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探蝶逍遥記

クロアゲハの飼育メモ

 昨年実施した飼育シリーズ。ナガサキに引き続き今回はクロアゲハです。最初は川崎市内で観察したナツミカン葉上への産卵状況と卵の拡大像です。

+++横位置画像はクリックで拡大されます+++
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撮影条件は2枚共通:D71K-85VR(トリミング)、ISO=400、F11-1/160、-0.3EV、外部ストロボ、撮影年月日:2013年7月23日:拡大像はD71K-1855改@55mm(トリミング+3コマ深度合成)、ISO=200、F11-1/320、-1.0EV、内蔵ストロボ+2灯スレーブ増灯

 いずれも葉裏、それも縁に産み付けられております。2枚目の3卵には符号を付けました。孵化までの黒化程度から、各々産卵時期が異なると推定され、産卵は時系列で#1→#2→#3の順番で産まれたと推定されます。母蝶が好む環境に置かれた葉には集中して産卵される傾向が見て取れます。卵の直径は1.5mmでナミアゲハよりは大きいが、ナガサキよりは小さいと言えます。次に孵化直後の初齢幼虫。
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D71K-1855改@34mm(トリミング)、ISO=400、F11-1/250、-0.7EV、内蔵ストロボ+スレーブ1灯、撮影年月日:2013年7月24日

 体長は4mm。側面からの画像を撮り損ねました(^^; 赤褐色で、ほぼ漆黒に近いナミアゲハの初齢幼虫とは一見して異なります。続いて2齢幼虫。
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D71K-85VR(トリミング)、ISO=100、F11-1/400、-1.0EV、外部ストロボ、撮影年月日:2013年7月30日

 体長は8.5mm。2齢でも地色は赤味を帯びた濃褐色です。続いて3齢。
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D71K-85VR(トリミング)、ISO=100、F11-1/400、-1.0EV、外部ストロボ、撮影年月日:2013年7月30日

 体長は12.5mm。なお3齢撮影個体は2齢とは別個体です。斑紋全体の特徴は2齢と同様ですが、表面の光沢が顕著になります。引き続き4齢。
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D71K-85VR(トリミング)、ISO=100/200、F11-1/400、-0.7EV、外部ストロボ、撮影年月日:2013年8月4日

 体長25mm。斑紋全体の特徴は3齢を踏襲するものの、白斑部分が顕著になります。また体のバランス上、後胸部および第一腹節が拡張して蛇の頭部のような形状に変化しています。なお腹端背面の白斑ですが、背面には一部褐色部(矢印)が残っています。近縁のオナガアゲハ4齢幼虫の該当部分は褐色が入らず全て白色であり、これが両幼虫の識別点とされています。これは今後オナガを飼育する機会があれば確認してみたい点です。次に5齢(終齢)です。
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D71K-85VR(トリミング)、ISO=400、F11-1/250、-0.7EV、外部ストロボ、撮影年月日:2013年8月8日

 体長は40mm。鳥糞状からお馴染みのイモムシ状に変わりました。地色は鮮やかな緑色で黄色味を帯びたナミアゲハとは明らかに異なり、ナガサキアゲハとも微妙に違います。ナガサキを更に鮮やかにした緑色と言えましょう。腹節の斜帯は濃褐色。これもクロアゲハの特徴で、背面上で斜帯同士が交差・合体することもクロアゲハの特徴とされます。因みにオナガアゲハは両斜帯が交差しないとされています。次は前蛹。
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D71K-85VR(トリミング)、ISO=200、F9-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影年月日:2013年8月12日

 体長は27mm。下痢便を出した後、大慌てでサンショウの枝に止まらせて、そこで蛹化の準備をさせることにしました。続いて蛹。
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D71K-85VR(トリミング:右画像のみ2コマ深度合成)、ISO=400、F11-1/250/125、-0.7EV、外部ストロボ、撮影年月日:2013年8月13日

 体長35mm。褐色型で、翅部分に微妙に緑色が残っています。黒系アゲハの蛹はいずれも頭部に「兎の耳」状の一対の突起を有します。クロアゲハは両突起先端が互いに離れています。ナガサキは両者が離れず突起全体が平行に並ぶ傾向にあり、クロ/ナガサキ両蛹の識別点となります。8月24日、苦労した末の羽化です。
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D71K-85VR、ISO=200、F11-1/400、-0.7EV、外部ストロボ、撮影年月日:2013年8月24日

 赤紋が綺麗に発達した♀でした。いつもの通り、羽化の瞬間には出会えませんでした。何とか無事羽化までフルステージ撮影できましたが、実は今回6卵ほど飼育して、羽化までたどり着いたのは僅かに1頭のみ。1個体は孵化せず、残り4個体の内、3個体は前蛹まで到達したものの蛹化に失敗。残り1個体は蛹化したものの黒化して死亡(寄生ではない)・・・と、惨憺たる結果でした。ナガサキの記事でも書いたように前蛹→蛹化の時点に最大のリスクがあるようで、蛹化がきちんとできるようにするための何らかのノウハウが必要でしょう。恐らく真夏に温湿度管理できない部屋で小さなプラケースで飼育したことが原因かと推定しております。できればやや大きな株を袋掛けして風通しの良い場所で飼育するのがベストだと思うのですけど、なかなかそんな上手いシステムを管理人は準備できませんね。色々と課題の残ったクロアゲハ飼育となりました。
by fanseab | 2014-01-31 21:45 | | Comments(4)
Commented by 22wn3288 at 2014-02-04 09:07 x
クロアゲハの発育をしっかり見せて頂きました。
幼虫の発育過程の変化も面白く、前蛹と蛹の変化が特異ですね。
無事羽化して良かったですね。
Commented by Sippo5655 at 2014-02-04 21:18
クロアゲハ・・
我が家でも、若齢幼虫まではいったのに、
庭で消えてしまいました。
羽化の瞬間 感動ですね!

クロアゲハ また来年もお庭に来てくれるかなあ。

羽化の瞬間に立ち会えることは 本当に幸せなことなんですね・・・

昨年経験した飼育の様々なシーンを
大切にしたいと思います。
Commented by fanseab at 2014-02-04 22:15 x
22wn3288さん、フルステージ飼育は大変ですが、羽化まで辿りつければホッとします。似たように見えて幼虫の体色や形態は様々で、蛹の特徴もそれぞれに異なります。じっくり撮影することで見えてくるものもありますね。
Commented by fanseab at 2014-02-04 22:18 x
Sippo5655さん、そちらのクロアゲハは残念でしたね。羽化も瞬間に出会えればいいのですが、いつも羽化後に翅が既に伸びてしまった状態が殆どです。よほど意図的にやらないと瞬間に立ち会うことは至難の業ですね。それでも羽化まで辿りつけると、飼育の苦労も報われます。
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