けながら道路を横切って酒屋を発見。基本的に焼酎系統がお勧めですが、酒屋に陳列している瓶のラベルは当然、チンプンカンプンのベトナム語。そこで「ウオッカ」と明示している300ml入りを購入(度数は29.5%)。
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 いつもはこれだけのトラップ類を購入するのに相当歩き回ることが多いのですが、あっさりと目的の物が揃って一安心。翌日の現地までのバスチケットを予約購入したり、余裕を持って初日を終えることができました。お腹もすいたので夕食はもちろん、ベトナム名物のフォー(うどん)です。トッピングは薄切り牛肉と玉ネギ・刻みネギで、これにお好みで、もやし、ライム、トウガラシ、ミントの葉を入れる仕組み。なかでもミントの葉(↓の画像奥)はあっさり系のスープに抜群に合って美味でしたよ!
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 さあ、明日から蝶に会えるぞ~!!・・・で、蝶画像を期待した読者の皆さん、スミマセン。次回以降にご期待ください。
by fanseab | 2007-05-04 20:41 | | Comments(22)