探蝶逍遥記

台湾台東縣遠征記(6)シロチョウ科その2

 シロチョウ科の続きです。最初はメスシロキチョウ(Ixias pyrene insignis)♀の吸蜜シーン。

+++横位置画像はクリックで拡大されます+++
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D71K-34VR、ISO=500、F10-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日・時刻:5月14日、10時47分

 ♀は初撮影です。表翅を撮らないと「雌白」が表現できませんね。♂もそれなりの個体に出会ったのですが、猛スピードで飛翔して吸蜜・吸水のチャンスが全くなく撮影は叶いませんでした。このシロチョウは熱帯アジアでは普通種なのに、何故か相性が悪くて撮影できないのです。相性が悪い蝶ってあるんですよね。

 次はウスキシロチョウ(Catopsilia pomona pomona)無紋型♀の吸蜜シーン。
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D71K-34VR(トリミング)、ISO=400、F11-1/640、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日・時刻:5月12日、7時41分

 知本森林遊樂區内の植栽トウワタ(Asclepias curassavica)やって来た個体です。本種♀は結構吸水シーンに出会いますが、吸蜜シーン撮影は恐らく初撮影。朝一番の吸蜜タイムで比較的緩慢なので、助かりました。さて、次は高速飛翔するウスキシロとは真逆にフンワリ・ノンビリ飛ぶクロテンシロチョウ(Leptosia nina niobe)の飛翔シーン。
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GX7-Z12(トリミング)、ISO=400、F5.6-1/2500、撮影月日・時刻:5月14日、9時05分
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GX7-Z12、ISO=400、F5.6-1/2500、撮影月日・時刻:5月14日、9時05分
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GX7-Z12(トリミング)、ISO=400、F5.6-1/2500、撮影月日・時刻:5月14日、9時05分

 この子の飛翔スピードは大変緩やかですが、飛ぶ場所が暗いので、白飛びしないように撮影するのは結構難しい対象です。ここでは40コマ/秒の高速連射の特徴を活かして、白飛びしていないコマのみ、拾い上げてみました。
 4種類目はタイワンキチョウ(Eurema blanda arsakia)の♂。
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D71K-34VR(トリミング)、ISO=640、F9-1/640、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日・時刻:5月11日、15時43分

 そろそろ活動終了時間帯で、葉上で静止している場面。透けて見える前翅表外縁の黒褐色部に典型的な夏型♂の特徴が出ていると思います。次に♀の産卵シーン。
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D71K-34VR(トリミング)、ISO=400、F8-1/320、-0.3EV、外部ストロボ、撮影月日・時刻:5月11日、14時32分

 タイワンキチョウはキタ(ミナミ)キチョウとは異なり、卵塊で産む習性があると聞いており、産卵を大変期待して見守っておりましたが、結局産卵には至らず、大変ガッカリいたしました。やって来たホストはネムノキ属(Albizia sp.)と思われますが、現時点で同定できておりません。
 最後はキタキチョウ(Eurema mandarina)♀の産卵シーン。
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D71K-34VR(トリミング)、ISO=320、F11-1/400、+0.3EV、外部ストロボ、撮影月日・時刻:5月13日、10時56分
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D71K-34VR(トリミング)、ISO=320、F11-1/400、+0.3EV、外部ストロボ、撮影月日・時刻:5月13日、10時57分

 産卵された卵の拡大像です。
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GX7-P1442@42mm-P14R(トリミング)、ISO=200、F13-1/250、外部ストロボ、撮影月日・時刻:5月14日、12時04分

 東京都下で撮影した日本本土産キタキチョウ卵の拡大像と比較してみました。
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 卵1個同士での比較ですから、この絵から何か結論を得ようとするものでありません。日本本土産、南西諸島産、台湾産各々の卵の微構造に差異があるのか、調べてみると面白いかもしれません。さて、上記産卵母蝶を「キタキチョウ」と判定するには少々時間がかかりました。以下、その推論過程を詳述します。

 先ず驚いた点は産卵された植物がどう見てもマメ科とは思えない特徴を有していたからです。葉がマメ科のように対生ではなく、互生です。枝ぶりも葉の形状もマメ科らしくありません。次に母蝶の後翅外縁部形状、前翅中室基部の黒班の数、前翅外縁に拡がる黒褐色部の形状、裏面全体に散布される暗色斑点の出現状況を総合勘案して、少なくとも、ミナミキチョウ(E.hecabe)かキタキチョウのいずれかであろうと推測しました。残念ながら撮影した個体はかなり擦れた♀で、前翅縁毛色からの種判定はできません。
 ここで台湾産ミナミキチョウおよびキタキチョウが利用するホストをまとめておきます。いずれも台湾で発行した図鑑(※1※2)に記載されているホストです。
<ミナミキチョウ>
マメ科:田菁(ツノクサネム:Sesbania sesban)、合萌(クサネム:Aeschynomene indica)、合歓(ネム:Albizia julibrissin)、鉄刀木(タガヤサン:Senna siamea)、黄塊(モクセンナ:Cassia surattensis
<キタキチョウ>
クロウメモドキ科:桶鉤藤(シマクロウメモドキ:Rhamnus formosana)、中原氏鼠李(ナカハラクロウメモドキ:R. nakaharai)、小葉鼠李(イワクロウメモドキ:R.parvifolia)、雀梅藤(クロイゲ:Sageretia theezans
マメ科:鐡掃箒(メドハギ:Lespedeza juncea)、毛胡枝子(ビッチュウヤマハギ:L.thunbergii

 重要なポイントは、「ミナミキチョウはマメ科のみ食う」点です。故にマメ科以外の植物に産卵していたら、その個体はキタキチョウと判定してOKだと思った次第。もちろん、前翅裏面中室内黒班の数、表翅外縁黒褐色部パターン等から他のEurema属、特にクロウメモドキ科食いのウスイロキチョウ(E.andersoni)とはきちんと区別した上での話です。なお、キタキチョウは日本の本州では基本マメ科食いですが、南西諸島ではマメ科以外にクロウメモドキ科を食するとされています(※3)。

 残念ながら今回アップしたキタキチョウと思しき♀が産卵している植物の同定はできておりません。少なくとも上記したクロウメモドキ科のいずれの種とも葉形状が微妙に異なっております。台湾ではトウダイグサ科も食うとの報告もあるようで(※3)、何方か知見のある方、ご教示頂ければ幸いです。

【参考文献】
※1 林春吉・蘇錦平,2013.台灣蝴蝶大圖鑑.綠世界工作室,宜蘭.
※2 呂至堅・陳健仁,2014.蝴蝶生活史圖鑑.晨星出版,臺中.
※3 加藤義臣・矢田脩,2005.西南日本および台湾におけるキチョウ2型の地理的分布
           とその分類学的位置.蝶と蛾,56(3):171-183.
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<11月22日追記>
今回遠征で目撃・撮影したシロチョウ科の種をまとめます。学名で亜種未記載のものは名義タイプ亜種。赤色着色種は目撃のみ。
【シロチョウ科】全12種
(1)モンシロチョウPieris rapae crucivora
(2)タイワンモンシロチョウ(P. canidia
(3)ウスムラサキシロチョウ(Cepora nadina eunama
(4)タイワンスジグロチョウ(C. nerissa cibyra
(5)タイワンシロチョウ(Appias lyncida cleonora
(6)クモガタシロチョウ(A. indra aristoxenus
(7)メスシロキチョウ(Ixias pyrene insignis
(8)ツマベニチョウHebomoia glaucippe formosana
(9)ウスキシロチョウ(Catopsilia pomona
(10)クロテンシロチョウ(Leptosia nina niobe
(11)キタキチョウ(Eurema mandarina
(12)タイワンキチョウ(E. blanda arsakia
by fanseab | 2015-11-21 21:55 | | Comments(0)
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