探蝶逍遥記

台湾台東縣遠征記(8)タテハチョウ科その2:ジャノメチョウ亜科A

 今回はジャノメチョウ亜科のLetheMycalesis 2属をご紹介します。最初はメスチャヒカゲ(Lethe chandica ratnacri)の♂。

+++画像はクリックで拡大されます+++
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D71K-34VR、ISO=400、F5.6-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日・時刻:5月13日、10時29分

 本種は初撮影なので、出会った時は大変嬉しかったですね。「雌茶」の和名は♀表翅が赤褐色を帯びることに由来します。裏面の特徴としては、やはり前後翅を横断する暗色条が赤色であること。日本国内産4種のLetheには見られない色合いです。それと後翅眼状紋内に青色鱗粉が星団のように散布されていて、凝ったデザインだと思います。

 本種のホストはススキ属(芒草:Miscanthus sp.)やタイワンマダケ(桂竹:Phyllostachys makinoi)とされています。今回歩き回った知本温泉付近の林道には、実は竹類の分布が薄く、必然的に本種と出会うチャンスは少ないのです。前回4年前の11月には全く見ることもできず、今回少し観察エリアを延長して初めて、タケ類群落を見つけることができ、同時に本種にも出会えたのでした。これがそのポイントの情景。
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TG4@4.5mm、ISO=100、F2-1/320、-0.7EV、撮影月日・時刻:5月13日、10時33分

 左手前方にタケ群落があります。夕方まで粘れば産卵に訪れる♀も観察できる可能性があるのでしょう。次はこのポイントから更に奥に林道を進んだ薄暗い環境で出会った、タイワンクロヒカゲモドキ(L. butleri periscelis)の♀。
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D71K-34VR(トリミング)、ISO=500、F8-1/640、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日・時刻:5月13日、10時01分
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D71K-34VR(トリミング)、ISO=500、F10-1/640、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日・時刻:5月13日、10時02分

 これも初撮影種。最初本種を確認した時、妙なMycalesis(コジャノメ属)がいるものだと思いました。まさかこれがLethe属とは!? なにより翅形がLetheのように尖っておらず、丸みを帯びているからです。1908年にドイツ人、Fruhstorferが本種を恒春半島の大板埒(現在の南湾)から原記載した際、『Mycalesis periscelis』と命名したのも無理からぬことでした。その意味で本種の和名「タイワンクロヒカゲモドキ」は相応しいものではなく、管理人はむしろ「(タイワン)コジャノメモドキ」の方が的確だと思うのですが・・・。ここも急峻な崖地故、接近戦が叶わずガッカリです。♂を狙うにはやはり活動が活発になる夕方なのでしょうね。

 3種目はヒトツメジャノメ(Mycalesis sangaica mara)♂。
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D71K-34VR(トリミング)、ISO=400、F11-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日・時刻:5月14日、10時22分

 本種はこの林道では個体数が少ない方です。とても綺麗な個体に出会えたのが何より。次いで個体数の多いキレバヒトツメジャノメ(M. zonata panthaca)の♂。
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D71K-34VR(トリミング)、ISO=200、F7.1-1/160、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日・時刻:5月14日、10時20分
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D71K-34VR(トリミング)、ISO=400、F9-1/400、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日・時刻:5月13日、9時32分

 1枚目が高温期型、2枚目が低温期型です。YpthimaMycalesis属全てがそうであるように、低温期には眼状紋が縮退し、全般的に同定が困難になります。アップした2枚の画像はほぼ同ポイントで撮影しており、訪問した5月中旬は本種にとって、どうやら低温期から高温期への移行期間なのでしょう。次いで高温期型の♀。
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D71K-34VR(トリミング)、ISO=200、F10-1/500、-1.0EV、撮影月日・時刻:5月13日、9時41分

 スレ個体で、強烈な陽光を浴びて翅の質感がイマイチでした(^^;                    
 最後はマルバヒトツメジャノメ(M. mineus)の高温期型♀。
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D71K-34VR(トリミング)、ISO=400、F11-1/500、-1.0EV、外部ストロボ、撮影月日・時刻:5月14日、8時51分

 マルバとキレバは鋭角カットされた前翅端の直線性で区別するのですが、♀の場合は前翅外縁が全般に丸みを帯びるので、両種の分別が極めて困難になります。ここでは①前翅裏面第2室と後翅裏面第6室の眼状紋直径比、②後翅裏面中央白条の直線性、③後翅裏面亜外縁部の地色差を総合的に勘案してマルバとキレバ♀を区別してみました。そうは言っても100%の自信はありません。間違いあればご指摘願います。
<次回へ続く>
by fanseab | 2015-12-18 23:06 | | Comments(4)
Commented by Sippo5655 at 2015-12-19 22:20
ジャノメの紋様の多彩なこと・・・!
お伽話に例えるなら
みんな、その地の妖精で、
どうしてこの模様になったのか
優しく話しかけてくれそう!!
Commented by himeoo27 at 2015-12-20 15:24
メスチャヒカゲの独特な裏翅の模様
素敵なチョウですね!
直ぐ近くの島なのに色々なチョウが
いるのだと驚きました。
Commented by fanseab at 2015-12-20 21:34 x
Sippo5655さん、ジャノメチョウの眼状紋は数、配置、紋内の模様、
様々なバリエーションがあるのだと思います。海外で出会う仲間には
こちらの予測を遥かに超えるデザインがあって、驚かされますね。
確かに台湾には台湾の妖精が潜んでいて、色々と悪戯を仕掛けているようです。
Commented by fanseab at 2015-12-20 21:36 x
himeooさん、そう貴殿が良く訪問される南西諸島と目と鼻の先にある島ですけど、
標高が高い分、かつて中国と陸続きであった時代から生き残っている蝶が多く、
多様性に富んでいて面白いのです。
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