探蝶逍遥記

コチャバネセセリ終齢幼虫の越冬準備

 8月下旬に山梨の高原でスジボソヤマキチョウ等を撮影した帰路、いつも立ち寄るクマザサ群落を訪れてみました。このポイントでは例年、8月下旬~9月にかけて、僅か5m四方の一角にコチャバネセセリの終齢幼虫が10頭以上確認できます。言わば、コチャバネのホットスポット。今回も相当数の巣を発見。

+++画像は原則クリックで拡大されます(モニター環境に依存)+++
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TG4@5.5mm,ISO=100、F2.3-1/60、-1.0EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:14時09分

 別の巣を開封した状況です。
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TG4@5.5mm,ISO=100、F2.3-1/30、-1.0EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:14時06分

 丸々と太った幼虫が入っています。2頭をお持ちかえりし、拙宅で飼育を実施。拙宅近くにクマザサがないので、代用食としてメダケとオカメザサの2種を準備し、幼虫に与えたところ、メダケは全く見向きもせず、以後オカメザサで飼育を継続。終齢(5齢)幼虫の全景です。
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TG4@18mm(自動深度合成+トリミング),ISO=100、F3.8~4.9-1/100~1/60、内蔵ストロボ、撮影時刻:9時55分

 全長23.5mm。背線はやや濃い緑色。気門線は白色で頭部はほぼ漆黒。次に頭部正面の拡大像です。
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TG4@18mm(自動深度合成+トリミング),ISO=100、F4.9-1/100、内蔵ストロボ、撮影時刻:9時48分

 頭部には模様が全くなく、面白みに欠けます。幼虫は葉を食い尽くすと随時、新しい葉に移動し、葉を折り畳んで巣を造ります。造巣中の終齢幼虫です。
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D71K-1855改@24mm(トリミング),ISO=100、F10-1/250、-1.0EV、内蔵ストロボ、撮影時刻9時21分(9月上旬) 

 頭部を左右に振りながら吐糸を繰り返し、気長に造巣していきます。前胸部背面(頭部のすぐ後ろ)に黒色リングがあるのが、本種終齢幼虫の最大の特徴。まるで黒いネックレスを付けているようですね。
 終齢幼虫は個体#2が8月30日、個体#1は9月2日に越冬巣を形成しました。
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D71K-85VR(トリミング),ISO=100、上段F10(下段F8)-1/250、上段-1.0EV(下段-0.3EV)、外部ストロボ、撮影時刻10時15分(9月上旬) 

 巣全長は#1で35mm、#2は39mm。中脈から葉を上手にピッタリ折り畳み、内部より隙間なく吐糸して周囲を閉じ込んでいます。#1の巣を白矢印方向から見込んだ絵がこちら。
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D71K-85VR(6コマ深度合成+トリミング),ISO=100、F8-1/250、-0.3EV、外部ストロボ、撮影時刻10時11分(9月上旬) 

 いつも参考にしている保育社の図鑑(※)には下記のような記載があります。
『巣が完成すると中脈を食い切って巣を地上に落下させる。(中略)地上に落下したあと老熟幼虫は巣から前半身をのり出し、巣を引きずって這いまわる・・・』
 まるで、ウラキンシジミの老熟幼虫が食樹のトネリコの葉を食い切って地表に降下する(所謂ウラキンパラシュート)習性とそっくりです。但し、今回の飼育では2頭共に中脈を食い切ることはなく、そのまま吐糸して巣を封じ切りました。管理人の蝶飼育経験は乏しいものですが、本図鑑記載と異なる挙動を示す事例は数多くあります。図鑑はあくまで「道しるべ」であって、記載された文言全てを盲信してはいけないと自戒しております。
※福田晴夫ほか,1984.原色日本蝶類生態図鑑(Ⅳ).保育社,大阪

 さて、越冬巣内の老熟幼虫は越冬後、翌春摂食することなく蛹化し、羽化する習性があります。日本のセセリチョウでは、コチャバネを除けばミヤマセセリ、ギンイチモンジセセリなど旧北区系の種に見られる特殊な越冬態様。従って飼育での最大のポイントは「人工的に越冬環境をどこまで実現できるか?」に尽きます。実は昨年もコチャバネ幼虫の越冬実験にトライし、見事失敗してしまいました。反省点としては幼虫周辺環境が湿度過多になったこと。そこで、今回は下記の方法をトライしてみることに。
 先ず越冬容器の準備です。
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TG4@4.5mm(トリミング),ISO=200、F2-1/40、-0.7EV、内蔵ストロボ

 百均で①台所の生ゴミ回収トラップ(画面左)と、②プラ製植木鉢(同右)を購入。植木鉢の底には鉢植用底石と川砂を鉢の高さ半分ほど敷き詰めます。
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TG4@4.5mm(トリミング),ISO=100、F2-1/30、-0.7EV、内蔵ストロボ

 ①には電子レンジで消毒したオカメザサの葉を敷詰め、越冬巣(黄矢印)を入れ、更にその上をオカメザサの葉で覆います。①の底面は鉢に入れた(底石+砂)と直接接触しないよう、ある程度の空間を持たせました。次に①を②の上に置き、これをナイロンストッキングでカバーした後、洗濯用ネットで一体化し、拙宅北側軒先に吊るし下げました。
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TG4@4.5mm(トリミング),ISO=200、F2-1/1250、-0.7EV、内蔵ストロボ

 植木鉢の底面は地上高90cmほど。昨年の反省から湿度過多防止目的で、風通しの良さを優先させた配置としました。これだと逆に乾燥過多になる可能性もあるので、時折、如雨露で水差しする計画です。果たして首尾よく越冬が成功するか、春まで上手く越冬できれば、また顛末記事でご紹介します。もちろん、意気揚々と記事が書けることを期待しているのですが・・・。
by fanseab | 2016-10-30 15:02 | | Comments(6)
Commented by himeoo27 at 2016-10-30 18:51
自宅でチョウの幼虫飼育をしたことがありませんが
越冬となるとかなり難易度が高いということが↑の
文章で良くわかりました。
Commented by fanseab at 2016-10-31 22:07 x
himeooさん、越冬を伴う飼育で一番簡単なのが卵越冬のゼフ類です。
難易度の低い種類として蛹越冬がこれに次ぎ、最も難易度の高いのが
幼虫越冬だと個人的に思っています。飼育のノウハウは試行錯誤で身につけて
いくもので、失敗を重ねながら成功に辿り着くと大変嬉しいものです。
Commented by Sippo5655 at 2016-11-01 21:56
うわあ、すごい準備万端ですね!!
上手くいくと良いですね!
越冬巣、こんな感じの葉っぱ
私も見かけた記憶が、、
今度コチャバネの生息域に行く際は
気をつけて観察してみます!
Commented by clossiana at 2016-11-02 17:38

図鑑の記載には無理があるように思えます。もし幼虫が越冬巣の葉の両端を閉じるとすれば、
幼虫がそこから顔を出して葉の中脈を噛み切ることは出来ません。
もし幼虫が中脈を噛み切るのだとすれば巣の一方は開いたままで落下して、閉じるのは葉の落下後ということになります。
そうではなくて葉の両端を閉じた後で葉は風などに吹かれたり雪が積もったりして自然に落ちるのだと思っています。
例えばダイミョウなどはヤマノイモの葉で蛹化しますが、やがて葉が枯れて風などに吹き飛ばされます。それと同じなのではないかと考えています。
Commented by fanseab at 2016-11-03 21:54 x
Sippo5655さん、これが本当に「準備万端」だったかは、
来年春になって、まずはきちんと蛹化し羽化してくれた後に
なって初めてわかります。コチャバネの巣の形はササ類の葉の
大きさによって多少異なりますが、概ね傾向があって、特徴を
つかめば発見は容易です。
Commented by fanseab at 2016-11-03 22:00 x
clossianaさん、ご指摘のように巣の方端を一旦閉じてから、中脈を食いきって
落下し、落下後、ヤドカリのように巣を引きづって移動します。ブログ仲間の
tef_tefさんが野外飼育実験で実際に確認されています。小生コメントの
「fanseab」をクリックして頂くと、tef_tefさんの該当記事にジャンプします。
もちろん自然界でも小生飼育個体のように中脈を切らずに越冬する個体も
あるかもしれません。その際は確かに風や雪などで自然に地表面に落ちる可能性
も否定できません。
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