探蝶逍遥記

アカボシゴマダラの遅い羽化(11月27日)

 拙宅のエノキで羽化したアカボシの画像を何回かご紹介しております。さて、先月10/29に蛹化した個体があって、継続観察をしておりました。11月に入って、結構寒くなり、羽化に至るまでの平均的な10日間~2週間を経過しても羽化の気配はありませんでした(下記画像左)。冬までこの状態では、いずれ凍死する運命かな?と案じていたところ、11/26になって、なんと羽化の兆候が現れました(下記画像右)。                                  ++いずれの画像もクリックで拡大できます。++
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D70S、ISO=200, 左:F11-1/200、-1.0EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:11月15日、15時50分 右:F11-1/250、-0.7EV、外部ストロボ(調光補正-1.0EV)、撮影時刻:11月26日、23時18分

 これまで拙ブログでご紹介してきた羽化兆候である、腹節の緩みが観察できます。前回はこの状態の3時間後に羽化しましたが、さすがに今回は翌朝羽化(11/27)と仮定し、この日は床につきました。翌朝、この個体は予想通り羽化しておりました。
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D70S、ISO=400, F10-1/80、+1.0EV、外部ストロボ+スレーブ増灯、撮影時刻:6時59分

 羽化個体は♂でした。なんと蛹期はほぼ1ヶ月に及んでいたことになります。管理人が住む神奈川県においては、12月中旬の羽化事例が報告されています。それに比べればそれほど驚くべき記録ではないのですが、少なくとも小生が観察した事例では最も遅い羽化記録となります。羽化個体を見た瞬間に気がついたのはアカボシのシンボルでもある「赤班」の彩度。↑の画像では色再現性が悪いのではっきりしませんが、夏場の個体に比較して赤斑はかなり薄く、「薄橙色斑」に見えました。後翅第5室外縁部あたりの白斑も多少乱れがあり、長期間蛹が低温に晒された場合の軽微な斑紋異常が出ているのかもしれません。

 一方、驚くべきことにまだ非休眠型(長角型)の終齢幼虫がエノキについています。
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D70S、ISO=200, F11-1/500、-0.7EV、外部ストロボ(調光補正-1EV)、撮影時刻:11月26日、23時22分

 この幼虫は無事蛹化できたとしても、羽化はちょっと厳しいかもしれません。因みに休眠型幼虫(短角型)は既にエノキの根際や樹上越冬状態に入っています。
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D70S、ISO=200, F10-1/60、+1.0EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:11月29日、15時26分
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GX100@15.3mm-gy8、ISO=80, F16-1/25、外部ストロボ(調光補正1/16)、撮影時刻:11月30日、10時23分

 樹上越冬画像の2枚目は、幹の直径がわずか1cm程度の幼木に4頭が、固まって越冬している事例です。まるでムラツの集団越冬みたいに身を寄せ合っている姿が興味深いです。更に羽化を観察したエノキには11月に入ってから蛹化した1個体も黄色く色づいたエノキにぶら下がっています。これは羽化できるか?微妙です。晩秋~初冬に中途半端な状態で羽化・蛹化する個体にとって、厳しい時期だと言えます。
by fanseab | 2008-11-30 11:58 | | Comments(20)
Commented by maeda at 2008-11-30 15:56 x
この個体は確かに赤紋が薄いです。
表はどんな感じなのか、非常に興味深いです。
絵は無いですよね?
Commented by banyan10 at 2008-11-30 18:51
気温が低くなって春型に近くなるのでしょうか。
まだ羽化するというのがすごいです。
最後の幼虫団子も面白いです。
Commented by kenken at 2008-11-30 20:12 x
いつもながらの細かな継続・定点観察ですね。
休眠型幼虫と非休眠型を分けるのは何なのでしょう?日長が大きな要因だとは思いますが・・・もう、どなたか調べておられるのかな。ゴマダラはみんな休眠に入っているわけですよね。
11月下旬のアカボシ、どうも馴染めないなぁ~
Commented by fanseab at 2008-11-30 20:59 x
maedaさん、残念ながら表は撮っていません。展翅して標本にすべきだったかもしれませんね。そこまで余裕がないもので・・・。第2化あたりの蛹を低温処理したらどうなるか?どなたかが実験しているかもしれません。
Commented by fanseab at 2008-11-30 21:02 x
BANYANさん、春型(白化型)に近くなるのか?統計を取れるだけの個体数を見ないとわからないでしょうね。もう駄目だろうと思っていたので、羽化にはビックリしました。
最後の絵ですが、このエノキには15頭ついていました。越冬が確認されているのが8頭、まだ葉上にいるのが2頭で、残りは行方不明です。越冬に適した樹上ポイントが限られるので、団子になるようです。
Commented by fanseab at 2008-11-30 21:06 x
kenkenさん、ご指摘の通り、日長が大きな要因でしょう。中国南部?原産で、そこでのライフサイクルの遺伝子が刷り込まれているため、原産地の周期で回って蛹になってしまったが、あたりを見回すと、もう仲間は越冬していた・・・そんな感じかもしれません。
Commented by 6422j-nozomu2 at 2008-11-30 21:52
いつもながら学術的な記述見習いたいと思います。遅くに羽化した個体は確かに、「赤星」ではないのですね。「低温期」型の研究、究めていただきたいと思います。
Commented by cactuss at 2008-11-30 22:42
アカボシはまだ、羽化するんですね。
最近、南から来た蝶はクマソも含めて、土着種よりも耐寒性がある様な気がします。それとも生態サイクルがこちらの季節にまだ、合っていないだけでしょうか。
Commented by 虫林 at 2008-12-01 00:07 x
アカボシゴマダラの幼虫をgyoromeで撮影した写真は、迫力があってとても面白いですね。今年はあまりgorome写真は撮影しなかったような気がしていますが、また楽しみたいな。
Commented by fanseab at 2008-12-01 07:18 x
ノゾピーさん、学術的だなんてとんでもありません。ただ狭い庭先にあるエノキなので、継続観察が楽ですね。もう1頭残っている蛹が羽化すれば面白いと思います。
Commented by fanseab at 2008-12-01 07:26 x
cactussさん、アカボシは温暖帯から亜熱帯に分布していて、日本に移入されたのは原産地は中国南部と推定されているようです。関東地方の季節や気温変動と微妙に異なるため、戸惑っている個体もいるのではないでしょうか?
Commented by fanseab at 2008-12-01 07:35 x
虫林さん、gyorome画像は使い所が難しいですね。↓のムラツ集団越冬のようにゴチャゴチャ固まっている様子を強調するには打って付けのようです。アカボシ幼虫の場合は一眼だとカメラを入れるスペースがないので、コンデジで対応しました。
Commented by ダンダラ at 2008-12-02 12:26 x
11月下旬にアカボシが羽化するのは驚きです。
本来の発生地でのサイクルはどうなっているのか興味あります。
奄美のアカボシゴマダラと比べると全く違う蝶のような感じです。
Commented by fanseab at 2008-12-02 21:13 x
ダンダラさん、観察しているエノキでは、過去にゴマダラが12月に羽化した記録があり、多化性のアカボシなら、この時期の羽化も意外ではないと思いました。原産地との比較は大事ですが、他の多化性の種同様に、現地での化数の正確なカウントが難しいこともあって、結論を出すのは厳しいでしょうね。奄美産はアカボシの分布としては、かなり飛び地的で、その生態も中国本土産とは特異的になっていると推察されます。
Commented by clossiana at 2008-12-03 12:45
なんと言っても一番不思議なのは休眠型と非休眠型が何によって決定されているのかですね。この時期にエノキにしがみついていても羽化までは到達出来そうもないし、一方でもっと早くから越冬に備えている個体もいるし。。。不思議で面白いです。
Commented by fanseab at 2008-12-04 07:15 x
clossianaさん、御指摘の命題は確かに最大の謎でしょう。多化性の種は遺伝的にある確率で秋の日長変化に鈍感な個体が混じっていて、越冬態勢に入ることができないまま無理やり羽化までサイクルを回そうとするのでしょう。ゴマダラチョウでも極めて稀に非休眠型の越冬幼虫が落葉中から見つかったりしますね。
Commented by chochoensis at 2008-12-04 14:48 x
この時期になってやっと=アカボシ羽化=ですか・・実は我が家の庭で=クロコノマ=がいまだに=羽化=しないので、死んでしまうのかな?と思っていたところですので、勇気をもらいました・・・。
Commented by fanseab at 2008-12-04 21:29 x
chochoensisさん、蝶の蛹は意外とタフだと思います。ツマキチョウを飼育して春先に羽化しなかったので、放置しておいた所、翌春(蛹期2年)になって羽化した時はビックリしました。クロコノマも凍死する限界温度を超えさえしなければ、未だ大丈夫かもしれませんよ!
Commented by ganesha at 2009-01-31 00:09 x
はじめまして。ganeshaと申します。

自分も昨年11月18日に神奈川県川崎市内にてアカボシゴマダラの羽化を観察し、「こんなに遅く?」と思っていたところでしたので、さらに遅い時期の記録を拝見して驚きました。(12月中旬の記録もあるというのにはもっと驚きましたが)

実はもうひとつ、12月10日に見つけ、羽化するのか、越冬するのか、あるいは凍死するのか、と楽しみにしていたアカボシゴマダラの蛹がありました。年末の12月28日までは無事を確認していたのですが、年明けの1月8日にエノキの幼木ごと切り倒されてしまっていた、という無惨な結末となってしまいました。
もし、これが羽化していたら新記録だったのでしょうか?
Commented by fanseab at 2009-01-31 01:00 x
ganeshaさん、こんばんは。拙ブログへようこそ!
貴ブログ拝見しました。晩秋に入ってからのアカボシの蛹は、その置かれた環境が比較的暖かい場所であって、上手く初冬の冷え込みを逃れられれば、12月の羽化も可能だと思います。12/28の個体の場合は蛹化準備が整った段階で寒波に襲われて死滅していた可能性もありますね。確かに羽化すれば相当に遅い記録だと思います。
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