探蝶逍遥記

南ベトナム遠征記 (7)セセリチョウと吸戻し行動

 長らく連載してきたこのシリーズ、今回は科別編成の締めくくりとして敏速に飛び回るセセリチョウ達をご紹介しましょう。特に今回遠征では、吸水(吸汁)した液体を腹端から一旦排出して、再度ストローで吸い取る「吸戻し行動」を頻繁に観察できましたので、重点的にアップしたいと思います。

 公園内を走る林道上では、マダラチョウやジャノメチョウに混じって、高速で飛び回って吸水するセセリチョウの姿がいやでも目に止まります。まずは、オキナワビロウドセセリ(Hasora chromus)。
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D70, ISO=500, F5.6-1/1250、撮影時刻:7時56分

 落ち着きなく、吸水ポイントを頻繁に変えていくので、イライラしながらの撮影になります。

 お次は細長い前翅形が特徴のタイワンアオバセセリ(Badamia exclamationis)。
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D70, ISO=500, F9-1/125、+0.7EV、撮影時刻:13時24分

 アオバの和名とは裏腹に褐色のセセリですので、薄暗い場所で目線を切ると、すぐに見失ってしまいます。

 昼食後の撮影を終え、ロッジの玄関口でカメラザックを降ろし、腰を下ろして休んでいると、これまた不意に出現したのは、セナキバネセセリ(Bibasis sena)。
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GX100@5.1mm, ISO=100, F7.2-1/14、+0.7EV、撮影時刻:15時11分

 近くで飛び回るとブーンと羽音が聞こえます。赤く縁取られた肛角部が印象的。ここでも人間の汗が最良のトラップとなったようです(^^) 本種も吸い戻し行動中のようです。それにしてもどうやって、汗の臭いを嗅ぎ付けるのでしょう?

 一方、シロシタセセリ(Tagiades属)は開翅で静止します。ところが、暗いジャングル内で出会った個体は、何れも葉裏にベタっと隠れるような開翅ポーズ。下草の低い位置に止まるので、デジ一でもコンデジでもちょっと撮影が困難。こんな画像を撮るのが精一杯・・・。仮にガナシロシタセセリ(T.gana)♂としておきましょう。
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D70, ISO=500, F5.6-1/40、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:12時54分

 いったい、彼らをどうやってまともに撮影すればいいのでしょうか?ネットで採れば簡単、でも撮影は困難・・・・。この時ほど、それを痛感したことはありませんでした。

 どこの遠征先でも同定に悩まされるのがチャバネ系セセリ。今回アップした下記画像は一応、トガリチャバネセセリ(Pelopidas agna)と同定しましたが、自信はありません。
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GX100@5.1mm, ISO=100, F4.6-1/440、-0.3EV、撮影時刻:7時12分

 同様に生態写真だけからは同定が困難なグループがキマダラセセリ類(Potanthus属)。無理やりコンフキウスキマダラセセリ(P.confucius )としてみましたが、これまた全く自信ありません。背景の立派な建物は公園内の会議場です。
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GX100@5.1mm, ISO=100, F8.1-1/45、-0.3EV、撮影時刻:8時17分

 さて、今回遠征で最も印象に残ったセセリと言えば、ポルスヒメチャバネセセリ(Halpe porus)。
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D70, ISO=500, F9-1/250、+0.7EV、撮影時刻:11時22分

 チャバネセセリとチャマダラセセリを足して2で割ったような独特な裏面。縁毛も小生好みの破線模様。誰でも同定できるセセリ初心者に優しい種ですね(^^) 暗いトレイルではゲストが落としていったポリ袋に付着していた液体を吸い戻ししておりました。
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D70, ISO=500, F10-1/20、+0.3EV、内蔵ストロボ、調光補正-0.3EV、撮影時刻:12時40分

 このセセリ、裏面が見えない開翅状態では、他のチャバネ系セセリとの区別が難しくなります。
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GX100@5.1mm, ISO=100, F7.2-1/55、+0.7EV、撮影時刻:11時17分

 いつも東南アジア遠征では、独特な斑紋のセセリ撮影を夢見るのですが、今回も若干期待を裏切られた感じです。雨季のど真ん中に行けば、少しは豊穣なセセリ群に出会えるのか?これからも宿題が続きそうです。

 ほぼ二ヶ月、7回にわたって連載してきた南ベトナム遠征シリーズ。お楽しみ頂けたでしょうか?結局、この遠征で観察できたのは合計93種類。そのうち、撮影成功種は87種類に上りました。実はこの公園、UNESCOが世界で411番目に指定した「生物圏保護区:Biosphere Reserve」でもあります。その UNESCO公式サイト 上では、457種類の蝶が記録されているとの記載がありますので、今回遠征でその約1/5を観察できたことになります。連載したブログ記事にアップできなかった種群については、別途、本体HP に「南ベトナムの蝶」ギャラリーを新設し、ここでお楽しみ頂きたいと思います。
by fanseab | 2007-07-08 22:14 | | Comments(22)
Commented by 6422j-nozomu2 at 2007-07-08 22:34
地味なことで知られるセセリの仲間もなかなかどうして私には個性的で、美しく思いました。セナキバネセセリ綺麗ですね。それからキマダラ系はやはり同定難しいようですし、翅表写真だけでもセセリの仲間は判別しにくいことを実感いたしました。
Commented by fanseab at 2007-07-09 00:04 x
ノゾピーさん、早速のコメント有難うございます。東南アジアのセセリチョウは大変個性的な種類が多いのです。セナ肛角部の赤は結構艶かしい印象がありました。キマダラ系は表翅と裏面セットで撮影するようにしています。
Commented by maeda at 2007-07-09 06:25 x
セセリ好きにはたまりませんね。
特にキマダラセセリ、世界中のキマダラを撮ってみたいです。
楽しいだろうなあ。
Commented by kmkurobe at 2007-07-09 18:57
セナキバネセセリ初めて拝見しましたが、これはすばらしいセセリですね。それにしても綺麗に撮影されていますね。私的には最後から一つ前のセセリが南の国にいるとは・・・・これいい感じのチョウですね。
Commented by cactuss at 2007-07-09 22:23
いろいろと変わったセセリがいるんですね。
セセリは同定が難しいですね。小生にはまったく同定できないと思います。南ベトナムシリーズ、楽しませてもらいました。
Commented by fanseab at 2007-07-09 22:50 x
maedaさん、セセリは奥が深いです。特にキマダラセセリは仰る通り、まだまだ続々と新種が見つかる可能性を秘めていますね。まあ、同定の難しさも半端じゃないですが・・・・。
Commented by fanseab at 2007-07-09 22:53 x
kmkurobeさん、セナキバネ、なかなか洒落ているでしょう?濃茶に白帯、それに肛角の紅とデザインが小生も気に入りました。ポルスが属する仲間はデザインがつまらないものが多いのですが、こいつだけは独特で、北方系の匂いがする不思議な感覚のセセリです。
Commented by fanseab at 2007-07-09 22:55 x
cactussさん、まいどどうも。もうちょっと変わったセセリを期待して出かけたのですが、ちょっと期待ハズレでした。まあ、図鑑が充実していてもセセリは生態写真だけからは同定は厳しいものがあります。
Commented by kenken at 2007-07-09 23:13 x
まさに、How many セセリs ですなぁ~(笑)
ほぉ~、開翅でとまるシロシタセセリ属、面白いですね。
公園だけで457種類!こりゃ飽きませんねぇ~
Commented by fanseab at 2007-07-09 23:33 x
kenkenさん、遠征明けでお疲れのところ、コメント有難うございます。そう、セセリのバリエーションは数えきれないほどなのでHou much?ですかね(笑) コウトウシロシタや近縁のダイミョウは開翅でも葉の上に止まるでしょ。でもこいつはイシガケみたいに裏に止まるんで苦労しました。
Commented by ダンダラ at 2007-07-10 00:02 x
日本国内でもなかなか出かけられないので、こういった海外の記事はため息混じりで眺めるだけです。
いっぺんに90種近い種類を撮影出来るなんて素晴らしいですね。
日本国内がほぼ完了したら私も・・・
Commented by banyan10 at 2007-07-10 16:10
セナキバネセセリはキバネセセリよりもお洒落でいいですね。
ここだけで日本の倍近くの蝶が見れるのですね。
南ベトナム遠征シリーズ、十分に楽しませていただきました。
Commented by fanseab at 2007-07-10 22:26 x
ダンダラさん、海外遠征できる方は限定されていると思います。その意味で丁寧に撮影して皆さんにご紹介できればと思っております。この公園、比較的低地にあるので、遠征前はそれほど種類数は期待していませんでしたが、想像以上に豊富な蝶相にビックリです。それを支える素晴らしい熱帯雨林が保存されていることがポイントですね。
Commented by fanseab at 2007-07-10 22:31 x
BANYANさん、日本本土だと大型セセリはアオバとキバネの二種類に限定されますが、東南アジアはこの仲間が豊富で楽しいですね。450種を観察するのには、5年間せっせと通わないと無理かもしれません。
Commented by Celastrina at 2007-07-11 18:12 x
Bibasis senaの渋さ、いいですね。魔的な感じがとてもいい。標本ではパッとしない種ですが、こうして撮ると魅力がありますね。
Commented by chochoensis at 2007-07-11 21:44
fanseabさん、一番気に入ったのが「オキナワビロードセセリ」の吸い戻し行動・・・口吻の先端が尾端までシッカリ伸びていて素晴らしい写真ですね・・・色彩的には、セナキバネセセリ・・・シロオビがなんとも美しいですね・・・。
Commented by fanseab at 2007-07-11 22:00 x
Celastrinaさん、セナの「渋さ」と書かれていますが、現場で見ると結構派手目です。標本と実物で全く印象が変化する代表的な種かもしれません。羽音を残す大型セセリはオオムラサキ同様、五感に訴えて印象的ですね。
Commented by fanseab at 2007-07-11 22:03 x
chochoensisさん、今回は国内ではめったにお目にかからない吸い戻し行動を至るところで観察できたように思います。吸い戻しは一定のリズムで行われますが、腹端とストローが接触するタイミングでの撮影は結構苦労しますね。セナのシロオビ、太さが微妙に変化しているのも魅力的でした。
Commented by 虫林 at 2007-07-11 22:59 x
ベトナムのチョウ達、堪能させていただきました。
最後のセセリでは、皆さんもコメントされていますが、セナキバネセセリの写真が、蝶の美しさもさることながら、写真の中に色々な要素が入っていて、見ていて飽きないもですね。さすがです。
Commented by fanseab at 2007-07-13 00:59 x
虫林さん、コメント有難うございます。遠征の先々で思い出に残る蝶はいろいろありますが、セセリに関して言えば、最後に登場してもらったポルスヒメチャバネとセナキバネが挙げられますね。疲れて帰った宿舎の玄関先で慰めるように現れたことも思い出に残る要素でしょう。
Commented by thecla at 2007-07-14 15:55 x
南ベトナムの蝶シリーズ堪能させていただきました。
公園で457種類ですか、南の蝶の種類数はすごいですね。ベトナムも経済成長がすごいですから今のうちに行っておいたほうが良いのでしょうか。
Commented by fanseab at 2007-07-14 21:50 x
theclaさん、南ベトナムシリーズ、楽しまれたようで連載した甲斐がありました。ご指摘の通り、ベトナムの経済成長はすごく、農地開発や森林伐採で好ポイントがどんどん失われていくようです。幸いにも国立公園はドル稼ぎの観点から国が支援しているためか、観察には好都合ですね。
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