探蝶逍遥記

アカボシゴマダラ幼虫の調査(11月18日)

<本題に入る前に愚痴を一言>

 拙ブログを昨日ご覧になった方は気づかれた通り、利用しているエキサイトブログの画像が表示されないトラブルが長時間にわたって続きました。それを遡ると、下記記事を昨日21時過ぎに投稿しようとしたら画像のアップロードが出来ず四苦八苦。実は更にその前には日中10時間以上も「メンテナンス」でブログの機能が完全に停止状態でした。エキサイトは無料で大量の画像を貼り付けることのできる優れものだと思いますが、過去にもドガログとか、新機軸の企画を実施する度に今回のような画像表示トラブルを引き起こしています。最近小生の勤めている会社でも「お客様満足度」を上げることが叫ばれています。小生もエキサイトの「お客様」です。なんとかしてくださいな・・・・って愚痴でした。

****ここから本題です****

 首題成虫はご承知の通り、神奈川県藤沢~鎌倉市で放蝶?された個体群が拡散を続け、ブログ仲間のaさんの記事によれば埼玉県・狭山丘陵でも目撃されている状況です。管理人も昨年来、神奈川県川崎市西部で市街地のエノキ幼木に重点を置いた定点観測を続けています。ただし、この春~夏にかけては、エノキ上に1頭の幼虫も見出せず、「さすがにアカボシの勢いも衰えたか?」と思っておりました。しかし、先週末と本日、ざっと調査をしたところ、将に「蔓延っている」表現がふさわしいほど、高密度で生息している状況を確認できたので、その画像を御紹介したいと思います。

 調査区域は100X770mの東西に細く延びた市街地エリアです。エノキは野鳥が好んでその実をついばみ、そこいらじゅうに「落し物」を撒き散らすので、幼木もいたるところに生えています。殆どが歩道や道路の脇に生えた高さがせいぜい1m前後のものです。今回は便宜上、観察に容易な樹高2m以内の株に限定しての観察です。その結果、調査した80%の株に幼虫が付いている状態で、将に「蔓延っている」感覚でした。その状態をストレートに表現するため、観察した幼虫全14頭をすべて御紹介しましょう。
f0090680_7121217.jpg
GX100@5.1mm(トリミング+画像処理:各個体画像の縮尺は不定です)

 写真に付与した数字は下記の通り、個体識別No.で、括弧内数字は検したエノキ幼木の識別No.。下表で個体識別No.に続く数値は、A:体長(mm)、B:エノキ樹高(cm)、C:幼虫静止高さ(cm)を示しています。

個体識別No. A/B/C
1(1)  20/200/188
2(2)  22/180/150       
3(3)   15/200/97        
4(3)  18/200/120
5(4)   10/60/40
6(5)  20/110/43
7(5)  15/110/43
8(6)   22/65/65
9(7)  19/75/40
11(8) 20/120/70 ※No,10は観察途中で行方不明
12(8)  20/120/70
13(9) 20/145/60
14(10) 20/135/83
15(11) 33/135/40
17(9)  20/145/55
16(5)  22/110/50 ※No.16/18はゴマダラチョウ幼虫
18(10)  20/135/40

 ほぼ1~2頭/1株で生息しており、母蝶が1株あたりに産み付ける卵数は少数であることが示唆される結果です。静止位置はほとんどが40~70cmと低い位置にあります。
 体長は大半が約20mmで、ほぼ同時期に産卵されて育った幼虫なのでしょうか?また、個体識別番号No.16/18はゴマダラチョウ幼虫で(↑画像の黄太線枠内)、管理人はこれまで丈の低いエノキからゴマダラの幼虫を見出す経験が乏しかったので、最初はアカボシか?と錯覚しました。株No.5/10はアカボシとゴマダラ両種幼虫が共存生息している事例になります。ここで、読者の方の参考のため、ゴマダラとアカボシ幼虫の識別ポイントを画像でまとめておきました。

(1)背面の突起対
 ゴマダラはパッと見たところ、3対構造であるのに対し、アカボシは明瞭かつ、3角形状の4対突起が特徴。ただ突起の発達形状は個体差がかなりあって(↑の幼虫集合画像参照)、著しく発達した個体では、恐竜(ステゴザウルス)の背面突起を連想させますね。因みにオオムラサキも背面に4対突起があります。
f0090680_7123674.jpg
GX100@5.1mm(トリミング+画像処理)

(2)尾端の特徴
 前述の背面突起対による識別は幼虫の個体差・齢数によっては、区別し難い場合があります。例えば、↑の幼虫集合画像で、個体識別No.3,4,5は、(1)で記載したルールに照らし合わせると、一見、ゴマダラチョウと誤認しそうな外観を呈します。これら一連の個体は越冬しない(不可能?な)非休眠型と呼ばれるタイプだと思われます。このような例外も含め、一番簡単な識別点が尾端の特徴です。ゴマダラは尾端が明瞭に「2又に開裂する」のに対しアカボシは「開裂しない」のです(黄色矢印)。従って、普通は背面突起対の数を数えなくても、尾端構造の特徴を確認することで事が足りると思います。因みにオオムラサキ幼虫の尾端はゴマダラ同様に「2又に開裂」します。更に越冬状態でのオオムラサキ幼虫の体長はゴマダラ、アカボシ、オオムラサキ3種の中で一番小さいことでも識別可能でしょう。
f0090680_7125165.jpg
GX100@5.1mm(トリミング+画像処理)

 さて、↑で御紹介した幼虫。次なる興味はそれぞれが樹上越冬のスタイルを取るか?あるいは樹下に下りて、ゴマダラ同様落葉中に潜むのか?の検証です。管理人はまだ樹上越冬パターンを観察したことがないので、楽しみにしております。また、個体No.3-5等のような非休眠型幼虫もいずれ越冬型に変化するのか?も重要な確認ポイントでしょう。果たして何頭の幼虫が無事越冬し、来年春に羽化まで辿り着けるでしょうか?
by fanseab | 2007-11-20 07:13 | | Comments(16)
Commented by 空飛ぶhaha at 2007-11-20 08:38 x
<本題に入る前に愚痴を一言>
フフフ、昨日はfanseabさんと同じ気持ちでした。(笑)

*ここから本題です*からは、私なんかがコメントしてはいけないような....素晴らしい観察研究ですね。3(3)はものさしも写っていて大きさがよくわかります。観察途中で行方不明No,10君はfanseabさんの目を盗んでどこへ行ったのでしょうね?(笑)
Commented by ダンダラ at 2007-11-20 12:55 x
エノキの幼木の8割にアカボシゴマダラの幼虫がついているなんてすごいですね。
ゴマダラの幼虫でもこんなに高率ではないように思います。
その割に夏には個体数は少なかったのでしょうか、本格繁殖の前触れなんでしょうかね。
Commented by fanseab at 2007-11-20 21:40 x
haha様、昨晩は「・・・ったくもぉ~、ドツいたるでぇ~」等とPC画面の前でイライラしておりました。ブログ更新はサクサクやりたいですね。幼虫画像、正視できない女性の方もおるようなので、少し心配しておりました(笑) 行方不明の背番号10君は小鳥の犠牲になった可能性もあります。
Commented by fanseab at 2007-11-20 21:43 x
ダンダラさん、株No.5-11はほぼ2m間隔で生えているエノキでして、恐らく母蝶が丹念に一株毎に産みつけていったものと思われます。♀の個体数が少なくても、このような産卵様式のため、結果的に生息密度が高く観察された可能性もあります。
Commented by chochoensis at 2007-11-20 22:07
fanseabさん、素晴らしい観察ですね。樹上での越冬もあるんでしょうか?下に降りたとしたら、観察するのが大変でしょう?これからの継続観察をとても楽しみにしております・・・。しかし、こんなに確かに根付いて繁殖している事に驚きました。研究成果を楽しみにしています。
Commented by banyan10 at 2007-11-20 23:30
僕が産卵を撮影したのは茅ヶ崎ですが、その時も次に行ったときもエノキの幼木にはかなり幼虫がいましたね。
分布の拡大はもう止めようがないでしょうから、ゴマダラチョウが減らなければと思います。
ゴマダラも樹上越冬もあるようなので、アカボシも両方のような気がします。
Commented by fanseab at 2007-11-21 22:31 x
chochoensisさん、エノキの実生では、樹上越冬は比較的継続観察が容易かな?と思っています。問題は落葉越冬で、道路の植栽の隙間にエノキが生えているので、落ち葉掃除等で、落葉が除去されることですね。
Commented by fanseab at 2007-11-21 22:34 x
BANYANさん、茅ヶ崎でも状況は同じだったのですね。アカボシもいずれ天敵が現れて分布拡大も頭打ちになるでしょうけど、現在は勢いを止めることはできそうにないようです。ネット情報ではアカボシの樹上越冬事例が多く紹介されていますが、一度その事例を観察したいと思っております。
Commented by cactuss at 2007-11-21 23:15
アカボシゴマダラの幼虫観察、すばらしいですね。
この冬は一度、撮影に横浜当たりに行こうかと師匠と話しているところです。ゴマダラチョウの幼虫とはかなり違いますね。
Commented by 虫林 at 2007-11-21 23:59 x
アカボシゴマダラの幼虫識別が良く分かりました。
有難うございました。
それにしても、アカボシゴマダラの繁殖はすさまじいですね。
こちらでは見ることができず、寂しいやら、すこしホッとしているやら複雑な心境です。
エイサイトのメインテナンスは予告無しで遺憾です。
Commented by fanseab at 2007-11-22 22:53 x
cactussさん、有難うございます。無茶苦茶数が多かったので幼虫1頭1頭を撮影してみました。横浜市近郊の公園でも、ほぼ例外なく幼虫が見つかると思います。越冬状態ではゴマダラとの区別が容易で、越冬状態でも体色が緑色を帯びる特徴があります。
Commented by fanseab at 2007-11-22 22:59 x
虫林さん、南紀撮影行は素晴らしい成果を上げられましたね。アカボシ幼虫の特徴を自分なりに整理する意味で掲載してみました。お役に立てれば幸いです。小生は甲府盆地にこの蝶が飛ぶ姿は見たくありませんね。
エキサイトのメンテナンス。工事終了後の動作確認作業が常に甘いと感じます。システムに構造的な欠陥があるのでしょう。
Commented by thecla at 2007-11-23 20:53 x
川崎北西部のアカボシ幼虫は本当に蔓延している状況かもしれませんね。
私もちょっと前に一木に十数頭ついている状態を見つけました。とてもこの木では養えないのではと思っていたら、幼木ごと草刈で消滅しましたが。
Commented by maeda at 2007-11-24 07:49 x
アカボシは小さなエノキが主たる産卵木では無いかと思いますが、いかがでしょうか?大木にはどうなのでしょう?
逆にゴマダラは比較的大きい木が好みなのではと勝手に思っています。
Commented by fanseab at 2007-11-24 08:13 x
theclaさん、
<一木に十数頭ついている状態を見つけました。
多数産み付ける事例もあるのですね?参考になります。
これまでの観察では、1頭がちょうど終齢までエノキの葉を消費できる様に、一木1-2卵程度産卵するのではと思っておりました。
Commented by fanseab at 2007-11-24 08:16 x
maedaさん、エノキ大木での成育状況は調査に梯子や脚立等、大掛かりになるので観察例が少なく、現状では結論が出せないと思います。少なくとも、ゴマダラよりも小さな株を好むことは間違いないでしょう。
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