探蝶逍遥記

台湾宜蘭縣遠征記(13)イチモンジチョウ亜科

 トップバッターはお馴染みのイシガケチョウ(Cyrestis thyodamas formosana)。
いつもこの子に対してはお座なりの撮影に終始してしまいます。今回もこの通り(^^;

+++横位置画像はクリックで拡大されます+++
f0090680_2172665.jpg
D71K-34(トリミング)、ISO=400、F9-1/800、-1.0EV、撮影時刻:7時56分(6月1日)

 個体数は少なかったように思います。お次はスズキミスジ(Neptis soma tayalina)♂。
f0090680_2174677.jpg
D71K-34、ISO=400、F10-1/400、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:9時45分(5月29日)
f0090680_2175952.jpg
D71K-34(トリミング)、ISO=400、F11-1/640、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:9時46分(5月29日)

 河原に吸水にやって来た個体。数は少ないものの、ほぼ毎日観察できたように思います。実は本種の同定にはいささか苦労させられました。台湾のNeptis属は全14種。このうち小型の5種が同定に難儀するグループ。更にこの5種は前翅中室白条の太さによって、2群に分離可能です。同中室白条は途中で中断されるため、丁度「筆」を思わせる形状になります。管理人は筆の太さ・「穂先」の太さに着目して下記の通り識別用の区分(※)をしております。

<太筆グループ>
・コミスジ(N.sappho formosana
・リュウキュウミスジ(N.hylas luclenta
・スズキミスジ(N. soma tayalina
<細筆グループ>
・タイワンミスジ(N. nata lutatia
・ミヤジマミスジ(N.reducta
※交尾器に着目した正式区分はsappho,hylashylas群、nata,soma,reductanata群に分類される。

 もちろん、各々個体変異があって、「筆の柄・穂先の太さ」にはバラツキがありますが、まぁ、ある程度の傾向があるので、この識別法は便利です。Neptisは概ね止まると直ぐに開翅するので、先ずは前翅中室白条に着目して撮影対象種か否かを区別することが必須なので、上記区分が有用となるのです。
 さて、今回は当初撮影個体をリュウキュウミスジかな、と思いましたが、帰国後詳細に検討してスズキミスジと判定いたしました。識別点をまとめた画像がこちら。
f0090680_2182177.jpg


 本画像を用いて、同定の難しい3種(コミスジ、リュウキュウ、スズキ)の識別点をまとめてみました。
(1)前翅裏面亜外縁部の白班:第4室(A2)と第5室(A1)の大小関係
コミスジ、リュウキュウ:A2<A1だがA2は顕著に出現
スズキ:A2<<A1で、時にA2は消失
(2)後翅中央白帯Bと外側白帯Cに挟まれた暗褐色部の巾F
3種共に後翅前縁部側で狭まる傾向にあるが、スズキが最も顕著に狭まる
(3)後翅亜外縁白条Dの位置(外側白帯Cとの距離)
リュウキュウ→コミスジ→スズキの順で外側白帯Cに接近する。
(4)後翅裏面外縁白条Eの性状
コミスジ・リュウキュウ:ほぼ連続した破線
スズキ:第3室後半~第4室前半にかけて一旦消失する傾向を示す

 もちろん、個体変異はありますので、(1)~(4)を総合的に勘案して同定の決めてとします。一番根拠にしやすいのは(3)の形質で、表翅にもDが出現しますので、開翅した状態でも先ず一発判定できそうです。上記形質差を判断する上でも裏面を撮影することが大変大事です。Neptisは吸水場面以外、裏面を撮影することが難しいのですけど、撮影後の同定作業に無駄な労力を費やすよりは、頑張って裏面撮影に努力を振り向けるべきだと思いました。
 次はミナミイチモンジ群(Athyma属)。代表種のヤエヤマイチモンジ(A.selenophora laela)♂。
f0090680_2183846.jpg
D71K-34(トリミング)、ISO=400、F11-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:14時00分(5月31日)

 この日は正午過ぎに一旦雨が止み、到着翌日から目を付けていた「美味しそうな」林道を歩いてみました。途中の一角に本種が数頭群れている場所を発見。生憎再び雨足が強くなり、ビニール傘を差しての撮影となりました。本種と混飛していたのが、タイワンイチモンジ(A.cama zoroastes)♂。
f0090680_2185448.jpg
D71K-34(トリミング)、ISO=400、F11-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:14時02分(5月31日)

 前翅端の橙色班が目印。「俺はヤエヤマとは違うよ!」と主張しているようですね。
Athymaとしては、ヒラヤマミスジ(A.opalina hirayamai)、ナカグロミスジ(A.asura baelia)、ララサンミスジ(A.fortuna kodahirai)などの未撮影種に期待したのですが、天候のせいなのかサッパリ出現してくれませんでした。
 サッパリと言えば、ちょっぴり期待したEuthalia(イナズマチョウ)の一群も全くの坊主。そんな中、嬉しかったのはオスアカミスジ(Abrota ganga formosana)♂と出会えたこと。5月30日、仕掛けたパイナップルトラップ付近に2頭のタイワンキマダラを発見。慎重に接近してファインダーを覗くと、どうも左側の個体がやけに大きくて翅形も異なることに気が付きました。そのうちこの個体が翅を開き、オスアカと判明。慌てて撮影を開始しました。
f0090680_21916100.jpg
D71K-34(トリミング)、ISO=400、F10-1/320、-1.0EV、外部ストロボ、撮影時刻:11時25分(5月30日)
f0090680_2192655.jpg
D71K-34(トリミング)、ISO=400、F10-1/320、-1.0EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時34分(5月30日)

 翅を完全に開翅する場面を期待して待機するものの、2枚目の半開翅状態が精一杯でした。最後に魚露目で。
f0090680_2193878.jpg
TG2@18mm-gy8、ISO=800、F4.9-1/100、内蔵ストロボ、撮影時刻:12時44分(5月30日)

 背景が魚露目で撮っても面白みのない場所だったのは残念至極。オスアカミスジは和名の通り、表翅は♂♀異形で♀はAthymaそっくりの風貌をしております。系統樹の何処に本種を位置づけるか?古来研究者を悩ましてきましたが、故五十嵐遭氏らが幼生期を解明し(幼虫がイナズマチョウ同様のゲジゲジムシ)、Euthalia群に位置づけたことは記憶に新しいところです(※)。いつか♀を撮影してみたいものです。本種は年1化で、管理人が訪問した5月下旬は発生の走りだったようで、♀撮影にはもう少し時期を遅らせた方が良いことを帰国後知りました。 <次回へ続く>

※五十嵐邁・張連浩(1994) 台湾産オスアカミスジの生活史とその分類学的位置.Butterflies(Teinopalpus)9:47-55.
by fanseab | 2015-02-16 23:11 | | Comments(0)
名前
URL
画像認証
削除用パスワード