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探蝶逍遥記

クヌギの樹肌に潜む幼虫達(5月中旬)

【ご注意】今回の記事では沢山のイモムシ画像が登場します。この手の画像がお嫌いな方は絶対に記事を読まないで下さいね!

 先日、虫林さん(外部リンクがクロミドリシジミ終齢幼虫の観察に成功した記事を書かれていました。過去2年間連続チャレンジで見事3度目の正直で撮影に成功された由。実は管理人も隔年ですが、過去2戦連敗。虫林さんの成果にあやかって、「3度目の正直」に賭けてみました。山梨のクロミドリポイントへは10時頃到着。早速クロミが好むご神木からチェックしていきます。時期的にはそろそろ終齢(4齢)幼虫も老熟化している頃であり、クヌギの根元に近い部分から目線の高さまでじっくりと観察。静止する位置・方角に好みがあるのか?さっぱり分からないので、丹念に探すしかありません。結局2時間ほどかけて6-7本チェックした所でランチ休憩。車内でコンビニのお握りを食べながら、ふと外を見ると新鮮なクモガタヒョウモン♂が飛んでおります。しかし、この日は成虫撮影に「無駄な体力」を使うことを避け、ただ眺めるだけにしました。午後に入ってから捜索範囲を更に広げてみますが、事態は進展しません。通常ならここで諦めて撤収するのですが、「幼虫の活動は夕刻から活発化する」との図鑑記載事項がふと頭によぎり、午後5時まで粘ってみました。それでも結果は坊主でした。探索したクヌギは恐らく15本を超えていたでしょう。ひどくガッカリしましたが、探索の過程で、クヌギの樹肌、特に樹皮上、縦に裂けた溝中に潜む多くの鱗翅類その他の幼虫が観察できました。今回はその幼虫達のご紹介です。なお蛾類幼虫についてはWEB検索で調べておりますが、同定ミスが多々あるかもしれません。ご指摘頂けると幸いです。

 最初は黄色地に濃紺の斑点が鮮やかなこの子。

+++横位置画像はクリックで拡大されます+++
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TG2@18mm(トリミング)、ISO=800、F14-1/100、内蔵ストロボ、撮影時刻:10時57分

 サカハチトガリバ(Kurama mirabilis)の終齢幼虫だと思います。春~初夏に発生する年1化のカギバガ科。これだけド派手な配色だと野鳥の餌食にもなりそうですが・・・。お次はシャクガの仲間だと思いますが、同定できませんでした。
クヌギの樹肌に潜む幼虫達(5月中旬)_f0090680_21493382.jpg
TG2@13.5mm(トリミング)、ISO=200、F13-1/80、内蔵ストロボ、撮影時刻:10時51分

 三番手に登場するのはマユミトガリバ(Neoploca arctipennis)もしくはホシボシトガリバ(Demopsestis punctigera)の中齢幼虫と思しき個体。
クヌギの樹肌に潜む幼虫達(5月中旬)_f0090680_21495577.jpg
TG2@13.5mm(トリミング)、ISO=200、F13-1/80、内蔵ストロボ、撮影時刻:10時51分

 検索補助として「イモムシハンドブック(文一総合出版刊)」を使用しておりますが、終齢幼虫のみ掲載だと初・中齢幼虫の同定が厳しくなるのが難点ですね。四番バッターは擬態の真打とも言うべきこの子。
クヌギの樹肌に潜む幼虫達(5月中旬)_f0090680_21501283.jpg
D71K-85VR(トリミング)、ISO=400、F11-1/125、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:15時17分

 縦溝にピッタリ収まるように静止していて、しかも色合いまで擬態しているかのようです。フユシャクの1種かもしれません。こんな繭(蛹)も見つけました。
クヌギの樹肌に潜む幼虫達(5月中旬)_f0090680_21502646.jpg
D71K-85VR(トリミング)、ISO=100、F11-1/160、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:13時58分

 これも縦溝の細長い空間を見事に利用しているものだと思いました。もちろん種類は不明(^^; さて、探索の過程で一番ギョッとさせられたのは、ゼフ終齢幼虫らしい風貌をしたこの子。
クヌギの樹肌に潜む幼虫達(5月中旬)_f0090680_21504241.jpg
TG2@12.6mm(トリミング)、ISO=100、F11-1/60、内蔵ストロボ、撮影時刻:10時42分

 実はこれ、鱗翅類の幼虫ではなく、フタスジヒラタアブ(Dasysyrphus bilineatus)の幼虫。よく見ると尾部(左側)にYの字型をした怪しげな外呼吸器官が見えております。通常捕食種はアブラムシのようですが、鱗翅類幼虫も獲物にしているようです。周りは獲物には事欠かないですから、このアブ幼虫にとっては天国のような場所でしょうね。「犠牲者リスト」にクロミドリ幼虫も入っているかもしれません。クヌギの樹皮上にはこれだけ大量の鱗翅類幼虫が暮らしている訳ですから、ヒラタアブ以外の天敵にとっても天国なようで、寄生蜂の繭も、これまた膨大な数を確認できました。
クヌギの樹肌に潜む幼虫達(5月中旬)_f0090680_21514099.jpg
TG2@18mm(トリミング)、ISO=200、F14-1/100、内蔵ストロボ、撮影時刻:10時49分

 クヌギの大木を見上げると葉の面積はこれら鱗翅類幼虫に食されて1/2程度になっておりました。天敵がいなければ丸坊主にされていたことでしょう。
 クヌギの樹肌上には幼虫だけではなく、蛾の成虫も鎮座しておりました。
クヌギの樹肌に潜む幼虫達(5月中旬)_f0090680_21251573.jpg
D71K-85VR(トリミング)、ISO=400、F11-1/80、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:15時14分

 コブガの1種でしょうか?これまた凄い擬態の名手で、頭を下にして静止しておりました。不思議なことに本種が集まるご神木があるようで、同じようなクヌギ巨木の中で極限定された株にしか観察できませんでした。

 さて、クロミ幼虫は今回も惨敗で三戦三敗の不名誉な記録を作ってしまいました。しかしゼフの神様(ゼフ:西風の神様だからおかしな表現ですが)は管理人を見捨ててはいなかったようです。この日、クヌギ樹皮縦溝から思わぬ「お宝」を掘り出しました。
クヌギの樹肌に潜む幼虫達(5月中旬)_f0090680_21523212.jpg
TG2@18mm(トリミング)-gy8、ISO=800、F18-1/100、+1.0EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:12時43分

 ウラミスジシジミの老熟幼虫でした。体長は17mm。独特な形態と色彩から直感。クヌギの幹の太さは50cmを超す巨木で、地上高1m。西南向きで、↑の魚露目画像から理解できるようにやや暗い環境でした。管理人にとって本種幼虫を野外で発見するのはもちろんこれが初めて。ウラミスジの終齢幼虫は蛹化準備のため、このような樹皮上の溝を選ぶか、あるいは自ら溝を掘って前蛹になるのだそうです。85mmマクロでも撮影。
クヌギの樹肌に潜む幼虫達(5月中旬)_f0090680_21525586.jpg
D71K-85VR(トリミング+5コマ深度合成)、ISO=400、F11-1/125、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:13時56分

 ウラミスジ終齢幼虫の地色は本来鮮やかな緑色を呈するのですが、既に褐色を帯びております。前蛹では恐らく他のゼフ同様、ピンク色を帯びるのでしょう。クロミドリ幼虫については個体数が多いポイント故、この後3シーズンほど探索をすれば、いずれ発見できることでしょう。しかし、クロミに比較して圧倒的に個体数の少ないウラミスジ幼虫、それも樹皮に降下してきた老熟幼虫は今後いくら努力しても発見できないことでしょう。今回、クロミ幼虫発見の運はなかったものの、ウラミスジ幼虫を見出す幸運に恵まれて、ヤレヤレでした。

 クヌギの樹肌以外にもウメをチェックしてオオミスジ終齢幼虫も探しましたが、こちらも坊主。エノキからはヒオドシチョウ、テングチョウ、オオムラサキの終齢幼虫を見出しました。オオムラサキの5齢幼虫画像のみ貼っておきましょう。
クヌギの樹肌に潜む幼虫達(5月中旬)_f0090680_21245928.jpg
D71K-85VR(トリミング)、ISO=200、F11-1/100、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:15時40分

 今年も沢山の成虫を観察できるといいですね。
 都合7時間に及ぶ探索のストーリー、最後までお読み下さり有難うございました。
by fanseab | 2014-05-19 21:56 | | Comments(6)
Commented by banyan10 at 2014-05-20 16:56
fanseabさんでもなかなか見つけられないとはクロミ幼虫は難関ですね。
ウラミスジ終齢は格好いいですよね。
教えてもらって前蛹や蛹も撮影していますが、同じような窪みです。
この場所はそのまま蛹化する可能性高いのではないでしょうか。
Commented by fanseab at 2014-05-20 21:31 x
BANYANさん、クロミに限らず、ゼフ幼虫探索は運不運が付き物で、見つかる時はいとも簡単に発見できるのではと半ば達観しております(笑)
貴ブログの過去記事を拝見しました。確かに窪みに
きちんと蛹が収まっておりますね。
暫くしてから蛹化の確認をしてみたいと思います。
蛹画像も未撮影なものですから。
Commented by 虫林 at 2014-05-21 16:00 x
クロミの幼虫は残念でしたが、楽しみは先に延ばしておきましょ
う。でも、ウラミスジの幼虫を見つけるなんて驚きました。おめでと
うございます。さすがです。


Commented by fanseab at 2014-05-21 21:23 x
虫林さん、貴殿の記事に刺激されてお膝元で頑張ってみましたが、クロミに関しては運がなかったようです。ハイ、悔しいですけど、楽しみは先に延ばします。ウラミスジには小生もビックリしました。つぶさに探していると色々な昆虫と出会うものだと、今回つくづく思いました。
Commented by clossiana at 2014-05-23 08:34
クロミを今年も探したのですが見つからず。。昨年、見ていましたので、いさえすれば「目に飛び込んでくるだろう」と思っていましたが、そう甘くはありませんでした。ウラミスの幼虫の体色変化ですが、樹を降り始める時にはすでに↑のようになっているのか、それとも落着き先がきまってからなのか御存知ですか?
実は降りてくる途中を見つけようとしたのですがダメだったのです。体色変化後のウラミス幼虫を見つけられるとはすごいですね。色々な怪し気な幼虫たちも面白かったです。
Commented by fanseab at 2014-05-24 21:58 x
clossianaさん、ウラミスジ終齢幼虫の体色変化のタイミングについては小生知識がありません。越冬卵からの飼育をすればヒントはつかめるでしょう。ただ降りはじめる時期は前蛹一歩手前なので、既に体色変化が始まっているような気がします。
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