ウスバシロチョウの産卵・交尾など(5月中旬)
ウスバシロの産卵狙いで、東京都下の谷戸へ出撃。ゴールデンウイーク前半戦から既に♂が飛び始めていることは確認済ですので、♀狙いには丁度良いとの判断です。現地に出向くとムチャ多数の♂が飛翔しております。昨年は個体数が激減していたので、心配しておりましたが、ここ数年で最も豊作の年と思われ、一安心。♂は見向きもしないで、ひたすら♀探索。原則、白色鱗粉少な目が♀の特徴ですが、中には♂同様白い個体もいて、騙されます。ようやく黄色味を帯びた♀を発見。フワフワ飛びながら、突然ストンと落ちるように草叢に降下します。これが産卵行動開始のシグナルです。落下後、ガサゴソ草叢の中を動き回り、枯葉や枯茎の類を見つけると前脚で確認作業を行っていきます。
+++横位置画像はクリックで拡大されます+++
D71K-85VR、ISO=200、F11-1/800、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時28分
残念ながらこの枯葉は好みでないようで、パスしていきました。その直後、今度は草丈の高い草本(恐らくキンポウゲ科のタガラシ)の根際に潜り込み産卵です!
D71K-85VR(トリミング)、ISO=200、F11-1/800、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時30分
しかし、露出を間違え大幅アンダー。おまけに葉被りで酷い画像ですが、腹部を曲げている産卵ポーズが何とか写せた証拠画像です(^^; 産卵場所の全景がこちら。
D71K-85VR、ISO=200、F11-1/800、-0.7EV、撮影時刻:10時28分
矢印で示した根際の枯れたスギの蕾上に3卵産んでおりました。卵の拡大像も撮影。
GX7-P1442@42mm-P14R(トリミング+上段のみ2コマ深度合成)、ISO=640、F20-1/125、LEDライト、撮影時刻:13時46分
照明方法の差でかなり様相が異なるものの、表面は他のアゲハチョウとはまるで異なり、シジミチョウの卵を連想させる細かな表面模様が特徴的です。直径も1.51mmで、ナガサキアゲハと同等の巨大なサイズ。なお、この撮影はミラーレス用に新たにレンズ系を改良した超拡大撮影システムを用いました。手法の詳細は別途記事でご紹介したいと思います。産卵直後はピンク色で、直ぐにご覧のようなクリーム色に変化します。更に時間が経過すると白色に変わり、越冬状態でも同じ色相のはずです。
この後、2時間近く♀を追跡しました。しかし、草叢に潜入するシーンは目撃するものの、肝心の産卵挙動には至らないケースのみで、結局↑の画像以外は撮影できませんでした。とにかく産卵場所として日陰を好むのと、草叢に潜入する産卵スタイルなので、撮影はアゲハチョウ科の中でも極めて難しい部類に属すると思います。いずれ再撮影にチャレンジしなければなりません。同じParnassiusでも大雪山で観察したウスバキチョウは燦々と陽が降り注ぐ露岩上に産み付けるので、よほど撮影は楽だと思いました。
※以前撮影に成功したウスバシロ♀の産卵シーンは こちら(外部リンク)
♀を追跡しながら、♂の飛翔も撮影。風薫る五月晴れの空の下、フワフワ飛ぶウスバシロは無性に飛翔を撮りたくなる対象ですね。
GX7-10.5(ノートリ)、ISO=200、F4.5-1/3200、撮影時刻:10時14分
GX7-10.5(トリミング)、ISO=200、F5.6-1/3200、撮影時刻:10時14分
GX7-10.5(トリミング)、ISO=200、F5.6-1/3200、撮影時刻:10時20分
いずれも40コマ/秒連射によるもので、操作法にも慣れてきたので、戦力になってきました。1枚目のようにノートリで撮影できれば画質はなかなかのものです。3枚目は♀の飛翔。♀の飛翔画像はこれまでの画像ストックの中になかったので、これは嬉しい絵になりました。定番のハルジオン吸蜜シーンも撮影。
D71K-85VR、ISO=200、F8-1/1250、-0.7EV、撮影時刻:11時24分
さて、♀を追跡中、フト地面を見るとバタバタしているウスバシロを発見。団子状態になっている求愛中の2頭の♂と♀(中央左上)でした。
D71K-85VR(トリミング)、ISO=400、F11-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時36分
そのうち、1頭の♂は諦めて飛び去り、交尾成立。♂がバルバを引っ掛ける直前のシーンです。
D71K-85VR(トリミング)、ISO=400、F11-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時36分
交尾中の姿(上が♀)をTG2に魚露目を付けて撮影。
TG2@18mm-gy8、ISO=400、F18-1/100、内蔵ストロボ+スレーブ1灯、撮影時刻:13時12分
他のブログ仲間の画像から期待しておりましたが、魚露目との相性は良好のようです。♀の左後翅には赤褐色の小斑点が付いております。恐らく羽化後に放つ赤褐色の蛹便が付着したのでしょう。羽化直に♂に襲われてもがいている最中に蛹便が翅を汚したと推察されます。読者の方はご存知の通り、ウスバシロの♀腹端には交尾後、♂の分泌物質により交尾栓(スフラギス)が形成されます。ここで交尾後36分および99分後の結合部(下が♂)を比較してみました。
D71K-85VR(トリミング+画像合成)、ISO=400、F8~11-1/320~1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:13時12分および14時15分
36分後には何もついておりません。交尾時間が2時間だとして、後半戦から♂が分泌を始めるのでしょうか?次回チャンスがあればスフラギス形成の詳細過程を連続撮影したいものです。ご覧のようにスフラギスは形成直後、半透明の寒天細工のような風合いをしております。これが継時的に白色→褐色→黒色に変化していくのですね。スフラギスがほぼ白色の個体も追跡しましたが、産卵挙動を行ったものは皆無でした。ある程度スフラギスが黒化した個体でないと、産卵行動をスタートできないのかもしれません。なお、この日、現地では保全協会でお馴染みの撮影仲間、Mさんも訪問されておりました。時間の経過も忘れてMさんと蝶談義をしながらの撮影を楽しみました。
+++横位置画像はクリックで拡大されます+++
D71K-85VR、ISO=200、F11-1/800、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時28分
残念ながらこの枯葉は好みでないようで、パスしていきました。その直後、今度は草丈の高い草本(恐らくキンポウゲ科のタガラシ)の根際に潜り込み産卵です!
D71K-85VR(トリミング)、ISO=200、F11-1/800、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時30分
しかし、露出を間違え大幅アンダー。おまけに葉被りで酷い画像ですが、腹部を曲げている産卵ポーズが何とか写せた証拠画像です(^^; 産卵場所の全景がこちら。
D71K-85VR、ISO=200、F11-1/800、-0.7EV、撮影時刻:10時28分
矢印で示した根際の枯れたスギの蕾上に3卵産んでおりました。卵の拡大像も撮影。
GX7-P1442@42mm-P14R(トリミング+上段のみ2コマ深度合成)、ISO=640、F20-1/125、LEDライト、撮影時刻:13時46分
照明方法の差でかなり様相が異なるものの、表面は他のアゲハチョウとはまるで異なり、シジミチョウの卵を連想させる細かな表面模様が特徴的です。直径も1.51mmで、ナガサキアゲハと同等の巨大なサイズ。なお、この撮影はミラーレス用に新たにレンズ系を改良した超拡大撮影システムを用いました。手法の詳細は別途記事でご紹介したいと思います。産卵直後はピンク色で、直ぐにご覧のようなクリーム色に変化します。更に時間が経過すると白色に変わり、越冬状態でも同じ色相のはずです。
この後、2時間近く♀を追跡しました。しかし、草叢に潜入するシーンは目撃するものの、肝心の産卵挙動には至らないケースのみで、結局↑の画像以外は撮影できませんでした。とにかく産卵場所として日陰を好むのと、草叢に潜入する産卵スタイルなので、撮影はアゲハチョウ科の中でも極めて難しい部類に属すると思います。いずれ再撮影にチャレンジしなければなりません。同じParnassiusでも大雪山で観察したウスバキチョウは燦々と陽が降り注ぐ露岩上に産み付けるので、よほど撮影は楽だと思いました。
※以前撮影に成功したウスバシロ♀の産卵シーンは こちら(外部リンク)
♀を追跡しながら、♂の飛翔も撮影。風薫る五月晴れの空の下、フワフワ飛ぶウスバシロは無性に飛翔を撮りたくなる対象ですね。
GX7-10.5(ノートリ)、ISO=200、F4.5-1/3200、撮影時刻:10時14分
GX7-10.5(トリミング)、ISO=200、F5.6-1/3200、撮影時刻:10時14分
GX7-10.5(トリミング)、ISO=200、F5.6-1/3200、撮影時刻:10時20分
いずれも40コマ/秒連射によるもので、操作法にも慣れてきたので、戦力になってきました。1枚目のようにノートリで撮影できれば画質はなかなかのものです。3枚目は♀の飛翔。♀の飛翔画像はこれまでの画像ストックの中になかったので、これは嬉しい絵になりました。定番のハルジオン吸蜜シーンも撮影。
D71K-85VR、ISO=200、F8-1/1250、-0.7EV、撮影時刻:11時24分
さて、♀を追跡中、フト地面を見るとバタバタしているウスバシロを発見。団子状態になっている求愛中の2頭の♂と♀(中央左上)でした。
D71K-85VR(トリミング)、ISO=400、F11-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時36分
そのうち、1頭の♂は諦めて飛び去り、交尾成立。♂がバルバを引っ掛ける直前のシーンです。
D71K-85VR(トリミング)、ISO=400、F11-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時36分
交尾中の姿(上が♀)をTG2に魚露目を付けて撮影。
TG2@18mm-gy8、ISO=400、F18-1/100、内蔵ストロボ+スレーブ1灯、撮影時刻:13時12分
他のブログ仲間の画像から期待しておりましたが、魚露目との相性は良好のようです。♀の左後翅には赤褐色の小斑点が付いております。恐らく羽化後に放つ赤褐色の蛹便が付着したのでしょう。羽化直に♂に襲われてもがいている最中に蛹便が翅を汚したと推察されます。読者の方はご存知の通り、ウスバシロの♀腹端には交尾後、♂の分泌物質により交尾栓(スフラギス)が形成されます。ここで交尾後36分および99分後の結合部(下が♂)を比較してみました。
D71K-85VR(トリミング+画像合成)、ISO=400、F8~11-1/320~1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:13時12分および14時15分
36分後には何もついておりません。交尾時間が2時間だとして、後半戦から♂が分泌を始めるのでしょうか?次回チャンスがあればスフラギス形成の詳細過程を連続撮影したいものです。ご覧のようにスフラギスは形成直後、半透明の寒天細工のような風合いをしております。これが継時的に白色→褐色→黒色に変化していくのですね。スフラギスがほぼ白色の個体も追跡しましたが、産卵挙動を行ったものは皆無でした。ある程度スフラギスが黒化した個体でないと、産卵行動をスタートできないのかもしれません。なお、この日、現地では保全協会でお馴染みの撮影仲間、Mさんも訪問されておりました。時間の経過も忘れてMさんと蝶談義をしながらの撮影を楽しみました。
by fanseab
| 2014-05-14 21:46
| 蝶
|
Comments(4)
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by
Sippo5655 at 2014-05-15 22:06
「スフラギス」っていう名前があるんですね、
初めて知りました。
産卵シーンの、翅の、赤い点は何でしょうか???
卵も見せて頂き♪
オフホワイトの、こんな宝石が
あの妖精を生み出すんですね!
初めて知りました。
産卵シーンの、翅の、赤い点は何でしょうか???
卵も見せて頂き♪
オフホワイトの、こんな宝石が
あの妖精を生み出すんですね!
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dragonbutter at 2014-05-15 23:27
交尾嚢の形成過程は大変勉強になりました。
色の変化は知りませんでした。
私も今年産卵を観察できましたが、前玉はずしを持参してなくて卵の撮影の際は後悔しました。
私の見た産卵メスの交尾嚢は比較的白っぽかったです。
色の変化は知りませんでした。
私も今年産卵を観察できましたが、前玉はずしを持参してなくて卵の撮影の際は後悔しました。
私の見た産卵メスの交尾嚢は比較的白っぽかったです。
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fanseab
at 2014-05-16 22:42
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Sippo5655さん、スフラギスはギフやウスバシロの仲間のみ交尾済♀に見られます。産卵シーン個体の赤いシミはもしかすると、これも蛹便の残渣かもしれません。
ゼフ同様、卵で越冬するのも凄いと思います。
ゼフ同様、卵で越冬するのも凄いと思います。
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fanseab
at 2014-05-16 22:45
x
dragonbutterさん、実はバシロの交尾ペアをじっくり観察するのは今回が初めてでして、何回か時間をかけてペアを撮影していたので、スフラギスの形成過程をスポット的に知ることができました。
本種の卵は例外的にデカいので、前玉外しでなくても普通のマクロでも表面凹凸が表現できると思います。
交尾嚢の白さと産卵可否の相関はあまりないのでしょうかね?
本種の卵は例外的にデカいので、前玉外しでなくても普通のマクロでも表面凹凸が表現できると思います。
交尾嚢の白さと産卵可否の相関はあまりないのでしょうかね?