探蝶逍遥記

台湾台東縣遠征記(4)アゲハチョウ科その2

 最初はオナシモンキアゲハ(P.castor formosanus)♂。このアゲハは4年前、同じ知本温泉付近で飛翔画像を撮影済(外部リンクですが、静止場面はこれが初体験。他の黒系Papilioに混じって吸水しておりました。

+++横位置画像はクリックで拡大されます+++
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D71K-34VR(トリミング)、ISO=500、F10-1/320、-0.3EV、外部ストロボ、撮影月日・時刻:5月14日・12時45分

 微妙にスレているものの、まずまずの鮮度でしょう。「尾無」の和名が付いていますが、短いながら尾状突起はちゃんと付いております。尾状突起の欠損したモンキアゲハやシロオビモンキとは後翅裏面外縁に赤色もしくは黄色弦月紋が全く存在しないことで区別可能です。続いて台湾固有種のワタナベアゲハ(P.thaiwanus)♂。先ずは開翅。
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D71K-34VR(トリミング)、ISO=500、F11-1/500、-0.3EV、外部ストロボ、撮影月日・時刻:5月14日・12時34分

 全開翅の撮影機会は少なく大幅にトリミングしてのご紹介です。表翅はナガサキやクロアゲハ♂に類似しておりますが、後翅表に青色鱗粉が全く載らず、ほぼ漆黒に近いことで区別可能。後翅裏面は赤紋が発達してムチャ派手な雰囲気。
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D71K-34VR、ISO=500、F9-1/400、外部ストロボ、撮影月日・時刻:5月14日・12時42分
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D71K-34VR、ISO=640、F9-1/640、外部ストロボ、撮影月日・時刻:5月14日・12時25分

 2枚目の左端はクロアゲハ。黒系アゲハの手前で吸水しているシジミは全てヒメウラナミシジミ(Prosotas nora formosana)。
 さて今回、三番手に登場するのは煌びやかなAchillides、タイワンルリモンアゲハ(P.formosanus)♂です。前回記事で脚注をつけた通り、本種も最近、台湾固有種扱いとなりました(※)。最初は吸水場面。
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D71K-34VR、ISO=500、F10-1/320、-0.3EV、外部ストロボ、撮影月日・時刻:5月14日・12時44分

 この個体はほぼ完品。未だ警戒心を解かずに半開翅吸蜜しています。この時、前翅を上に引き上げた状態なので、後翅「瑠璃紋」の一部を堪能することができます。初めて北タイで兄弟種、paris♂を撮影した時の興奮を思い出しました。その後、海外遠征各地で瑠璃紋を拝むチャンスは多かったものの、接近戦で撮影することは叶わず、今回ようやくじっくりと取り組むことができました。暫くすると、ダラリと前翅を下げ、ほぼ全開状態での吸水に移行しました。
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D71K-34VR、ISO=500、F10-1/320、外部ストロボ、撮影月日・時刻:5月14日・12時49分

 こうなると、本種のシンボル、後翅の瑠璃紋は前翅に隠されてしまいます。それでもほぼ漆黒の地に散布された金緑色鱗粉の美しいこと! 偶然、画面右下にピンク色の花弁が落ちていて、本種の美しさをより引き立てていたように思います。
 吸蜜場面にも何とか出会えました。
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D71K-34VR、ISO=500、F10-1/1250、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日・時刻:5月13日・9時06分
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D71K-34VR(トリミング)、ISO=500、F9-1/1250、-0.7EV、外部ストロボ、撮影月日・時刻:5月13日・9時08分

 吸蜜源はクマツヅラ科のホナガソウ(Stachytarpheta sp.)。南米原産の外来種で亜熱帯から熱帯アジアに広く分布し、シロチョウやアゲハが好んで吸蜜します。残念ながら吸蜜シーンの♂は少し飛び古した個体で、地色が褐色を帯びておりました。こうなると、瑠璃紋の輝きもイマイチ迫力に欠けます。3分近く吸蜜しておりシャッターチャンスが多かったのですが、ちょっぴり写欲が湧きませんでした。慣れてくると贅沢になるもんです。
<次回へ続く>

※宇野彰, 2013. 1986年以降に発表された台湾産蝶類に係わる文献目録および追加さ
れた新知見(1), やどりが239:33-41.
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<11月2日追記>
今回遠征で目撃・撮影した種をまとめます。学名で亜種名未記載のものは名義タイプ亜種。黄色着色種は管理人の初撮影種。赤色着色種は目撃のみ。
【アゲハチョウ科】全9種
(1)アオスジアゲハ(Graphium sarpedon )
(2)ミカドアゲハ(Graphium doson postianus)
(3)コモンタイマイ(Graphium agamemnon )
(4)シロオビアゲハ(Papilio polytes )
(5)クロアゲハ(Papilio protenor )
(6)シロオビモンキアゲハ(Papilio nephelus chaonulus)
(7)オナシモンキアゲハ(Papilio castor formosanus)
(8)ワタナベアゲハ(Papilio thaiwanus)
(9)タイワンルリモンアゲハ(Papilio hermosanus)

by fanseab | 2015-10-31 21:18 | | Comments(8)
Commented by nomu376 at 2015-10-31 21:48
これ。クロアゲハですかぁ!?
凄いですね!
タイワンルリモンアゲハもため息が出そうな美しさですねぇ〜。
この蝶の2枚目の画像、本当に瑠璃が隠れても美しい・・・
ええもん見させて頂きました〜。
Commented by otto-N at 2015-11-01 20:16 x
今年の5月、ベトナムのある遺跡でマダラチョウを撮っているとき、センダングサにルリモンアゲハがやってきました。
花から花へめまぐるしく飛び回り、ピントを合わせることもできなく飛び去ってしまいました。
初めてのマダラチョウを撮ったのにもかかわらず、撮り損なった大きな瑠璃紋の美しさが目に焼き付き、その日は意気消沈していました。
(先日、立ち読みですが、フトオアゲハの完品の写真を見ました。fanseabさんがこのアゲハに集中していた理由がやっと理解できた次第です)
Commented by fanseab at 2015-11-01 21:42 x
otto-Nさん、吸蜜中のアゲハ類は仰る通り、いつ逃げてしまうか?
戦々恐々として撮らねばなりませんね。経験上、完品だと吸蜜時間が短く、
ボロ個体だと長いのが辛いところです(^^; まるで写し手の心を弄ぶ
かのようで、悔しい思いをすることが多いです。フトオの場合は
やはり尾状突起が完品でないと、ガッカリしますね。
Commented by fanseab at 2015-11-02 21:12
nomusan、クロアゲハも八重山産あたりでは結構裏面が赤くなりますが、
ワタナベアゲハ裏面と比較すると、色彩が橙色を帯びていますね。
ワタナベアゲハは真紅なので、印象は全く異なると思います。
タイワンルリモンの吸水個体はほぼ無傷で美しさを堪能できました。
Commented by Sippo5655 at 2015-11-02 21:30
ナガサキさん、そしてワタナベさん!?
ワタナベアゲハって、ワタナベさんが命名したのでしょうか?
裏側の赤がすっごく綺麗ですね!!
タイワンルリモンアゲハのグリーンの輝きも凄いヾ(´▽`*;)ゝ"
アオスジのブルーグリーンとはまた違った色合い?
Commented by fanseab at 2015-11-03 11:57 x
Sippo5655さん、ナガサキアゲハはシーボルトが長崎で初採集し、地名の「ナガサキ」
を命名しました。一方、ワタナベアゲハは明治時代に台湾に赴任していた渡辺亀作氏
が採集し、松村松年博士が献名したものです。普通自分が採集・発見した学名には
自らの名前を付与しないのがルールなんです。
後翅裏面のショッキングレッドは日本の蝶には見られない彩りです。
タイワンルリモンの金緑色鱗粉は日本のミヤマカラスやカラスとは微妙に異なる
輝きがあります。
Commented by yurinBD at 2015-11-03 17:12
タイワンルリモンアゲハ、ひじょ~に美しいですねっ!
グリーンの煌めきは夜空に広がる天の川の雰囲気!
これは是非、見てみたい蝶です。メモっておきます(笑)
ワタナベアゲハの赤紋も立派ですね~。
Commented by fanseab at 2015-11-03 21:17 x
yurinBDさん、parisの兄弟は本当に美しいのですが、意外と撮影には苦労
しています。吸蜜よりは吸水の方が動きが少なく、金緑色鱗粉を表現するには
楽ですね。綺麗な個体に巡り合えると、それだけで写真の質が上がります。
ワタナベアゲハの♀は後翅に白班も入るので、次回以降の課題です。
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