探蝶逍遥記

有尾(優美)型ナガサキアゲハ♀(9月中旬)

 先日のホシミスジ探索の際、林縁を歩いていると、黒系アゲハが目の前を横切って行きました。ちょっと見、ナガサキアゲハ♀のようですが、少し赤味が強く異常な感じがしました。灌木の茂みに隠れたので、追跡すると、植栽のアベリアで吸蜜しており、なんと「ベニモンアゲハ!」でした。この「ベニモン」、そのまま横方向に移動し、運よく民家脇のサルビアで吸蜜を開始しました。

+++画像はクリックで拡大されます+++
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D71K-34、ISO=500、F11-1/640、-0.7EV、撮影時刻:10時00分

 しかし、ファンダーを覗きながら、「ちょっとおかしいな!」と気が付きました。ベニモンにしてはムチャでかいし、腹部の模様も異なります。前後翅裏面基部の赤班を確認してようやくナガサキの♀だと理解できました。珍品の「有尾型♀」だったのです!管理人はベニモン擬態の♀に騙されてしまったのでした。この後、結構長く吸蜜しておりましたので、画像を追加できました。
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D71K-34、ISO=500、F11-1/640、-0.7EV、撮影時刻:10時00分
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D71K-34、ISO=500、F9-1/800、-0.7EV、撮影時刻:10時02分

 2枚目の画像で明確なように有尾型♀の側面は黄色に彩られており、Pachliopta属らしく見せる工夫が施されております。有尾型♀については、管理人はこれまで国内はもとより、海外遠征でも出会ったことがありません。そもそも東南アジア遠征でナガサキ♀に出会ったのはボルネオ・ダナムバレーのみで、この時は極普通の無尾型♀でした。有尾型は遺伝的多型の一つですが、滅多に見ることができません。その理由については、以前、ダンダラさんのブログ(外部リンク)コメント欄で、熱い議論が交わされておりました。興味のある方はこの記事をご覧になって下さい。
 また、飼育で発生した有尾型については、本体ホームページにリンクさせて頂いているTさんのサイト(外部リンクに標本画像があります。こちらも参考にご覧頂ければと思います。

 有尾型は東南アジア各地に分布する亜種毎にかなり斑紋が異なりますので、有尾型♀のみを蒐集するコレクターも多いと推定されます。例えばボルネオ~ジャワ島に分布する名義タイプ亜種(memnon)では後翅の白斑がかなり拡大し、後翅肛角部は黄褐色。中国大陸~インドシナ半島分布の亜種agenorでは、白色部が縮小し、後翅肛角部は赤色。今回管理人が出会った♀は斑紋の特徴から、国内産亜種thunbergiiであり、迷蝶由来ではないと思われます。地理的に比較的近いagenorthunbergii各々の有尾型斑紋の特徴が類似しているのも興味深い現象です。また、有尾型には尾状突起が異常に細いタイプも採集されていて、このタイプは現地に混棲しているホソバジャコウアゲハ(Losaria coon)擬態とされており、ナガサキ♀の擬態工作も奥深いものがあります。今回出会ったナガサキ♀の美しさはやはり別格でしたので、本記事名にも「優美」型と付け加えてみました。実はこの♀の産卵シーンも狙って正午頃吸蜜していた場所近くのユズで張り込んでみましたが、♀は現れず、目論見は失敗に終わりました。
by fanseab | 2014-09-21 21:55 | | Comments(14)
Commented by ダンダラ at 2014-09-22 09:12 x
ナガサキアゲハの有尾型ですか。
話には聞きますが、国内の個体を見るのは初めてのような気がします。
胴体の色も違うんですね。
Commented by 愛野緑 at 2014-09-22 15:36 x
後翅外縁まで紅色が出ているんですね。まさに「優美型」!有尾型は南方だけのものではないのですね、素晴らしい出会いでしたね。
Commented by fanseab at 2014-09-22 21:04 x
ダンダラさん、ナガサキと判明するまで、しばらく時間がかかりました。想定外ですので、思わずベニモンと誤認しました。東京近辺ではベニモンが存在しないので、こんな擬態タイプが発生しても外的防御効果はあまり期待できないのでしょうね。
胴体の黄色は尾状突起と必ずセットで発現する形質とされているようです。
Commented by fanseab at 2014-09-22 21:07 x
愛野緑さん、最初目撃した時、やけに赤いな!と印象づけたのは、ご指摘の通り、普段は赤くない部分が赤くなっているのと、前翅の色合いも褐色を呈していたからだと思います。シジミチョウの異常型には小生出会ったことがありませんが、今回は本当にラッキーだったと思います。
Commented by Sippo5655 at 2014-09-22 22:26
わあ、初めて見ました!
翅の付け根の赤い点が、ナガサキアゲハですね、、
こうなるのにも、理由が存在するんですね
比較的近所でナガサキアゲハは出会えるのですが
♀には会えません。
どこに隠れているんだか><
Commented by dragonbutter at 2014-09-22 23:12
有尾(優美)型の撮影おめでとうございます。
本土での生態写真は初めてなのではないでしょうか。
腹部の色にもびっくりです。
これも日頃から蝶の生態をこまめに観察しておられるfanseabさんへの蝶の神様からのご褒美ではないでしょうか。
Commented by yoda-1 at 2014-09-23 18:09
これは快挙ですね。
国内の有尾型は、それこそ、クロコムラサキのいない場所で、クロコムラサキを観るようなものでしょうか。
個人的に、2回目の海外遠征(台湾南部)で有尾型に遇えました。
http://yoda1.exblog.jp/12309660/
また紹介いただいた、ダンダラさんのブログにあるkenkenさんのコメントにあるリンクは、現在こちらになっているようです。
http://spinda.seesaa.net/article/138459839.html
どちらも、本土産の控えめな白斑個体に、有尾になっているのが誠に希少です。
生態画像で、本土初の可能性が高いのであれば、表彰状ものですよね。
Commented by banyan10 at 2014-09-23 19:02
腹部の色は有尾型の特徴なのでしょうか。
リンクの飼育で発生した個体を見ると、国内のナガサキでもこういう個体が発生することは十分に可能性あるのですね。
それにしても新鮮な個体で美しいです。
Commented by fanseab at 2014-09-23 21:36 x
Sippo5655さん、とっても綺麗なナガサキ♀でしょ!優美型と名付けましたが、豪華型と言ってもいいかもしれません。小生の自宅付近でもナガサキに出会いますが、不思議と♂ばかりで♀には会えませんよ。
Commented by fanseab at 2014-09-23 21:38 x
dragonbutterさん、コメント有難うございます。
犬も歩けば棒に当たる、いな珍品に当たったと言うべきでしょうね。腹部の色合いまで変化させているのはびっくりします。
Commented by fanseab at 2014-09-23 21:40 x
yoda-1さん、貴殿が台湾で撮影された個体は後翅白斑の面積がデカくてより華麗な印象ですね。確かにネットで調べた限りでは本土での有尾型撮影事例は出てきませんでした。
Commented by fanseab at 2014-09-23 21:44 x
BANYANさん、有尾型と腹部側面の黄色化はセットで発現する形質とされています。ご指摘のように撮影した個体の尾状突起は完品で、これが両方折れていたら、写真の価値が半減以上だったかもしれません。
Commented by ごま at 2014-10-13 06:57 x
噂を聞いて見に来ました。
かなり出遅れました(^_^;)
ほぼ完ぺきな優美型個体ですね。
今年1番の快挙ではないでしょうか。
ナガサキは自分のフィールドにも沢山いますが、
こんな個体がいるなら、もっと注意深い観察が必要ですね。
モンキアゲハと思っても、油断しないようにします。
素晴らしいものを見せていただき感動しました。
Commented by fanseab at 2014-10-13 20:17 x
ごまさん、噂になっておりましたか(笑)
今年はあまり成果の無いシーズンでしたが、
たまにはこんなラッキーな出会いもありました。
もしも貴殿が遭遇しても、最初はナガサキとは全く別物だとすぐにわかると思いますよ。
それだけ擬態の見事さに改めて感動させられました。
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