探蝶逍遥記

ミドリシジミの産卵(6月中旬&下旬)

 首題シーン撮影目的で拙宅近くの川崎市内のハンノキ林へ赴きました。産卵時間帯は概ね午後と判断し、初回は13時前に現地到着。ミドリシジミが好む比較的細いハンノキの樹肌をざっとチェックすると既に卵塊が付いていて♀の産卵はスタートしている模様。数本の株を見ていくうちにチラッと黒い影が飛びます。直径20cmほどの中木の根元から高さ1mほどの実生が伸びていて、この枝先に待望のミドリ♀がウロチョロしておりました。腹端を曲げ、赤い産卵器官の一部を露出させたまま、小枝を伝い歩き、好みの部位を探しております。

++横位置画像をクリックすると拡大画像を見ることができます++
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D71K-85VR(トリミング)、ISO=500、F9-1/400、外部ストロボ、撮影時刻:13時15分

 ただ、産むべき部位が少ないと見え一向に産卵動作に至りません。樹肌と異なり細枝での産卵部位は相当限定される印象です。そのうち既に産まれている2卵塊を通り過ぎていきました。
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D71K-85VR、ISO=500、F9-1/400、外部ストロボ、撮影時刻:13時15分

 結局10分ほど小枝を数回上下動徘徊した後、チラチラと樹冠に向け飛び立っていきました。この実生をチェックしてみると、↑の2卵含め合計6卵産まれておりました。恐らく管理人が撮影する以前に殆どの産卵を終了させていたのかもしれません。この日は運よく「産卵行動シーン」には出会えたものの、あくまで「産卵シーン」撮影が目的なので、別の日に出直しです。
 2回目も産卵時間実績重視で午後1時到着。この日は夕方まで粘る作戦。その甲斐あって、ようやく「産卵シーン」撮影に成功。
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D71K-85VR、ISO=500、F9-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:13時28分23秒

 樹肌に産み付けられた様子です。
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D71K-85VR(トリミング)、ISO=500、F9-1/500、-0.7EV、外部ストロボ、撮影時刻:13時29分10秒

 ここでは4卵塊産み付けていたようです。一番右側は昨シーズンに産まれた卵殻なのでしょう。ご覧のように産卵直後は緑色を帯びています。この状態を前玉外し系で拡大撮影をしてみました。
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D71K-1855改@55mm(トリミング+2コマ深度合成)、ISO=100、F22-1/400、-1.3EV、外部ストロボ、撮影時刻:13時43分02秒

 驚いたことに先ほどまで緑色だった卵が既に白色に変化しております。この間、僅か15分弱。ツマキチョウ等は産卵直後に橙色で約1日後に白色に変化します。この経験があったものですから、すぐには変色しないだろう・・・と、つい油断をしてしまいました。その後、もう少し粘って待望の多数卵塊での産卵瞬間シーンをゲットできました。
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D71K-34(トリミング)、ISO=400、F10-1/400、-1.0EV、外部ストロボ、撮影時刻:14時30分38秒

 右下に腹端付近の拡大像を挿入しておきました。卵より先んじて粘着物質(透明液体:写真で黒く見える)が腹端より出、ほぼ同時に卵が産み付けられる感じです。粘着物質はすぐに卵の底辺部まで拡がり卵表面には付着・固化しないように見えます。恐らく表面の棘皮が撥水性を示すため、同物質は卵表面ではなく、樹肌もしくは他の卵との接着に優先的に利用できるのでしょう。さて、最終的に産み付けられた19卵塊の様子です。
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D71K-34(トリミング)、ISO=400、F11-1/320、-1.0EV、外部ストロボ、撮影時刻:14時32分

 直近に産み付けられた3卵はまだ緑色をしております。この母蝶がここで19卵塊を産み付けたのか、あるいは別個体と併せて19卵塊になったのかは確認しておりません。なお卵塊の向きは良く見られるように樹肌の北側に位置しておりました。この日は天気予報通り15時過ぎから雲行きが怪しくなり、そのうち俄雨が降ってまいりました。傘を差しながら梢を見上げていると15時30分頃から♂のテリ張り・卍飛翔がスタート。18時頃まで続いておりました。残念なことにこのポイントでは卍飛翔が地面近くまでは降りずに空中で直ぐに解けてしまうので、広角卍飛翔撮影はできず(^^; この間、♀の行動を注視しておりましたものの、産卵行動は確認できませんでした。降雨で樹肌が濡れたことを嫌うのか、あるいは♂の活動時間帯を避ける行動なのかは不明です。結局2日間で観察した結果、13時~15時に産卵行動が活発になる印象でした。前玉外しでは越冬卵の詳細構造が確認できないため、別の卵塊を超拡大撮影システムでも撮影。
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D71K-85VR-24R(トリミング+4コマ深度合成)、ISO=100、F29-1/320、-1.0EV、外部ストロボ、撮影時刻:17時09分

 苔にまみれていない卵はやはり綺麗です。左端の卵は既に寄生されているようです。次に越冬卵表面汚染が継時的にどう進行するかを今年1月に横浜で撮影した越冬卵と比較してみました。
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D71K-85VR-24R(トリミング+上段4コマ/下段3コマ深度合成)、ISO=上段100/下段200、F29-上段:1/320/下段1/125、-1.0EV、外部ストロボ

 苔が付着していないと棘皮先端構造・精孔内部の状況が詳細に把握できます。ミドリシジミはハンノキ林のように多湿環境で越冬しますので、苔の付着は避けられないのですね。他のゼフ越冬卵も本来産卵直後に撮影できれば御の字ですが、ウラゴ以外はなかなか難しいのが現状です。今回管理人として、ウラゴ以外に初めてゼフ産卵シーンをゲットできました。他のゼフ♀産卵シーンもできればトライしてみたいと思っております。
by fanseab | 2013-06-24 21:13 | | Comments(14)
Commented by 愛野緑 at 2013-06-24 21:23 x
思いの外早い時期に産卵するのですね。

羽化の比較的遅いタダノミドリは、もっと遅く産卵するのかと思い込んでいました。
Commented by yoda-1 at 2013-06-24 21:32
これは素晴らしい記録ですね。
産卵している最中は、接近しても逃げないものなのでしょうか。
しかし、産卵直後のほのかな緑色は、卵に付着する体液のせいなのか、すごく神秘的で感動いたしました。
Commented by cactuss at 2013-06-24 22:56
こだわりの産卵シーン撮影ですね。
産卵直後の卵は緑色で、すぐに白くなるとは観察していないとわかりませんね。
でも、卵の拡大シーンの撮影は驚きですね。深度合成のなせる業ですか。
Commented by naoggio at 2013-06-25 15:01 x
見事な産卵シーン撮影おめでとうございます。
粘着液に埋め込むようにして産卵している様子がよくわかって面白いですね。
こうして見てみると雨で樹皮が濡れている時はやはりうまくないかもしれませんね。

Commented by banyan10 at 2013-06-25 21:05
産卵直後の緑色の卵は綺麗ですね。
15分ではそのつもりで用意していないと撮影は難しいですね。
Commented by fanseab at 2013-06-25 21:28 x
愛野緑さん、小生は特別な先入観もないので、産卵時期が格別早いとは思いませんでした。もちろん、キリシマミドリのように♀が羽化後、卵巣成熟に1ケ月程度要するゼフもいますから、ゼフ毎に羽化(交尾)後産卵までに必要なタイムラグは異なるのでしょう。
Commented by fanseab at 2013-06-25 21:31 x
yoda-1さん、何とか2日間、根性入れて粘った甲斐があって、ほぼ目論見通りの画像が得られました。産卵時に放出される接着剤はもちろんファインダーで覗いている時には詳細はわからず、帰宅後のPCモニター上で初めて理解できました。
産卵中のストロボ照射には鈍感ですが、不用意にレンズフードを樹肌にぶつけたら、流石に逃げていきました。振動には大変敏感なようです。
Commented by fanseab at 2013-06-25 21:43 x
cactussさん、今シーズンは種によらず産卵シーン撮影をメインテーマに掲げているので、究極の産卵シーンを撮れればと思って粘ってみました。ミドリは樹肌に卵塊で産み付ける場合は余裕があって、何とか恰好がつきました。細枝の場合は葉被りになったり難しいですね。拡大撮影の解像度は80%以上レンズ系の組み合わせで決まると思います。ほぼ手持ち状態の深度合成では、合成のメリットはそれほど顕著ではありません。三脚にカメラを取り付けて、マイクロ駆動システムで繰り出し撮影をすればもう少し立派な絵が撮れると思いますが、フィールドでそんな大仰なシステムを持ち歩く訳にはいきませんから、適当な所で妥協しております。
Commented by fanseab at 2013-06-25 21:46 x
naoggioさん、お蔭様で目論見に近い画像を得ることができました。実際に観察してみると、どこでも同じような樹肌構造でも好き嫌いがあって、♀の気持ちは複雑であることがわかります。
体液として出される接着剤は水溶性でしょうから、恐らく樹肌が濡れていると、接着剤の機能低下をするものだと思います。♀がそんな背景を本能的に理解しているとすると凄いものだと感心します。
Commented by fanseab at 2013-06-25 21:48 x
BANYANさん、そうなんです。産卵直後に備えて拡大システムを準備しておかなければなりません。今度チャンスがあれば、是非共翡翠色の貴重な越冬卵画像を撮りたいものです。
Commented by 22wn3288 at 2013-06-28 08:22 x
産卵直後の緑色が15分で白色になるー早い変化ですね。
観察していないと分からない経過です。
卵も綺麗に撮られていますね。何時もそうですが。
Commented by clossiana at 2013-06-29 13:55 x
この一連の写真はfanseabさんならではの作品で、行き当たりばったりの私には到底、望めないシーンの連続でした。いざという大事な場面でそれをしっかりと撮られているのは周到な準備と心構えが出来ているからで、それを支えているのは豊富な知識と蝶への思いやりなのだろうなと思いました。この蝶は比較的身近な蝶ですが、やはり繰り返し見ていることが大切なんでしょうね。
Commented by fanseab at 2013-06-29 20:44 x
22wn3288さん、産卵された卵が途中で色変化する種類とそうでない種がいますね。同じシジミでも様々であることが理解できました。それにしても15分以内は想定外で、驚きました。それはともかく、産卵直後のゴミが付いてない状態の卵表面の微構造は本当に綺麗です。
Commented by fanseab at 2013-06-29 20:49 x
clossianaさん、観察眼の鋭い貴殿からそのようなコメントを頂けると些か恥ずかしいです。産卵シーンの撮影に注力し始めて気が付いたのは「♀の行動に如何に無知であったか」という恥ずかしい事実です。ミドリ♀の場合はやれAB型が綺麗だとか、審美眼的観点での撮影になりがちで♀の行動をじっくり観察する機会は意図的に作り出さない限りないのだと思います。しかも産卵は正午以降になされることが多いので遠くの遠征先では粘るのにも辛いものがありますが、幸い近場だったので、成果を挙げることができました。
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