探蝶逍遥記

渓谷で出会った蝶(7月上旬)

 フタスジの産卵を追跡していた場所は標高1300m超の渓谷沿いでした。到着してすぐに足元の草地から飛び立ったのは何と、ウスバシロチョウ。これはカメラに収めることはできませんでしたが、このポイントで出会った蝶をご紹介しておきましょう。
 最初はミスジチョウ。路上での吸水・樹冠で探♀飛翔をする♂を沢山みかけました。

+++画像はクリックで拡大されます(モニター環境に依存)+++
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EM12-Z60(トリミング)、ISO=500、F6.3-1/3200、撮影時刻:10時10分

 探♀時の飛翔速度はフタスジとは比較にならないほど、敏速です。お次はシータテハ。
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D500-34VR(トリミング)、ISO=200、F7.1-1/1000、-0.7EV、撮影時刻:9時00分
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D500-34VR(トリミング)、ISO=200、F7.1-1/1000、-0.7EV、撮影時刻:9時02分

 本種に出会うのは久しぶりでした。ヒョウモン類は殆どみかけず。アサギマダラは丁度産卵のタイミングだったようです。
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EM12-Z60(トリミング)、ISO=640、F6.3-1/3200、撮影時刻:9時59分

 背景にホストのイケマらしき姿も写っております。もう少し真剣に探せば卵・幼虫も見つかったかもしれません。ただ、フタスジ産卵に注力した関係でそこまで手が回りませんでした。
 半木蔭の草地を歩いていると、足元からパタパタとジャノメチョウ類が飛び立ちました。しかし、高さ30cmまで達しないうちに、すぐ草地に落下。何と、羽化直のウラジャノメ♀でした。
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EM12-Z60、ISO=200、F5.6-1/250、外部ストロボ、撮影時刻:9時48分
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EM12-Z60、ISO=200、F5.6-1/250、外部ストロボ、撮影時刻:9時50分

 新鮮なウラジャノメを撮影したのはデジタルにしてから初めて。しかも♀と認識して撮るのも初めてでした。この子、本当に羽化して時間が経過しておらず、飛ぶ練習中だった様子。この♀を撮ってから改めて気が付いたのですが、フタスジチョウの周辺を擦れたヒカゲチョウが舞っておりました。未だ夕方でもないのに何で♂が飛び回っているのだろう。。。そう、彼らはウラジャノメ♂だったのです。彼らの探♀行動も結構しつこく、樹木の周囲を舐めるように探して飛んでおりました。

 渓谷沿いの草地にはヒメキマダラセセリが多産しています。ウツギで吸蜜を繰り返す姿が目立ちました。
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EM12-Z60(トリミング)、ISO=640、F6.3-1/3200、撮影時刻:9時32分
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EM12-Z60(トリミング)、ISO=200、F5.6-1/200、撮影時刻:11時24分

 今回新鮮なシータテハを観察できたものの、この時期、山梨の山域で定番のクジャクチョウを全く見ることができませんでした。最近、発刊された日本チョウ類保全協会の機関誌、「チョウの舞う自然:24号」で、海野和男さんが、本種について解説されております。それによると、小諸周辺で2015年10月以降、クジャクを一切撮影できていないのだそうです。鹿の食害が原因なのか不明ですが、クジャクチョウが絶滅危惧種の仲間入りなんて、想像もできません。早い復活を期待したいものです。

 さて、遠征の帰路、下界に降りると猛烈な暑さが車内に籠って汗ダクダク(^^; この時期、冷涼な高標高地での撮影は体に優しく感じました。
# by fanseab | 2017-07-15 20:25 | | Comments(2)

フタスジチョウの産卵(7月上旬)

 管理人はこれまで、本土産Neptis属5種の中で、これまで唯一フタスジの産卵シーンは未撮影でした。今回、何とか山梨県で撮影に成功したので、そのご報告。
 現地9時到着。既に♂らしき個体が多数飛翔しております。コミスジ同様、♂は一旦探雌飛翔が始まると、殆ど止まりません。そして時折ウツギの花で吸蜜。

+++画像はクリックで拡大されます(モニター環境に依存)+++
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EM12-Z60(トリミング)、ISO=500、F6.3-1/3200、撮影時刻:9時16分
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EM12-Z60(トリミング)、ISO=500、F6.3-1/3200、撮影時刻:9時16分

 限られた場所で多数の♂が舞っているので、時には♂2頭の絡みも。
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EM12-Z60(トリミング)、ISO=640、F6.3-1/3200、撮影時刻:9時39分

 さて、目的の♀を探すのですが、一向に姿を現しません。それもそのはず、付近にどうもホストになるべきシモツケ類が生えていません。それなのにどうして♂が飛んでいるのでしょう? Neptisの産卵は通常午前中で、午後遅くには行われません。焦りながら時間が過ぎて行く中、取敢えずランチで休憩。正午過ぎ、必死でホストを探した後、何とかそれらしき葉の周りを飛ぶ♀を発見。♀に出会えると、意外と楽に産卵シーンをゲットできました。
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D500-34VR(トリミング)、ISO=500、F9-1/640、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時55分

 Neptis属独特な翅を全開しての産卵。遠目には静止している姿と変わりません。産んでいるのはシモツケ類ですが、シモツケよりも葉が大きく、種同定できず。卵は葉先に産み付けられておりました。
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EM12-Z60(トリミング)、ISO=64、F7.1-1/100、外部ストロボ、撮影時刻:13時04分

 卵の色は淡青緑色。しかしコミスジ等よりも白っぽく見えます。正面からのアングルだと腹端の様子が不明確なので、何とか粘って横方向からの産卵シーンもゲット。
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D500-34VR(トリミング)、ISO=500、F9-1/640、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:13時19分

 今度はシモツケに産んでいますが、定番の葉先ではなく、何と深紅色の蕾に産み付けたのです。産附状況です。
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TG4@18mm(自動深度合成+トリミング)、ISO=100、F4.9-1/100、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:13時26分

 孵化した幼虫が実際に蕾(花弁)を食べるのか?興味深いですね。この後、母蝶は葉上にも産卵。
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D500-34VR、ISO=500、F9-1/640、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:13時19分

 ここでは葉先ではなく、葉のほぼ中央。産卵位置として葉先が選択されることが多いものの、結構気ままに産んでいるようです。フタスジも静止中は常に開翅状態で中々閉翅を撮らしてくれません。必死に粘って、♀が翅を立てた瞬間をパチリ。
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D500-34VR(トリミング)、ISO=500、F9-1/640、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:13時20分

 卵は飼育前提でお持ち帰りし、定番の超拡大撮影をしてみました。
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EM12-P1442@42mm-P14R(22コマ深度合成+トリミング)、ISO=250、F5.6-1/50、外部ストロボ

 最大直径(棘皮含む)・高さ共に0.94mm。表面が六角形状のディンプル(窪み)で囲まれ、六角形の交点から外側に延びる棘皮等、他のNeptis属卵と類似した性状です。ここで近縁のホシミスジ(東京都産:亜種setoensis)の卵と形態比較をしてみました。
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★ホシミスジ画像は2014年9月撮影分

 最大直径は僅かにホシミスジが優り、逆に高さはホシミスジの方が僅かに低いです。両者形態は驚くほど酷似していて、黙って画像を見せられたら判別し難い性状差です。それでも強いて列挙すれば、下記の差が見出せます。
(1)ホシミスジは底面積が大きく、フタスジは底に向かうにつれ、直径が窄まる傾向にある。
(2)側面図で見ると、ホシミスジではディンプルが全体に高さ方向(画像の上下方向)に引き延ばされた形態を有し、逆にフタスジは相対的に正六角形に近い。

 もちろん、検体数n=1同士の比較ですから、上記有意差が個体変異の範囲内かどうかは不明です。今回、何とかフタスジチョウの産卵シーン・卵拡大像が得られましたが、オオミスジとミスジチョウの両種について、卵拡大像撮影は未実施。これは今後の課題。一方、リュウキュウミスジについては、当面、沖縄や南西諸島に遠征する計画がありませんから、台湾あたりで産卵シーンを撮影したいものです。
# by fanseab | 2017-07-10 21:58 | | Comments(4)

オナガアゲハの飼育メモ

 5月29日付の記事(クリックでジャンプ)でオナガアゲハの産卵シーンをご紹介しました。この時、産附された1卵をお持ちかえりし、フルステージ飼育を行いました。餌は全てコクサギで実施。実は昨年9月上旬、コクサギに産附されたオナガアゲハ2卵の飼育を試みた経験があります。この時、代用食としてサンショウを与えましたが、食いつきが悪く初齢の途中で、失敗に終わりました。その反省から昨年秋にコクサギの苗を購入し、今回の飼育に備えていたのでした。
 5月27日に孵化。孵化直後の初齢幼虫です。

+++画像はクリックで拡大されます(モニター環境に依存)+++
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EM12-P1442@42mm-P14R(トリミング)、ISO=200、F6.3-1/50、外部ストロボ、撮影月日:5月27日

 動き回っているので、深度合成ができず。素直に焦点深度の深いコンデジで撮るべきでした。翌日、落ち着いたところで、再度初齢を撮影。
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上段:EM12-Z60(トリミング)、ISO=200、F6.3-1/50、外部ストロボ
下段:D500-1855改@38mm(2コマ深度合成+トリミング)、ISO=100、F8-1/320,-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日:5月28日

 体長は5mm。カラスアゲハ同様、全体に緑色を帯びております。コクサギを食い始めた初齢幼虫と食痕のツーショットです。
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EM12-Z60(トリミング)、ISO=200、F6.3-1/50、外部ストロボ、撮影月日:5月28日

 向かって左端に台座を構え、右側縁を食べるスタイル。29日に眠、翌30日に2齢。
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EM12-Z60(4コマ深度合成+トリミング)、ISO=320、F6.3-1/50、外部ストロボ、撮影月日:5月31日

 体長8.2mm。棘皮の長さが相対的に短くなり、尾端付近腹節にある白色部分が目立つようになりました。2齢時の食痕も示します。
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EM12-Z60(トリミング)、ISO=200、F6.3-1/30、外部ストロボ、撮影月日:5月31日

食している葉は初齢時代と同じ。葉の先端(上部)、基部側も食っています。6月2日に3齢へ。
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EM12-Z60(自動深度合成+トリミング)、ISO=320、F6.3-1/50、外部ストロボ、撮影月日:6月3日

 体長16.5mm。胸部が拡幅し、第7-8腹節の白色部がより顕著になりました。4日に4齢。
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EM12-Z60(自動深度合成+トリミング)、ISO=320、F6.3-1/50、外部ストロボ、撮影月日:6月6日

 体長24.5mm。胸部気門線上の白色部が目立つようになります。第7-10腹節はほぼ全体が白色になりました。ここで、類似種のクロアゲハ4齢幼虫との比較図をアップしておきましょう。
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クロアゲハは2013年8月撮影分画像

 識別点は画像中に記載した通りです。いずれも「鳥の糞」に擬態しているとされております。確かにヌメヌメとした光沢は「落とされて間もない糞」の質感ソックリですね。6月7日に眠、翌8日に5齢(終齢)になりました。
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EM12-Z60(上段:自動深度合成/下段:5コマ深度合成+トリミング)、ISO=320、F6.3-1/50、外部ストロボ、撮影月日:6月11日

 体長43mm。非常に鮮やかな青緑色を呈しております。その独特な色調を敢えて表現するならば、「マラカイトグリーン(緑青:ロクショウ)」かな。ただ画像では上手く色調を再現できておりません。幼虫斑紋の特徴を4齢同様、クロアゲハと比較してみました。
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クロアゲハは2013年8月撮影分画像

 識別点を3箇所提示しておりますが、識別点1で見分けるのが一番楽だと思います。但し、「斜帯が背線上で分離する」特徴はモンキアゲハ終齢幼虫にも見られるので、注意が必要。参考までに、終齢幼虫頭部の拡大像も撮ってみました。
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EM12-Z60(6コマ深度合成+トリミング)、ISO=320、F6.3-1/50、外部ストロボ、撮影月日:6月11日

 蛇の目玉に擬態している部分も、複雑な模様をしております。終齢幼虫は最大47mmまで成長しました。6月15日に下痢便を出し、翌16日に前蛹。
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EM12-Z60(自動深度合成+トリミング)、ISO=320、F6.3-1/50、外部ストロボ、撮影月日:6月16日

 体長28mm。前回飼育したキアゲハ同様、見栄えのする枯枝に吐糸してくれてホッとしました。6月17日に蛹化。
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EM12-Z60(自動深度合成+トリミング)、ISO=320、F6.3-1/50、外部ストロボ、撮影月日:6月19日

 体長35.5mm。褐色型でした。非常に特徴のある蛹です。全体にスリムで、成虫の翅形・尾状突起同様、細長さが際立っています。それとPapilio属の蛹はいずれも「くの字」型を呈しておりますが、オナガの蛹は将に「くの字」。クロアゲハの蛹と形態比較も行ってみました。
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クロアゲハは2013年8月撮影分画像

 頭部を正面から見ると、「兎の耳」状の突起があります(各画像右下の囲み)が、この突起もクロアゲハに比較して左右に開裂せず、真っ直ぐ上方に延びている特徴があります。蛹化してから12日目の朝、全体に黒化し、腹節も緩んで羽化間近の兆候を示しました。
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EM12-Z60(トリミング)、ISO=320、F6.3-1/50、外部ストロボ、撮影月日:6月29日

 この画像を撮影したほぼ2時間後に無事♂が羽化しました。
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EM12-Z60(トリミング)、ISO=320、F6.3-1/50、外部ストロボ、撮影月日:6月29日
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EM12-Z60(トリミング)、ISO=320、F6.3-1/50、外部ストロボ、撮影月日:6月29日

 前翅長59mm。翅を左右に僅かに開きながら乾かす途中、オナガ♂のシンボル、後翅の横白班がチラリと顔を覗かせます。これ、堪らなく綺麗ですね。昨年晩夏に一度飼育を失敗していただけに、無事羽化迄辿りつけてホッといたしました。
# by fanseab | 2017-07-05 22:03 | | Comments(4)