探蝶逍遥記

2017年 10月 13日 ( 1 )

コクサギ食いのアゲハ

 拙宅庭にはPapilio属の食うホストを3種類植えてあります。以前からあったサンショウ、本年新規に追加したカラスザンショウとコクサギです。カラスザンショウは将来ミヤマカラスやモンキ飼育目的のため、今年春先に種蒔きから育てた3株。コクサギは昨年秋、園芸ショップ経由でネット購入した5株です。コクサギは今年オナガ・カラスの飼育に活用できました。さて、拙宅に訪れるPapilioで最も多いのはもちろんアゲハ(P.xuthus)。これまではサンショウに産卵するのを観察してきました。今年はカラスザンショウとコクサギが加わったので、この両者に産卵するのか?注意深く観察しておりました。結果はカラスザンショウには産んだのですが、コクサギは皆無。本田計一博士の著書(※)にはアゲハの食草選好性に関して記載があります。

 これによれば調査対象のミカン科8種の中で、「カラスザンショウには産卵するが、コクサギには産まない」。さらに幼虫が摂食するかも同時に調査されており、ここでも「カラスザンショウは食うが、コクサギは食わない」とまとめられています。産卵選好性については拙宅の観察結果とよく一致します。
 さて、拙宅のサンショウ株は大小2株。小さな株に隣接してコクサギの鉢が置いてあります。この夏、偶然コクサギ葉上にPapilioの初齢幼虫がいるのを発見。アゲハにしては少し赤味を帯びた個体でした。

+++画像はクリックで拡大されます(モニター環境に依存)+++
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EM12-Z60(自動深度合成+トリミング)、ISO=64、F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:8月13日

 ひょっとしてクロアゲハの初齢幼虫かなと思いつつ、そのまま経過観察すると、幼虫は順調に終齢まで育ち、この時点でアゲハの5齢幼虫と判明。
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EM12-Z60(自動深度合成+トリミング)、ISO=200、F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影月日:9月10日

 因みにこの個体、背面腹節境界に白色条線(矢印)がある変わった幼虫。参考までに後日撮影した正常斑紋個体と比較してみました。
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下段は10月13日撮影。

 コクサギ上で育ったこの子は無事蛹化、♀が羽化しました。
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EM12-Z60(自動深度合成+トリミング)、ISO=320、F6.3-1/100、撮影月日:9月24日

 拙宅庭内で蛹化したアゲハは9割がた寄生されているので、成虫が無事羽化した時は嬉しかったですね。先にご紹介した本田博士の実験結果とは異なり、コクサギでも摂食、羽化まで至ることが証明されました。ただこの子の出自を辿ると、母蝶がコクサギに産卵していたかは不明です。実はサンショウは、8月中旬時点で前の世代のアゲハ幼虫が葉を食い尽くしていた状態でした。一方、このサンショウとコクサギ株は隣接していて、枝伝いに幼虫が行き来できる状態でしたので、もしかすると、サンショウ葉上で孵化した幼虫が餌不足で偶々コクサギに移動し、コクサギを食い始めたのかもしれません。

 一方、カラスザンショウの結果です。 サンショウに比較すると頻度は少ないものの、拙宅に飛来したアゲハは産卵してくれました。カラスザンショウ葉上の初齢幼虫です。
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EM12-Z60、ISO=320、F5.6-1/125、外部ストロボ、撮影月日:8月13日

 また、こんな実験もしてみました。サンショウ葉上で餌不足で餓死しそうな若齢~終齢幼虫を途中から強制的にカラスザンショウに移動させ、摂食挙動を確認しました。結果、移植した幼虫の約7割の個体は問題なく食いましたが、残りの個体は全く食いません。一方、サンショウからコクサギに移動させた実験では、100%食ってくれませんでした。
 結局、本田博士の実験結果は概ね妥当であるけれど、例外的にコクサギを食うアゲハ個体がいることが判明しました。

※<参考文献>
本田計一・村上忠幸,2005.ワンダフルバタフライ(不思議にみちたその世界).化学同人,京都.
by fanseab | 2017-10-13 21:52 | | Comments(4)