探蝶逍遥記

コヒョウモンモドキの産卵行動を探る:その2(8月上旬)

 前回ご報告した北信のポイントでは産卵食草のクガイソウが見いだせない問題点がありました。産卵現場観察の難易度を下げるためには、クガイソウが確実に見られる場所での観察が必須と考え、中信地方の高原へ場所を移してのチャレンジです。
 ポイントと思われる斜面には7時過ぎに到着。ゆっくり斜面を登りながら、クガイソウの群落を探します。しかし、驚いたことに全くその姿がありません。遠くから斜面を見ると理想的な「草原」に見えるのですが、実はササが一面に覆っている「笹畑」になっているのです。唯一ヒヨドリバナ類がササ藪から抜き出ていて、ヒヨドリバナの一大群落を形成しております。そんなこんなで、やっとこさクガイソウを一株発見。

+++横位置画像はクリックで拡大されます+++
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TG2@4.5mm、ISO=200、F8-1/250、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:7時46分

 ここは露岩脇にある窪地で、クガイソウの株高さはヒヨドリバナの1/2程度ですので、うっかりすると見落してしまう所でした。この後、500mX1kmに及ぶ対象斜面を彷徨ってみましたが、全体で発見したクガイソウの株は僅か3株。もちろんいい加減なサンプリング調査の結果ですけど、株間隔はざっと見積もって200mに1本程度でしょうか?こちらは3株目の姿。
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TG2@4.5mm、ISO=200、F8-1/320、撮影時刻:8時03分

 こちらも窪地にあったので、遠目からは存在確認ができませんでした。こんな状況ですので、当初想定した「クガイソウ群落」等、夢のまた夢といった状況でした。ヒョウモン類が活動を開始し、ヒヨドリバナに吸蜜にやって来る時間帯になってもコヒョウモンモドキの姿はありません。この食草株数からは容易に想像できる結果でした。試しにそれまで確認したクガイソウの葉裏をチェックしましたが、モドキの卵塊は確認できませんでした。
 クガイソウ探索の過程で、高原に咲いている綺麗な花の様子も確認しました。先ずはハクサンフウロ。ベニヒカゲ含め、蝶が大変好むピンク色の花です。
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TG2@4.5mm、ISO=200、F8-1/320、撮影時刻:8時27分

 ハクサンフウロはご覧のように笹原から花茎を轆轤首のように伸ばし、群落を作っております。ササが侵食してきても花粉媒介を維持できる高さまで花弁を上げる能力を持っているのですね。この草原にも多い、コキマダラセセリの♀が丁度、吸蜜にやって参りました。
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D71K-34、ISO=200、F8-1/500、-1.0EV、外部ストロボ、撮影時刻:8時10分

 ハクサンフウロ以外では、イブキトラオノやヤナギランも株高で、ササ類の浸食には強そうです。
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D71K-34、ISO=200、F11-1/640、-1.0EV、撮影時刻:8時24分
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D71K-34、ISO=200、F11-1/640、-1.0EV、撮影時刻:8時59分

 ここまでの観察で、「ササ類の浸食→クガイソウの衰退→コヒョウモンモドキの衰退」
なるストーリーをぼんやりと実感しておりまして、ここにはモドキはいないだろうと諦めておりましたが、斜面を下りきったあたりで、ヒヨドリバナから吸蜜する一頭の♂をようやく発見。
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D71K-34、ISO=200、F10-1/640、-1.0EV、撮影時刻:9時29分

 羽化不全、かつ右触角が損傷した哀れな個体でしたが、意外と敏捷に飛び回っておりました。さてはこの近辺に食草があるのか?と必死に探しましたが、クガイソウは発見できず。ただ越冬後幼虫が食するとされるオトコヨモギは結構生えておりました。僅かに期待した♀の姿も発見できず、ガッカリでした。最近ブログ仲間により上高地上流にある露岩地帯の渓谷でクモマベニヒカゲやタカネキマダラセセリの画像が紹介されておりますが、クガイソウからの吸蜜シーンが定番となっております。それほど現地では普通に咲いている草本なのですが、高原ならどこでも咲いている草本ではなさそうです。結局、この斜面は見切りをつけて、やや湿潤環境にある草原に移動し、探索を続けました。暫く歩くと、この日、出会った4株目のクガイソウを発見。その後、現地でやっと♀に出会うことができました。
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D71K-34(トリミング)、ISO=200、F10-1/640、-1.0EV、外部ストロボ、撮影時刻:11時06分

 吸蜜源はアキノキリンソウだと思います。時折、ヒョウモンチョウ(ナミヒョウモン)♂に追跡されておりましたが、そのうち、この個体を見失ってジ・エンド(^^; 産卵時間帯と目される正午を含め午後1時過ぎまで粘るも♀を発見できず、ガッカリでした。ここではやっと、2株連なっているクガイソウ(画面中央下)を発見。
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TG2@9.6mm、ISO=200、F13-1/80、+0.3EV、撮影時刻:11時53分

 周辺はワレモコウの大群落で、チダケサシの数も多い場所です。この場所を離れて更に広大な高原の2箇所を探索しましたが、クガイソウは発見できず。コヒョウモンモドキの産卵現場探索で現地を訪問したつもりが、想定外の「クガイソウ群落探索」に目的がすり替わってしまいました。それほどクガイソウを発見するのは至難の業でした。この日の探索経験からは稜線上のように乾燥が進み過ぎた場所はクガイソウが嫌う感じで、やや湿潤な場所を好むようです。ただ類似環境はゴマンとあるのに、咲いている場所は限定されていて、単に地形的要素ではなく、土壌pH等も影響しているのか?と色々考えさせられたのでした。モドキ類(Melitaea属)はおしなべて食草が限定されているため、衰退しやすい種群と言えます。仮にヒヨドリバナに食性転換できるのであれば、今回訪問した高原はコヒョウモンモドキで溢れかえるのかもしれません。もちろん有りえない話でしょうけどね。今年のモドキ産卵探索はこれにて終了。「来夏の楽しみが残った」と負け惜しみを言っておくことにします(爆)
by fanseab | 2014-08-04 23:58 | | Comments(6)
Commented by himeoo27 at 2014-08-05 21:21
モドキ類と出逢うだけでも私のような素人は大変です。
何時も諸先輩に教えてもらっています(涙)。
食草「クガイソウ」から、ここまで考察し、行動し、撮影
するところが凄いですね!
Commented by ダンダラ at 2014-08-06 14:19 x
クガイソウはそんなに数が少ないですか。
意識して探したことはないので気が付かないのかな。
目的意識を持って蝶を探すと色々なことが見えてきますね。
コヒョウモンモドキの産卵は、見つけられたら楽しそうですね。
来シーズンは挑戦してみたくなりました。
Commented by at 2014-08-06 20:43 x
写真を拝見する限り、コヒョウモンモドキの幼虫が居る環境ではないですね。
5月下旬以降に生息地に行くと、運が良ければ多数の幼虫を目にすることができますが、幼虫が多い場所は小川というか沢というかちょろちょろとした流れの、河川敷(とは言わないか...?)にできた小さい草地のことが多いように感じます。
Commented by fanseab at 2014-08-06 21:08 x
himeooさん、かつては多産していたとされる場所ですが、発生末期とは言え、数は少なく、産卵シーン撮影にはちょっと無理がありました。これまでクガイソウの生息環境について、真面目に観察したことがなかったので、母蝶の生息環境とどうマッチングするのか、色々と考えさせられました。
Commented by fanseab at 2014-08-06 21:12 x
ダンダラさん、いざ見つけようと思うと、食草って、簡単には見つからないものですね。クガイソウについても生息環境をこの目で見て確かめないと、植物が好きそうな環境を探し当てられないような気がします。この後の記事でご紹介しますが、ヒョウモンチョウ(ナミヒョウモン)の場合は、ホストと母蝶の生息環境が見事にマッチングしていて、産卵シーン確保は比較的容易に思いました。コヒョウモンモドキの産卵は今回訪問した場所以外も検討して、来シーズンゲットしたいと思います。
Commented by fanseab at 2014-08-06 21:16 x
中さん、貴重なコメント有難うございます。今回の観察経験から、母蝶が飛んでいる環境とクガイソウが好む環境がマッチングしていない印象があったので、母蝶が産卵のため、食草を求めてかなり移動するのかもしれないと思っておりました。沢沿いにクガイソウが多いとすると、なるほどそうかな?と合点がいきます。探索箇所の見直しを検討してみますね。
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