探蝶逍遥記

ダイミョウセセリとアカボシゴマダラの産卵(8月下旬)

 8月下旬頃は拙宅近くの多摩川縁で観察できるセセリの種類数が最も多くなる時期です。前の記事でご紹介したイチモンジを始め、ミヤマチャバネ・ギンイチモンジの第3化、チャバネに加え、キマダラセセリの第2化がピークを迎えます。そのキマダラセセリの産卵を狙って、いつも通うポイントに出かけてみました。昼前後が産卵ピーク時間帯と睨んで、♀を追跡していきます。何回か産卵行動を示すシーンに出会いましたが、撮影できず、そのうち個体を見失ってしまいました。ガッカリしてウロチョロしていると、ヤマノイモが蔓状にフェンスを覆っている場所にダイミョウセセリが登場。ダイミョウ、実は多摩川縁のマイフィールドではミヤマチャバネよりも珍品なのです。何故かと言えば、ダイミョウが好む環境、つまりやや日陰の多い雑木林の林縁でヤマノイモが繁茂している場所が局限されるからです。運よく登場したダイミョウは明らかに♀で産卵行動の途中でした。結構神経質に食草の葉にタッチアンドゴーを繰り返していきます。7-8回吟味した後、ようやく若葉を選んで産卵をいたしました。

++横位置画像をクリックすると拡大画像を見ることができます++
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D71K-34(トリミング)、ISO=400、F11-1/400、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:11時16分45秒

 ダイミョウは開翅姿勢で産卵をしますので、腹端が葉に押し付けられていることが分かりやすい側面方向から撮影しています。ただ、丁度食草の枯茎が腹端と被ってしまいました。ダイミョウは産卵後、自分の腹端にある毛を卵の表面に擦り付け、「隠蔽工作」をすることが知られております。そのため一旦産卵態勢に入ってから産卵作業を終了するまでの時間は結構長く、この事例では13秒程度要しております。産卵終了後飛び立つシーンも偶然撮影。
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D71K-34、ISO=400、F11-1/400、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:11時16分55秒

 こうしたアングルから見ると翅と体のバランス、腹部の太さ等、いかにも♀ですね。産卵状況です。
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D71K-85VR、ISO=400、F11-1/400、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:11時50分

 卵表面に毛が付着しているので、卵の輪郭が目立たず、外敵から守る機能があるとされております。献身的に物事を実施する様の譬えに「骨身を削る」なる表現があります。ダイミョウ♀は骨身ならぬ「腹毛を削って」我が子を守る隠蔽工作をしている訳で頭が下がる思いです。羽化直後にはフサフサしていた腹毛も、産卵できなくなる頃には無毛状態になるのでしょうか? 例によって拡大撮影も実施。ここは前玉外し系で撮影。
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D71K-1855改@55mm(トリミング+上段2コマ/下段3コマ深度合成)、ISO=100、F11-1/400、-1.0/-1.3EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時10分

 毛玉の塊です(^^) 卵の底面近辺は毛で隠蔽しづらいと見えて、卵の地肌が少し見えております。どうやら卵の地色は淡黄色のようです。卵の直径1mm、高さ0.9mmですが、卵自身はもう一回り小さいのでしょう。卵表面本来の微構造を撮影するためには隠蔽工作された腹毛を双眼顕微鏡でモニターしながらマイクロマニュピレーターで取り外す作業が必要でしょう。さもなければ、母蝶が産卵した瞬間に強制的に母蝶を排除して隠蔽工作を止めさせ撮影するしかないでしょう。これは簡単そうで意外と難しいかもしれません。

 さて、ダイミョウの撮影を終えて数分後、ラッキーな事にエノキの周りを飛ぶアカボシゴマダラ♀に出会いました。時間帯から明らかに産卵行動です。例によって高さ50cm程の小木に何回も産卵しておりました。
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D71K-34、ISO=400、F11-1/400、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:11時22分

 通常、アカボシはエノキの成葉に産みますが、ここでは珍しく若葉に産み付けたようです。この絵は腹端が隠されているので、粘って再撮影。産卵直前の姿です。
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D71K-34、ISO=400、F11-1/400、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:11時24分52秒

 いつもの通り、産卵の瞬間をトリミング拡大してみました。
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D71K-34、ISO=400、F11-1/400、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:11時24分58秒

 暗褐色の産卵器官が葉に押し付けられており、画像をピクセル等倍で検すると、葉上には接着剤となる液体が吐出されております。産卵直後の画像がこちら。
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D71K-34、ISO=400、F11-1/400、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:11時25分01秒

 産み付けられた青緑色の卵が葉上に確認できます。アカボシの場合は産卵態勢に入ってから産卵終了まで10秒程度要することが多く、比較的アングル修正が効いて撮影は楽な部類だと思います。上記画像の場合は9秒要しております。え~しかし、恥ずかしながら管理人にとってアカボシ産卵シーン撮影はこれが初体験。実は今シーズン、白化した春型♀の産卵シーンを狙っておったのですが、個体数が少ないこともあって、これは失敗。ようやく撮影にこぎつけた次第(^^;

 産卵状況です。エノキの葉を真上から撮影。
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D71K-85VR、ISO=400、F11-1/400、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時50分

 産卵直後は見事な保護色です。概ね成葉に産む場合、中央よりも葉の先端側にシフトした位置が好まれるように思います。アカボシの体躯を考慮すれば腹端位置が葉中央では産卵姿勢のバランスが取れないのでしょう。拡大撮影も実施。
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D71K-1855改@55mm(トリミング+2コマ深度合成)、ISO=100、F11-1/400、-1.3EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時13分

 形態的にはタテハチョウ亜科と類似したパターンで、地球儀で言えば経度線にあたる縦隆起(全19本)と、これに直交する緯度線に相当する微細な条痕が特徴です。同属のゴマダラチョウの卵微構造は未撮影なので、比較検討は今後の課題です。今回はたまたま共に昼前後に産卵時間帯を有するアカボシとダイミョウを同一ポイントで撮影できてラッキーでした。キマダラセセリの産卵についてはまだ少し時間的余裕があるので、再トライしたいと思っております。
by fanseab | 2013-09-01 22:26 | | Comments(8)
Commented by yoda-1 at 2013-09-02 19:12
二種の卵撮影おめでとうございます。
特に、ダイミョウセセリはこれまでネット上でも見たことなかったので、驚愕しました。
アカシジミと違って、これらの毛毛を自分で製造しているのが、信じがたいです。
一度は生で観たいと強く思いました。
Commented by himeoo27 at 2013-09-02 21:02
ダイミョウセセリは今年撮影したフユシャクガの卵と
同じように毛で偽装するのですね!
蛾とセセリチョウは、比較的近い関係なのかな?
Commented by fanseab at 2013-09-02 23:33 x
yoda-1さん、ラッキーなことに、2種の産卵をほぼ同時に撮影出来ました。次回は動画で隠蔽工作を撮影するのが目標ですね。
Commented by fanseab at 2013-09-03 00:29 x
himeooさん、蝶も蛾も同じ鱗し目なんで、産卵時に隠蔽工作をする習性は共通してあるようですね。次はアカシジミの産卵を撮影したいものです。
Commented by 22wn3288 at 2013-09-03 08:36 x
ダイミョウセセリの産卵と卵の写真 素晴らしいですね。
毛で隠すとは凄いですね。びっくりしました。
Commented by fanseab at 2013-09-03 22:03 x
22wn3288さん、ダイミョウの産卵シーンは今回が3度目ですが、撮影アングルにいつも苦労させられます。やや翅を立て気味で産卵している場合は腹端が写り易くて楽なのですけど、完全開翅状態だと骨が折れます。毛で隠蔽する習性は次回、なるべく動画で撮影したいと思っております。
Commented by naoggio at 2013-09-04 10:38 x
ウ〜ム、ダイミョウセセリの母蝶、何卵くらい産むのでしょうね?
一つ一つにこれだけ入念なカムフラージュを施していたら腹端の毛はすぐになくなってしまいそうに思えます。
アカボシゴマダラ、ど真ん中の葉脈の上に産んでいますね。
cactussさんの8月21日の記事に出ていたコヒョウモンモドキの卵の産み方と真逆で面白いです。
いつもながらの見事な写真、素晴らしいですね。
Commented by fanseab at 2013-09-04 21:27 x
naoggioさん、このような普通種については、母蝶の最大産卵数とか意外に調査されていないかもしれません。人工交配させた後、強制産卵させてどのくらい産むか?そんな実験をしないと確定できませんね。「フィールドガイド日本のチョウ」ではダイミョウの♂♀判定基準の一つに「腹端の毛の密生状態」が述べられていますが、産卵の終わりに近づいた母蝶では♂♀判断ができないかも(笑)
産卵シーンを撮影していると、卵の産み方は種類により様々であることを実感させられます。
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