探蝶逍遥記

アオフタスジアゲハ(仮称)

 5月上旬~中旬にかけて複数のアオスジアゲハを撮影しておりました。そのうちの一個体をパソコン上で現像している際、「おやっ!」と思う個体に目が釘付けになりました。それがこの画像。

+++横位置画像はクリックで拡大されます+++
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D71K-85VR,ISO=100、F7.1-1/1000、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時06分(5月中旬)

 一見、何の変哲もないアオスジのハルジオン吸蜜シーンです。事実、管理人も撮影中は♂♀区別以外は特に注意も払わないでおりました。「おやっ!」と思ったのは前翅亜外縁に並ぶ白点列。「アオスジって、こんなに明瞭な点列があったっけ?」・・・。そう思い、いつも参考にしている学研の標準図鑑をチェックしてみました。26頁記載の画像[7-1]~[7-13]いずれの標本も裏面表示がなく、直接確認できませんが、上記点列はさほど明瞭ではありません。そこで、管理人が5月に撮影した3♀1♂合計4個体を比較してみました。
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D71K-85VR/34VR(トリミング)、撮影は5月中・下旬

 斑点列の発達具合に従って、それぞれ「グレードA~C」に区分してみました。今回提示「グレードA」個体は第4室まで明瞭な白色点列が出現し、第5室を飛ばして第6室にも微かに白色斑点が確認できます。経験上、よく見かけるのは、BおよびCもしくは♂個体で例示したレベル(第2・3室まで淡い白色班が出現)でしょうね。因みにグレードB個体に再度着目下さい。亜外縁班列は通常レベルですが、ハンキュウ型過剰斑(矢印)個体でもありました。さて、上記「グレードA」個体の表翅も撮っています。
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D71K-85VR(トリミング),ISO=160、F7.1-1/1000、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時07分(5月中旬)

 少し見難いですが、表翅にも裏面に呼応した点列があり、表翅は白色ではなく中央青色帯同様の青白色を帯びております。通常個体では、後翅表亜外縁には青色班列が並んでいるので、この班列が前翅まで伸び、まるで「青筋」が2列並んだような様相を呈しているのです。そこで、管理人は今回の異常個体に仮称:アオフタスジアゲハを献名したいのです。「フタスジアオスジアゲハ」でも良かったのですが、ちょっとくどい気がしたので・・・・。
 ところで、アオスジアゲハの異常個体としては、既に触れたハンキュウ型・エサキ型等々、過剰斑紋が一般的に有名です。これについては、下記サイトをご覧下さい。

アオスジアゲハの変異・異常型一覧(外部リンク)
 
 この一覧には驚くほど多数の変異・異常型が掲載されておりますが、この頁の4・5段目にある、①「ウスズミ型♀裏面(長崎県採集)」と②「エサキ型♀裏面(大阪府採集)」の画像にご注目下さい。なんと、当該外縁紋列が①では、第7室まで、②でも第6室そして一室飛ばして第8室にまで、きちんと伸びているではないですか!両個体は、管理人が今回提案した「グレードA」を超える、『グレードAA』レベルの個体。うーん、上には上がいるもんですねぇ~!

 ところで、世界には、もっと凄いレベルの個体がいるのですよ。ご存じの通り、アオスジアゲハ(Graphium sarpedon)は東南アジア各地に棲む広域分布種です。その仲間、パプアニューギニア東部・ソロモン群島に棲む「イサンデルタイマイ(仮称):G.isander」は、将に今回管理人が提案した、「アオフタスジアゲハ」そのものズバリの顔付きをしております。下記サイトをご覧下さい。

日本蝶類学会ブログ(外部リンク):アオスジアゲハとその近縁種(その1)

 ご覧の通り、第7室まで、きちんと青紋列が伸びております。中央青色帯が種sarpedonよりも細いので、亜外縁青紋列がより強調される感じですね。それと明確な「ハンキュウ型」個体でもあります。但しisanderにおいては、これは過剰紋ではなく、常時出現するのでしょう。
 上記ブログにも書かれている通り、昔はsarpedonのソロモン諸島亜種isander扱いだったものが、最新の交尾器再検証・DNA解析で独立種に昇格した経緯があります(参考文献※1)。
 ついでに、手持ちの塚田図鑑(参考文献※2)で種sarpedonの図版を眺めてみると、残念ながら当時亜種扱いのisanderについて、標本図示はありません。代わりに注目すべきは、当時塚田&西山が記載したスラウェシ中央部亜種textrixの図版(Plate141-6♂)です。この子の雰囲気はisanderそっくりで、前翅亜外縁青白班は、第7室まで延びており、isander同様、「グレードAAA」級品と言っていいでしょう。因みにtextrixは上記文献※1で同様にrevisionを受け、G.antheon monticolus(Fruhstorfer,1888)とタクサが変わりました。

 さて最近、東京オリンピックのエンブレム問題でグーグル画像検索の凄さが改めて話題に上りました。で、管理人もググって「グレードA超え」品を確認してみました。すると・・・、やっぱりありました。crysozephさん(外部リンクが撮られた5枚目の画像は、「グレードAA級」ですね。
 読者の皆さんも、一度ご自分のアオスジ過去撮影画像をチェックしてみることをお勧めします。案外、種isanderレベルの「グレードAAA級大珍品」が記録メディアに眠っているかもしれませんよ!

<参考文献>
※1 M.G.P.Page and C.G.Treadaway,2013. Stuttgarter Beiträge zur Naturkunde A,Neue Serie 6:223-246.
※2 塚田悦造・西山保典,1980.図鑑東南アジア島嶼の蝶、第1巻アゲハチョウ編、プラパック、東京.
by fanseab | 2016-06-22 21:37 | | Comments(6)
Commented by たにつち at 2016-06-24 12:47 x
ご無沙汰しております。
すごい観察力ですね。今まで意識したことなく、へ~と思ってしまいました。
これから気をつけてみようと思います。
Commented by fanseab at 2016-06-24 21:26 x
たにつちさん、こちらこそご無沙汰しております。
アオスジは普段、それほど撮影しないのですが、5月に♀産卵シーンに注力して
いた関係で、今回の事実に気が付きました。本来5月に出る第1化で異常斑紋
個体がよく出るので、亜外縁部の斑紋列も夏場に出る第2化以降では、殆ど
出ないと思います。
Commented at 2016-06-24 21:53
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by himeoo27 at 2016-06-25 15:51
アオスジアゲハは俊敏で、樹上高くを飛んでいる
ことが多いので、好きなチョウの割にあまり撮影
していません。これから注意して写してみます。
Commented by fanseab at 2016-06-25 21:21 x
鍵コメさん、コメント有り難うございます。
この手の斑紋異常は標本箱の中にぎっしり同一種の標本を並べるような
機会がないと見逃しがちですね。撮影専門だと、過去画像をそのように
並べて比較するチャンスがないので、つい見逃してしまいます。
同じ普通種でもヒメウラナミジャノメの場合は、眼状紋の数が異常なら
すぐに気が付きますけど・・・。
Commented by fanseab at 2016-06-25 21:24 x
himeooさん、たにつちさんへのコメントに記したように、
第1化以降の世代では、異常は出にくいので、5月に撮影した
過去画像をチェックしてみることをお勧めします。
5月はハルジオンの近くで待機していると、都会の公園でも
アオスジを撮影しやすいと思います。
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