探蝶逍遥記

南ベトナム遠征記 (2)ルリマダラ類を撮る

 2日目(4/29)の朝7時、HCMCをバスで出発。この日はベトナムも連休祝日のため、国道は大渋滞!!最寄のTan Phu村に着いたのが11時過ぎ。ここから車をチャーターする目論見が外れ、「バイクタクシーしかない」と言われガッカリ。大きな荷物を抱えて2輪の後席にしがみ付く恐怖の体験をしながら、現地到着は結局13時頃でした。
 宿泊は公園内に30棟ほどあるゲストハウス。1泊素泊まりUS$15でホットシャワー、エアコン付きです。
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 さて、早速フィールドに繰り出すと、ゲストハウスの周辺には黒いマダラチョウが群れをなしていました。ルリマダラ(Euploea属)の仲間です。小生、これほどまでの大群はこれまでの遠征では出会ったことがなく、今回は少し拘って撮影してみることに。種類同定が極めて難しいこの仲間、帰国してからやっと、同定できました(自信はないので、間違いあればご指摘ください)。まずは、少し小ぶりのホリシャルリマダラ(E.tulliolus)♂の吸水シーン。小生が撮影中に落とした汗を目敏く発見した♂が舞い降りて、珍しく開翅もしてくれました。
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GX100@5.1mm、ISO=100、F5.1-1/400、-0.3EV
 
 前翅表面に散りばめられた、やや大きめの白斑が特徴です。本種と勢力を二分していたのが、シロオビルリマダラ(E.camaralzeman)。↓の画像はホリシャと仲良く吸汁するシロオビです。驚いたことに吸汁源は草の枯れ茎。恐らくカリウム等のミネラルが富化しているのでしょう。オープンランドで彼らが群れているところに必ず、枯茎がありました。
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D70、ISO=500、F8-1/200、+1.0EV、内蔵ストロボ、調光補正-0.7EV
 
 ↑の絵で、少し大きめで、後翅裏面外縁側の2重白斑列が明確な個体がシロオビ、小ぶりのがホリシャです。

 フワフワと舞い飛ぶルリマダラを見ていると無性に撮りたくなるのが飛翔シーン。今回はノンストロボ、ストロボ併用の両刀使いで結構拘って撮影してみました。まずはノンストロボ、90mmマクロでのシロオビルリマダラの飛翔シーン。

シロオビルリマダラ飛翔①
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D70、ISO=640、F4-1/2000、+0.7EV

シロオビルリマダラ飛翔②
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D70、ISO=640、F4-1/2000、+0.3EV
 
 ①のポジションだと、前翅の瑠璃色幻光は完璧に封印されていますが、ひとたび、②の角度になると眩いばかりの幻光を発します。強烈な太陽光を浴びて発するルリマダラの幻光は忘れることのできないものです。

 お次は、超広角レンズ系でストロボを併用したもの。

ホリシャルリマダラ飛翔①
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D70S-10.5-X1.4TC、ISO=500、F7.1-1/1000、外部ストロボ、マニュアル発光、調光補正1/4

ホリシャルリマダラ飛翔②
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D70S-10.5-X1.4TC、ISO=500、F7.1-1/1000、外部ストロボ、マニュアル発光、調光補正1/4
 
 ①の背景は傷ついて保護された野鳥達のリハビリ用のケージのようです。この林縁一帯はルリマダラのみならず、極めて蝶相の豊かな好ポイントでした。②は上述した枯茎の周辺を集団で舞い飛ぶ個体。右端の個体はシロオビルリマダラ、他2頭はホリシャです。面白いことに3頭の羽ばたきがシンクロし、開翅飛翔の揃い踏みとなりました。

 黒系ルリマダラは同定が大変困難。一方、小生のような素人でも簡単に同定できるのが、シロモンルリマダラ(E.radamanthus)。ボルネオで撮り逃がしていただけに、今回きちんと撮影できてヤレヤレでした。

シロモンルリマダラ吸水
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D70S-VR84@400mm、ISO=500、F9-1/500、内蔵ストロボ

シロモンルリマダラ飛翔
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D70、ISO=640、F5.6-1/2000
 
 ご覧のように、本種は鮮やかな白斑が目印。メスアカムラサキ♂等、擬態をする多くのタテハ類のモデルになっています。瑠璃色幻光は表翅・裏面共に外縁部のみに限定されています。写真では結構綺麗な瑠璃色を呈していますが、肉眼では幻光よりも白斑が強くイメージされます。
 およそ無数とも思われる膨大な個体数を誇るルリマダラ。道路上でもノンビリと吸水しているためか? ↓のような光景を幾度も目撃しました(モデスタルリマダラ?:E.modesta)。
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GX100@5.1mm、ISO=100、F2.5-1/217、+0.3EV、内蔵ストロボ
 
 公園内には絶滅危惧種のジャワサイやワニ等の動物が生息しており、これら観察ツアーのため、4輪駆動車が結構なスピードで林道を走り回り、彼らが犠牲になってしまうのです。まあ、この公園での象徴的なシーンでもありました。
 次回はアゲハチョウ類を取り上げたいと思います。ご期待ください。

<追記(5/8):飛翔撮影とストロボ条件について>
 下記コメント欄でkenkenさんが、本件に関するご質問をされていますので、追記します。もとより小生も正確に解説する資格はありませんので、海野和男氏の名著「フィールドフォトテクニック-3 昆虫写真マニュアル」のp.76-79を参照してください。ここに詳しい解説が掲載されています。

 マニュアル発光では閃光量を常に一定に保持することと、閃光量を調節することが可能になります。閃光量を絞ると閃光時間が低減し、実効シャッター速度を1/2000~1/4000に稼ぐことができ、飛翔シーン撮影に適しているからです。一方、最速同調速度はkenkenさんもご指摘のように各社一眼のボディ性能で制限されてしまいます。これは内蔵であろうと、外付けストロボであろうと同じです。D70(D70S)は電子シャッターをフォーカルプレーンシャッターと併用しているため、並みいるデジ一の中でもずば抜けた同調速度:1/500を誇ります。ただ巷の噂ではメーカー保証値:1/500ではなく、1/2000?までも同調可能とされており、今回1/1000でトライしたところ、上手くシンクロしてくれたように思います。

 これ以上シャッタースピードを上げることも、もちろん可能ですが、そうすると、(自然光+ストロボ補助光)の総光量が不足して、背景が暗く落ちすぎ、「闇夜に浮かぶ蝶」状態になるので、あまり極端にはシャッタースピードを上げられません。ともかく、小生もまだ試行錯誤中なので、また新たな知見が得られたらブログに記事をアップしたいと思います。
by fanseab | 2007-05-06 21:00 | | Comments(24)
Commented by cactuss at 2007-05-06 23:41
マダラの飛翔はきれいですね。飛んでいる時でないとわからない青がきれいに出て、すばらしい写真です。なかなかこういう様に飛翔写真をうまく撮ることができません。
Commented by 6422j-nozomu2 at 2007-05-07 00:20
2日目はマダラチョウがメインですか。ストロボを発光させると、非常に幻想的な色合いになりますね。なかなか妖艶な蝶だと思いました。
Commented by maeda at 2007-05-07 05:46 x
GX100での蝶のいろいろを楽しみにしております。
価格がこなれたら購入も夢ではありません。
Commented by chochoensis at 2007-05-07 09:25 x
fanseabさん、素晴らしいルリモンマダラの洪水に興奮しました・・・飛翔写真が素敵ですね・・・現地の様子が伺えて素晴らしい写真です。さらにビックリしたのが「シロモンルリマダラ」!!!インドシナ半島で雌は見た事があるのですが、雄は素晴らしいですね・・・翅表のブルーが何ともいえないアクセントになっているんですね・・・感激です。
Commented by kmkurobe at 2007-05-07 19:31
トリプルで飛翔、ピントもばっちりこれはスゴイ。恐れ入りました。
シロモンルリマダラは始めてみました。こんなの見ると一度出かけてみたいですね。甥がベトナムに当分出張しているので・・・・・・
Commented by banyan10 at 2007-05-07 21:20
オオクロマダラの飛翔は雄と雌かと思って見ましたが、記事を読むと角度による違いなのですね。こんなに違って見えるものなのですね。
魅力的な蝶ばかりですが、シロモンルリマダラがいいですね。
Commented by fanseab at 2007-05-07 21:27 x
cactussさん、いつもコメント有難うございます。ルリマダラの飛翔は丁度、ウスバシロと同じ感じなので、飛翔撮影としての難易度は低いと思います。でも瑠璃色が出るチャンスは少ないのでオオクロマダラ②のような絵はなかなか得られませんでした(^^;;
Commented by fanseab at 2007-05-07 21:31 x
ノゾピーさん、超広角での飛翔シーンでは背景をきっちり写しこみたいため、必然的に絞りこみます。するとシャッター速度が不足するので、それを補償するため、ストロボを焚いています。確かに光線の角度によって、とても幻想的な雰囲気になることは確かですね。
Commented by fanseab at 2007-05-07 21:33 x
maedaさん、いつもコメント有難うございます。GX100の使用感についてはまた日を改めて述べたいと思います。とにかく今回は購入してから殆どブッツケ本番での使用で、ちょっと操作に戸惑っていたのが実情です(^^;;
Commented by fanseab at 2007-05-07 21:35 x
chochoensisさん、ありがとうございます。シロモンルリマダラの♀をご覧になったことがあるんですね!!♀は珍品なんで是非どこかで小生も会ってみたいです。
Commented by fanseab at 2007-05-07 21:38 x
kmkurobeさん、コメント有難うございます。ホリシャ飛翔②のシーン、実は合計20頭くらいが群れ飛んでいたんですが、飛翔シーン撮影を始めると群れがバラけて、結局この3頭だけが残ってくれました。
ご親族がベトナムに滞在中・・・、是非おでかけを(笑)
Commented by fanseab at 2007-05-07 21:40 x
BANYANさん、オオクロマダラ①②は同一個体の画像です。②で見えている枯茎に執着している個体がいたので、ファインダーでフォーカスしながらの飛翔撮影が可能で、いつもより歩留まりはよかったですね。
Commented by 虫林 at 2007-05-07 23:02 x
ベトナムの公園内で宿泊して蝶三昧の毎日。憧れの世界です。
苦労して現地まで行ったかいがありましたね。おめでとうございます。
とくに、シロモンルリマダラの綺麗さは言葉を失いました。
はてさて次も夢の世界を見せてください。
Commented by kenken at 2007-05-07 23:05 x
う~む、マダラって、現地ではこんなにおるんですね。
オオクロマダラ飛翔②、こりゃ、まさしく「幻光」って言葉があてはまるような良い輝きです。シロモンルリマダラ、こいつは海外の蝶に疎い私は知りませんでした。翅裏から撮っても最高ですね。
ストロボはまだ初心者の私で、質問ですが、内臓ストロボだと最速シャッタースピードに制限がありますよね。外付けのストロボならマニュアル発光させればシャッタースピードに制限はないわけですかな。
Commented by Celastrina at 2007-05-07 23:37 x
感じのいいゲストハウスですね。
南べトナムかぁ・・・・・いいなぁ・・・・・Euploeaもいいですが、何と言ってもトラップが気になります。
Commented by nomusan at 2007-05-08 12:24 x
う~む、これは堪りませんなぁ・・・。脳みそがとろけそうになるこの紫の幻光が大好きなんですよ~・・・。シロモンルリマダラ、これまたエエですなぁ・・・。う~む・・・。
Commented by fanseab at 2007-05-08 22:38 x
虫林さん、実は滞在中、出発前の疲れが残っていたためか、毎日頭痛に悩まされバッファリンを飲みながらの撮影でした。でも思い通りのショットが撮れると疲れも吹っ飛びますね。
Commented by fanseab at 2007-05-08 22:39 x
kenkenさん、東南アジアに行けばマダラチョウはどこでも飛んでいそうですが、実は地域毎に優先種が異なっていて興味深いんです。因みにこの公園内では、沖縄では普通種のツマムラサキマダラは大珍品でした。ストロボに関するご質問は、記事に追記しておきましたので、そちらを参照願います。
Commented by fanseab at 2007-05-08 22:42 x
Celastrinaさん、コメント有難うございます。↑のゲストハウスは1棟に4室あり、質素ですが、使い勝手はよかったです。ただ川の近くなので、雨季の真っ最中はマラリヤ対策を真剣に考えねばならないでしょうね。トラップはタテハチョウ科をご紹介する時にでもコメントします。
Commented by fanseab at 2007-05-08 22:44 x
nomusan、貴殿もルリマダラファンでしたかぁ?確かに幻光はエエもんですね。シロモンルリマダラ、鈍くさい飛び方の割には極めて敏感で、90mmマクロの射程距離には絶対に接近させてくれませんでした(^^;;
Commented by ダンダラ at 2007-05-09 10:06 x
オオクロマダラの飛翔はどれも素晴らしいですね。
私はストロボ同調はあまり好きではないので、とくに②のような写真を見ると拍手したくなります。素晴らしいですね。
あるがままの姿、これが一番のような気がします。
Commented by fanseab at 2007-05-09 22:16 x
ダンダラさん、過分なコメント恐れ入ります。小生も自然光を基本に撮りたいです。でも、ジャングルの中や薄暮の状況では、どうしてもストロボの助けが要ります。その際、いかにも「ストロボを焚きました」風の絵は嫌いで、ストロボ使用を感じさせない画像を目標に頑張りたいと思っています。
Commented by thecla at 2007-05-13 17:23 x
どれもうっとりするような、ルリ色のマダラ祭りですね。
個人的には、ノンストロボのオオクロマダラの飛翔が好きですが、ストロボを焚いた幻想的なルリ色もいいですね。
デジイチ低価格機種の欠点は、ストロボ同調時のシャッタースピードですが、自然光中心の私には関係ないかなと思っていました。
これを見ると、高級機種も・・・・、やばいレンズ沼につづいてボディ沼が・・・(爆)
Commented by fanseab at 2007-05-13 22:59 x
theclaさん、まいどどうも。ルリマダラが日陰に入って魅せる瑠璃色幻光は素晴らしく、その雰囲気はストロボ使用画像の方が上手く出せるように思います。同調速度は必ずしも高級機が速いとは限りませんよ。NIKONの場合、D40は最低価格機ですが、同調速度はNIKONで最高レベルの1/4000との噂もあります。
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