人気ブログランキング | 話題のタグを見る

探蝶逍遥記

TG-4による超拡大撮影法

 オリンパス社から発売されているコンパクトデジカメ:TG-4は大変個性的なカメラで、管理人も愛用しております。最近、①ファームウエアバージョンアップデート(ver.2.0)が実施され、同時に②内蔵フラッシュ専用ディフューザー「FD-1」(以下FD1と略)が発売されました。この組合せにより、マクロ撮影時の深度合成機能が遥かに手軽に実現できるようになりました。詳細は下記、オリンパス社サイトにある

海野さんのレビュー記事(外部リンク)をご覧下さい。

 この記事を読んで、早速、管理人もFD1を購入し、ファームウエアアップデートを実施いたしました。しかし、実際にトライしようとしたら難問にぶつかりました。上記、海野さんの記事では、
『新しいファームのTG-4は、フラッシュ光の補正と露出補正を別々に設定できる』
と書かれております。しかし、撮影メニュー「アクセサリー」画面上でFD1を選択し、顕微鏡モードで、深度合成(テントウ虫マーク)しようと思っても、フラッシュ光/カメラ露出補正共に「機能しない」状態になり、焦りました。「なんだ、話が違うじゃないか!騙されたのか?」と思い、もう一度、海野さんのレビュー記事を読み直しました。

 そこには、『新しいファームのTG-4には、フラッシュのスレーブモードが加わった。これは深度合成モードで、FD-1を使う際に便利なモードだ』と書かれております。そこで上記アクセサリーメニューを再度眺めて、ハッと気が付きました。リモートフラッシュを「スレーブ」に選択すると、あら不思議、海野さん記事記載通りの機能が実現できました。
 恐らく、深度合成撮影目的で、勇んでFD1を購入されたユーザーの方も、同様に疑問を持たれたことでしょう。事実、拙ブログ愛読者の方からも関連質問が寄せられました。FD1に同梱されている説明書はお粗末な代物で、撮影手順は全く記載されておりませんし、オリンパス社サイトQ&A集にも触れられておりません。これではユーザーが迷うのも当然でしょう。そこで、老婆心ながら今回、FD1の使い勝手を含めて記事にまとめてみた次第。

(1)FD1使用による深度合成法
 FD1を装着したTG4の全景を紹介します。

+++画像はクリックで拡大されます+++
TG-4による超拡大撮影法_f0090680_1117567.jpg
GX7-Z12,外部ストロボ

 矢印部分には内蔵フラッシュ導入光を2段階に調整可能な遮蔽版が付いており、きめ細やかな光量調整ができる工夫がされております。先ず、「撮影メニュー2」画面で、「アクセサリー」を選択します。
TG-4による超拡大撮影法_f0090680_11182127.jpg
GX7-Z12,外部ストロボ

 次に、「アクセサリー」画面で、「リモートフラッシュ」を「スレーブ」に設定、「FD-1」を「On」に設定。
TG-4による超拡大撮影法_f0090680_11184235.jpg
GX7-Z12,外部ストロボ

 これで、メニュー設定は完了。頻繁に深度合成を実施するユーザーは、「カスタム設定」を「C1」か「C2」で登録しておけば、直ぐに撮影設定条件がセットされるので、便利です。通常、レンズズームノブで、テレ端(T):X4.0表示がある側に設定します。これ以上のデジタル拡大も可能ですが、手振れ防止の観点からは、テレ端で止めておくのが無難でしょう。今回のファームウエアアップでは、上記設定完了で、自動的にISO=100に設定、絞り値も4.9に自動設定されます。またシャッタースピードも1/100sec.が切れるレベルになります。高感度特性に劣るTG4の場合、超拡大撮影をISO=100で実施することは大変重要です。また、手振れ補正が付いているとは言え、1/20sec.程度の低速シャッターでは深度合成エラーになるケースが多いので、1/100sec.のシャッター速度は必須とも言えます。後は、実際に対象を撮影し、モニターでフラッシュ・外光両光量の按配を勘案し、フラッシュ/本体双方の露出補正を実施し、好みの絵に仕上げていくだけです。

 カメラ側で自動撮影する深度合成モードは、全部で9コマを約1秒間隔で撮影していきます。この時、ビックリしたのは、内蔵フラッシュも同間隔でシャッターと同期して発光する点。これが今回ファームウエア更新中、最大の革新点だと思います。通常内蔵ストロボを1秒程度の短時間間隔で発光させると、ストロボ用コンデンサーの充電機能不足により、発光を一時停止するか、電池の消耗が激しくなるはずです。ところが、今回の改良で、恐らく内蔵ストロボの発光量制御も同時に実施して、上記コンデンサー・電池双方の負担を軽減し、連続9コマ発光撮影を実現したのだと思います。
 先日撮影したコジャノメ2卵塊の画像事例をご紹介しておきましょう。
TG-4による超拡大撮影法_f0090680_11574095.jpg
TG4@18mm(9コマ自動深度合成+トリミング)、ISO=100、F4.9-1/100、内蔵ストロボ

 光沢のある対象を撮影する場合、FD1のようなリング状ディフューザーでは往々にして、対象表面にドーナツ状パターンが出現して不自然な絵に成りがちです。しかし、TG4の内蔵フラッシュの位置がカメラに向かって右側に偏位している関係上、ドーナツパターンが目立たず、自然な絵に仕上がっているのが素晴らしいです。コジャノメ卵表面の網目構造も綺麗に表現できております。

(2)LEDライトガイド「LG-1」(以下LG1と略)による深度合成

 本付属品はTG4の内蔵LEDディフューザーとして既に発売済です。本来の使い方は内蔵LED光のみで、撮影するのですが、管理人は何とかこれを内蔵フラッシュでも使用可能とするべく、自己責任で改造を加え、これまで愛用してきました。その全景がこれ。
TG-4による超拡大撮影法_f0090680_11195120.jpg
GX7-Z12,外部ストロボ

 市販品を装着したままの状態では、強烈なストロボ光が白破線で示したように、ライトガイドの外に漏れ出し、照明が不均一になります。そこで管理人は黒色ゴムバンドを装着して、漏れ光を遮断して使用しておりました。LED光に比較すると、明らかに豊富な光量が得られて重宝していたのですが、流石に内蔵フラッシュ専用ではないので、フラッシュ光の拡散状況に不満が残るものでした。今回のファームウエア変更では、FD1と同様な設定にすれば、LG1を装着した状態でもFD1と全く同じ深度合成撮影ができるのです。
 もちろん、本来の使い方、つまりLED光をLG1で拡散光源として深度合成も可能です。

(3)各手法による像質比較。

 先だってご紹介したウスバシロチョウ卵を対象に、複数手法で撮影した画像の像質比較をしてみました。全て手持ちでの撮影です。
TG-4による超拡大撮影法_f0090680_11204958.jpg
(1) TG4@18mm(9コマ自動深度合成+トリミング)、ISO=100、F4.9-1/100、+0.3EV、内蔵ストロボ(2) TG4@18mm(6コマ深度合成+トリミング)、ISO=100、F4.9-1/15、-0.7EV、内蔵ストロボ(3) TG4@18mm(9コマ自動深度合成+トリミング)、ISO=1250、F6.3-1/100、-0.7EV、内蔵LED(4) GX7-1442@42mm-P14R(4コマ深度合成+トリミング)、ISO=200、F13-1/250、外部ストロボ

 像質の基準はこれまで愛用してきたマイクロフォーサーズでの専用拡大システム(4)の画像です。結論から言えば、今回のTG4+FD1の組合せで、全く同等、むしろ今回の比較では(4)を凌駕する出来栄えになっております。条件(2)の像質も文句ないのですが、シャッタースピードが1/15sec.で手振れも影響して自動深度合成は殆ど失敗してしまいました。仕方なくブラケットモード(BKT)で10コマ撮影し、そこから任意の6コマを抜き出して深度合成ソフトでマニュアル合成しております。一方、内蔵LED光で撮影した(3)では、カメラが自動で手振れ補正回避する関係上、ISO=1250になってしまい、ノイズ低減画像エンジンが働いたためか、塗り絵のような気持ち悪い仕上りになっています。
 結局、蝶の卵超拡大撮影に関しては、殆どの対象でTG4を使えば事足りると思わせる結果になりました。例外は卵直径が1mmを切る一部のシジミチョウでしょう。その時は従来の拡大システムを使用していきたいと思います。

(4)TG1~TG3へのFD1の装着

 オリンパス社のサイトによれば、製造中止したTG1、TG2、TG3にもFD1は装着可能です。但し深度合成機能が可能なTG3では、TG4で実施されたファームウエアアップデートはされておりません。従って、(1)で詳述した撮影法が不可能です。TG3/TG4はメカ的に大幅な変更はないので、恐らくTG3のファームウエアアップデートは同社開発陣にとっては容易い作業だと推察します。しかし、営業戦略上、敢えてアップデートをしない方針なのでしょうね。慌ててFD1を購入したTG3ユーザーが不満を抱えるのは目に見えています。『悔しければ早くTG3からTG4へ買い換えて下さい』との意図が見え見えですね(^^)

 それはともかく、今回のTG4/FD1システムの出来栄えには海野さん以外のプロ昆虫写真家も絶賛しております。恐らく海野さんが専任アドバイザーとしてFD1開発に深く係わったのだと思います。しかし、プロ写真家の様々なリクエストを市販コンデジで具現化するためにはコスト上の様々な難題があったと推察します。それを克服して商品化までこぎつけた同社開発・製造・営業陣の英知・英断に心から拍手を送りたいと思います。同社が誇る顕微鏡を含めたマクロ・接写撮影分野での長い歴史・ノウハウ蓄積が結実した成果なのでしょう。
by fanseab | 2016-06-06 20:51 | 機材 | Comments(6)
Commented by tatsuo okumura at 2016-06-11 15:47 x
TG4+FD1についての興味深いレポートありがとうございます。これを見てTG4に俄然注目しています。このように補助光にマニアックとも思える工夫を凝らしているメーカーが存在することはちょっと誇らしい気分がします。たまたま「MFT応援団」という遊びこころに溢れるサイトにも紹介されており、いいタイミングでした。
Commented by ダンダラ at 2016-06-11 19:37 x
早速私のTG-4でも設定してみました。
秒1コマの9コマ合成ですから、野外の手持ちでは難しそうですが、なんでストロボは発光しないのと思っていたので、これですっきりしました。
有益な情報、ありがとうございました。
Commented by fanseab at 2016-06-12 21:22 x
tatsuo okumura様、コメント有難うございます。
TG4は蝶屋を含め、昆虫写真を常時撮影する方にとっては、理想的なカメラ
に近いですね。
Commented by fanseab at 2016-06-12 21:25 x
ダンダラさん、貴殿もやはり当初使用法に疑問を持たれたのですね。
メーカーも不親切なので、このようなネット上で疑問を解決するしかないですね。
内蔵LEDでは暗くて手持ち合成が失敗することが多かったのですが、FD1を使用
すると、かなり失敗が減って助かっています。
Commented by fanseab at 2016-08-08 22:06 x
SULさん、こんばんは。
記事が参考になれば幸いです。
リンクの件も問題ありません。
Commented by SUL at 2016-08-10 17:00 x
記事について事前承諾を得ずにブログに掲載してしまい大変申し訳ありませんでした。
記事は削除させて頂きました。
このたびは本当に失礼いたしました。
名前
URL
削除用パスワード