探蝶逍遥記

台湾台東縣遠征記(11)タテハチョウ科その5:イチモンジチョウ亜科A

 最初はNeptis属。トップバッターは日本の南西諸島でもお馴染みのリュウキュウミスジ(Neptis hylas luculenta)♂。

+++画像はクリックで拡大されます+++
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D71K-34VR(トリミング)、ISO=400、F11-1/800、-0.7EV、撮影年月日・時刻:2015年5月12日、8時56分
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D71K-34VR(トリミング)、ISO=500、F11-1/640、-0.7EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年5月12日、8時57分

 Neptis属の同定では翅表・翅裏をきちんと個別撮影しておかないと、後で難儀します。ところが、この仲間は直ぐに翅を開くので閉翅を撮るのに一苦労します。この子は何とか閉翅画像を撮らせてくれました。台湾のNeptis属は全14種。このうち小型の5種が同定に難儀するグループ。ここでは、日本国内にも産するコミスジ(N.sappho formosana)、リュウキュウミスジ(N.hylas luclenta)、および台湾産スズキミスジ(N. soma tayalina)の3種について識別点をまとめてみました。台湾産コミスジ画像が手元にないので、ここではリュウキュウとスズキ2種♂の裏面比較画像を示します。
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<識別点まとめ>
(1)前翅裏面亜外縁部の白班:第4室(A2)と第5室(A1)の大小関係
コミスジ、リュウキュウ:A2<A1だがA2は顕著に出現
スズキ:A2<<A1で、時にA2は消失
(2)後翅裏面中央白帯Bと外側白帯Cに挟まれた暗褐色部の巾F
3種共に後翅前縁部側で狭まる傾向にあるが、最も顕著に巾が狭まるのはスズキ。
(3)後翅亜外縁白条Dの位置(外側白帯Cとの距離)
リュウキュウ→コミスジ→スズキの順で外側白帯Cに接近する。
結果的にリュウキュウでは白条D,Eの間隔が最も詰まる。
(4)後翅裏面外縁白条Eの性状
コミスジ・リュウキュウ:ほぼ連続した破線。
スズキ:第3室後半から第4室前半にかけて一旦消失する傾向を示す(矢印H)。
※但しスズキの中国本土亜種omnicolaでは、Eは連続破線となり、消失傾向を示すのは台湾産亜種tayalinaの一大特徴かもしれません。
(5)後翅裏面地色
リュウキュウは最も橙色味が優る。
(6)後翅裏面中央白帯Bの縁取り
リュウキュウでは前縁・後縁側共に黒く縁取られる。
(7)触覚先端の色彩G
リュウキュウ・コミスジは顕著な黄色。スズキは腹面側のみ黄色を呈するが、不明瞭。

 もちろん、個体変異はありますので、(1)~(7)を総合的に勘案して同定の決めてとします。しかし先ず検すべきは形質(7)で、触覚先端を見てスズキか、その他の2種かを区別できます。早い機会に台湾産コミスジ♂裏面を撮影し、類似種形質の比較画像を更新・作成したいと思います。

 さて2番バッターはタイワンミスジ(N. nata lutatia)♂。
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D71K-34VR、ISO=800、F11-1/640、-1.0EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年5月11日、16時30分

 台風一過、雨上がりの林道で吸水する個体です。前翅中室の棍棒状白条が細いのが特徴で、類似種ミヤジマミスジ(N.reducta)とは前翅白斑が小さいことで識別点になります。かなり粘ったのですが、閉翅撮影には失敗。3種目は台湾特産種のホリシャミスジ(N. taiwana)♀。
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D71K-34VR(トリミング)、ISO=400、F11-1/640、-0.7EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年5月12日、8時03分

 明らかに産卵行動中でしたが、産卵には至らずガッカリです。ホリシャは台湾産Neptis属中唯一ホストがクスノキ科です。この画像でも分かるように、クスノキの低木に絡むように飛んでいました。Neptis属♀の産卵時間帯は午前中に多いのですが、朝8時から既に産卵行動を示すのは意外でした。

 Neptis属の次はAthyma属。トップバッターは日本国内でも見られるヤエヤマイチモンジ(Athyma selenophora laela)。最初は♂の吸水場面。
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D71K-34VR(トリミング)、ISO=360、F11-1/400、-1.0EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年5月11日、16時23分
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D71K-34VR(トリミング)、ISO=280、F11-1/400、-1.0EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年5月11日、16時24分

 タイワンミスジを撮影したほぼ同じ場所・時間帯に吸水に登場しました。この蝶も閉翅を撮り難い相手で、粘って撮れたのが↑の2枚目の画像。縁毛もきちんと揃った綺麗な個体でした。続いて♀。
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D71K-34VR(トリミング)、ISO=500、F10-1/250、-0.3EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年5月14日、12時32分

 昼過ぎの一番暑い時間帯、林道脇の薄暗い葉上でしきりに口吻を伸ばしていました。これ以上のアングルでは撮影できずガッカリ。次いで、タイワンイチモンジ(A. cama zoroastes)♂。
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D71K-34VR(トリミング)、ISO=640、F10-1/500、+0.3EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年5月13日、8時06分

 仕掛けた甲殻類トラップにやって来た個体です。本音を言えばもうちょっと珍品が誘因されて欲しいのですが、手間暇かけて作成・散布したトラップに蝶が来てくれれば、それはそれで嬉しいものです。右前・後翅の破損状態はバードビーク(野鳥の嘴で齧られた跡)由来を思わせますね。次いで♀。
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D71K-34VR、ISO=200、F6.3-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影年月日・時刻:2015年5月12日、8時29分

 知本森林遊樂區での撮影。ご覧の通りボロボロの個体で、当初Neptisと勘違いしてしまいました。♂と異なり、三筋模様は黄色を帯びています。Neptis属と区別する最大の識別点は腹部背面側中央にある白色もしくは青白色帯の有無。Athyma属は原則、この帯が出現します(ヤエヤマイチモンジ♂など一部例外有り)。なお♀完品個体は4年前に撮影済です。
<次回へ続く>
by fanseab | 2016-01-09 21:23 | | Comments(4)
Commented by yurinBD at 2016-01-10 15:20
タイワンイチモンジ、一文字部分が青みがかっていて
翅の角にオレンジの紋が入り、綺麗な蝶ですね。
台湾の蝶の種類が多様とはいえ、これほどの種類を
観察できるというのは素晴らしいポイントですね
+トラップなど蝶を呼ぶ技術が光りますね!
Commented by fanseab at 2016-01-10 21:32 x
yurinBDさん、タイワンイチモンジは前翅端のオレンジ紋が本種識別点
となっています。他の台湾産Atyma♂は全て白色です。
前回同じポイント訪問は11月で、今回は5月。季節が異なると蝶相も異なる
ことを実感しました。トラップは効果があるか?博打みたいなものですが、時折、
成果が出ると嬉しいものです。
Commented by Sippo5655 at 2016-01-12 21:16
うわー、私みんなコミスジに見えちゃいました(恥)
触覚まで見ないと識別困難だなんて、、
タイワン・・・イチモンジ!?
うっすらとブルーが乗るこの紋様、幻想的ですね!!
Commented by fanseab at 2016-01-14 00:34 x
Sippo5655さん、そう、この手のミスジは全てコミスジそっくりさんで、
本当に同定に困るのです。撮影している時に同定しようとするのは無謀で
あることは、これまでの経験で分かっていますので、何も考えずに、とにかく
撮りまくって、帰国後、じっくり同定することにしています。
タイワンイチモンジのように、図鑑では気づかない幻光があったりすると、
本当に嬉しいものです。
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