探蝶逍遥記

ヒメジャノメの飼育メモ(越冬幼虫)

 昨年秋~今年春先にかけて、「想定外の」ヒメジャノメ飼育を実施しました。何故『想定外』だったかは後述します。昨年の9月末、栃木県のオオヒカゲポイントで、カサスゲ葉上に付いていたジャノメチョウ亜科の幼虫を2頭発見。オオヒカゲは産卵時期でしたので、幼虫はオオヒカゲではなく、ヒメジャノメでした。スゲ類に付いていたヒメジャノメ幼虫は初体験。拙宅に持ち帰り、越冬飼育をトライすることに。ヒメジャノメについては、以前、2014年12月の記事(外部リンク)でフルステージ飼育をご紹介したことがあります。
 眠に入った幼虫2頭の全景です。

+++画像はクリックで拡大されます(モニター環境に依存)+++
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D71K-85VR(トリミング),ISO=100、F10-1/250、-1.0EV、外部ストロボ、撮影年月日:2016年10月1日

 上の個体(識別コード:#A)は恐らく3齢で体長13.5mm。一方、下(同#B)は2齢で体長9mm。個体A.B共に10月2日に脱皮し、Aは褐色型4齢(Bは緑色型3齢)になりました。
個体Aの全景です。
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D71K-85VR(2コマ深度合成+トリミング),ISO=100、F10-1/250、-1.0EV、外部ストロボ、撮影年月日:2016年10月4日

 体長は15mm。ヒメジャノメの褐色型幼虫を見るのはこれが初めて。第3・4腹節境界亜背面の黒班(矢印)が顕著に目立ち、濃褐色の背線も顕著で、緑色型幼虫とはかなり雰囲気が異なります。なお、飼育にあたり、スゲ類を拙宅近辺から入手するのが困難だったので、イネ科各植物を与えてみました。結構好き嫌い無く食ってくれたので、助かりました。具体的には個体Aに対し、チカラシバに似たイネ科(同定できず)を、個体Bには、当初アザマネザサ、その後はチヂミザサを与えてみました。
 個体Bは10月14日に褐色型4齢へ。チヂミザサ葉上に静止する個体Bです。体長は18mm。
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D71K-85VR(トリミング),ISO=100、F10-1/250、-1.0EV、外部ストロボ、撮影年月日:2016年10月31日

 葉先に頭を向け、葉柄に近い部分を斜めに切り落とす食痕も見えます。一方、個体Aは10月24日に5齢へ。
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D71K-85VR(上段4コマ/下段2コマ深度合成+トリミング),ISO=100、F10-1/250、-1.0EV、外部ストロボ、撮影年月日:2016年10月31日

 体長は20mm。4齢と比較して体色は殆ど変りませんが、亜背面の黒班は目立たなくなりました。個体Bは12日遅れの11月5日に5齢へ。個体AB共に5齢で越冬態勢に入りました。図鑑には『越冬の齢数は主として4齢(※)』と書かれています。ただ越冬齢数は越冬環境等で多少の変動はあるのでしょう。越冬管理方法としては、冷蔵庫保管が最も簡便だと思いますけど、今回は10月下旬から飼育プラケースを夜間のみ屋外放置、日中は屋内の冷暗箇所に置く・・・、やや手間のかかる方法を採用してみました。日毎にプラケース内の糞数をカウントしてみると、個体AB共に12月10日前後から糞数がほぼゼロとなり、越冬態勢に入りました。越冬時の幼虫画像は撮影を失念しましたが、全体に体色が淡くなり、メタボ体型に変化し、体をS字状に曲げて静止しております。

 年が明けて3月16日、個体Aのプラケースを開けてみると、何と糞が3個。いつ食ったのか不明なものの、どうやら枯草を食べた様子。多少気温が上がった場合に一時的に休眠から覚めるようです。個体Aは3月29日に死亡。それまで飼育に用いたチカラシバ類似のイネ科新芽が出るのが遅く、早めに休眠から覚醒した個体が餓死してしまったのでした。一方、個体Bは4月3日に活動再開。チヂミザサの新芽が開いていないので、チカラシバ類似のイネ科を食わせました。4月5日~11日にかけては所用で観察できませんでしたが、この間の糞数は91個。一日当たり平均13個に相当。4月12日よりホストを再びチヂミザサに変更。4月15日に終齢(6齢)に到達。
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EM12-Z60(自動深度合成+トリミング),ISO=200、F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影年月日:2017年4月17日

 体長は27mm。体色が褐色から淡い緑色に変化しました。5齢時に見られた亜背線の黒班も完全に消えています。数日経過すると、体色は鮮やかな緑色に変わりました。
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EM12-Z60(自動深度合成+トリミング),ISO=200、F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影年月日:2017年4月21日

 体長は32mm。なお、上段の画像撮影時に頭部が動いてしまい、当該部の深度合成が破綻して見苦しくなっている点はご勘弁下さい。6齢時は写真のように、チヂミザサの茎分岐部に常時静止し、ここを基点に葉を食べに行きます。
 ここで、4~6齢の頭部の比較をしてみました。
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 静止中の幼虫は頭部を深く前傾しているため、頭部を真正面から写すのは結構難しく、脱皮した頭殻を撮影した方が容易です。ここでは6齢のみ頭部を撮影したものの、やはり真正面画像にはなっていません。先に紹介した図鑑(※)には、『越冬幼虫の頭部の突起は非越冬幼虫のものよりも太く短い』との記述があります。4齢と5齢の頭殻を比較してみると、確かに「猫の耳」が太短くなっています。そして6齢時に再び耳がちょっと伸びているようにも見えます。
 
 4月30日に前蛹。
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EM12-Z60(自動深度合成+トリミング),ISO=200、F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影年月日:2017年5月1日

 体長19mm。前蛹を撮影した5月1日に蛹化。
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EM12-Z60(自動深度合成+トリミング),ISO=200、F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影年月日:2017年5月3日

 体長は16mm。緑色型です。5月12日には翅部分が黒化してきました。
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EM12-Z60(自動深度合成+トリミング),ISO=200、F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影年月日:2017年5月12日

 翌5月13日の朝、無事♂が羽化しました。
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EM12-Z60(自動深度合成+トリミング),ISO=200、F5.6-1/50、外部ストロボ、撮影年月日:2017年5月13日

 前翅長25mm。羽化直の眼状紋は何遍見ても、綺麗ですね! 羽化直だと、♂のシンボル、後翅裏面中室上側の太い翅脈もハッキリとしています。
 今回、実は恥ずかしながら蝶が羽化するまで、飼育幼虫を「クロヒカゲ」だと思い込んでいました。終齢幼虫の細長い体型や、蛹の体型を見た瞬間にLetheではなく、Mycalesisだと気づかねばなりませんが、思い込みで勘違いを起こしました。当初採幼したポイントが暗い環境で、クロヒカゲにピッタリと思えたこと、それとクロヒカゲの飼育が未経験であったため、飼育した~い願望が募ったことも相まって、思わぬ思い込みをしたのでした。それでもこれまで未経験の越冬世代ヒメジャノメの飼育が経験でき、色々と勉強できたことは幸いでした。
※福田晴夫ほか(1984) 原色日本蝶類生態図鑑(Ⅳ).保育社,大阪, 141pp.
by fanseab | 2017-06-18 20:53 | | Comments(4)
Commented by clossiana at 2017-06-21 15:55


想定外とは、そういうことでしたか。。実はこの記事を読ませて頂いて「はっ!」とさせられました。と言いますのは私は同じカサスゲで初春に見た幼虫をオオヒカゲの1齢幼虫だと誤認していたようなのです。その幼虫は、この幼虫とそっくりだったのです。(拙ブログ2016年3月18日付け)ですので近いうちに訂正しておきます。でもfanseabさんのような方でも間違うのですから小生の如きが間違ったとしても何の不思議もなく慰められました。
Commented by Sippo5655 at 2017-06-21 21:20
羽化直後のヒメジャノメ、はっとさせられるほどの美しさを放っていますね!
特にギザギザの模様が印象的でした。
思わず手持ちのヒメジャノメの画像と見比べてしまいました^^;
前蛹の姿がなんとも愛らしいです(*´∇`*)
Commented by fanseab at 2017-06-21 21:49 x
clossianaさん、実は小生もこの幼虫、オオヒカゲならいいのに・・・と思って
いたのです。その後、オオヒカゲでないのなら、クロヒカゲ。。。と勝手にまた
間違えていて恥ずかしい限りです。あそこの生息地は恐らくクロヒカゲも飛んで
いるはずですが、ヒカゲスゲに産むかは検討事項でしょうね。
Commented by fanseab at 2017-06-21 21:51 x
Sippo5655さん、飼育をすると、羽化直の姿が何と美しいのだろうと
再認識します。普段見慣れている蝶でも、羽化直の姿を見ると、普段は
見過ごしている蝶の美点に気付かされることが多いのです。
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