探蝶逍遥記

鈴鹿のキリシマ探索(8月下旬)

 ♀産卵シーン撮影目的に今シーズン3回目の鈴鹿詣で。キリシマの産卵は8月中旬~9月中旬頃までとされており、丁度適期だろうとの判断での参戦。現地8時35分着。先ずはアカガシ休眠芽を探索します。ある程度成長した休眠芽を探していくと、いきなり5卵塊に出会いました。予想通り、既に産卵は始まっておりました。その休眠芽の周辺環境です。

++横位置画像をクリックすると拡大画像を見ることができます++
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GXR@8mm、ISO=200、F6.2-1/30、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:10時12分

 矢印の先が休眠芽の位置。ご覧のように午前中ある程度日が差し込む環境です。枝高さは1.2mほど。この画像に見えている範囲で成長した休眠芽はこの芽だけなので、♀が集中的に産んだ(複数個体による可能性もあり)ものと思われます。5卵塊の状況です。
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D71K-85VR(トリミング)、ISO=200、F11-1/400、-1.3EV、外部ストロボ、撮影時刻:11時49分

 例によって超拡大像も撮影。
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D71K-85VR-24R(トリミング+2コマ深度合成)、ISO=200、F29-1/400、-1.3EV、外部ストロボ、撮影時刻:12時03分

 直径は0.87mm。Favoniusの越冬卵を見慣れた目には、表面突起が太く鈍く、かなり違和感があります。どんなゼフ卵でもそうですが、産んでから間もない卵は表面汚れも無く、とても綺麗ですね。ただ真夏に撮影するのは眼鏡が曇ったり、結構シンドイですけど(^^; キリシマの越冬卵微構造はメスアカやアイノとは全く異なる形状です。以前、キリシマがChrysozephyrus属とされていた時代、越冬卵微構造の差異からメスアカやアイノとは別属の可能性を指摘された方も恐らくいたのではないかと推察します。成虫の斑紋が酷似した台湾特産種、ホウライミドリシジミ(Thermozephyrus lingi)の越冬卵も機会があれば撮影・比較したいものです。

 さて、休眠芽の状況を更に調査するとある程度休眠芽が発達した株はかなり限定されることがわかりました。前回の訪問で♂が集うご神木周辺の状況も確認してみると、ご神木(幹直径30cm、樹高8mほど)から生えたヒコバエ先端の休眠芽に2卵確認できました。
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GXR@5.1mm、ISO=200、F4.1-1/90、-0.7EV、内蔵ストロボ、撮影時刻:13時25分

 矢印先端に休眠芽があり、地上高は2mほど。午前中は完全に日陰ですが、午後はご覧のようにある程度日が差し込みます。6年前に鈴鹿で産卵状況調査をした時の経験も踏まえると、概ね類似した環境にある休眠芽に産卵されているケースが多いように思います。発達した休眠芽の付いたアカガシ株が把握できたので、そこで待機して母蝶の飛来を待つことにしました。キリシマ♀の産卵時間帯は10時30分~13時30分頃とされているので、この間、複数のアカガシ株を巡回しながら、様子を見ておりました。すると、最初に「ご神木」近辺にチラチラと♀が舞い降りてきました。
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D71K-34、ISO=200、F11-1/125、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:8時52分

 羽化からかれこれ1ヶ月以上経過しているので、流石に縁毛は擦れておりますが、尾状突起は2本共揃っております。ただ産卵時間には時間があるためか、この後サッと飛び立って見失ってしまいました。5卵塊が産み付けられていた株近くに戻ると、今度は下草の至近距離に♀を発見。脅かさないように慎重に撮影。
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D71K-34、ISO=200、F11-1/60、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:9時44分

 ストロボ光にはそれほど敏感ではありませんが、人影には極めて敏感で、こちらの動きが速いと翅の向きを微妙に変えてしまいます。暑さを避けるためなのか、止まっている下草は殆ど地上スレスレで、こんな低い位置に止まっている♀を観察するのは初めてです。広角で撮ろうとしたら流石に嫌がって飛び去ってしまいました。再度、ご神木に戻ると、今度はその下枝に♀が飛来しました。
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D71K-34、ISO=400、F9-1/80、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時13分

 産卵時間帯も近いことだし、例のヒコバエに産むために来てくれたのかなぁ~と勝手に妄想して期待してしまいます。10時30分過ぎ。驚いたことにもう1頭の♀(左)が出現し、先ほどの♀(右)にほど近い位置に止まりました。
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D71K-85VR(トリミング)、ISO=640、F7.1-1/125、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時32分

 面白いことに共に南西方向を向いており、時間の経過と共に日時計の如く、翅面の向きを2頭共変え,
常に太陽光に対し垂直を保つ動きをしておりました。この頃、空を見上げると怪しげな入道雲が出現し、雷の予感も(^^; 早いとこ産卵してくれないかなぁ~とジリジリしてきました。11時20分過ぎ。最初に止まった1頭に動きが。
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D71K-34、ISO=640、F6.3-1/160、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:11時22分

 それまで頭を下向きにしていたのですが、葉柄側に変え、翅をスリスリし始めました。産卵開始の行動だろうと推察。その直後、サッと飛び立ち、正面右奥の茂みの中に消えていきました。目論んだ休眠芽に飛来せず、ガックリです。こうなるともう1頭の動きに賭けるしかありません。11時40分過ぎ、別個体がモゾモゾ動き始め、サッと開翅しました。撮影しようとカメラを構えた瞬間、無情にも管理人側にビュッと飛び立ち、姿を見失ってしまいました。2頭の動向から恐らく産卵行動のトリガーが掛ったのだと思いました。

 さて、♀の動きを注視している途中、下草の上を擦れたウラギンシジミが飛んでまいりました。しかし、ウラギンにしては輝きがおかしいな?と思いきや、なんと擦れたキリシマ♂でした。
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D71K-34、ISO=400、F11-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時21分

 大破した翅から表翅の金緑色の輝きが見えています。その後♂は活発化し、上空を見上げると最大3頭の♂による「空中運動会」が繰り広げられておりました。チェイスするスピードは全盛期とさほど変わりはありませんが、サファイアブルーの輝きは失せて、金緑色が勝っているのが違いです。ご神木の樹冠付近は♂にとって最高のテリ張り位置で、ここに頑張っている♂の姿も撮影。
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D71K-34(トリミング)、ISO=400、F10-1/320、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:10時45分

 
 嬉しいことに縁毛ブルー幻光が確認できます。キリシマの縁毛ブルー幻光を撮影するのは6年振りでしょうか? 「空中運動会」が一先ず終わった頃、1頭の♂が急に下草付近に潜り込みました。探してみると、先ほど紹介した♀同様、想定外の低い位置で静止しておりました。
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GXR@5.1mm、ISO=400、F6.5-1/60、-0.7EV、内蔵ストロボ+LEDライト、撮影時刻:13時19分

 キリシマ♂をコンデジの接写距離で撮影可能なのもこの時期ならではかな?左前翅端に欠けがある特徴から、撮影した個体は↑の縁毛幻光撮影個体と同一のようです。活動時間帯以外は樹冠で翅を休めていると思っていた♂ですが、下草で休息する生態を見出したのも収穫の一つでした。雷や豪雨に遭うのも嫌なので、ほぼ産卵時間帯が終了する13時30分過ぎに撤収いたしました。残念ながら今回♀の産卵シーン撮影は叶いませんでしたが、来シーズン撮影の色々なヒントを得ることができました。

【8/27追記】
アカガシの林縁でキリシマ♀を追跡していると、ちょっぴり小ぶりな個体に出くわしました。何だ?と
思って確認すると、ムラサキシジミの♀。。
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D71K-34、ISO=320、F11-1/250、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:8時44分

 共にアカガシをホストにするので居て当然なのですが、ギョッとさせられることがあります。それにこの個体、裏面の斑紋にメリハリがあり、後翅亜外縁のブルー幻光まで出現したりして魅力的な個体だったので追加掲載します。
by fanseab | 2013-08-27 00:25 | | Comments(8)
Commented by yoda-1 at 2013-08-27 05:31
なんとYODAあこがれの♀雌がわんさかで感動いたしました。
しかし、このように♀雌の飛来を待つのが王道なのでしょうね。
次回は、fanseabさんの爪の垢をよく飲んでから臨みたいものだと感心しました。
Commented by kenlen at 2013-08-27 22:13 x
産卵シーンの撮影は叶わなかったものの、産卵環境観察の集大成のような記事と画像で、素晴らしいです!
確かにアカガシは芽のある木とない木が混在するので、下見が必要だと感じました。
スレた♂のテリも涙ちょちょぎれます。
ところで、蛭は大丈夫でしたか?
Commented by 霧島緑 at 2013-08-27 22:25 x
キリシマミドリの行動が、さも現場に居合わせているように感じられるレポートでした。レポートを読みながら興奮してしまいました。
産卵シーンに出会えなかったのは、大変残念ですが興奮が伝わってきました。
「霧島緑」を名乗りながら、まだ縁がありません。関東近辺から徐々に攻めていきたいと思っていますが、手ごわそうですね。そこがまた魅力でもあるのかもしれませんが。
近接撮影、羨ましいです。
Commented by fanseab at 2013-08-27 22:27 x
yoda-1さん、キリシマ♀は産卵時期に入るまでは本当に不活発ですが、叩きだしで飛ばした時は結構なスピードで逃げて樹冠に入りこんだりします。ですので、基本樹間のアカガシや下枝をじっくり探す方が効率的な撮影ができるように思います。また今回記事で書いたように産卵時期には結構活発に林縁を飛翔しますので、大き目のアカガシの付近で見張っておれば、その姿を確認しやすいと思います。
Commented by fanseab at 2013-08-27 22:30 x
kenkenさん、体調が回復されたようで何よりです。
6年前に疑似産卵行動を撮影しておるので、確実に「産卵」と言えるシーンを撮影するのが目標になっております。♀が飛来する株は出たこと勝負の感があり、どの休眠芽の付近で待機するか?ギャンブルの要素があります。何とか来年、ものにしたいと思っております。
Commented by fanseab at 2013-08-27 22:33 x
霧島緑さん、以前関西在住時にこのゼフに出会って以来、その生態に魅せられて今でもわざわざ関東から遠征して観察しております。静岡でもOKなのですが、やはり個体数の多い鈴鹿での撮影が早道だろうと思い、高い交通費をかけて鈴鹿通いになってしまいます。お蔭様で何となく♀の行動が掴めてきたので、来シーズンに期待しております。
Commented by clossiana at 2013-08-30 11:28
数々の素晴らしい写真にうっとりさせられました。私は未だ見たこともない蝶ですが「キリシマミドリシジミ、その驚くべき生態」という本には、この蝶は他のゼフ達と同じころに羽化するがアカガシの休眠芽の発達が遅いので、一か月ほどは殆ど活動をしないと記載されています。その間、何処で何をしているのかは興味深いですが、それにしても8月末の時点でも未だ産卵に適した芽が少ないのは本当に遅いですね。でも他のゼフの♀も長生きだと云われていますが案外、同じ理由かもしれないなと思いました。又産卵位置がこんなに低いってことは知りませんでした。ムラサキシジミの記事も楽しみにしています。
Commented by fanseab at 2013-08-30 22:01 x
clossisnaさん、コメント有難うございます。
休眠芽が発達するまではアカガシの芽から吸蜜したり葉上から吸水する以外は休息しておりますね。アカガシの休眠芽は月が進行しても全く芽が伸びない株と伸びる株が混在するのです。さらに今年休眠芽が発達する株は来年発達が期待できないため、隔年毎に産卵に好適な株が変遷してくのです。ここらあたりがキリシマ個体数の隔年変動原因の一つとされております。ヒサマツは木登りしないと無理な位置に産卵するようですが、キリシマは低いので助かります。
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