探蝶逍遥記

香港遠征(10/6-9):その1

 10/6の年休取得、10/9の休日利用で、3泊4日の香港遠征が実現できました。小生にとって、香港は2度目の遠征。2年前はタムロン90mmの絞込み動作不良でデジ一眼画像の大半が没になる憂き目にあったため、今回は撮り直し+αが目的です。前回同様、今回も香港鱗翅学会会長さんにお世話頂き、一定の成果を出すことができました。そこで3~4回に分けて香港の蝶をご紹介したいと思います。

 初日(10/7)は新界地区東南部にある馬鞍山(マーオンシャン:標高702m)の尾根筋にヒルトッピングして来る蝶狙い。山名の由来通り、馬の鞍に似た急峻な山です。
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小生が「今日は初日だし、とても山頂まで登る自信ないんですが・・・」と不安混じりに切り出すと、会長氏(↑の写真の人物)曰く「大丈夫、大丈夫、中腹までだから・・・」と安心させてくれました。しかし、この言葉を素直に信じた小生が反省することに。。。

 登山口を登りはじめると、早速ルリモンアゲハ(Papilio paris)が林道を横切っていきます。整備された林道が途切れると、突然、直登に近い急峻な登り。途中数箇所、鎖場ならぬロープを頼って必死によじ登ること1時間半、ヘトヘトになって目的のポイントに到着。麓から吹き上げる風が心地よく、ツマベニチョウやアオスジアゲハが尾根筋を駆け抜けていきます。まずは上昇気流に乗るツマベニ飛翔のロングショット。紺碧の空に浮かぶオレンジチップはいつ見ても鮮やかです。
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D70(トリミング), ISO=640, F13-1/1250、-0.7EV

 さて、ヒルトッピングしてくる蝶の主役はシロミスジの仲間(Athyma属)です。日本のイチモンジチョウに比較してはるかに俊敏で、テリ張りゾーンに侵入してくるライバルを追い散らすシーンは迫力があります。その代表はメスグロミスジ(Atyhma nefte)♂。前翅先端のオレンジ班が印象的です。相手を威嚇するかのように触覚を前方に突き出した占有ポーズはタテハならではの凛々しさ。東南アジアに広く分布する普通種ですが、小生初撮影で大喜び。山登りの苦労も報われた感じです。
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D70S-VR84@400mm, ISO=400, F11-1/320、撮影時刻:12時14分

 これと混飛していたのが、ランガシロミスジ(A.ranga)♂。閉翅での裏面は日本のゴマダラチョウそっくり。
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D70S-VR84@400mm, ISO=500, F9-1/400、+0.3EV
 メスグロ、ランガの迎撃相手は、同じ仲間以外にモンキアゲハ、アオスジアゲハ、メスアカムラサキ♂、ツマグロヒョウモン♂、ヤクシマルリシジミ、ツマベニチョウと賑やかなものでした。

 シロミスジ同様、強くテリを主張していたのが、チビフタオチョウ(Polyura athamas)。薄黄色の帯状紋が飛翔中はピカピカ光ります。テリ位置はAthyma属より高い枝先を好むようです。
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D70S-VR84@400mm, ISO=500, F9-1/800、-0.3EV

 テリを張るのはタテハばかりではありません。文字通りイチジク類を食樹とするイチジクシジミ(Iraota timoleon)もそうです。前回の遠征では超ボロ品の撮影しかできませんでしたが、今回はやや良好な個体をゲット。幸運にもメスグロミスジとのツーショットが撮れました。テリを張る者同士がこれほどまでに至近距離でカメラに収まるのも珍しいことだと思います。
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D70S-VR84@400mm, ISO=500, F11-1/320、-0.3EV

 相手を迎撃しながら、何回かテリ位置を変えたイチジクシジミ。突然開翅するではありませんか?「ヤッター!」慌ててカメラを向けての撮影。相手を見上げる角度のため、表翅全体を写しこめませんでしたが、後翅の瑠璃色ははっきりと撮影できてヤレヤレです。もう少し接近したいものの、撮影ポイントは痩せ尾根の上。転落したら命がないので、400mmズームの威力が発揮されるシーンではありました。
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D70S-VR84@400mm, ISO=500, F9-1/800、+0.3EV

 ひとしきり撮影を終えるとあっという間に正午を過ぎていました。菓子パンを1個齧り、水で流し込む昼食で一息つくと、急に尾根筋登攀の疲れがドッと出てきました。時間的に新規に飛来してくる蝶も少なそうなので、下山です。しかし、どんな山でもそうですが、登りに比較して下りは厳しい!足元が滑りやすい踏み跡に注意しながら必死の思いでの下山です。標高差合計1000m超の登山は最近していなかったので、最後は膝が笑ってしまいました。下山した後で会長氏曰く、「実は香港の蝶観察ポイントの中でもアプローチの難易度は1,2を争う・・・」早くそれを先に言ってほしかった~(涙)。

 下山して麓の売店で冷えたクリームソーダを飲み干すと、不思議なものでまた撮影意欲が涌いてきました。「チネンシスカニアシシジミ(Miletus chinensis)の観察ポイントに行くか?」との提案にすぐに乗り、車で数分のポイントに。香港では珍品の部類で「個体数も少ないから期待しないように・・・」と釘を刺されましたが、着いてみると、早速ススキと思われる繁みから1頭の暗赤灰色のシジミが飛び立ちます。暗い環境が好きなシジミなので、自然光で撮影できる場所に止まるのを待つまで時間がかかりました。
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D70, ISO=500, F6.3-1/500、+0.3EV、撮影時刻:15時21分

 通常、アシナガシジミグループの裏面は複雑な線状紋を持ちますが、本種はボンヤリとした斑紋で目立たない印象です。一方で緑色に光る複眼が神秘的。この後、会長氏はしきりにススキ周辺をガサゴソ探索。「面白いものが見つかったから来い!」と会長さん。指差す先にはカニアシシジミの亜終令幼虫が。幼虫の周辺には彼らの餌となる、アブラムシの幼虫がびっしり。そのまた周囲にはアブラムシの成虫とこれから蜜をもらう蟻の姿も。日本のゴイシシジミ同様、肉食シジミの生活史はよく似ています。
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D70(トリミング), ISO=500, F9-1/30、内蔵ストロボ

 夕方5時過ぎ撤収。ホテルに帰ってシャワーを浴びたらバタンキュー状態でした。次回は、台湾からの蝶屋さんとの合同撮影会の様子等をご紹介したいと思います。
by fanseab | 2006-10-12 21:44 | | Comments(18)
Commented by kenken at 2006-10-12 22:05 x
うおおおぉ~ 「FANSEAB」さんのHNに相応しい遠征ではないですかっ!パワーありますねぇ。
VR-400mmの威力が素晴らしく発揮された絵の数々、最高です。
イチジクシジミっていうんだ、これえぇ蝶ですね。私好みの1枚です。
Commented by 虫林 at 2006-10-12 22:09 x
香港遠征、いいですね~
小生は2度ほど香港に行った事がありますが、その時は残念ながら蝶の写真にはまっていなかった時で、町の中ばかりいました。香港にもこんなに素晴らしい自然が残っていたとは、そして綺麗なチョウたちが住んでいたとは知りませんでした。うーむ、もったいない事をした。
後悔、先にたたずです。
イチジクシジミの開翅いいですね。なにかfanseabさんのキリシマシジミに通じるドキッとする魅力をもった蝶ですね。おめでとうございました。
Commented by maeda at 2006-10-13 08:50 x
東南アジアに2回行きましたが、当時の雰囲気を思い出してきました。
今なら狂ったように撮りまくっているでしょうね。
いろいろな写真を楽しみにしています。
Commented by fanseab at 2006-10-13 20:35 x
kenkenさん、こんばんは。香港には貴殿のお好みのシジミが沢山いますよ〜。ただ気温が高目のせいか、概して開しシーンの難易度は日本での撮影に比べ高いようです。イチジクシジミのようにテリを張る蝶は例外ですね。
Commented by fanseab at 2006-10-13 20:46 x
虫林さん、皆さんが描く香港のイメージはグルメ・ショッピング・ビジネス拠点といったインドアライフですが実は大変豊かな蝶相を誇っています。狭い島に250種の蝶がいるなんて、小生も信じられませんでした。
Commented by fanseab at 2006-10-13 21:02 x
maedaさん、香港は旧北区と東洋熱帯区の蝶が微妙に入り混じっているのが魅力です。ベニモンアゲハとナミアゲハが混飛している場所はどこにでもあるものではありません。今行かれたら、猛烈な撮影意欲が湧かれると思います。
Commented by cactuss at 2006-10-13 21:56
はじめまして。見たことのないきれいな蝶が並んでいて、すばらしいですね。香港に250種も蝶がいるとは知りませんでした。次回を楽しみにしています。
Commented by 6422j-nozomu2 at 2006-10-14 00:14
fanseabさんの場合、遠征は日本ではないので驚きです。お疲れになったことでしょう。普通、香港と言うと、高層ビルが林立する大都会をイメージしますが、なかなか面白い蝶フィールドがあるのですね。少し意外でした。フタオチョウに良く似たチビフタオチョウ。全開すると気絶するほど美しいであろうイチジクシジミ等目の保養をさせていただきました。まだまだ続編があると言うことですので、楽しみでーす。
Commented by fanseab at 2006-10-14 10:47 x
catussさん、拙ブログにお立ち寄り頂き有難うございます。こちらこそはじめまして。南アジアの蝶の美しさを少しでもお楽しみ頂けたらと思います。早速、貴ブログも訪問させて頂きました。小生好みの幼生期の写真が豊富に掲載されているので大変参考になります。リンクさせて頂きました。今後とも、よろしくお願いいたします。
Commented by fanseab at 2006-10-14 10:50 x
ノゾピーさんまいどです。通常の海外遠征では登山はしないので、今回はさすがに疲れました。日本からのアクセス時間を考えると、八重山群島に行くのとさして変りがないのが香港のメリットです。鳥見をするにも
いろいろとスポットがあって、バーダーの方も多いんですよ。
Commented by furu at 2006-10-14 12:08 x
香港にもこんなに自然度の高い良いフィールドがあるんですね。「将来行きたい場所リスト」に加えさせて頂きます。
チネンシスカニアシシジミが渋くて好みです。
Commented by thecla at 2006-10-14 17:25 x
香港でもこんなハードな山歩き、じゃなくてチョウ撮影が出来るんですね。
イチジクシジミのチラリと見える表の輝きが南国の雰囲気が出ていて好きです。
普通種でもいいから撮影してみたいですね。ところで香港は真冬でもチョウの姿は見れるのでしょうか。
Commented by banyan10 at 2006-10-14 17:49
いやー、久しぶりに海外の遠征記ですね。
知らない蝶ばかりが登場するのも新鮮です。
どの蝶も魅力ありますね。誰も書いてないメスグロミスジも日本にはいない鮮やかなミスジでいいですね。
Commented by fanseab at 2006-10-14 20:09 x
furuさん、そう、香港に自然を楽しむフィールドがあるとは意外に知られていないんです。「将来いきたい・・」ではなく、是非行かれてfuruさんワールドの絵を拝見したいです。カニアシシジミの美しさに惚れたfuruさんは「東南アジアの蝶ファン倶楽部」の立派な正会員ですね(^^)
Commented by fanseab at 2006-10-14 20:16 x
theclaさん、まいど。普段山歩きをされている方なら、さほどハードではないと思いますよ。小生は前の晩の寝不足もあってきつかったです(^^;; イチジクシジミとは正反対に橙色に輝くヒイロシジミっていうのもいるんですが、こいつには出会えませんでした。
<香港は真冬でもチョウの姿は見れるのでしょうか。
はい、セセリの数は減りますが、十分楽しめます。逆にマダラチョウの集団越冬シーンは真冬でないと観察できません。
Commented by fanseab at 2006-10-14 20:19 x
BANYANさん、いつもコメント有難うございます。メスグロミスジ格好いいでしょ。このタテハ、ヤエヤマイチモンジの仲間で♂♀異型でして、♀はミスジ紋が橙色なんです。ですから「メスアカミスジ」の和名がなんでつけられなかったか?不思議なんです。
Commented by nomusan at 2006-10-17 21:02 x
すっかり出遅れてしまいました(大汗)。香港ってそんなに種類いるんですね? 20数年前、会社の研修旅行で一回だけ行ったことあるのですが、ほとんど自由行動が無く、あまり蝶を見た印象がなかったので、驚きです。ゆっくり楽しませて頂きます。
Commented by fanseab at 2006-10-18 07:18 x
nomusan、貴殿も香港の蝶相の豊かさには驚かれたことと思います。↑のコメントで書いた種類数はちょっと水増しした数で実際には230種類と言われています。会社の研修旅行だと、フリータイムもナイトライフ中心になったかと思いますが、半日でもあれば昼の蝶探しも健康的でええもんですよ(^^)
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