探蝶逍遥記

キマダラモドキの産卵行動(9月下旬)

 好天に恵まれた3連休の2日間を使って広島へ遠征しておりました。目的は夏眠明けキマダラモドキの産卵シーン撮影。キマダラモドキは甲信越地域では7月中・下旬から出現し、9月上旬頃には姿を消します。一方、西日本低地帯に棲む個体群は6月中旬頃から発生し、盛夏を夏眠した後、9-10月にかけて主として♀が活動を再開します。9月下旬は産卵シーン撮影の適期と考えて出撃しました。例によって正確なポイント情報は不明で、手探りでの探索になりました。そもそも山梨あたりのポイントは高原の疎林環境ですけど、西日本の低山地でどのような環境に棲んでいるのか?経験がないので、一苦労。とにかく雑木林のような林縁を探すことにしました。しかし、目的の雑木林は意外と存在せず、狭い林道を苦労して車を流す割には姿形も見えません。それでも何とかクヌギ(もしくはアベマキ:管理人はクヌギとアベマキの一発同定法を知らないのでクヌギとしておきます)が密に生えている場所を見出し、付近をウロチョロしてみました。初日の14時頃、クヌギの高木に突然2頭のNeopeらしき個体が出現し、樹冠付近で数秒絡んだ後、姿を消しました。あまりにも遠すぎたので同定もできなかったのですが、ようやく大型ジャノメに出会えることができました。更に林道をウロチョロ走らせていると、日陰になった崖地で淡褐色のジャノメが緩やかに飛んでいます。慌てて下車して300mmレンズで確認すると、おぉ!キマダラモドキです。しかも腹端を曲げて産卵行動の様子。近くでタッチアンドゴーを繰り返した後、クヌギの幹で産卵行動をスタート。

++横位置画像をクリックすると拡大画像を見ることができます++
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D71K-34(トリミング)、ISO=400、F11-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:15時16分

 母蝶はおよそ15秒この体勢を取った後、飛び去りました。キマダラモドキはNeope同様、卵塊で産むので少なくとも数卵は産み付けたはずです。産卵場所を300mmで確認するも卵が確認できなかったので、崖の脇からよじ登って現場確認をしてみることに。しかし、クヌギの樹肌を慎重に探しましたが白色とされる卵は発見できませんでした。ひょっとすると疑似産卵行動だったのか、何回か産卵をトライしようとしたが、産卵場所として不適当と判断して産卵を止めたのかは定かではありませんでした。産卵ポイントの環境画像を示します。
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GXR@5.1mm、ISO=320、F3.2-1/48、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:16時00分

 崖地は林道脇にあり、北西斜面で日中は殆ど陽射しが当たらない場所です。矢印が一枚目の産卵行動を取っていた箇所。丸で囲った場所で最初に目撃した産卵行動を取っておりました。ここには苔が生えていて、苔の間に産み付けた可能性がありますが、高さ4mの崖に直登することもできず確認できませんでした。母蝶が姿を消した後、崖地を登ってみると東南斜面はクヌギ、コナラが混じる雑木林で林床の下草が生えていない環境です。
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GXR@5.1mm、ISO=100、F6.5-1/17、-0.7EV、撮影時刻:13時07分(2日目に撮影)

 母蝶が潜んでいる可能性もあるので、あたりを探索しましたが、母蝶の姿はありませんでした。崖地の上には食草となるカヤツリグサ科(同定はできません)の草本が群生していて産卵環境としては申し分ない場所と判断いたしました。
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GXR@5.1mm、ISO=200、F6.5-1/34、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:13時19分(2日目に撮影)

 結局17時近くまで、この崖地近辺で探索するものの、キマモは姿を現さず、初日の探索は終了。翌日も午後このポイントで再探索することを前提に、午前中はクロツや他の蝶探索を実施。前日の産卵行動が15時頃だったので、現地には午後1時には到着し、パトロールをしました。13時25分頃、一頭のキマモらしき個体が車の脇を結構なスピードで飛び去っていきました。飛翔スピードから類推してNeopeかもしれないと思い、更に現場を探索していると、前日同様、クヌギ高木の樹冠付近を相当なスピードで飛ぶ褐色のジャノメを発見。静止したところをロングショットで撮影。
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D71K-34(トリミング)、ISO=500、F11-1/400、-0.7EV、撮影時刻:13時42分

 驚いた事にてっきりNeopeだと思った個体はキマダラモドキの♀でした!右後翅の半分が大破していて前日観察した個体(こちらは左後翅が大破)とは別個体のようです。これまで甲信越のポイントで観察したキマモの活動は林縁の林床をノッソリと飛ぶ印象です。もちろん敏感ですけど、逃げ去る時のスピードはさほどではありませんでした。しかし、この日観察した個体はまるでサトキマやヤマキマ♂同士が樹冠で探♀飛翔する時のような相当な高速飛翔をしておりました。直接産卵行動と関係した活動パターンとは思えず、どんな生態学的意味を持つのでしょうか?前日、出会った2頭もどうやらNeopeではなく、キマモ♀同士の絡み合いだった可能性が強くなりました。興味深いのは雑木林の林床にネザサやメダケの類が生えていないことで、ヒカゲチョウの第3化やNeope第2化の生き残りも全く観察できなかったことです。恐らく地質的(土壌の酸塩基性)な影響で植生が特異的な場所なのかもしれません。

 さてこの後、前日産卵行動を観察した崖地に張り込んで、再度♀が出現するか待機しておりましたが、結局14時30分過ぎまではお出ましはなく、帰宅の都合で泣く泣く14時45分に現場を撤収いたしました。今回の遠征では個体数が少ないながらもキマモに出会えたこと、そして♀の奇妙な行動を観察できたこと、更に期待した産卵行動も観察できて、まずまず満足できるものでした。確実に産卵現場を押さえるリベンジマッチを行うには、広島はあまりにも遠く、コストもかかるので、来シーズン山梨か長野のポイントで実施することにします。

 今回の遠征ではキマモ以外にも興味ある蝶に出会ったので、それは次回ご紹介することにします。
by fanseab | 2013-09-26 22:21 | | Comments(4)
Commented by yoda-1 at 2013-09-27 06:03
この探索・探求意欲にはいつも脱帽であります。
キマダラモドキの♀雌がえらく俊敏に飛翔していたのでしょうか。
他種も一般に♀雌はゆったりと飛翔するものだと思いますが、意外ですよね。
しかし、詳細ポイントが不明でもこのように目的を遂げることができる手腕には、尊敬を通り過ぎて、畏怖の念をいだきます(笑)
Commented by fanseab at 2013-09-27 22:02 x
yoda-1さん、キマダラモドキについては、山梨や長野あたりでもそれほど注意深く観察したことはありません。特にこの手のジャノメの活動が活発化する午後~夕刻の時間帯は既に帰路についていることが多く、甲信越の個体群、特に♀の挙動については詳細な観察をしておらず、今回の知見と比較してみる必要があると思います。
まぁ、広島までの遠征費は馬鹿にならない金額なので、元を取ろうと必死に探索して、目的を遂げたいとの思いが強いですね(笑)
Commented by clossiana at 2013-10-04 07:34
いつも通りに大変に興味深い内容でした。キマモの生態を私は良く知りませんが、もし盛夏にはじっとしていて秋になってから産卵を始めるとすればオオヒカゲにとても良く似ていると思いました。ただオオヒカゲの場合は盛夏といえども全く行動をしていない訳ではありません。それで私は「半夏眠」なのでは?と考えています。キマモも、この種が夏眠をしているかどうかは議論の余地がありそうです。両種とも生息場所の緯度や高度によって行動様式に違いが見られるからです。それにしても狙った蝶の狙った場面をきちんと撮られるのは凄いです。
Commented by fanseab at 2013-10-04 21:45 x
clossianaさん、キマモも夏場の「夏眠」は全く活動しないのではなく、樹液や水分補給はちゃんとしているようです。要は無駄な体力消耗を避け、秋口に産卵するミッションを完了するのだと思います。もちろん、寒冷地で発生するキマモには夏眠する生態はないようですね。
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