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探蝶逍遥記

悲しい出来事

恐れていた事態が現実になりました。
 ブログ仲間からモンキチョウ・ベニシジミ等、新羽化成虫の観察報告が続々と届くなか、小生もおっとり刀で神奈川県の多摩川縁を訪れました。ところが、いつもの観察ポイントに着いて「アッ」と声を失ってしまいました。
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ススキの原が忽然と消えていたのです!!

 ギンイチやミヤマチャバネが舞っていた場所は完璧にブルドーザーで更地にされていました。行政が堤防改修工事を進めていくことは、川崎市のニュースで凡そ把握していたつもりでしたが、よりによって、マイポイントを全滅させるとは・・・・。
 ミヤマチャバネ終齢幼虫の頭部を調べていた場所には「関係者以外立ち入り禁止」の看板が寂しく風に揺れています。
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『立ち入り禁止すべき人間はお前ら「関係者」ではないのかっ!』と思わず叫ばずにはおられませんでした。
 多摩川中流域は過去に洪水が決壊して付近の住民が犠牲になった痛ましい過去があります。ですから、「付近の住民の安全を確保するため、堤防の改修を行う」のは、確かに大義ではあります。これに対して「貴重なチョウ類保全のため、堤防の改修を差し止めよ」と叫んでも世論を見方につけられるのか自信はありません。まして、保全の対象が一般人には汚らしい「蛾」に見えてしまうセセリチョウでは、説得も厳しいかもしれません。

 このポイントは昨年9/15付拙ブログでもコメントしたように多摩川の流れを強制的に一本化する工事で最初の打撃を被りました。川の流れが止まった場所からススキ群落が消え、セイタカアワダチソウの繁茂を招き、ススキ群落の分断が起こったのです。乾燥化は数年越しで進行し、残された数少ないススキ群落が今回、ブルドーザーの餌食になってしまいました。まだ、細々とススキが残っていますが、ある程度の密度と面積がないと、少なくともギンイチは棲めないでしょう。今シーズンがこのポイントで舞う、最後の年にならないことを祈るばかりです。

 さて、モンキチョウやベニシジミは確認できなかったものの、ツグミ、ホオジロ、アオジ等、この冬お馴染みになった野鳥は元気に飛び回っており、驚いたことにヒバリが空高く舞って囀りをしておりました。春は確実にやってきています。河川敷の土手にはヒメオドリコソウが可憐な濃ピンクの花弁をつけておりました。いつもは春の息吹を感じさせてくれるこの花、今日ばかりはちょっぴり寂しげに感じられました。
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by fanseab | 2007-02-17 20:03 | | Comments(26)
Commented by banyan10 at 2007-02-17 22:59
うーん、貴重な生息地が消えてしまうのは残念ですね。
できるだけ環境を維持した状態での工事を考えてほしいものです。
Commented by thecla at 2007-02-17 23:26 x
河道の一本化で河原への砂礫供給がされなくなり河原植物が減少、そして外来植物の繁茂というのが、河原のチョウ減少の典型的なかたちのようです。
そういえば、多摩川もハリエンジュばかりになりましたね。
Commented by 虫林 at 2007-02-18 06:35 x
自然の中で河川敷の生物はホントに危ういですね。
市民のためにということで、拙宅の裏の川原は過度に整備されてしまい、以前いた昆虫や鳥達は激減してしまいました。
甲府市内では小生の好きなミヤマシジミのポイントが川原にあって、それほど広くないものですから心配しています。チョウ保全協会の方が県と交渉するという事ですので、その時には力になろうと思っています。
Commented by chochoensis at 2007-02-18 08:03
fanseabさん、折角の観察ポイントが消えてゆく・・・むなしいですね。自宅近くの小さな昆虫が一杯だった河川敷も立派な=遊歩道=や階段、そして護岸工事が行われて、散歩するには良い環境になりましたが、虫は、消えつつあります・・・。それでも時々、オオタカやカワセミを見かけますから、野生動物たちはしたたかに生きているようです、これ以上、いじらないで欲しいです・・・。
Commented by cactuss at 2007-02-18 08:50
定期的に通っている愛着のあるポイントがこの様な状態になるのは悲しいことですね。しかし、昆虫はかなり狭い範囲でも生き続けることができる場合もありますので、希望は失わず、観察を続けて下さい。
Commented by fanseab at 2007-02-18 09:06 x
BANYANさん、まいどどうも。昨日一日はずっと落胆しておりました。
「環境を維持した状態の工事」はとてつもなく、コストがかかることから、事実上、厳しいかもしれません。そこがやりきれないとこでもあります。
Commented by fanseab at 2007-02-18 09:09 x
theclaさん、小生も「保全協会」の会員の末席を汚していますが、やるべきことは山積みですね。栃木のシルビアでも河川改修をすればひとたまりもなく、全滅するのでしょうね。多摩川の場合はせめて、川の流れを計算づくで複数化するとか、生態系にとって優しい方策はあるような気がしますが・・・。
Commented by fanseab at 2007-02-18 09:11 x
虫林さん、貴殿のポイントでもやはり状況は同じですか?ミヤマは特に河川が氾濫するような環境を好みますから、改修工事で全滅の危険性もありますね。ミヤマのポイントを避けた工事方法は必ずあると信じたいです。
Commented by fanseab at 2007-02-18 09:15 x
chochoensisさん、いつもコメント有難うございます。都市近郊の河川に住む昆虫類全般の宿命かもしれないですが、今回の件は本当にガッカリしています。神奈川県某地に住むゴミムシの一種も同様な理由で、絶滅の危機と隣り合わせと聞いています。
Commented by fanseab at 2007-02-18 09:17 x
cactussさん、激励コメント有難うございます。小生もセセリチョウの生命力を信じたいと思っております。ただ、10年以上、継続観察していたポイントがズタズタにされるのは、本当にやりきれない思いです。
Commented by kmkurobe at 2007-02-18 10:12
本当に残念ですね。工事はもちろんですが、ちょっとした気候の変化でブッシュが茂ったりして、河原の環境は本当にシビアです。
白馬も昨年クロツが一頭も確認できなかったのが心配です。
Commented by fanseab at 2007-02-18 12:51 x
kmkurobeさん、コメント有難うございます。とにかく、河原は人間が歩きやすく工事したら駄目ですね。中流域の堤防工事を優先していじくり回すよりは、上流域での保水事業(広葉樹を積極的に植える等)を真面目に考えてほしいです。
Commented by maeda at 2007-02-18 18:29 x
同じような光景を北海道でも見ています。
今のやり方での護岸工事は決して良くないと知っているはずですが、改めようとしませんね。コンクリートだけでなくヤナギを使って堤防を固める方法が良いとされているのですが、いつまで繰り返すつもりか。
大切な生息環境がいとも簡単に壊されます。余りにも悲しいです。
Commented by 6422j-nozomu2 at 2007-02-18 18:49
恐ろしい光景ですね。マイポイント消滅ですか。特に河川敷は開発の波が強そうです。私のシルビアポイントもいつなくなることやら。(涙)
Commented by fanseab at 2007-02-18 20:30 x
maedaさん、北海道だと、河川の護岸工事でドロノキが減って、オオイチが減るパターンとか、内地とはちょっと心配の種が異なりますね。世論がエコ、エコと叫ぶ割には、その内容はちょっぴりお粗末で、生態系をマクロに捉えた施策が実施されるのはいつになるのでしょうか?
Commented by fanseab at 2007-02-18 20:32 x
ノゾピーさん、まいど。マイポイントが消滅したかどうかは現時点でははっきりしません。ただ、激減することは必至でしょう。兵庫県内のシルビアポイントについて言えば、溜池堤防は比較的安泰ですが、河川敷は同様に厳しいでしょうね。
Commented by ダンダラ at 2007-02-18 22:45 x
こんな光景を見せられると本当に腹が立ちますね。
かなりのダメージは避けられないと思いますが、ギンイチに関しては多分周囲のススキなどで何とか生き残るのではないでしょうか。
以前河原の野焼きについて調査したときには、周囲の焼け残りからギンイチが発生して元の範囲に広がっていました。
ここもその後ススキが繁茂すれば5.6年で元に戻ると思いますけど、これだけ整地されると、そこに人が多数入って踏み固められるとかなりきついですね。
Commented by ainomidori443zeph at 2007-02-18 22:50
八王子あたりの浅川や多摩川にも重機が入っています。
成虫の活動期なら逃げようもあるのでしょうが、冬眠中では・・・・・。
私にはどうにも出来ないのが残念です。
Commented by fanseab at 2007-02-18 22:55 x
ダンダラさん、貴殿がかつて観察されていたポイントもかなり整地が進んで厳しいですね。ご指摘のように、しぶとく生き残ってほしいと願うものです。元に戻すのに大変な時間がかかるとは思います。
Commented by fanseab at 2007-02-18 22:56 x
愛野緑さん、コメント有難うございます。
次第次第に上流側にも重機が入っているのですね。そう、冬眠中なんで、そこがやるせないです。本当に個人ではどうすることもできません。
Commented by kenken at 2007-02-18 23:40 x
うむむ・・・コメントのしようがありませんね。
河川改修の必要性との利益衡量になるのでしょうが、あまりにも悲しい光景です。
Commented by fanseab at 2007-02-19 07:56 x
kenkenさん、本当はマイポイント画像を公開したくなかったんですが、敢えてご紹介しました。類似した事例は数多いようです。何とかしたいものですね。
Commented by 蝶遊斎 at 2007-02-19 10:21 x
困ったものですね。一昔前はブルやショベルなどの重機が無かったので人力での工事でした。それで完成までには2~3年はかかっていましたので小動物や昆虫は逃げる(難を避ける)暇があったのですが、、、。
今はアッと言う間です。
Commented by fanseab at 2007-02-19 21:43 x
蝶遊斎さん、拙ブログへようこそいらっしゃいませ。仰る通り、重機類の工事はあっという間に環境が一変しますね。その昔、武田信玄が笛吹川の治水工事をじっくりと石垣を積む工法で完成させ、その石垣にツメレンゲが育ち、結果、クロツを育んだ事例を何とか現代でも参考にして欲しいです。
Commented by nomusan at 2007-02-20 22:21 x
う~ん・・・・何ともkメントのしようがありません・・・。
皆さまの仰るように、蝶たちが残った環境で逞しく生き延びてくれるのを祈るだけですね~・・・。
Commented by fanseab at 2007-02-20 23:31 x
nomusan、今回の記事に対し、いかに皆さんが心配されているかが、よくわかりました。いずれの地方でも河川周辺に棲む蝶達をいつまでも守ってあげたいですね。筑後川あたりでも畔のヤナギが切り倒されて、コムラサキが激減するようなことのないように祈りたいものです。
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