探蝶逍遥記

ベニヒカゲの産卵(8月下旬)

 この夏は本当に酷暑ですね。平地で産卵シーンばかり狙うのも辛いのでたまには涼しい高原で撮影したいと思い、山梨のポイントに出かけました。現地10時頃到着。気温は恐らく20℃を切っているのでしょう。半袖では寒い位。早速♀の姿を追跡します。最初に登場した♀個体は吸蜜よりもしきりに吸水をしておりました。

++横位置画像をクリックすると拡大画像を見ることができます++
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D71K-34、ISO=400、F11-1/640、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時29分

 ジャノメの仲間は♂のみならず♀も吸水行動が盛んですね。そのうち、マツムシソウやアザミ等で吸蜜もスタートしました。
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D71K-34(トリミング)、ISO=400、F11-1/640、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時51分

 ベニヒカゲはシャッター音に物凄く敏感な蝶です。最初はストロボ光に敏感に反応するのかと思ってノンストロボで撮影しても一緒。シャッターに反応するのか、あるいはクイックリターンミラーの衝撃音に反応するのか、とにかく敏感で撮影に苦労されられます。産卵挙動を示す♀を追跡していると、それらしき個体を目撃。あたり一面咲いているフウロソウの葉に止まって怪しげな仕草を開始。ベニヒカゲは食草以外の葉や枯れ茎に産むとされているので期待が高まります。
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D71K-34、ISO=400、F11-1/640、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時55分

 しかし、いつまで待っても腹部を曲げる行動に出ません。そのうち、笹の葉上で腹端から白い「蛹便」を吐きだしました。
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D71K-34、ISO=400、F11-1/640、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時57分

 蛹便は羽化直である証拠。つまり飛ぶのに一苦労の状態だったので、産卵行動と誤認してしまったのでした。思い込みとは恐ろしいものですね。この個体を追跡していけば、交尾場面に出会えるチャンスでしたが、本日の目的外なので、この個体とはスッパリ縁を切って、別の産卵行動♀個体を探します。ところが困った事に11時30分を過ぎると上空の雲量がほぼ100%になり、気温が下がってベニヒカゲも活動を完全に停止してしまいました。時折陽射しが回復した際、♂♀が絡む求愛シーンを目撃。
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D71K-34、ISO=400、F11-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:11時50分

 手前が♂です。気温が低いのでこのままお見合い状態が続き、求愛と言うよりは、お互い仲良く開翅日光浴に専念する状態でした。さて、正午頃、ようやくそれらしき♀が出現。待望の産卵シーンを撮影できました。
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D71K-34(トリミング)、ISO=400、F11-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時01分23秒

 食草と思しきウシノケグサ類(同定に自信なし)の葉に直接産んだようです。産卵直後の画像がこちら。
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D71K-34(トリミング)、ISO=400、F11-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時01分25秒

 腹端先に白い卵が確認できます。樽型で母蝶の体躯の割に大きいので非常に目立ちます。この後、開翅日光浴休止と産卵を繰り返していきました。崖地にある食草の枯茎に産卵した直後のシーンです。
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D71K-34(トリミング)、ISO=400、F11-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時03分

 右触覚の先に産んだ卵(#1)が見え、その左側にもう1卵(#2)確認できます。確か連続的に産み付けた記憶がないので、#2は同一母蝶か別個体が既に産み付けていたのだと思います。この崖地は西~南西向きで、ベニヒカゲが産卵に好適と判断した場所なのでしょう。この後、開翅日光浴で休憩タイム。
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D71K-34(トリミング)、ISO=400、F11-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時04分

 続いてすぐ隣の同様な環境に産み付けました。
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D71K-34(トリミング)、ISO=400、F11-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時05分

 不安定な足場に掴まってアクロバチックな姿勢で産卵しております。産卵環境を縦広角でも撮影(矢印先端が卵)。
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GXR@5.5mm、ISO=200、F6.6-1/50、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:13時23分

 卵は左の食草根元付近の枯茎に産み付けられています。産卵状況の拡大です。
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D71K-85VR(トリミング)、ISO=400、F11-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時13分

 母蝶の産卵姿勢もアクロバチックでしたが、産まれている状況もこれまたアクロバチック。樽型の卵底面の1点で、枯茎に何とか付いている状態。強風でも吹けば、「ドングリころころ・・・♪♪」と、どこかに転がってしまうのではないかと心配(^^; この画像からも縦隆起条を有する構造が見て取れますが、例によって、超拡大像を2方向から撮影。
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D71K-85VR-24R(トリミング+上段3コマ/下段2コマ深度合成)、ISO=100、F29-1/320、-1.0EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時30分

 タテハチョウ亜科の微構造によく似ております。YpthimaMycalesisの卵は球形でほぼ平滑な表面を有しておりますが、それとは様相が異なります。ヒメヒカゲの卵はベニヒカゲと類似しているとされており、いつか比較撮影したいものです。

 今回運よく、ベニヒカゲの産卵シーンを撮影できました。ただ翅面とレンズが平行に揃うようなアングルでは撮影できませんでした。機会があれば撮り直しをしたいものです。
by fanseab | 2013-09-04 21:04 | | Comments(14)
Commented by yoda-1 at 2013-09-05 05:01
快進撃が止まらない感じですね。
じっくり観察するこの姿勢をYODAも学ばなくてはとは思いました。
天然記念物だけに、卵とか持ち帰っての撮影が許可なくできないのが辛いものですね。
ジャノメチョウの仲間が♀雌でも普通に地面吸水するのは知りませんでした。ヒカゲチョウなどで観察したことがありませんが、単に経験不足なのでしょうか。
Commented by ダンダラ at 2013-09-05 16:19 x
ベニヒカゲの産卵は私も以前に撮影していますが、そのときにはレンゲツツジの葉や、他の葉に産んでいました。(2007/8/20:コメントもいただいていますね)
そのときの印象に比べると、随分日陰に産む印象ですね。
でも他の個体の卵もあるとなると、こういった産卵方法が一般的なんでしょうか。
この産卵体制は何となくキマダラモドキの産卵に似ているなと言う感じがしました。
Commented by clossiana at 2013-09-05 18:08
羽化直のメスは翅を開いた途端に巡回中のオスに見つけられ、あっという間に交尾が成立します。でも、そのシーンが目的でないとさっさと見切りをつけられ本来の目的のシーンを確実に撮られているところがすごいとしかいいようがありません。散布された卵がまるで空中に浮いているようですね。この産卵シリーズと飼育シリーズはいずれは図鑑にすべきだと思います。
Commented by cactuss at 2013-09-05 20:18
産卵をしっかり撮影されていて、感心します。
もっとしっかりとベニヒカゲと付き合わなくてはいけませんね。
卵の拡大写真はいつ見てもすごいなと思います。
Commented by fanseab at 2013-09-05 21:54 x
yoda-1さん、産卵シーンを追い求めていると、♀を選択的に追跡しなければならないので、必然的に♂♀判定技術が磨かれる効果がありますね。ベニヒカゲはともかく、タカネヒカゲ等の場合は登山の負荷になるので、そもそも拡大撮影機材を携行するのが大変ですからね。いつかタカネヒカゲの産卵シーンも撮りたいと思っております。
♀の吸水行動はジャノメ全般に共通する性質ではなく、小生が観察できているのは、サトキマ、ヤマキマと今回のベニヒカゲだけです。ナミヒカゲは小生も観察経験はありません。
Commented by fanseab at 2013-09-05 21:59 x
ダンダラさん、引用された貴殿の記事を今回遠征前に参考にさせて頂きました。
<・・・随分日陰に産む印象ですね。
いや、今回産卵した場所は日中、燦々と陽光が当たる場所で、決して日陰とは言い難い場所です。観察した限りでは北向きの窪地には産んでおりません。
キマダラモドキの産卵も撮りたいものですが、類似した態勢を取るのですね。
Commented by fanseab at 2013-09-05 22:03 x
clossianaさん、♀の産卵行動をテーマとして追跡しておりますが、種類によって、産卵行動のトリガーがかかる時間帯が微妙に異なるので、撮影チャンスを見出すのに苦労しております。特に亜高山帯や高山に棲む蝶の場合は日照に極めて敏感ですし、昼間に産卵時間帯が来るものは、丁度上空の雲量が増加する時間帯と一致するため、撮影のチャンスが制限されます。平地の蝶と比べて難易度が高いと感じました。
Commented by fanseab at 2013-09-05 22:10 x
cactussさん、小生もベニヒカゲを真面目に撮影したのはこれが2回目位です。ただ「蝶の夏枯れ」時期でもあり、暑い下界を忘れて涼しい場所で撮影できるので、集中力を何とか保つことができます。
卵の拡大撮影は大変骨が折れる作業ですが、綺麗な画像が得られると苦労も吹き飛びます。まぁ、今回の画像は正直、深度合成が上手く行かず、失敗作品なので、反省しております(^^;
Commented by 22wn3288 at 2013-09-07 08:21 x
産卵シーンが良く撮れますね。
行動を見定めることが大事なのでしょうか。
卵の写真 相変わらずお見事です。
感嘆の一言です。
Commented by fanseab at 2013-09-07 23:15 x
22wn3288さん、産卵シーン撮影に於いては、ご指摘の通り、♀の行動を把握し、行動予測をすることが肝要だと思います。本格的にチャレンジしたのは、今シーズンからですが、慣れるに従って、♀の行動が読めるようになった気がします。それでも産卵時間帯は日照や温度で微妙にシフトするので、経験をまだまだ積まねばならないと感じております。卵の拡大像は撮影するにつれて、自ら課す合格レベルが段々と上がっていくので、今回の作例は実は不合格レベルなのですよ。
Commented by hanzephyrus at 2016-06-12 08:15 x
きれいに撮れてますね!
私も山梨の入笠山にて採取したことがあります。
カメラはコンパクトデジカメしか持っておりません。
やはり、一眼レフカメラと外部ストロボは必需品でしょうか?
Commented by fanseab at 2016-06-12 21:32 x
hanzephyrusさん、コメント有難うございます。
卵の拡大撮影なら、最新記事でご紹介したTG4があれば十分です。
産卵シーン撮影の場合は、オートフォーカス(AF)のスピードが一番大事なので、
AFが速いコンデジでもトライはできますが、一般的には一眼レフの方が速い
ケースが多く、有利です。外部ストロボは高速シャッターで同期させる関係上、
利用しています。高感度の一眼レフなら、ISOを上げて撮影すれば、外部ストロボ
は、必ずしも必要ではありません。
Commented by hanzephyrus at 2016-07-02 18:28 x
ご指導をありがとうございます。
一眼レフはやはり使い勝手がいいですね。
高価なのですぐには持てませんが、今手持ちのコンパクトデジカメで
いろいろ遊んでみようかと思います。幼虫と成蝶の一致がまだ認識不足で
40年ぶりに取り組んでみようと思います!
Commented by fanseab at 2016-07-06 22:30 x
hanzephyrusさん、お役に立てれば幸いです。
蝶の生態を良く観察して行動パターンを読めば、コンデジでも
十分戦力になると思いますよ!
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