探蝶逍遥記

台湾台東縣遠征記(12)タテハチョウ科その6:イチモンジチョウ亜科B

 今回遠征で一番撮影に注力した蝶の一つが本記事でご紹介するタカサゴイチモンジ(Euthalia formosana)でした。台風一過の5月11日午後。林道を車で流しながら探索中、林道上を見たことも無い蝶影が横切りました。全体に緑色系統の大型種で、これまでの経験からトラフタテハ(Parthenos sylvia)かなと・・・。しかし、ここは台湾、トラフはいない筈。ややあって、ようやくイナズマチョウ(Euthalia sp.)であることに気が付きました。ところがその後、暫く雲隠れしてしまい、他の蝶撮影に切り替えました。最初に発見した場所は、今回の遠征で「ご神木」と名付けた樹液の出る株の近く。前回もこのポイントでは、多くのタテハ類が集っておりましたが、今回は樹液の浸出する木本が大変少なく、この株に集中する傾向がありました。そこでダメモトで再度この株に戻ってみると、ヤッター!目的種が再登場です。先ずは遠目の一枚。

+++横位置画像はクリックで拡大されます+++
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D71K-34VR、ISO=400、F8-1/320、-0.3EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年5月11日、14時49分

 台湾特産種、タカサゴイチモンジ♂のファーストショットになりました。本種は遠征前に期待していた相手ではありませんでしたので、ビックリして心臓の鼓動が高鳴りました。しかし、いかんせん距離が遠く、暫くして姿を消してしまいました。こうなると翌日からは、必死にタカサゴ狙いで目を光らせることに・・・。願いが通じたのか、翌日同じご神木で♂2頭のツーショット撮影に成功!
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D71K-34VR、ISO=400、F7.1-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年5月12日、11時21分

 いずれも一点の傷も無い羽化直に近い個体。拙ブログの「謹賀新年」記事でご紹介したミドリイナズマ(E.kardama)同様、ストロボ照射時、青緑色に輝く大型のタテハです。イナズマチョウの分布は広大ですが、ヒマラヤ~中国にかけて分布するpatala群と称されるグループは前翅に斜帯、後翅に概ねイチモンジ模様を持つ大型種で、ズッシリとした重量感のあるイナズマチョウです。現在もほぼ毎年、分布域未踏査ポイントから新種や新亜種の記載が続いており、上記分布域山岳地帯で複雑な種分化を遂げたタテハと言えましょう。台湾には、かつて中国大陸と地続きであった名残で、本種含む4種のpatala群が棲んでおります。
①ホリシャイチモンジ(E.kosempona
②マレッパイチモンジ(E.malapana
③タカサゴイチモンジ(E.formosana
④スギタニイチモンジ(E.insulae
この4種いずれも台湾特産種となります。

 本種翅表はストロボ照射の状況次第で幻光のように色調が変化します。
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D71K-34VR、ISO=640、F9-1/640、+0.3EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年5月12日、11時36分

 左前翅が黄金色に輝いていますが、この色調は図鑑に記載されている標本画像の色合いに近いものですね。さて、全開翅が撮影できたので、次は閉翅を狙おうと努力しますが、樹液吸汁時にはなかなか良いアングルに回り込めません。チャンスを逃す中、林道上に吸水に訪れた個体を狙ってようやく閉翅を撮影することができました。
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D71K-34VR、ISO=640、F11-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年5月12日、11時00分

 裏面も表翅の模様をトレースしていて、全般にベージュ色が優ります。樹液吸汁シーンでもお分かりの通り、本種はストローまで緑色(淡い翡翠色)に統一しているのがお洒落ですね。

 ♂は林道のように森林が開けた部分を好み、高さ5m程の葉上に止まって占有行動を取ります。
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D71K-34VR、ISO=500、F9-1/1250、-0.7EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年5月13日、9時10分

 タテハが最も格好良く写る、「斜め45度」シーンです。樹液吸汁の後は、やや低い位置で開翅休息する時もあります。
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D71K-34VR(トリミング)、ISO=500、F10-1/800、-0.3EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年5月13日、8時31分

 このアングルだと、緑色には殆ど光らず、地味な黒褐色のタテハにしか見えません。タカサゴイチモンジは年1化とされておりますが、出会った♂はいずれも鮮度が良く、♂の最盛期であった可能性があります。一方、♀は一度だけ林道脇奥の灌木帯を舞う姿を見ることが出来ましたが、すぐに姿を消してしまい撮影は叶いませんでした。♀を狙うには時期を少し遅らす必要もあるのでしょう。それはともかく、オオムラサキと同じ体躯で、雄大に滑空する本種は大変魅力的で、いつの日か台湾固有patala群残りの3種も撮影したいものです。

 さて、2種目は国内でもお馴染みのイシガケチョウ(Crestis thyodamus formosana)。最初は定番の♂吸水シーン。
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D71K-34VR、ISO=500、F11-1/250、+0.3EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年5月13日、11時57分

 イシガケチョウもきちんと撮ろうとすると、完品個体に巡り会えない気がします。この子もちょっと右後翅に欠けがあります。次は♀の開翅休息シーン。
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D71K-34VR(トリミング)、ISO=400、F11-1/640、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年5月13日、12時06分

 実はこの直前、この個体は産卵行動を示していました。結局、産卵に至らず、日光浴をしている情景です。イシガケチョウのサイズも個体差が多く、この♀は♂とほぼ変わらないとても小さな個体でした。

 今回遠征で目撃・撮影したイチモンジチョウ亜科の種をまとめます。学名で亜種未記載のものは名義タイプ亜種。黄色着色種は管理人の初撮影種。
【イチモンジチョウ亜科】全8種
(1)リュウキュウミスジ(Neptis hylas luculenta)
(2)タイワンミスジ(N. nata lutatia)
(3)ホリシャミスジ(N. taiwana)
(4)キンミスジ(Pantoporia hordonia rihodona)
(5)ヤエヤマイチモンジ(Athyma selenophora laela)
(6)タイワンイチモンジ(A. cama zoroastes)
(7)タカサゴイチモンジ(Euthalia formosana)
(8)イシガケチョウ(Crestis thyodamus formosana)
<次回へ続く>
by fanseab | 2016-01-15 00:04 | | Comments(4)
Commented by yurinBD at 2016-01-15 20:59
タカサゴイチモンジの撮影成功、おめでとうございます!
表翅だけでなく、口吻も、眼も青緑系の色合いで統一され、
美しい蝶ですね~♪ 撮影時の喜びが伝わってきました!
裏翅も美しいです、台湾・素晴らしい所ですね!
Commented by fanseab at 2016-01-16 21:04 x
yurinBDさん、コメント有難うございます。
お蔭様でタカサゴイチモンジを堪能することができました。
貴殿がランカウィ島で撮影された熱帯アジアのイナズマとは
かなり雰囲気が異なります。それでもpardalisなどと同様、大型
イナズマの迫力ある姿は大変魅力的ですね。
Commented by Sippo5655 at 2016-01-18 21:57
こんなに美しいグリーンに彩られた蝶がいるなんて!?
偶然というよりも
長年の知識と勘と、そして想いが呼び寄せた出会いだったのではないでしょうか!
Commented by fanseab at 2016-01-20 21:44 x
Sippo5655さん、今回の遠征は台風の影響で本来の目的地、
目的種を捉えることができなかった一方、新たな出会いが沢山
ありました。蝶との出会いは本当にその時の巡り合わせのような
気がします。決して派手でないけれど、深みのある青緑色は
独特な美しさがあると思います。
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