探蝶逍遥記

広島県東部の青ゴマ探索(8月18日~19日):その(2)

 さて、2日目です。起床して東の空を見ると上手い按配にどんよりと雲がかかっています。「へへへ。開翅、開翅、今日こそたのんまっせ~♪」と独り盛り上がって朝食をしっかりと食べました。行き先は第4ポイント。現地6時40分着。しかし・・・・、困ったことに雲が切れてきました。昨日同様なカンカン照りかぁ~と一気に気持ちが萎えてきました。潅木の下草から♀が飛び立ったので、追跡して下草に降りたところで30分じっと待ちましたが、朝日を浴びて翅をスリスリするだけで結局開かず(^^;;

 早朝と言えども、♀は相当に敏感で、1m以内に接近すると飛ばれてしまいます。しかたなく、産卵シーンの撮り直しを目的に暫く待機することに。そのうち、気温が上がって♂の探♀行動がスタートしました。追跡中の1頭の飛翔スピードが急に弱まって草上に止まりました。5m程度の距離からなにげなく覗いてみると・・・。
「か、か、開翅ぢゃ~!」開いています!思いがけない出来事に慌てふためき、慎重に下草を踏みながら接近、接近のショックで一旦翅を閉じかけて肝を冷やしましたが、再度ご開帳してくれました(^^)
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D70, ISO=400, F7.1-1/500、-0.3EV、撮影時刻:8時50分

 やったー!このシーン撮影のためだけに広島まで来たんですからね。「開けゴマ~」の呪文を唱えなくても、開く時は開いてくれるんですねぇ。ただ、ふと空を見上げると、雲が太陽にかかり、少し陽射しが弱まっていることに気づきました。陽射しの強さも開翅の重要なポイントのようです。

 これで何とか2日目のターゲットをゲットできたので、♀産卵シーン撮影に重点を切り替えました。90mmマクロで狙うも初日同様、納得のいく画像が得られず、少し発想を変えて、gyoromeで狙うことに。腹端を曲げた産卵行動に突入すると、♀の警戒心が緩むのか?魚露目8号のレンズ先端を接近させても逃げる気配がありません。通常の広角レンズでは絶対に拝めないアングルからの絵が切り取れました。
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GX100-gy8, ISO=100, F7.1-1/250、-0.7EV、撮影時刻:9時42分

 こうして拡大してみると、ゴマの複眼は黒ベッタリ。まさに「黒ゴマ」のようで異様な雰囲気ですね(笑)この♀、木陰を好んで飛び回っていましたが、突如、日向に出て下草の茎に止まりました。そしてアッと思う間もなく、何と全開してくれました!
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D70, ISO=500, F8-1/640、-0.7EV、撮影時刻:9時50分

 体を下向きにしての開翅に惑わされ、ピンが来たのはこのヒトコマだけ。♂に引き続いての開翅ゲットで本当に幸せな気分でした(^^) これでかなり気持ちに余裕が出てきたので、昨日に引き続き、ワレモコウに執着して飛ぶ♀飛翔にチャレンジ。初日はギラつく太陽を浴びた雰囲気の飛翔シーンでしたので、ここは木陰にあるワレモコウを背景に据えてみました。
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D70S-10.5-X1.4TC, ISO=500, F10-1/1000、-0.7EV、外部ストロボ、調光補正1/4、撮影時刻:9時53分

 ワレモコウの真紅とゴマシジミのブルーが想像以上にマッチしたお気に入りの絵になりましたので、少し大きめの画像を貼っています。サービス精神旺盛のこの個体、産卵後、木陰にある枯れかけたウツギの枝先に。「さては誤産卵行動か!」と固唾を呑んでカメラを構えると、な、な、なんとまたまたご開帳です!!たまたま飛翔用に超広角レンズを手にしていたのが功を奏し、意外と冷静にアングルを計算しながらのショットとなりました。
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D70S-10.5-X1.4TC, ISO=500, F10-1/200、-0.7EV、撮影時刻:9時55分

 「産卵の途中、木陰に入っての休息開翅」こんな開翅パターンがあるとは知りませんでした。この後、暫くこの♀を追跡しましたが、二度とは開いてくれず、草原の彼方に消えました。

 ところで、この2日間、♀の産卵シーンを嫌というほど観察できました。しかし、実際に産まれた卵を確認することはできませんでした。少なくとも花穂表面に産まれた卵は前回の記事冒頭でご紹介した写真だけです。花穂内部に産み付けられたとすると、花穂を分解する点検作業が必要なのでしょうね。これに関連し、90mmマクロで撮影した下の画像をご覧ください。
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D70, ISO=500, F6.3-1/800、-0.3EV、撮影時刻:9時56分
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D70, ISO=500, F8-1/640、-0.7EV、撮影時刻:9時55分

 一枚目は撮影後、PCモニター上で初めて「吸蜜シーン」であることに気が付きました(ゴマのストローって本当に細いですね!)。腹端をワレモコウの穂先につけたままの吸蜜です。産卵中に吸蜜する器用なシジミ等いないでしょうから、腹端を付けているのは産卵を中断しているのかな?また、二枚目は「産卵行動」直後の腹端がはっきり見えるように多少トリミングした画像で、産卵器官(暗褐色)の延長線上の穂先に卵は見えておらず、この場面は明らかに「花穂内産卵」か、「擬似産卵行動」シーンのどちらかでしょう。今回の複数♀個体の観察から、どうやらかなりの個体が一つの穂先に複数個の卵を産みつけている様子も確認できました。でも検証にはすべての穂先を分解せねばならず、これはちょっと気が遠くなる作業ですね。読者の方で、一連の行動に詳しい方がおられたら、コメント頂きたいところです。

 さて、今回遠征最大の目的である開翅シーンを幸運にも♂♀ダブルゲットできたので、気が緩み、昨日からの疲れが急にドッと出てきました。そこでこのポイントでの撮影を終え、南東部に80km離れた第7ポイントに移動です。途中、車をゆっくり流しながらナラガシワ・クヌギ(アベマキ)巨木の分布も調査。これ、来シーズンのゼフ撮影に備えたこの日の重要な探索テーマでもありました。実は「第7ポイント 」と書きましたが、正確には「第7ゾーン」と言ったほうがいいかもしれません。なにせこの地域は頼みにしている衛星画像の解像度が何故か低く、第1~6ポイントのようなピンポイント探索ができません。仕方なく地形図から高原状と判断されるゾーンに絞ってウロチョロしましたが、結局ゴマについては、めぼしい成果がなく、午後3時に撤収です。

 熱中症と隣り合わせの青ゴマ探索。幸運にも当初目論んでいた画像をすべてゲットでき、気分よく帰宅できました。次回はゴマ以外の蝶についてご紹介しましょう。
by fanseab | 2007-08-22 22:04 | | Comments(20)
Commented by kmkurobe at 2007-08-22 22:35
これはゴマ写真の今年ベストになるのではないですか。生態写真としても、そして総合的な写真としてもベストにちかいのではないでしょうか。
私この開翅の広角コレ以上はしばらく出ないのでは・・・・・・・・と思います!!
すごいですよこれ。恐れ入りました。
Commented by fanseab at 2007-08-22 23:22 x
kmkurobeさん、過分なお言葉有難うございます。
撮影対象をゴマ1種に絞ったことと、1泊2日の余裕ある行程だったので、チャンスに恵まれたのだと思っています。念願の開翅シーンを押さえることができたので、遠征疲れも吹っ飛びました。
Commented by cactuss at 2007-08-22 23:48
青がまぶしいゴマの開翅、うらやましいです。
まだ、今年は撮っていないので、また、撮りに行きたくなりました。
今年は例年よりも発生が遅い感じかしますが、いかがでしょうか。
Commented by maeda at 2007-08-23 06:22 x
開翅のオンパレード、すばらしいですね。
不思議なもので出会えるときは次々と開翅してくれます。
私も同じような事を経験しております。
草を揺らしてしまい、一瞬閉じそうになる緊迫感は、経験者には良く分かるシーンですね。
Commented by kenken at 2007-08-23 08:54 x
うおおぉ~!「期待を裏切らないように」どころか、青空入りのFisheyeでの完全開翅シーンまで撮られるとは・・・羨ましい・・・思わず、こんな時間にコメント入れてしまうくらい素晴らしいもんです。中国地方のゴマの青さはえぇもんです。
私の先日の開翅観察結果から申し上げると、微妙に太陽光が弱くなった数分間に開きっぱなしになりました。その個体を数時間追いましたが、2度と開きませんでした。
開翅個体へカメラを構えて接近するその瞬間は、何事にも勝る興奮ですね。よ~く、よ~く、分かります。
Commented by 虫林 at 2007-08-23 12:02 x
これはこれは、素晴らしいですよ。
素晴らしい場所の発見に対しても、写真技術に対しても、そして綺麗なゴマ君もついでに、敬意を表します。オメデトウございます。
ゴマのストローは驚くほど細いですよね。
小生も爪の垢でももらってがんばります。
Commented by chochoensis at 2007-08-23 13:01 x
fanseabさん、素晴らしい!絶句です・・・。開翅、産卵、吸蜜、どれをとっても一級品の写真のオンパレードで素晴らしいです。少しはこういう写真を見て勉強しないといけませんね・・・おめでとうございます。
Commented by ノゾピー職場 at 2007-08-23 13:11 x
これはすごい。ゴマ開翅写真は多くの方が撮影されていますが、これほどの写真は見たことがありません。出色です。熱中症寸前まで体調の事も気にならなかったほど、すごい感動だったという事ですね。
Commented by ダンダラ at 2007-08-23 21:30 x
広島のゴマ、素晴らしいですね。
わざわざこれの開翅のために出かけた甲斐がありましたね。
シャープな写真で発色も良く素晴らしいです。
Commented by fanseab at 2007-08-23 23:00 x
cactussさん、飛翔中に垣間見えるブルーの味がありますが、やはり開翅場面でのブルーは喩えようもなく綺麗でした。ここのポイントはもちろん初体験なので、例年と比較して発生が早いか遅いか?の議論にはコメントできません。
Commented by fanseab at 2007-08-23 23:03 x
maedaさん、ご指摘の通り、次から次に開翅に出会える時間帯があるのかもしれません。開翅個体を閉じさせないように緊張しながら接近する時のドキドキ感は堪りませんね。
Commented by fanseab at 2007-08-23 23:06 x
kenkenさん、何とか念願の開翅画像が得られました。♀は結構新鮮な個体が飛び回っていたので、チャンスはあると思っていましたが、♂の個体数は少ないうえにボロばかりで、比較的新鮮な♂開翅に恵まれたのはラッキーとしか言いようがありません。
別件ですが、私信有難うございます。
Commented by fanseab at 2007-08-23 23:10 x
虫林さん、有難うございます。フィールドに出るとサービス満点の個体に出会うことがありますが、今回の♀には感謝です。ゴマの吸蜜シーンは簡単に撮れるだろうと高をくくっていましたが、ストローを浮かび上がらせるような表現は大変難しいことを悟りました。
Commented by fanseab at 2007-08-23 23:12 x
chochoensisさん、いつも激励コメント有難うございます。今回はゴマ一本に絞っての撮影行のため、いつも以上に丁寧な絵作りができたことは事実です。それを可能にしてくれた蝶達に感謝しております。
Commented by fanseab at 2007-08-23 23:15 x
ノゾピーさん、お仕事中のコメント痛み入ります。貴殿から過分なお褒めのコメントを頂くと自信が沸いてきます。ゴマの発生時期は熱中症と隣り合わせなので、ペース配分をどうすればいいかを体感できたのも今回の収穫ですね。
Commented by fanseab at 2007-08-23 23:18 x
ダンダラさん、有難うございます。ほぼ日本全国で観察できるゴマですが、黒からブルーまで変異が多いのもこの蝶の魅力ですね。淡い感じだけれど、非常に深みのあるブルー。これが広島産の魅力でしょうか?
Commented by Celastrina at 2007-08-24 05:37 x
白い花穂のナガボノシロワレモコウしかない北国の者にとって、赤いワレモコウとゴマシジミの組み合わせは感動的です。いいなぁ・・・・・
産卵については蕾の奥深くに潜り込ませることが多いと思います。この蝶の産卵形式は、クシケアリの存在を確認するわけではなく、とにかく多く生んで運がよければアリの巣へという「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」という感じのものなので、9月に調べるとひとつの花穂に10匹以上の幼虫が入っていることも少なくないようです。
Commented by nomusan at 2007-08-24 19:46 x
おお、すごいぞすごいぞ! これは素晴らしい画像ですね。開翅もすごいし、産卵もすごい。いや、これはエエもん見せていただきましたぁ。
Commented by fanseab at 2007-08-24 23:54 x
Celastrinaさん、早朝からのコメント恐れ入ります。産卵挙動に関する詳細な解説有難うございました。なるほど!そうなんですね。ただ、ナガボノに比較してこちらのワレモコウの穂先は短いから収容できる幼虫の数も少ないのでしょうね。一度機会があれば花穂を分解してみることにします。
Commented by fanseab at 2007-08-24 23:57 x
nomusan、広島のゴマを撮るぞ!と、いきごんででかけたのですが、正直、今回はまずはポイント探しと割り切るつもりでした。ところが、運良くそれなりの個体数を観察できるポイントを発見し、愛想の良い(笑)♀に出会えたのがラッキーでした。
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