探蝶逍遥記

南ベトナム遠征記 (6)林縁を彩るシジミチョウ

 日本国内外を問わず、深い森林に接する林縁部は蝶影が濃く、撮影にも好適なポイントが多いものです。今回はそんな林縁部で出会ったシジミチョウ達のご紹介です。

 ゲストハウス設置エリアから舗装された車道を歩くと、多くの蝶が吸水に訪れています。コンクリートから染み出すミネラルを補給しているのでしょう。滞在3日目の朝、この車道上に褐色の小さめのジャノメチョウが降り立ちました。しかし、よく見ると、ジャノメではなく、裏面が茶褐色のアニタコノハシジミ(Ambrypodia anita)。地面の赤褐色と裏面の地色が同化して、確かに枯れた木の葉が地面に止まっているようにも見えます。
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GX100@5.1mm, ISO=100, F5.1-1/440、-0.3EV

 暗いジャングルのトレイルを抜けた日差しの強い林縁でも本種に出会いました。朝方の吸水シーンで鈍かったのが嘘のように敏速に飛び回っています。暫く観察すると、急に下草に止まり開翅してくれました!
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D70, ISO=400, F11-1/640、-0.7EV

 ムラサキシジミよりも深みのある紫色です。このシジミ、ムラサキツバメより一回り大きい体躯のため、開翅シーンは大変迫力がありました。少しスレ品なのが気になり、滞在中、ド完品開翅を狙ってみたものの、結局開翅シーンはアップした画像のみ。開翅の条件は案外制約されているようです。このシジミ、海老・パイナップルトラップはもちろん、吸水にも登場し、この公園内で最も個体数の多いシジミチョウでもありました。

 林縁の下草上で日光浴している中型の褐色シジミを発見。オオアカシアシジミ(Surendra quercetorum)の♀。
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D70, ISO=500, F5.6-1/1000、-0.3EV

 2連尾状突起に加え、肛角部も迫出して独特なスタイル。♂は珍品とされています。

 一方、暗いトレイル内はムラサキシジミの仲間が好む環境です。トレイルを足早に通り過ぎると、思わぬ場所からチラチラ飛び出して潅木上に止まります。この仲間は東南アジアに少なくとも100種以上が棲んでいるので同定が難しい!帰国後、必死の同定作業で、アイダムラサキシジミ(Arhopala aida)としておきます(誤りあればご指摘願います)。サイズはほぼ国内のムラサキシジミ並で、肛角付近に散らした青色鱗がお洒落です。
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GX100@5.1mm, ISO=100, F2.9-1/24、+0.3EV

 同じジャングル内の暗がりでチラチラ真っ白いシジミが舞っていました。シロウラナミシジミ(Jamides alecto )の♂。
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D70, ISO=500, F7.1-1/50、-0.7EV、内蔵ストロボ、調光補正+0.3EV

 表翅は明るいブルー。しかし暗い環境下を飛んでいるときは、和名通り、真っ白に見えます。

 タテハチョウの項でご紹介した林道ポイントはシジミチョウ達の宝庫でもありました。林道で一休みしていると、汗をかいた小生の袖口や背負っていたカメラザック等にタテハ、シジミ、セセリの類が集まってきます。そんななか、小蝿がつきまとうように群飛していたシジミがいました。リカエニーナオナシウラナミシジミ(Anthene lycaenina)。サイズはヤマトシジミ程度。但し猛スピードでブンブン飛び回ります。この手のシジミは日本にはいないため、慣れぬまではシジミとは思えません。結構敏感で吸水シーンを撮影しようとカメラを向けると、また暫くブンブン飛行を始めます。ようやく一脚上に落ち着いた所でパチリ。
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D70, ISO=500, F9-1/160、+0.7EV

 同じく蝿のように飛ぶ小さいシジミを公園を横切るドンナイ川の畔でも見出しました。日本の南西諸島でも撮影可能なヒメウラナミシジミ(Prosotas nora)。夕暮れ時の暗い時間帯に地面スレスレを飛ぶものですから、老眼と乱視が混じる小生には追跡が厳しい状況(^^;; 「えーいままよ!」とストロボ乱射したら、奇跡的にカメラに向かう迫力ある姿が切り取れました。
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D70S-24, ISO=500, F6.3-1/500、+0.3EV、外部ストロボ、調光補正1/4

 撮影疲れが出てくる午後3時頃、ゲストハウスに近い林道脇で鮮やかなオレンジ色のシジミが飛び立ちました。オナガアカシジミ(Loxura atymnus)。
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D70, ISO=500, F4-1/640、+0.3EV

 このシジミとは、ボルネオで出会って以来、久しぶりのご対面。デジタルでの初撮影になりました。何とか半開翅で表翅の濃いオレンジ色を写しこめました。

 さて、最後に熱帯アジアらしいシジミをご紹介しなければならないでしょう。先ずは、その代表格、アマサツメアシフタオシジミ(Hypolycaena amasa )。 1頭の♂が動物系トラップで吸汁後、林道脇の木陰に移動し、休息ポーズ。
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D70, ISO=500, F7.1-1/160、+0.7EV

 半逆光に煌びやかに輝く超特大の尾状突起にご注目ください。今回遠征でもお気に入りの画像になりました。林道上を飛ぶ姿はまるで小さな毛玉がすばやく空間を動き回るように見えます。とてつもなく長い尾状突起が飛翔中に絡まるようになびき、「綿毛のように見える!」のです。これは熱帯アジアならではでの光景。思わず見とれてしまいました。

 訪れた5月初めは雨季のスタートでもありました。昼過ぎには必ず空が暗くなり、軽いシャワーが落ちてきます。そんな薄暮にテリを張るセキレイシジミ(Cheritra freja)♂にも出会いました。葉上に半開翅で決めたテリポーズは格好いい!
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D70S-VR84@400mm, ISO=640, F6.3-1/320、-0.7EV、内蔵ストロボ

 表翅は地味な色調ですが、国産オナガシジミを髣髴とさせる鈍いブルー系の幻光は通好みの美しさでしょう。

 ルリマダラ類からスタートしたこの遠征記。次回はいよいよ大詰め、ブンブン飛び回る元気の良いセセリチョウ達をご紹介しましょう。ご期待ください!
by fanseab | 2007-06-13 21:18 | | Comments(20)
Commented by banyan10 at 2007-06-14 10:42
どれも素晴らしいですが、日本では考えられない最後の3種が何とも言えません。
やはり熱帯はすごいと思ってしまいます。(^^;
メンテが終わって、だいぶ良くなった気がします。
夜のアクセスが集中する時間帯でもこの調子ならいいのですが。
Commented by maeda at 2007-06-14 20:09 x
ムラサキシジミの仲間は多すぎて同定が難しいですね。
開翅は運が良くないと撮れない種なのだと思います。
フタオやミツオシジミ、残念ながら私は見ることが出来ませんでした。
Commented by 空飛ぶ父 at 2007-06-14 21:51 x
シロウラナミシジミが見たくて西表島まで行きましたが、土地開発で有名なシュクシャ群生地が壊滅状態で一頭もいませんでした。5枚目、バックの緑色に映えますね。
シジミチョウ達の宝庫の林道ポイント、行ってみたいですね。アマサツメアシフタオシジミを目近で見れたら、手が震えてしまうでしょうね。
Commented by nomusan at 2007-06-14 21:51 x
うわぁ! 凄いですね。魂が解放どころかぶっ飛びそうです。アニタコノハシジミだけでさえ、クラクラしてたのに、最後の3枚で完全KOです。この尾状突起は奇跡に近いですね。
Commented by fanseab at 2007-06-14 22:09 x
BANYANさん、今回訪れた国立公園は低地なので、まだ種類は少ないほうですが、もう少し標高を上げるともっとバリエーションが増えて楽しめるようです。サーバーの調子が悪くて更新を2日延期してやっと正常に近くなったようですね。困ったものです。
Commented by fanseab at 2007-06-14 22:12 x
maedaさん、仰る通り、ムラサキシジミグループだけで、一冊の図鑑が必要です。開翅は恐らく朝方、樹冠で見られると睨んでいますが、高さ50m位のクレーンでもないと撮影できないでしょう。脚立でナンボの世界でないのが辛いとこです(笑)
Commented by fanseab at 2007-06-14 22:15 x
空飛ぶ父さん、こんばんは。シロウラナミ、南アジアでは普通種ですが、自然光での撮影をさせてくれないシジミです。暗いジャングル内での飛翔も白トビしやすく、結構撮影難易度は高いです。アマサはシンガポールで一度出会っていたので、少し落ち着いて撮影できました。
Commented by fanseab at 2007-06-14 22:18 x
nomusan、東南アジアのシジミ類はとにかく尾状突起のバリエーションの多さに驚ろかされます。リカエニーナも「オナシ」と和名がついていますが、翅脈が伸びたような微妙な突起がついていたりして、複雑です。
Commented by cactuss at 2007-06-14 22:44
すばらしいシジミチョウたちの画像、何とも言葉がありません。
尻尾の長いものや紫や赤の輝く蝶を見たら、ドキドキでしょうね。
熱帯は蝶の宝庫ですね。
Commented by kenken at 2007-06-14 22:46 x
おっと、今宵はさくっと入れました。昨夜までは、コメントは読めるのですが、画像がさっぱり拝見できず、コメント遅くなりました。
で、ついに出てきましたね、シジミシリーズ。やっぱり私はシジミ・ファンですわ。こりゃ綺麗。
アマサツメアシフタオシジミっていうのかぁ~こいつね、以前に図鑑で見てすごい蝶やなって思ってましたが、そんな和名なんですね。ほ~、セキレイシジミ・・・うまいこと名付けたもんですな。天女を見つけた感じで胸が高鳴るでしょう。良いものを拝ませていただきました。
Commented by fanseab at 2007-06-14 23:28 x
cactussさん、まいどどうも。今回のベトナム遠征では、2回目の出会いとなる種が比較的多く、構図を考える余裕が出たのは良かったです。ただ初物のアニタコノハあたりでは少し手が震えましたね。
Commented by fanseab at 2007-06-14 23:32 x
kenkenさん、昨日はサーバーメンテの直前に更新する暴挙?をしたため、ご迷惑をかけたようでお詫びします。そう、シジミフリークの貴殿なら毎日シジミだけ追っかけしてもいい位、多様な仲間がいます。セキレイ、テリを張る最中に長い尾状突起が翻る様子は確かに「天女」ですな。
Commented by furu at 2007-06-16 19:46 x
私もシジミ好きなので今回の画像はたまりません。
ムラサキシジミの仲間の「似てるけどちょっと違う」感じも、最後の方の「何の仲間かわからない」のもどちらもいいですね。
Commented by thecla at 2007-06-16 21:06 x
どれもうっとりするような熱帯のシジミたちですが、やはり最後の2枚の羽衣のような長い尾錠突起に目が行きます。
「綿毛」のように見える・・・・・一度見てみたいものです。
Commented by ノゾピー at 2007-06-16 22:16 x
超出遅れで失礼いたしました。確かにエキサイトも超不調ですね。やはり、海外の蝶は、日本では想像できないのがいますね。ラスト2種類の蝶、何と尾状突起が長いのでしょう。想像出来ない長さです。何かメリットあるのかな。アニタコノハシジミは日本のムラサキシジミに良く似たタイプですね。裏はましで地味ですが、表面、少し鮮度は悪いけど、ゾクゾクするような美しさですぅ。
Commented by fanseab at 2007-06-16 23:33 x
furuさん、貴殿が同じ種類を写されたらどんな構図で料理されれるのか?興味がありますね。それだけ素材の面白さはピカ一だと思います。
Commented by fanseab at 2007-06-16 23:35 x
theclaさん、「綿毛」ですが、尾が邪魔して飛行がぎこちない?のか余計、普通のシジミとは思えない飛翔をします。一度シンガポールへおでかけして見てください(^^)
Commented by fanseab at 2007-06-16 23:37 x
ノゾピーさん、まいどどうも。セキレイシジミ類の尾の長さは外敵の鳥達からの捕食を尾状突起にさせて、自らを助く、トカゲの尻尾作戦のおうです。アニタは裏面と表面のギャップに驚かされるシジミです。
Commented by chochoensis at 2007-06-17 07:10 x
fanseabさん、健康チェックしている間に素晴らしい写真の掲載だったのですね・・・どれも素晴らしいですが、なんといっても=アマサツメアシフタオシジミ=がすばらしいです・・・風になびいたような尾状突起が悩ましいまで美しいです。こういう写真が撮影できるfanseabさんに拍手!
Commented by fanseab at 2007-06-17 21:52 x
chochoensisさん、無事退院されてよかったですね。アマサは以前シンガポールで撮影経験がありますが、その時は強風下での撮影で思うような絵が撮れませんでした。今回はじっくり構えることができたので、ほぼ思い描いた画像に仕上がったように思います。
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