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探蝶逍遥記

台湾宜蘭縣遠征記(17)セセリチョウ科

 悪天候続きでセセリの方も芳しくない成績でした。何とか未撮影種に出会いたい・・・。そんな管理人の想いに応えてくれたのが、オオキコモンセセリ(Celanorrhinus maclosus taiwanus)。渓谷沿いでの収穫が無く、気分転換に急傾斜の山腹を登って行く途中、フラフラと脇道から飛び立ち、すぐに葉裏に隠れるセセリがおりました。ほぼ正面から捉えたショットです。

+++横位置画像はクリックで拡大されます+++
台湾宜蘭縣遠征記(17)セセリチョウ科_f0090680_20582824.jpg
GX7-Z60、ISO=800、F5.6-1/125、-1.0EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:10時45分(5月30日)

 活動時間帯ではないのでしょう。脅かすと、グルグルと舞い、直ぐに葉裏にベタッと翅を全開して止まる、シロシタセセリ(Tagiades属)と全く同じ挙動を示します。
 液晶モニターのアングルを可変して少し下側から覗き込んでみました。
台湾宜蘭縣遠征記(17)セセリチョウ科_f0090680_20584362.jpg
GX7-Z60、ISO=800、F5.6-1/125、-1.0EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:10時45分(5月30日)

 これでも未だ翅表の全貌は確認できません。バリアングルモニターではないので、縦位置だとどうも蝶を上手くモニター上に収められません(^^; 散々苦労してようやく表翅の真下から撮影することに成功。
台湾宜蘭縣遠征記(17)セセリチョウ科_f0090680_20585954.jpg
GX7-Z60、ISO=800、F5.6-1/250、-1.0EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:10時47分(5月30日)

 台湾のCelanorrhinus属は全7種類が知られており、後翅表の「黄小紋」のサイズが一際大きいのが、本種とエサキキコモンセセリ(C.oscula major)。オオキコモンとエサキは地域と標高で棲み分けしているようです。いずれも落ち着いたデザインで好みのセセリですね。この子が登場した環境画像もアップしておきましょう。
台湾宜蘭縣遠征記(17)セセリチョウ科_f0090680_21364.jpg
TG2@4.5mm、ISO=200、F2.8-1/160、撮影時刻:12時04分(5月30日)

 西側に開けた急傾斜地で画面中央左の草地の葉裏が隠れ家になっておりました。やや薄暗い環境ですが、これより暗い場所は嫌うようです。
 お次は日本でもお馴染みのクロセセリ(Notocrypta cruvifascia)。
台湾宜蘭縣遠征記(17)セセリチョウ科_f0090680_20594587.jpg
D7K-34(トリミング)、ISO=500、F11-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:13時40分(5月31日)

 雰囲気的に♀でしょう。花はショウガ科のゲットウだと思います。ゲットウだとするとこのセセリのホストから吸蜜していることになりますね。クロセセリはいつも大ぶりの花を好むような気がします。結果、吸蜜時のストローが花弁に隠れて「吸蜜している」雰囲気を出すのに苦労します。国内でも京都のポイントで良く訪花に来る芙蓉もそうですし、2011年に台東で撮影した個体も巨大なヒルガオ系花弁に首を突っ込むように吸蜜していて、「絵」にならなかったことを思いだしました。
 最後は幼虫画像。午後の降雨の中、林道を歩いていると、イネ科のSetaria palmifolia(台湾名:棕葉狗尾草)にセセリと思しき巣を発見。
台湾宜蘭縣遠征記(17)セセリチョウ科_f0090680_210810.jpg
TG2@4.5mm、ISO=200、F2-1/320、-0.7EV、撮影時刻:15時13分(5月31日)

 巣を空けると、登場したのは体長30mmほどの幼虫。
台湾宜蘭縣遠征記(17)セセリチョウ科_f0090680_2102326.jpg
TG2@4.5mm(トリミング)、ISO=200、F2-1/320、-0.7EV、撮影時刻:15時13分(5月31日)

 頭部は一部に暗赤褐色の斑紋があるもののほぼ漆黒。尾端に黒褐色斑がないことを併せて考えるとタケアカセセリ(Telicota ohara formosana)の4齢幼虫と思われます。2011年の台東県遠征(外部リンクでも全く同じ食草の巣内から本種終齢幼虫と思しき個体を見出しております。
 丁度寄生蜂(矢印)が2匹幼虫にまとわりついておりました。その寄生蜂の拡大画像がこちら。
台湾宜蘭縣遠征記(17)セセリチョウ科_f0090680_2111691.jpg
TG2@18mm(トリミング)、ISO=800、F14-1/100、内蔵ストロボ、撮影時刻:15時23分(5月31日)

 タケアカセセリと思しき巣は沢山みつかりましたが、恐らく相当数は既に寄生されているのでしょう。
<次回へ続く>
by fanseab | 2015-03-05 21:05 | | Comments(8)
Commented by yurinBD at 2015-03-06 07:10
オオキコモンセセリ、独特の雰囲気を持つお洒落な蝶
ですね!
未撮影種の撮影成功、おめでとうございました!
台湾、是非行ってみたい場所になりました!
先日はお会いすることができ、光栄でした。
今後とも宜しくお願い申し上げます。
Commented by himeoo27 at 2015-03-06 21:42
オオコモンセセリは、色合いも、形状も
セセリ好きの私には垂涎もののチョウで
すね!
台湾に行きたいなあ~。
Commented by fanseab at 2015-03-06 22:54 x
yurinBDさん、先日はこちらこそ偶然お会いできて、光栄でした。楽しいお話をありがとうございました。
オオキコモンはミヤマセセリの雰囲気に近く、東アジアの香りがするセセリです。
台湾も高標高地から低地まで、相当幅広い気候があるため、蝶相も大変豊富で、魅力的です。
機会があれば是非一度おでかけ下さい。
Commented by fanseab at 2015-03-06 22:56 x
himeooさん、貴殿もオオキコモンセセリがお気に入りのようで何よりです。台湾はセセリの種類も多く、固有種も結構棲んでいるのですよ。機会がありましたら、是非台湾に足を運んで下さい。台北近辺でも十分に楽しめます。
Commented by Sippo5655 at 2015-03-07 22:15
セセリチョウって、

ふと思ったのですが、この子って

葉裏に止まる様子とか、

蛾との中間みたいな?


翅の色も茶色中心だし


どういう歴史をたどってきたのだろう。


ふと、そんな経緯に思いを馳せてしまいました。


セセリを、どんなに綺麗に撮ってあげても、

知らない人に見せると、蛾にしか見えないと

敬遠されてしまうのです;_;
Commented by fanseab at 2015-03-08 12:13 x
Sippo5655さん、展覧会ではお世話になりました。
葉裏に隠れる蝶はそんなに多くはありませんね。
日本で見られる蝶だと、スミナガシとかイシガケチョウあたりに限られます。恐らく外敵から身を隠す作戦なのでしょうが、一部の蝶にしか見られない習性であることが面白いです。
セセリは普通の人が見たら、蝶とは言ってくれないのが悩みですよね。
Commented by しじみ at 2015-03-08 21:59 x
こんばんは。度々すみません。
先日、シジミチョウについて教えて頂いた者です。
死んだと思っていたのが、実は生きておりました。
素人目では、明らかに死んだように見えておりましたが、部屋を温めたら驚くほど元気になり動き回り、暖房を切るとまた死んだようにひっくり返って動かなくなるのです。自然の蝶も、気温の変化でこのようになるものなのでしょうか。
特に暖かい場所に置くと、羽を動かそうとするのですが、この子は生まれた時から羽がシワシワで、飛べないので可哀相です。(ご指摘頂いたように、ツバメシジミではないのかもしれません。羽がピンとしていないので、同定が私には難しいです。)
教えて頂いたように、ポカリスエットをティッシュに吸わせて与えています。吸い終わったらストローをくるくる巻いて収納するのがとても可愛いのですが…
羽のシワをどうにかして伸ばして、飛べるようにしてあげるなんて事はきっと、できませんよね……
Commented by fanseab at 2015-03-08 23:18 x
しじみさん、こんばんは。そうでしたか!
「羽がシワシワ・・・」、これは羽化不全といって、蛹から羽化した後、何らかの原因で翅が完全に伸びきらなかった結果です。自然界でも時々このような子に出会います。自然界では上手く飛べないので、すぐに蟻や外敵の犠牲になってしまいます。一旦、羽化不全を起こすと、シワを延ばすことは残念ながらできません。
 チョウは温度の変化に大変敏感な生き物で、概ね15℃以下ではほとんど動けません。逆にあまり暖かい環境に置くと活発すぎて寿命を縮めることになります。現状通りの生活と餌やりを続ければ、あと2週間程度は生きていけると思いますよ。暖かく見守ってあげて下さい。
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