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探蝶逍遥記

Hestina属幼虫の定点観察(4月12日)

 前回観察から2週間後の状況を確認しました。先ずは最も小サイズで越冬した個体識別No.5はやっと脱皮して背面が赤い4齢に変化していました(体長25mm)。
Hestina属幼虫の定点観察(4月12日)_f0090680_15462367.jpg
D70、ISO=200, F4-1/400、-0.3EV、撮影時刻11時39分

 幼虫頭部右上の若葉に摂食跡が確認できます。既に脱皮を終えたグループに目を転じると、脱皮後から摂食量が増えたようで、丸々と太った幼虫に変化していました。まずは、ゴマダラチョウ(個体識別No.28:体長33mm)。
Hestina属幼虫の定点観察(4月12日)_f0090680_15464751.jpg
D70、ISO=200, F5.6-1/800、-0.7EV、撮影時刻10時01分

 背面中央の濃褐色線が消失し、全体に緑色ベッタリの感じになりました。背面突起が赤褐色を帯びるのが特徴です。お次は、アカボシゴマダラ(個体識別No.13:体長48mm)。
Hestina属幼虫の定点観察(4月12日)_f0090680_1547965.jpg
D70、ISO=200, F9-1/250、-0.3EV、内蔵ストロボ、撮影時刻9時39分

 こうしてゴマダラ、アカボシ両幼虫(共に4齢?)を側面から比較すると、アカボシの緑と白の斜帯状紋がくっきりとしていることが分かります。またアカボシの背面突起はゴマダラほど目立ちません。全般にアカボシの方が、エノキの若葉に上手く紛れているような気がします。

 アカボシとゴマダラ幼虫の同定区別ポイントの一つに尾端の形状があることを既に拙ブログで解説しました。しかし、脱皮後の幼虫では、意外と両者が似た形状を示すものがあって、管理人を困らせました。ここで脱皮後幼虫の尾端を比較して図示しましょう。
Hestina属幼虫の定点観察(4月12日)_f0090680_15474288.jpg
D70(トリミング+画像処理)

 一般的なアカボシの尾端は(1)タイプAのように2本の細い突起が融合するような形で、やや太めの突起が開裂する(3)ゴマダラとは明確に区別できます。ところが、アカボシには(2)タイプBのように両幼虫の中間型を示す個体がいたので、管理人を混乱させたのです。まあ、尾端だけでなく、↑で述べた幼虫側面の模様等を総合的に判断すると、この時期の幼虫の同定区別は比較的容易です。

 さて、今度は正面から幼虫の顔をアップで覗いて比較してみたいと思い、魚露目で嫌がる幼虫をなだめすかして?撮影してみました
Hestina属幼虫の定点観察(4月12日)_f0090680_1548832.jpg
D40-1855-gy8(トリミング+画像処理)

 なんか眠たそうですね(^^) 一番の特徴は頭部の突起にあり、アカボシが緑色一色なのに対し、ゴマダラは基部から途中までが赤褐色を帯びていることです。つまり頭部突起の色調でも両者を区別可能なのです。さらに突起といえば、背面突起にも大きな特徴があることを見出しました。ゴマダラが赤褐色を帯びるのに対し、アカボシの突起は不明確ですが、拡大してみるとブルーの小突起の集合体であることがわかります。
Hestina属幼虫の定点観察(4月12日)_f0090680_15483796.jpg
D70、ISO=500, F9-1/1000、-0.7EV、撮影時刻11時32分

 今回の撮影も通りがかりの人の冷たい視線との戦いでした(笑) 最後に魚露目でちょっぴりシュールな画像をご紹介しておきましょう。
Hestina属幼虫の定点観察(4月12日)_f0090680_154931.jpg
D40-1855-gy8、ISO=400, F32-1/80、-1.0EV、外部ストロボ、調光補正1/4、撮影時刻11時04分

 『ママチャリに乗った、そこのお母さん!ボヤボヤしているとアカボシ幼虫に刺されますよ!』
by fanseab | 2008-04-13 15:51 | | Comments(10)
Commented by maeda at 2008-04-13 17:58 x
さりげなく掲載される人工物背景写真に引き込まれてしまいます。
ママチャリの女性、もしかしたら「何撮ってんのよ!」なんて思っているかも。
Commented by fanseab at 2008-04-13 20:44 x
maedaさん、このポイントは広角で撮ると、嫌でも↑のような画像になってしまいます。この町並みを背景に成虫の飛翔画像を撮るのが夢ですが、果たして・・・・・?
Commented by 6422j-nozomu2 at 2008-04-13 21:22
非常に専門的でfanseabさんらしい内容ですね。幼虫を一頭単位でナンバリングして、観察されており、流石でございます。ゴマダラ系の顔って可愛くて、癒し系ですね。
Commented by fanseab at 2008-04-13 22:00 x
ノゾピーさん、遠出ができない時の格好のブログネタを提供してくれる両幼虫に感謝しております(笑) ナンバリングをしているのですが、最近幼虫が活発にウロチョロしだしてので、ちょっと個体識別が怪しくなりました。幼虫の顔、面白いでしょ!
Commented by 虫林 at 2008-04-14 21:05 x
fanseabさんらしいアカデミックなブログですね。
幼虫の撮影もバックのボケが綺麗です。各部の拡大も素晴らしく、見入ってしまいました。最後のgyoromeも大迫力で、笑ってしまいます。
Commented by fanseab at 2008-04-15 07:39 x
虫林さん、今回ほどじっくりゴマダラ幼虫を観察したのは初めてです。すべてアカボシと比較するため、何処に特徴があるんだろう?と詳細に眺めて見ました。ボケ味はタムロン90mmの美点です。
Commented by kmkurobe at 2008-04-15 19:52
うーんすばらしい。これは学術論文用の写真ですね。最後の画像を拝見して我と我が身を思い返して汗がでてきました・・・・・
Commented by fanseab at 2008-04-16 07:23 x
kmkurobeさん、コメントありがとうございます。幼虫画像は成虫と異なり、じっくり撮影に取組めるはずですが、このポイントでは人目を気にしながらサッと撮らねばならないのが辛いです。魚露目は貴重種では出番が少ないですけど、街中では面白い絵が切取れて重宝します。
Commented by cactuss at 2008-04-18 23:44
まだ、アカボシゴマダラの幼虫は撮影したことがないので、以前からの観察記録は非常に参考になりました。今回はゴマダラチョウとの幼虫の差を詳しく、解説して頂き、ありがとうございました。最後の写真はおもしろいですね。でも、本当に町の中にいるんですね。
Commented by fanseab at 2008-04-20 21:50 x
cactussさん、アカボシの幼虫については、図鑑や文献でも詳細な形態比較を紹介したものがないので、自ら撮影して確認せねばなりません。今回も奄美大島産亜種幼虫との比較もしたいのですが、当該亜種の詳細な画像も入手できないため、いずれ奄美にでも出かけてみようと思っています。放蝶した時点では、これほどまでに住宅街で生き延びることは想定外だったと思います。
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